新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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エピソード21「オペレーション・プレアデス、発動」

第二次ネオジオン内戦とも言うべき戦闘は、アクシズの周囲に爆発や射撃火線を無尽蔵に展開させる。

 

MS同士の射撃・白兵戦闘。

 

ムサカ級、エンドラ級の艦隊戦闘。

戦艦へのMSによる強襲に、それに対する対空砲火。

 

その中の一ヶ所にに一際鮮やかな火線が見られた。

 

高出力ビーム弾が、ギラドーガ、ガザC、ズサを3機まとめて破砕・爆破させ、更なるビームマグナムの一撃が重装型ギラドーガを撃ち砕いて破壊する。

 

鮮やかな火線を生むのはリディ駆るユニコーンガンダムだ。

 

伝承のユニコーンのごとく暴れ狂うようにユニコーンガンダムは、ネオジオンのMS達をことごとく殲滅していく。

 

ビームマグナムを二発撃ち、ギラズールとギラドーガ各3機をまとめて撃ち抜いて破砕させ、ビームサーベルを持ち構えてすれ違い様に、6機のギラズールを瞬斬した。

 

駆け抜けるユニコーンは動きを止め、ビームマグナムを構える。

 

チャージされたエネルギー球を銃口に発生させ、前方一直線上に発砲。

 

ギラズール、ギラドーガ、ドライセン、バウ、ズサを一直線に撃ち抉って高出力ビームが突き進む。

 

そして更に遠方にいたムサカ級の動力部にビームを直撃させ、破砕・轟沈させた。

 

高出力エネルギーに抉られたネオジオンの機体群もまた、原形を歪めて連続で爆発していく。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……この戦いで!!!」

 

再び機体を加速させたリディは、鬼神的な攻めに再びシフトし、射撃するドーベンウルフ部隊を撃ち抉り、ガゾウム達の射撃を加速で躱しながら、ビームマグナムを連発させて破砕の限りを尽くす。

 

更にリゲルグをバラバラに斬り潰し、反転しながらギラドーガとバウの群衆に突っ込む。

 

駆け抜けながら出会す全ての機体を超高速で斬撃。

 

ユニコーンガンダムが駆け抜けた後には幾多の爆発が連なった。

「ネオジオンを駆逐……させるさ!!!」

 

更にユニコーンガンダムは、NT-Dが反応を示したヤクトドーガとサイコドーガの部隊へと振り向いて突貫する。

 

出合い頭に斬撃を見舞い、出会す1機、1機のサイコドーガをバラバラに斬り刻んでは斬り飛ばす。

 

ユニコーンガンダムは、紅い残像を発生させながらサイコドーガを次々に斬り刻み、一気に7機を破壊する。

 

反撃するヤクトドーガのファンネルのビーム射撃も、Iフィールドに阻まれ意味をなさない。

 

挙げ句にはファンネルをNT-Dによりジャックされ、逆にヤクトドーガは機体各部を撃ち砕かれる。

 

次の瞬間にはヤクトドーガ本体を縦横無尽に斬り裂いて駆け抜けていった。

 

アンチニュータイプマシンたるユニコーンガンダムは、正にその通りの狂暴さを見せつけ続ける。

 

ユニコーンガンダムが駆け抜けたその後には、爆発とネオジオンのMS達の躯が浮かぶ。

 

その勢いは本当に単機でネオジオン勢を壊滅させかねないものだった。

 

紅い残像を鮮やかにかつ禍々しく残しながらユニコーンガンダムは、ギラズール部隊の真上から襲い掛かる。

 

ビームサーベルによる高速斬撃がギラズール達を完膚無きまでに斬り刻み破壊した。

 

フロンタル派、反フロンタル派の両勢が駆逐される中、その暴れ狂う獣に立ち向かわんとする異形のMSが迫る。

 

アンジェロのローゼンズールだった。

 

「大佐に代わり、貴様を駆逐してくれる!!!ガンダム!!!」

 

アームクローを突き出して迫るローゼンズール。

 

ユニコーンガンダムは機体を翻しながらその攻撃を躱してみせる。

 

だが、その周囲から高速で伸ばされたアームクローがユニコーンガンダムに襲い掛かった。

 

躱された瞬間にアームクローの有線ワイヤーが放たれ、ユニコーンガンダムを攻撃する。

 

鋭利なアームクローに右腕と左脚を掴まれたユニコーンガンダムであるが、リディは動揺することなくローゼンズールを睨み刺していた。

 

「これがどうした……!??」

 

「いつの時代も我々を愚弄する存在、連邦のガンダム!!!このアンジェロが葬ってくれる!!!サイコジャマー射出!!!」

 

ローゼンズールの両肩から薔薇の華のような形状のユニットが幾つも放たれた。

 

そしてそれは、ユニコーンガンダムを囲み、ユニットとユニットを結ぶように稲妻状のエネルギーがはしる。

 

「な……!?!?」

 

そのエネルギーに隔離されるような状況になったユニコーンガンダムは、見えない何かに強引に組つけられるかのように、各部を変形させて元の形態へと戻っていく。

 

その際に、発光していた各部のサイコフレームの光が消え、ライトグレーのユニットを晒していった。

 

「くそ!!!どうなっている!??機体の機能が……!!!」

 

モニター各部にエラー表示が次々に表示され、警報アラートが鳴り響く中、NT-Dシステムが強制的に解除されてしまう。

 

ユニコーンガンダムを包む眩い稲妻状の紫の光に照らされながら、アンジェロは高らかにそのユニットの特性を言い放った。

 

「ははは、はははははは!!!サイコ兵器の力を強制的に封じ込むサイコジャマーだ!!!その暴れ狂う獣のような力は最早使えん!!!」

 

「っ……ユニコーン!!!」

 

「積年の恨みだ……一思いには殺さん……!!!」

瞳をくわっと見開いたアンジェロにシンクロするように、ローゼンズールは無抵抗となったユニコーンガンダムを滅多裂きにするように殴り浴びせ始めた。

 

「ははは!!!はははははは!!!死んでしまえぇぇ!!!」

 

「ぐっうぅぅ……!!!まだ、まだ死ねん!!!ミヒロがいる……ミヒロが待っているんだ……!!!」

 

激しい衝撃の中で、リディは歯を食い縛りながら状況に耐え続けた。

 

自分を待ち、かつ今後に葛藤するミヒロを想いながら。

 

時を同じくして、アクシズの片割れが浮かぶ空間に、無数の爆発とビームが飛び交う情景に三つの機影が突入していく。

 

それはアスクレプオス、ヴァイエイト、メリクリウスであった。

 

戦闘の光景を見ながらミューラが狂気に近い喜びを放つ。

 

「ひゃはははは!!!やってる、やってる!!!雑魚同士のつつき合い!!!」

 

「はしゃぐなよ、ミューラ!!まだ乱闘の外だぜ~!?」

 

一瞬、ミューラを制止させるような発言をしつつも、アレックスはメリクリウスを加速させる動きを見せる。

 

ノリに乗るかのように舞い上がる二人をふと笑いながらトラントは介入する手はずに踏み切り、機体のシステムをテストモードから戦闘モードへ移行させた。

「お前達……システムを戦闘モードに切り替えとけ。一気に突っ込むぞ」

 

「りょーかい!!!」

 

「駆逐祭り開始だぜぇ、おい!!!」

 

3機はスクエアタイプのカメラアイを発光させ、爆発的な加速で、今なお続くネオジオン内戦の空間へと飛び込んでいった。

 

ビーム射撃を飛び交わせるギラドーガ、ガ・ゾウム、ガルスJ、バウのMS群。

 

その攻防の光景はまさしくかつてのハマーン派とグレミー派に別れた内戦の再現であった。

 

だが、確実に違う点があった。

 

それは明らかな歪みと明らかな正統の対局だった。

 

一方は争いの火種を残したまま地球を切り捨て、宇宙移民者達のみ有利な世界を確立させる事を力によるやり方で押し進める。

 

もう一方はその方法の中に「コロニー落とし」を入れ込んだ行為に危惧を覚え、フロンタルに反対する考えであった。

 

更に言えば、そのやり方で連邦からの圧力が増す事により、安息を奪われていく事に繋がる危惧でもあった。

 

その戦場にドライセンやドーベン・ウルフの部隊も加わり、射撃戦闘や白兵戦が更に激化する。

 

だが、その時であった。

 

 

 

ヴァグヴァアアアアアアアアッッッッ!!!

 

ドドゴゴバァババババガガガァアアア……

 

 

 

突如としてはしったビーム渦流が、ドーベン・ウルフやドライセン、バウ、ギラドーガの機体群を爆砕し続け、多重爆発を描く。

 

「ひゃはははは!!!駆逐、駆逐ぅうう!!!」

 

ミューラ駆るヴァイエイトが放ったビームカノンの一撃であった。

 

更にミューラは面白半分まがいにビームカノンを連発させる。

 

「時代も変わる!!!前世代の勢力は消えてもらう!!!」

 

 

 

ヴァズヴァ、ヴァズヴァア、ヴァズヴァ、ヴァズヴァッッ、ドズヴヴァアアアアアアア!!!

 

 

 

ギラドーガ、ギラズール、ガ・ゾウム、ズサ、ガルスJ、バウのMS群が瞬く間に破砕され、爆発を撒き散らしていく。

 

更にチャージされた一撃を放ち、ビームを振り回すように砲身を廻す。

 

 

 

ギュヴヴァガァアアアアァァァァ……!!!

 

ドドドゴババババババガァオオオオ……

 

 

 

この射撃により、ムサカ級も2隻が熔断されるがごとく、ビーム渦流に抉り貫かれ爆発・轟沈。

 

戦闘中だった幾多のMSを巻き添えにして破砕・爆砕の爆発を繰り返し巻き起こさせる。

 

その時、1機のドーベン・ウルフがビームランチャーを撃ち放ってヴァイエイトへ攻撃を仕掛けた。

 

しかし、ビームは躱される。

 

「狙いが甘いぜ!!!そらぁあ!!!」

 

 

 

ヴズゥヴァアアアアアアアアアッッ!!!

 

ドォズゥオオオオオオオオ……ゴバァオアアアアン!!!

 

 

 

ヴァイエイトのビームカノンの返り討ちにより、ドーベン・ウルフは虚しく破砕され砕け散った。

 

そのビームは、直進上にいたMS群を更に破砕し続け、アクシズ宙域に光る爆発光が更に激化して生まれていく。

 

「な……なんだ!?!」

 

「が、ガンダムか!??」

 

ネオジオンサイドの誰もが、ガンダムの攻撃を想像した。

 

只のガンダムではない、メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムを。

 

しかし、迫る機体はガンダムではなかった。

 

「し、識別確認!!!OZです!!!それに、ガンダムではないです!!!」

 

「何、OZだと!?!ちぃ……各機、一斉射撃!!!」

 

アレックスはメリクリウスをギラズールやギラドーガ、ドライセン、バウの機体群が争っていた空間へと飛び込ませる。

 

「俺達の戦闘データに協力してもらうぜぇっ!!!ネオジオンさん!!!」

 

迫るメリクリウスに対し、争っていた各機体は再び共に戦い始めた。

 

ビームライフル、ジャイアントバズーカ、ビームマシンガン、メガ粒子砲のビーム射撃がメリクリウスに集中した。

 

だが、アレックスはニヤリと笑いながら直撃を真っ向から受けた。

 

 

ディガギュギュギュイイイイイイイ!!!

 

 

 

一斉射撃は、実弾、ビーム、出力を問わずにスパークと共に消滅した。

 

「くくく!!プラネイト・ディフェンサーだ!!!射撃は全て無駄だ!!!そらよぉ!!!」

 

「何だとぉ!??なんだこのフィールドはっ……ぐぅがえぁっっ!?!」

 

 

ズシュドォオオオオオッッ……!!!

 

 

 

メリクリウスのクラッシュシールドの中心から形成したビームサーベルがドライセンのコックピットを貫く。

 

 

ジュジィゴォオオオァアアア……ドバズガァアアアアアアア!!!

 

 

スパークを伴いながら、ドライセンは爆砕。

 

他の機体群は近距離からの射撃をするが、プラネイト・ディフェンサーにより、全くの無意味に終わる。

 

カメラアイを発光させたメリクリウスは、ビームサーベルを一振りでギラドーガ2機とバウを斬り払い、ビームガンの連続射撃を2機のギラズールと2機のバウ、ドライセンを撃ち砕いて破砕させた。

 

更にメリクリウスはその爆発に突撃し、クラッシュシールドのビームサーベルをリゲルグに突き刺した。

 

「レッド・メリクリウス、介入を続行する!!!」

 

リゲルグはスパークを伴いながら破裂するかのごとく爆砕し、メリクリウスは更なる攻撃を仕掛け続けた。。

 

そして、トラントの駆るアスクレプオスが、超高速でギラズール、クラーケズール、ドライセン、ドーベン・ウルフの機体群が展開していたポイントへと突っ込む。

 

機体設計・開発はペルゲが行っているためか、機体形状の一部がガンダムジェミナスに酷似している。

 

尚、一方のヴァイエイトとメリクリウスの設計開発はドクターJ達によるものだ。

 

「さぁ……アスクレプオスの力を試させてもらう!!!おおおおおおっっ!!!」

 

主兵装であるパイソンクローを突き立ててドーベン・ウルフへ迫るアスクレプオス。

 

三つの鋭利な爪にエネルギーが発生する。

 

オレンジに発光するその エネルギーは、GNDドライヴを介したGNDエネルギーであり、斬撃・刺突・焼灼の威力を倍増させる。

 

 

ザズゥガァアアアアアアアアアッッッッ!!!

 

 

 

物の見事にドーベン・ウルフの胸部に突き刺さったパイソンクローの一撃は、惰性を発生させながらドーベン・ウルフごと空間を駆け抜けた。

 

そしてギラドーガと戦闘していたドライセンに突っ込み、諸とも爆砕して宇宙の爆発光へと変えた。

 

その爆発を飛び出したアスクレプオスは、ギラドーガにパイソンビームランチャーを浴びせる。

 

パイソンクローのセンターにある二門のビーム砲から放たれる高出力ビームだ。

 

 

 

ダシュダァアアアアア!!!

 

ズドシュガァアアアアッッ!!!

 

 

更に周囲にいたガザDやズサ、ガ・ゾウム、ガルスKにも同様の射撃を浴びせて爆砕の限りを拡める。

 

再び加速したアスクレプオスは、パイソンクローをかざして、クラーケズールを刺突。

 

そのままクラーケズールは激しく破砕され、直撃を食らいながら爆発四散。

 

弾幕に追われながら振り向いたアスクレプオスは、両腕のパイソンビームランチャーを発射。

 

ギラズールとギラドーガを撃ち仕留めた。

 

そして、ドライセンに縦横無尽の斬撃を四方八方から浴びせ、最後に頭上感覚の所から一気に突き刺して、メインボデーを破砕させた。

 

「ふっ……上々たる性能だ!!!」

 

アスクレプオスはバーニア出力を上昇させ、更なる攻撃を仕掛けて駆け抜けていった。

 

その後尾には幾多のMSの爆発光が連なっていった。

 

激戦伴う中、レウルーラにシナンジュが帰艦する。

 

トールギスとの戦闘で各部を損傷した状態が、戦闘の激しさを物語っていた。

 

フロンタルは、マスクを取り外しながら深いため息をする。

 

「フロンタル大佐!!ご無事で!!機体がかなり損傷した状態ですが、お怪我は!?」

 

礼儀も踏まえ、フロンタルに一声をかけるメカニック。

 

だが、フロンタルは言葉を返すことなく、そのままライルに通信を繋げる。

 

「ライル中佐、聞こえるか?」

 

「は!!」

 

モニターにライルが映る。

 

「戦況はどうか!?」

 

「は!!現在共に拮抗した状況にあります!!ですが、どちらが押され始めても不思議ではありません。少なくとも双方で戦力が欠けていっているのは確実です!!」

 

「……そうか」

 

「更に連邦とOZの一部が介入しているとの情報も入っております!!それにより戦力の欠落は加速した状況にも……今後も更なる打撃が伴われると予想されます!!!」

 

「彼らの介入は知っている……だから私はここへ来て機体を損傷させられた。OZの閃光……流石に手強い」

 

「大佐がOZと戦闘を!??」

 

「あぁ……いずれにせよ今、アクシズ宙域にネオジオンの主戦力が入り乱れて内戦をしているのだ。この状況にあっては彼らも我々に援助資金を割いてはくれまい……」

 

ここに来て、フロンタルの口から妙な存在が溢れた。

 

ライルは眉を潜めてフロンタルに質問をした。

 

「彼らと言いますと?」

 

「ん?いや、こちらの話だ。とにかくこれ以上の戦闘は貴重な戦力の疲弊に繋がる。ライル中佐!!我が派閥に通達せよ!!我が軍は撤退するとな!!」

 

「撤退……!!!」

 

「こうなってしまった以上、体制の建て直しが必要だ!!だが、アクシズは落とす!!!アクシズの核パルスエンジンを作動せよ!!!」

 

「このタイミングでアクシズをですか!??」

 

「放置をすればいずれは他の手に堕ちる……ならば今ここでオペレーションの真髄を実行する!!!」

 

ライルは、進撃中にいつ阻止されても不思議ではない事を解りつつも、敢えて言わなかった。

 

(判断が安易過ぎる。アクシズがいかにも囮と言わんばかりだ……確かにアクシズを放棄するわけには、否……放棄同然か)

 

すると、フロンタルはその思惑に答えるかのように言った。

 

「アクシズの護衛は内部にいる別動隊に任せている。彼らであれば十分に護衛を果たせよう」

 

「な?!?初耳です!!!それではその彼らを囮にしてしまう形になりかねないのでは!?!」

 

フロンタルは半ば部下を囮とするかのような形の方向へと振っていた。

 

もし総帥のシャアであればそのような判断や命令はしていないだろう。

 

ライルは改めてフロンタルはシャア本人ではないと悟る。

 

「表向きに発言すれば、このような内戦になった以上彼らにはアクシズと運命を共にしてもらうしかない。だが、案ずることはない。それ相応の戦力だ」

 

(私が知っているシャア総帥は……死んだかっ!!!)

 

「その間に我々は撤退し、体制の立て直しを図る!!!総員撤退の命令を下す!!!」

 

フロンタルの指令の後、アクシズの核パルスエンジンが点火された。

 

アクシズは再び地球へ向けての進撃を開始した。

 

厳密に言えばアクシズの片割れであるが、その巨大なネオジオンの意志は、かつてと同様に確実に地球潰しの為に動き始めた。

 

戦闘をしていた誰もがその光景に目をやった。

 

高揚感を覚える者、青ざめる者、茫然と見つめる者、戦闘の一瞬、一瞬の間に間に目を配る者。

 

更に戦闘生中継ポイントを介し、全地球圏にその映像が配信され、様々な視点からその光景を目の当たりにした。

 

それと同時にフロンタルサイドの勢力は次々に撤退していく。

 

アンジェロもまたユニコーンガンダムを追い詰めてはいたが、敬愛するフロンタルの命令が故に撤退を余儀無くされた。

 

「ここまで追い詰めておきながら撤退とは……だが、大佐に従わない訳にはいかない!!!命拾いしたな!!!」

 

心理的に辛酸を呑みながらローゼンズールは、展開させていたサイコジャマーを格納してその場を後にした。

 

「くっ……難は逃れたのか!?否……難はこれからか!!!ミヒロ!!!」

 

サイコジャマーを解かれ、機体コンディションが通常に戻った事を確認すると、リディは第一にミヒロを思い出して機体をネェル・アーガマへと向かわせた。

 

ネェル・アーガマのブリッジではケネスが、ハイパーメガ粒子砲の使用を検討する。

 

状況的に見てもアクシズをすぐに止める術は、現時点でネェル・アーガマだけだ。

 

「(使うべきは今か!?!今アクシズ宙域には我々しかいない……!!!ハイパーメガ粒子砲であれば阻止が可能かもしれん!!!)アクシズとの距離は!?!」

 

「およそ3マイルです!!」

 

「ハイパーメガ粒子砲の用意!!!今阻止できるのは我々しかいない!!!急げ!!!」

 

「了解!!」

 

ネェル・アーガマのブリッジ内が更に緊迫した状況となった。

 

ケネスは、きっと遠方に動くアクシズを睨む。

 

「アクシズは動いている!!!ハイパーメガ粒子砲とアクシズのランデブーポイントを算出した後に砲撃体制に移れ(頼むぞ、諸君!!何故ならグリプス2を使わせるわけにはいかん……あれを使えばコロニーを巻き込みかねん。私とて人だ。コロニーの人間をどーでもよいとなど思ってはいない)!!!」

 

ケネスは連邦の士官ではあるが、人としてスペースノイドへの人権概念を持っていた。

 

ハイパーメガ粒子砲を使用するにあたり、ケネスの脳裏に聞かされていた前ネェル・アーガマ艦長の起こした一件を過らせた。

 

(前艦長のガレムソンと言う名の連邦士官は、反逆性の高い兵器の研究の疑いがあるという理由で民間資源衛生・MO-Vをこの艦で強襲を仕掛けた……ハイパーメガ粒子砲で破壊してまでな。私はそのような愚行判断はしない!!!)

 

ケネスが思い起こしていた事はアディンとオデルの悲しき過去の事件だった。

 

ケネスは良識的見解から見て、明らかなる遺憾を示していた。

 

故にハイパーメガ粒子砲のような兵器は正しく使用状況を判断する必要があった。

 

一方、時同じくしてアディンやオデルもまた、降り立ったガルダーヤの惨状に連邦の理不尽さを感じていた。

 

ガルダーヤには既に人々は生存しておらず、殆どが連邦兵達により虐殺されていた。

 

「ひでぇ……これじゃ物資云々じゃないぜ。プルには待機してもらって正解だ。こんなのニュータイプが直に感じたら……!!!」

 

「あぁ……精神的に痛めつけられるだろうな……やはり、連邦はいつの時代も変わらんな!!!」

 

「MO-Vを平気で破壊できる連中だからな。ある意味納得だぜ……赦せるもんじゃ無いけどな!!!」

 

至るところに虐殺されたガルダーヤの人々が斃れている。

 

プルは、キュベレイMk-Ⅱのコックピット内で体育座りでうずくまっていた。

 

今彼女には幾多の苦しみの思念を感じている状況にあった。

 

「みんなの声が、苦しんだみんなの……声が!!!何も罪がないのに……!!!酷過ぎだよぉ……!!!」

 

戦争は戦闘において戦士が互いの想いを掛けて戦い、その命を取り合う。

 

だが、ガルダーヤに存在する遺体達は罪もなく蹂躙された民間人だった。

 

戦場で感じる状況とはまるで質が違っていた。

 

プルはきゅっと更にうずくまり涙をすすった。

 

アディン達は申し訳無く感じつつも物資を調達してガルダーヤを後にした。

 

ガランシェールのブリッジ内にて、腕を組みながら前を見据えるヒイロ、アディン、オデルに対しジンネマンは過去を話す。

 

「……ガルダーヤの惨状……俺もフラストも他人事じゃあない……」

 

「え!?」

 

「するとキャプテン達も、連邦に……?失礼ではあるが、一体どのような事が?」

 

「……」

 

アディンは直ぐに反応し、オデルは話を聞き入ろうとし、ヒイロは視線だけをジンネマンに向ける。

 

「かつて俺やフラストの家があったコロニーへ、連邦が押し寄せる事件があった。子供も老若男女問わず虐殺された事件だ。その中に俺の妻と娘、フラストの両親もいた」

 

「な……!?!」

 

「っ……すまない、やはり失敬だったか!!!」

 

「いや、むしろあの惨状を見て来たのなら、それ以前にメテオ・ブレイクス・ヘルならば知っておいてもらいたい。その愚行は表向きには暴徒の鎮圧だったが、連邦の貯まったフラストレーションのガス抜きであることは紛れもない事実だった」

 

当時の惨状を思い浮かべるジンネマンとフラスト。

 

いつ思い出してもやりきれない想いをつのらせる。

 

「……妻のフィー、娘のマリー……フラストの両親……皆無差別に連邦の連中に殺された……訳も解らなかっただろうに……痛かったろうに……怖かったろうに……!!!」

 

次第にジンネマンもフラストも感情が押し寄せ、口許を噛み締めていた。

 

ジンネマンは懐にしまっている一枚の写真を取り出し、三人に見せた。

 

それは若がりしジンネマンと、娘・マリーの写真だった。

 

「……いつも忍ばせている、亡き娘・マリーとの今残る唯一の写真だ」

 

「マリー……!!」

 

それを聞いたヒイロは、その名を呟きながら連想する存在を過らせる。

 

「マリーダは、マリーダの名はその娘が……」

 

「あぁ……出会って引き取る時に……否、救け出した後に与えた名だ……歳も同世代だったからな……だからマリーダは部下としてではなく、娘として接している……つもりだ。未だに『お父さん』と呼ばれんがな……ニュータイプ部隊時の後遺症の為か『マスター』と呼ばれてしまっとる……」

 

すると、それを聞いたアディンは、思い出したかのようにプルの事をジンネマンに振った。

 

「キャプテン、でもプルにはちゃんと『パパ』って呼ばれてるじゃないっすか!!」

 

「む、むう……そ、それはそう……だな!!」

 

更にフラストが突っ込むように言う。

 

「キャプテン、声だけでもニヤケ始めたのわかりますよ!!ホントにキャプテンてば、内心嬉しくて、嬉しくてしょーがないのだだ漏れっすよ!!」

 

「やかましい!!お前は持ち場に集中してろぉ!!ったく~!!!」

 

そのやり取りにノルようにアディンが言う。

 

「キャプテン、顔赤いっすよ!!」

 

「お前もか!!ガンダム小僧!!」

 

「アディン!!所属は違えど目上に失礼だぞ!!」

 

「解ってるって、兄さん!!キャプテンもムキにならないでくださいってー……へへへへっ」

 

「アディン!!」

 

「いや、プルの話をしたら重い空気が晴れたからさ……話題一つに出ただけで明るいもん持って来てくれるコなんだなって思ってさ……」

 

そのアディンの言葉にはっとするジンネマン。

 

すると穏やかな笑みを浮かべながら言葉に溢す。

 

「確かにな……あの娘は明るいモノを感じさせてくれる……そのプルの片割れと思われるもう一人のプルと姉妹達はマリーダを残し、抗争に散った……だからこそ、今生きるマリーダとプルを守らねばならん!!彼女達の非道な運命は俺達でひん曲げなければな!!!」

 

ジンネマンのその言葉から、記録にあるプルシリーズについての事を思い出すGマイスターの三人。

 

彼女達は戦争の為に作られ、利用され理不尽かつ過酷な運命を歩んできた少女達だ。

 

すると、ヒイロはすっとその場を離れる。

 

「お!?どこ行くんだ?ヒイロ?」

 

アディンに呼び止められたヒイロは僅かに振り向きながら告げる。

 

その眼差しと雰囲気は確信に迫るモノを感じさせていた。

 

「機体の最終調整をする。プルの感覚が正しければ、マリーダはダカールかオーガスタにいるはずだ。それに俺の洞察でも確信に迫れる」

 

「え!?どういうことだ!?」

 

ヒイロが最後にマリーダと通信したのは、マリーダがダカールに攻め入る時であった。

 

情勢下を考慮すれば、ダカールに囚われているか、数少ないニュータイプ研究施設・オーガスタ研究所に高い可能性が置かれる。

 

「マリーダはダカールに攻め入る作戦を最後に消息を絶った。この情勢下だ。連邦軍に囚われている可能性が高い。無論、可能性の範囲を出ないがな。だが、行動することに意義がある……!!!いずれにせよ戦闘は必至だ。お前も時間があるなら自分の機体をチェックしておけ!!!」

 

「あ、ヒイロ!!!……いっちまいやがった……珍しくペラペラ喋ったな、あいつ。気合いも入ってたし……」

 

「誰も想う存在がかかればそうなるさ。キャプテン、改めて進路をダカール、オーガスタ方面にお願いします」

 

ジンネマンはにっと僅かに笑みをしながら答える。

 

「ふんっ……言われずとも既に向かっている。それにお願いしているのはむしろ我々だ。ガンダムの力が必要なんだよ……それにしても、復活したあのガンダムの小僧……いい目をしてやがる。まさに戦士の中の戦士の目だ」

 

「ヒイロですか?確かに……彼の凄さは俺達のメンバーの誰もが認める戦士です。俺自身も彼には負けてしまうくらいですよ」

 

「そうなのか……ふふっ、マリーダが信頼できる奴だ。その時点で認めざるをえんよ」

 

そのオデルとジンネマンの話を聞いていたフラストは、再びジンネマンをからかうかのように言う。

 

無論、長年の付き合いだから出る言葉だ。

 

「キャプテン、親ばか炸裂っすね!!!まさかヒイロをマリーダの婿に~なんて思っちゃいませんよね!?」

 

「ば、バカたれがぁ!!思っちゃいんわ!!!」

 

ジンネマンの表情は赤面しており、矛盾を隠せなかった。

 

その後、ヒイロは再度エアリーズ改のCPU調整をしながらマリーダの事を思い浮かべて呟く。

 

「マリーダ……」

 

ヒイロ自身、彼女との再開を切に望んでいた。

だが、彼らがこうしている今でもマリーダは、コードネーム・プルトゥエルブとしてオーガスタ研究所で利用され続けていた。

 

虚ろな瞳を浮かべながら、マリーダは隔離室に放置されていた。

 

ベントナの操り人形の実験体としてしか意味を許されない日々。

 

更にマーサ・ビスト・カーバインの名指しにより、急遽マスター変更措置の精神的操作を施され、精神崩壊寸前になっていた。

 

彼女の中からマスターの存在を消した今の状態にあっては、脱け殻に等しい状態であった。

 

監視カメラを通してベントナは卑屈に嗤いながら見ていた。

 

そしてアナハイムよりマーサがオーガスタに着任する一報が入り、ベントナ達は月の女帝の異名を持つ彼女を出迎える。

 

対面すると、ベントナはその相変わらずな卑屈嗤いを見せながらマーサを案内し始めた。

 

オーガスタ研究施設の通路を。歩きながらマーサがベントナに質問を投げかける。

 

「それで話していたプルトゥエルブはどんな具合なの?」

 

「は!!新なマスターをすりこむために感情をリセットさせております」

 

「いつでも私にすりこめるのね?」

 

「はい!!これからかできます!!!措置室にどうぞ!!!」

 

「私はわがままでせっかちなの……早く手に入れたくて来たわ……!!」

 

早歩きで歩き続けてきたマーサを措置室に招き入れるベントナ。

 

すると隔離室から拘束椅子に拘束されたマリーダの姿があった。

 

たらい回し形式に振り回されてきたマリーダに、マーサが歩み寄る。

 

「ふふふ……あなたがプルトゥエルブね……私があなたの新しいマスターになるのよ……」

 

衰弱したマリーダの喉を指先でさすり上げるマーサ。

 

くいっとマリーダの顎を上げさせると、にやっと嗤い、ベントナの方を見た。

 

「始めなさい」

 

そう言わんばかりの視線を受け、ベントナは頷いた。

 

「きゃあぁあああああっ!!!あああああっ!!!」

 

その僅か数分後、マリーダの悲鳴が再びオーガスタ研究所に響き渡る。

 

再度再調整をマーサの指示で実行し、マリーダの中にトラウマというトラウマを押し込めた催眠術を施したあげく、更なる新薬投与も実行された。

 

マリーダの脳内では、幾多の男に輪姦され続ける幻覚を見せられていた。

 

「あああああっ……あああああっ!!!」

 

「数値が既に危険域を越えてます!!!流石にこれ以上は本当に命が!!!!度重なる同じ類いの実験を受けているんです!!!」

 

「だめよ……これしきのコトを越えられない人形ならばいらないわ。私は彼女をものにしたいのだから。そしてなんとしてもラプラスの箱に関する情報が他に行くのを防がなければね……!!!失敗したらDNAでも採取して処分なさい!!!代わりはいくらでも作れるでしょう!!!」

 

「確かに……!!!」

 

マーサはどんな手段を持ち出し、意地でもラプラスの箱を封印する考えでいた。

 

その表情は妖艶かつ狂気に満ちていた。

 

ベントナは相変わらずの卑屈な笑みを浮かべ、もがき苦しむマリーダを傍観し続けた。

 

(そうだ……代わりは既に作ってある!!!新たなプルシリーズがな……!!!)

 

 

 

戦闘から離脱したゼクスとミスズはこの状況に迫る歴史の変動を予期しながら機体をネェル・アーガマへ向けていた。

 

「アクシズは恐らく地球へ向けて動き始めた。こうなればトレーズ閣下は黙ってはいられないはずだ。地球を愛する方だからな」

 

「オペレーション・プレアデスが早まるか!?」

 

「……ミスズ。我々は……」

 

ゼクスが何かを言いかけたその時、トールギスの回線通信のアラートが鳴り響いた。

 

「通信?っ……閣下!!?」

 

ゼクスが通信回線を開くと、通信モニターに表れたのはトレーズであった。

 

トレーズは、敢えてゼクスとミスズのみに通信できる回線上に通信を入れて来ていた。

 

「ゼクス……宇宙の日々はいかがかな?」

 

「すこぶる快適です。ですが、情勢はかんばしくありません」

 

「つい先ほど動き出したアクシズか。彼らの事だ。地球へ向けて動かしたのは火を見るよりも明らかだ」

 

「閣下もやはりご存じでしたか。するとやはりオペレーション・プレアデスは……」

 

「あぁ。それに伴い、オペレーション・プレアデスを早めることにする。何れにせよこの事態に対し、連邦の動きは後手に回る。彼らに任せていれば手遅れになる」

 

トレーズのその言葉はその通りに進んでおり、アクシズ宙域周辺に連邦の拠点の衛生やコロニーがあるにも関わらず、阻止せんと動いていたのはネェル・アーガマだけであった。

 

トレーズはこの期を狙い、オペレーション・プレアデスから速やかな対応に移るべく計画を一段階早める意向を示したのだ。

 

「現在、OZ地球・宇宙両全軍に通達して部隊の配置準備を極秘に展開させている。そして君には再び地球に戻るよう命ずる」

 

「地球へ!??」

 

「宇宙の時間を随分と短くしてしまってすまない。だが、是非とも配置に就いてもらいたいエリアがあるのだ。それは君の為でもある」

 

そのトレーズの言葉からゼクスは直ぐに察し、その察したキーワードを口にした。

 

「サンク……キングダム……!!!」

 

トレーズはふっと口許に笑みを浮かべながら、事を語り始めた。

 

「そうだ……かつて完全平和主義を危険視した連邦軍に滅ぼされた国、サンクキングダム。現在は連邦の勢力下にあり、唯一君の親族たる妹君も幽閉されている国でもあったな」

 

「ふふっ……閣下は全てお見通しというわけですか」

 

「ここからは私の独り言だ。ゼクス……否、ミリアルド。時が来た。君が求め続けてきた時がな……さぁ、我が友よ……道を切り開く時だ」

 

その言葉でトレーズは通信を切る。

 

ゼクスはトレーズのその言葉を聞き、自らの真意と照らし合わせ、しばらく静かにし続けた。

 

すると、通信を聞いていたミスズが一声被せる。

 

「ゼクス……トレーズ閣下の配慮を感じるな……」

 

「あぁ……来てくれるか?ミスズ」

 

「当たり前だ……当然なまでにサンクキングダムへ行くに決まっている。私もリゼル・トーラスで参戦させてもらう」

 

「すまない……恩に切る」

 

ゼクスは祖国たるサンクキングダムに赴く事を決意した。

 

そして、それを促したトレーズもまた、トールギスⅢを前に立つ。

 

「私も赴こう。友の価値ある戦場に……」

 

 

 

アクシズ攻防宙域

 

 

 

ネェル・アーガマがハイパーメガ粒子砲を発射する。

 

移動距離とハイパーメガ粒子のランデブーを計算されて発射された一撃は、射軸線上にいたネオジオンのMSや戦艦をことごとく消滅破砕させていく。

 

そして、アクシズの岩塊へとハイパーメガ粒子が直撃し、直撃部を抉りながら直進。

 

防衛に残っていたバウやドライセン、ヤクトドーガ、サイコドーガの部隊を破砕消滅させた。

 

更に継続するハイパーメガ粒子のビームの威力により、爆発。

 

アクシズは更に分断し、爆発光がアクシズを包む。

 

ケネス達の誰もが、アクシズ破砕を確信した。

 

だが、核パルスエンジンを装備した部分のアクシズは進む事を止めなかった。

 

「アクシズ、分断しました!!!しかし、依然後部の岩塊が前進していきます!!!」

 

「く……!!!ハイパーメガ粒子砲でも破壊し切れないのか!!!周辺の部隊は!?!?」

 

「一部のOZのMS部隊以外確認出来ません!!!」

 

「MSだけか……!!!通信を繋げろ!!!」

 

ケネスは残存するOZ、即ちトラント達への通信を図ろうとする。

 

だが、傍受したトラントは無視しながら残存するネオジオンのMSを駆逐してまわる。

 

「連邦からの通信……所詮遅かれ早かれ滅びる連中だ……」

 

通信に一人も出ないOZの対応に不満を抱きながら歯を食い縛るケネス。

 

その最中、ネェル・アーガマはある者からの通信を受諾する。

 

その配信者を知ったオペレーターは表情を変えてケネスに報告した。

 

「ケネス艦長!!で、電信通信を受けました!!!」

 

「電信!?こんな時に何処からだ!?!」

 

「び、ビスト財団より直々に……!!!」

 

「な!??ビスト財団だと!?!」

 

受けた電信通信を読んだケネスは、疑問と腑に落ちないモノを抱きながら、眉を潜めた。

 

「ビスト財団……!!!これは一体!?!く……ユニコーンガンダムが帰還次第、L1コロニー群に進路をとれ!!!くっ……アクシズを前にして……!!!」

 

連邦政府が盟約を結ぶビスト財団の絡む一件となれば、強制的に優先事項が傾く。

 

ケネスは口惜しさを呑み込み、ネェル・アーガマをビスト財団指定のコロニーへ向けて発進させた。

 

リディもまたその通信を受け、ユニコーンガンダムをネェル・アーガマへ向けていく。

 

大事の前の今は事を焦れば愚の骨頂だ。

 

焦り気味にもあったリディはミヒロや今後の事をトータルで考え、自らを落ち着かせる。

 

「焦るなリディ……今は流れに任せて刻を見極めろ……刻を……!!!」

 

自らに言い聞かせたリディは再びモニターに集中した。

 

 

 

その頃、ECHOES部隊からの攻撃を一身に受け止めていたシェンロンガンダムが反撃に動き出していた。

 

かっと目を見開いた五飛が気迫の咆哮をあげながら、シェンロンガンダムのビームグレイブを振り回す。

 

「覇ぁああああああああああっっ!!!」

 

 

 

フォフォフォフォフォフォッッッッ……

 

ザギガァギャアアアアアアアア!!!!

 

 

 

振り回しから解き放ったビームグレイブの強烈な反撃の凪ぎ払いが、ECHOESジェガン2機とECHOESロトを斬り飛ばした。

 

 

 

ジュシュガッッ、ザシュバッ、ギャガァアアアアア!!!

 

ドドドズガァアアアアア!!!

 

 

 

更に乱舞するシェンロンガンダムの唸るビームグレイブの斬撃が、ECHOESジェガンとECHOESロト2機を斬り砕いて破砕する。

 

「おおおおおおおおおっっ!!!」

 

 

ザズァガァアアアアアッ、ゴズゥバアアアアアア!!!

 

 

五飛は隊長機のコックピットを貫き、ことごとくECHOESの部隊を壊滅させた。

 

しかし、シェンロンガンダムもまた被弾のダメージを蓄積させていた。

 

外見は軽度であるが、GND合金の装甲の至る箇所が融解のへこみと焦げが確認できる。

 

疑似とはいえGNDドライヴのエネルギーはそれほどに強力であった。

 

周囲に散らばるECHOESジェガン、ECHOESロトの残骸を見ながら五飛は吐き捨てるように言った。

 

「ECHOESの力……確かにそれなりな力を感じたが、所詮はこんなものか!!!」

 

復活して以降、強気な姿勢は相変わらずではあるが、その気迫に機体がついていけない状況になりつつあるのは事実だ。

 

鳴り響くエラーがそれを物語る。

 

だが、五飛は些末なまでに捉えており、闘いの姿勢をやめることはない。

 

その時、コックピットを生かした状態で胸部を残して漂うECHOESジェガンを補足した。

 

マニピュレーターに装備されている光通信式ハッキングセンサーを起動させる。

 

シェンロンガンダムの指先より、ライトグリーンのレーザーをECHOESジェガンの胸部に当てた。

 

すると、シェンロンガンダムの機体内にECHOESの情報が次々と入り込んだ。

 

以前であれば、エージェントによって行われていた為その必要はなかったが、今の状況ではこれが一番の情報収集策だ。

 

データを入手した五飛は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべながらシェンロンガンダムを加速させた。

 

五飛はその突き進むモニターの先にあるコロニーに、早速ECHOESの拠点を割り出し、目標を選定する。

 

「俺達の組織を潰した悪は、必ず叩き潰す!!!行くぞ那托!!!」

 

 

 

一方、L4を目指していたカトルにデュオとトロワが追い付く。

 

デュオがカトルのシャトルへ向け必死で呼び掛ける。

 

「カトル!!!聞こえてんのかぁ!?!お前一人で突っ走ってもどーにもなんねーんだよ!!!!」

 

「……うるさい」

 

「あぁ!?!聞こえねー!!!お前は何の為に闘ってきたんだ!?!コロニーの為に戦ってきてんだろ!?!」

 

「うるさい……ロニの為に……ロニの為に決まっているだろう!?!君にロニを奪われた気持ちが解るものか!?!?」

 

「……っ!!!カトルっ、てめーは色恋沙汰で行動してんのかぁ!?!!」

 

怒りの頂点にきたデュオは、シャトルのハッチをガンダムデスサイズの拳で破壊する。

 

「お前のそんな考えでゼロを動かされたらな、コロニーが滅んじまうってんだよ!!!どんな機体か知ってるんだろうが!??第一、サンドロックがあんだろ!!?」

 

「知ってるよ。サンドロックよりも強いゼロが必要なんだ……解るかい!?!?全てはロニの為さ!!!」

 

「てめー、ガンダムを何だと思って……!!!」

 

怒り任せに、シャトルのボデーを何度も鋼の拳で殴り付ける。

 

このデュオの行動にトロワは制止をかけ、ガンダムヘビーアームズでガンダムデスサイズを押さえ込む。

 

「デュオ!!お前は落ち着け!!!」

 

「止めるな、トロワ!!!!俺達はコロニーの為に戦っているはずだろうが!!!!カトルは、一人の女で狂ってんだぞ!??」

 

「カトルはカトルなりに傷ついている!!!俺達の中の誰よりも優しく純粋故に、悲しみを倍以上に背負いすぎたんだ!!!」

 

「カトルに肩持ってんじゃねーよ!!!」

 

「お前は感情的になり過ぎていると言いたいんだ!!!デュオ!!!」

 

いつになく声を荒げるトロワと激突するデュオ。

 

2機のガンダム同士がギリギリと取っ組み合いのように機体同士を拮抗させる。

 

やがて組み合いを弾き合い、殴り合いと蹴り合いを始める。

 

「おー、おー、おー!!!!やってくれんじゃねーか!!!」

 

ガンダムデスサイズの拳がガンダムヘビーアームズの胸部に入る。

 

「俺達が戦ってどうする!??デュオ!!!お前は頭を冷やせ!!!」

 

「うるせー!!!」

 

ガンダムデスサイズが、ガンダムヘビーアームズの頭部を殴った瞬間、トロワは、カウンターの一撃をガンダムデスサイズのコックピットハッチ部に浴びせた。

 

 

 

ドォガォオオオン!!!

 

 

 

「ごぉっ……!!!?」

 

そのカウンターの一撃は、デュオに直接的な衝撃を与えた。

 

デュオは気絶し、カトルは黙ったまま壊れたシャトルの中で宇宙を見つめ続けていた。

 

その中でトロワはカトルに語りかけた。

 

「俺達は戦ってはだめなんだと……以前のお前なら言っていただろうな。カトル……確かに力は必要だ。だが、無作為にがむしゃらに求めても駄目だ。今は体勢を整えることが大事だ……L4へ行くぞ。お前の故郷へ……」

 

「……」

 

トロワは、何も答えようとしないカトルのシャトルと、気絶したデュオのガンダムデスサイズをホールドターゲットに選定する。

 

ガンダムヘビーアームズは二つの機体を抱えると、L4コロニー群がある方面を目指し加速した。

 

主の変貌に悲しみを抱えるかのごとく、ガンダムサンドロックはシャトル内で眠り続けていた。

 

 

 

ビスト財団・ビスト邸

 

 

 

カーディアスとサイアムが現在における情勢を、リアルタイムで閲覧していた。

 

モニターには地球各地にて勃発する連邦とジオン残存軍の戦闘。

 

未だ続くネオジオン同士の内戦。

 

連邦軍やECHOESによるジオン関係者の弾圧。

 

地球圏が知る情報、知られざる情報が映し出されていた。

 

その中で一際目立つ存在があった。

 

デストロイモードのユニコーンガンダムの無双乱舞の映像だ。

 

カーディアスが手を後ろへ組みながらサイアムへと語る。

 

「やはり、目覚めたユニコーンは殺戮マシーンと化しました。この戦闘は正にニュータイプ・デストロイヤーの真髄を見せしめる程の力を振るいました」

 

「そして……互いの内戦か……ネオジオンはここから数年先に逼塞するであろう……」

 

「アクシズも再び地球へ向かい始め……更にはマーサがユニコーンの破壊を目論んでいるとの情報もありました」

 

カーディアスは、閲覧しながら歩き始め、打った策を語る。

 

「恐らくは箱の情報の漏洩を危惧しての事かと……その為、ユニコーンを再び我々の手元に戻す策を取りました。ラプラスの箱は、今後の時代に必須たるもの……現在、所属艦であるネェル・アーガマをこちらに向かわせるようにしました」

 

「ふぅ……真に相応しきニュータイプはいずこ……その日までユニコーンに真の目覚めはないな」

 

 

アクシズが尚も止まることなく地球を目指してより数日後。

 

遂にOZは、その素性を連邦軍の内側から爆発させる。

 

 

 

宇宙世紀0095・12月―――

 

 

 

「全地球圏のOZに告ぐ……これより『プレアデス星団は輝く』」

 

OZ総帥・トレーズ・クシュリナーダの側近であるディセット・オンズの『プレアデス星団は輝く』の発動暗号の下、グリニッジ標準時に合わせ、地球圏規模の一斉蜂起が開始された。

 

オペレーション・プレアデスの発動である。

 

それまで連邦に隣接する形で存在していたOZは、一気にその隣人を殺害するかのようにクーデターを連邦に叩きつける。

 

空陸より、エアリーズとリーオーの大部隊が攻め入る構図が地球全土たる全土の連邦軍基地に拡大していた。

 

数々のリーオー部隊が放つビームマシンガン、ビームライフル、ビームバズーカ、ドーバーガンの射撃が、ジムⅢ、ジェガン、スタークジェガン、リゼル、ロトの各主力機達が次々と攻撃され破壊させていく。

 

空中からもエアリーズ部隊によるレーザーチェーンガンやミサイルランチャーの流星弾雨が降り注ぎ、瞬く間にMS部隊を壊滅させていく。

 

突如の総攻撃に遭い、連邦兵の誰もがパニックに陥いっていた。

 

「OZの奇襲です!!!応戦しきれません!!!」

 

「これはどういうことだ!??OZは一体なんの意図があって……!!?本基地全機のMSを出撃させろぉ!!!!」

 

「り、了解……がぁあっっ!?!」

 

「何!!?ごぁあああっ!!!」

 

リーオー、エアリーズ部隊の総攻撃により、ジェガン、ジムⅢ部隊が次々と撃ち砕かれて爆発していく。

 

ビームマシンガン、バズーカ、ミサイルが激しく飛び交う中で応戦に遅れを生じさせられた連邦サイドは完膚無きまでに攻撃を受け続けていた。

 

側面や背後からリーオーのビームバズーカを食らい、ネモやジムⅡの機体がビームに抉られ爆発。

 

機体を仕留めた直後に、間髪入れずにレフトアームのビームマシンガンと共にビームバズーカを射撃し、ロト部隊を破砕させる。

 

「古き時代は今日を持って終わる!!全機に告ぐ!!!この基地の戦力全てを排除せよ!!!!」

 

別のポイントでは、リーオー部隊が軽快にビームマシンガンを射撃しながらジェガンやジムⅢ部隊に回り込み、次々に撃ち斃す。

 

「これより制圧行動を開始する!!!……!?!熱源……っがぁがぉっ!?!?」

 

その時、空中からリゼル部隊の射撃が注がれ、数機のリーオーが撃ち仕留められて爆発した。

 

この流れにのり、ジェガン、ジムⅢ部隊がロト部隊の砲撃を開始する。

 

しかし、その反撃も僅かな間であり、直ぐにリゼル部隊はエアリーズ部隊の多重射撃を食らい撃墜されていく。

 

撃墜された1機のリゼルが、MS格納庫に墜落。

 

激しく爆発を巻き起こし、数々の兵士達を巻き込む。

 

「反撃の隙すら与えるな!!!新たな時代の為に徹底して破壊する!!!」

 

レーザーチェーンガンの一斉射撃が、リゼル部隊を連続で撃墜する。

 

攻めに転じようとしていたジェガン、ジムⅢ、ロトの部隊も、地上面から大多数の砲撃を受け、連続破砕に朽ち果てていく。

 

リーオーキャノンの部隊が、射撃しながら攻め込むリーオー部隊を後方より支援し、ビームライフルを放ちつつビームキャノンとドーバーガンで砲撃していた。

 

更に空中よりエアリーズ部隊のレーザーチェーンガンの射撃とミサイルランチャーの射撃が注がれる。

 

更なる別の箇所では、アンクシャ部隊とエアリーズ部隊の空戦部隊同士が戦闘状況に展開していた。

 

ガルダ部隊に蜂のごとく群がるエアリーズの部隊。

 

戦況は機動力に長けるエアリーズ部隊が一枚も二枚も上手という現実を見せつけていた。

 

アンクシャ部隊が放つビーム射撃を躱しながら接近し、多方向かつ近距離からのレーザーチェーンガンの射撃で仕留めるエアリーズ部隊。

 

軽い機体に高い機動力を与えられているが為に成せる業だ。

 

無論、この混戦の中で撃ち仕留められ、撃墜されていくエアリーズもいたが、戦況そのものは終始OZのものであった。

 

やがて機首とエンジンに、エアリーズ部隊のミサイルランチャーを撃ち込まれたガルダは、墜落に身を委ね大空の中で爆発四散していった。

 

OZサイドは、反撃する連邦軍サイドのMS部隊に決して有利に換わるカードを渡さなかった。

 

このような光景は、地球全土にある連邦軍施設で巻き起こっていた。

 

ローナン議長をはじめとする連邦政府の要人達もまた、OZのターゲットになっていた。

 

宇宙空港、議事堂、そして連邦政府本部が置かれていたアデレートにもOZの部隊が展開し、リーオー、リーオーキャノンの地上部隊、エアリーズの空戦部隊が攻め込む。

 

友軍扱いであったOZの急襲に対処できず、ジェガンやジムⅢ、スタークジェガンの部隊は一方的な流星弾雨の下に駆逐の限りを尽くされる。

 

次々と撃ち斃されて爆発していく連邦軍のMS達。

 

襲撃するOZの部隊は、その中に巻き添えにするかたちで、要人のシャトルを破壊した。

 

そしてアデレートにおけるエアリーズ部隊の一斉攻撃が、アデレートの連邦政府の議事堂を直撃し、中にいたローナン議長達を巻き添えにする。

 

死の間際、ローナンはかつて幼いリディと遊んでいた記憶が過る。

 

「リディ……」

 

次の瞬間、崩壊するアデレートの議事堂の爆発が鮮やかに拡がった。

 

その瞬間、ローナンの死を感じ取ったかのような感覚をリディは覚えた。

 

「っ……!!!なんだ!?!今一瞬、嫌な感覚が!?!」

 

「どうしたのリディ!?!やっぱりOZへ亡命する事が、あなた自身抵抗が……!!!」

 

「いや、そうじゃない……俺はもう絶ち切れている。今のは違う感覚だった……嫌な予感がおこった時の……」

 

リディは憂いの視線を見つめるミヒロを見ると、目を閉じる。

 

(……今は彼女と生き残り、ゼクス特佐と合流する事が先決だ!!!そう……ミヒロと一緒に、俺を変えてくれた騎士のもとへ行く!!!!皆、許せっ!!!!)

 

再び目を見開いたリディは、ミヒロに囁いた。

 

「すまないミヒロ……今は何としても生き残ろうな……」

 

「リディ!!!」

 

リディはコックピットシステムを起動させる。

 

そして、立ち上がるディスプレイに「Δ」と「Χ」の記号が映し出された。

 

「ガンダムデルタカイ……リディ・マーセナス……出る!!!!」

 

グリップをスライドさせ、ミヒロを乗せたままウェイブライダー形体のガンダムデルタカイでネェル・アーガマを飛び出した。

 

既にネェル・アーガマは攻撃を受けており、ケネスはブリッジで歯を食い縛り続けていた。

 

(OZ……このような行為に出たか!!!恐らくは……同じ事が地球圏規模で起こっている!!!)

 

宇宙においては、宇宙仕様のリーオー部隊とリゼル・トーラスの部隊が各宙域で攻撃を仕掛けていく。

 

メガビームランチャーや、ビームライフルのえげつないまでの一斉ビーム射撃が、連邦サイドの部隊を壊滅へと追い込んでいく。

 

その戦闘で特筆すべきは、リゼル・トーラスに試験的に組み込まれたMDシステムだった。

 

人間の限界領域を超えるコントロールを可能にしたリゼル・トーラス部隊は、超高速でリゼルやジェガンを追撃する。

 

超高速で機体コントロールを演算処理し、メガビームランチャーによる寸分の狂いなき射撃で確実に破砕させる。

 

ジェガン部隊の反撃の射撃も空しく宇宙の中へ吸い込まれ、連続かつ正確な高出力ビームの射撃がジェガン達を瞬く間に破壊し尽くす。

 

クラップ級戦艦に襲いかかるリゼル・トーラスは、メガビームランチャーを駆使し、たった3機で対空射撃にあたっていたジェガン部隊を壊滅させ、クラップ級戦艦を轟沈へ導く。

 

そしてその戦果は、別の領域において更なる拡大を見せていた。

 

グリプス2をめぐる攻防戦である。

 

迫るアクシズを破壊する為に要となるポイントであった。

 

徹底展開するジェガン、スタークジェガン、リゼルのMS部隊。

 

ビームたるビームの射撃が宇宙空間を行き交い、爆発が幾多も発生する。

 

宇宙仕様のリーオー部隊は、ビームライフル、ビームバズーカ、ビームランチャーを駆使して、徹底的に攻撃を仕掛けていた。

 

リーオーは装備するオプションにより、性能の幅を効かせる事が可能なMSだ。

 

重火力ビーム兵器による射撃を駆使すれば瞬く間に戦況は有利となる。

 

だが、メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムが相手では話が別のものとなるのは言うまでもない。

 

しかしながら、現状の彼らのガンダムは潜伏を余儀無くされている為に現時点の脅威ではなかった。

 

リーオー部隊が戦闘展開させる中へ、リゼル・トーラス部隊が飛び込んでいく。

 

プログラムに敵と認識させれた全ての連邦系のMSをターゲットとし、メガビームランチャーによる的確な一斉射撃を開始する。

 

突き進む幾多のメガビームのビーム線が、無数の爆発を発生させた。

 

リミッターカットされた高機動力は、ジェガン系や同じリゼル系の攻撃を全く受け付けない。

 

それまでの常識を超えたリゼル・トーラスの軌道と攻撃を前に、次々とジェガン部隊やリゼル部隊は駆逐され続けた。

 

その戦闘にグリプス2の防衛に撤するエイジャックスの姿があった。

 

ブライトは、妻のミライ、娘のチェーミン、そして行方不明の息子・ハサウェイの写真を手に取り覚悟を決めようとしていた。

 

「今回ばかりは……運が尽きたようだな……これだけの悪条件にOZのクーデター、着任したばかりのトライスター全滅、そしてガンダムがない状況……っ!!!!」

 

攻撃を受け、振動する艦内。

 

「右舷中破!!」

 

「対空射撃装置破損!!!」

 

「後方甲板中破!!!主砲も破壊されました!!!」

 

その時、ブリッジ正面に現れたリゼル・トーラスがメガビームランチャーを構える。

 

MD故、躊躇い無く間髪入れずに射撃した。

 

ブライトは目映い光りの中に、家族とアムロの面影を見た。

「ハサウェイ……アムロ……」

 

エイジャックスのブリッジはビームに抉られ爆発。

 

更に追い討ちをかけるかのごとく、メガビームランチャーの高出力ビームが艦体に多数撃ち込まれ、エイジャックスは凄まじい損傷を受け続けながら轟沈した。

 

 

 

再び地上。

 

元よりOZへ亡命しつつあったオーガスタ一味の所属であったキルヴァとロニは、他のOZ部隊同様に連邦軍に総攻撃を仕掛けていた。

 

キルヴァはΞガンダムのビームバスターとファンネルミサイルを駆使しながら、相変わらずな狂気をむき出しにする。

 

「キヒヒヒヒヒィィィッ!!!たまんねーなぁ!!!駆逐祭り!!!!」

 

つい先日まで友軍機に対し、何の抵抗もなく破壊の限りを尽くすキルヴァ。

 

リゼル部隊やジェガン部隊をビームバスターで撃墜させ、更にはメガビームサーベルを振るい、5機のジェガンを一気に斬り飛ばして見せた。

 

爆発するジェガン部隊の上に浮かび上がるΞガンダム。

 

炎に照らされるその姿は正に悪魔だった。

 

振り返りながらビームバスターを何発も撃ち、リゼルやアンクシャ部隊を連続で射ぬいて撃墜して見せる。

 

「ヒャハハハハハ~……!!!更にいくぜ!!!!」

 

モニター上に視認したネモやジムⅡ、ジムⅢの部隊に向かってΞガンダムを加速させるキルヴァ。

 

ビームバスターを撃ち込みながら何機かを撃破させると、飛び込んだ先にいたネモやジムⅡの部隊にメガビームサーベルを振るいまくり、斬撃の乱舞を巻き起こす。

 

「雑魚の滅多斬り祭りぃぃっ!!!!ヒャハハハハハー!!!!!」

 

キルヴァは感覚と感情に任せるままにMS部隊を蹂躙し、斬り飛ばしては叩き斬り、斬り飛ばしては叩き斬る。

 

Ξガンダムの悪魔的な破壊の前に、連邦の量産型MS達は成す術無く破砕されていった。

 

対し、ロニはビームバスターで射撃しつつも、同胞であった連邦軍に銃を向ける行為に疑問を抱いていた。

 

「同胞に銃を向ける……何とも……苦い行為に思える……同胞に……!!!?」

 

その時、「同胞に銃を~」という自らの言葉に違和感を覚えた。

 

その感覚こそが、これまでの自分の行為だということを彼女の潜在的なモノが訴えた瞬間だった。

 

「同胞……射撃……何かある感覚がする!?!くっ……!!!ぁぁあああああああっ!!!」

 

だがロニは、違和感を押さえ付けるようにして感覚をねじ伏せ、叫びながらビームバスターを撃ち放ち続けた。

 

そしてマーサの急激な予定変更と発案で、マーサとベントナ達は手配していたガルダに乗りながら、とある場所を目指していた。

 

散々な処置を施され続けていたマリーダもまた、機内に待機するカタチで、ガンダムバンシィのコックピット内に待機する。

 

そして、その後ろにはリベイクされた量産型キュベレイが13機配備されていた。

 

この光景を見たマーサは笑いながら自らを評価する。

 

「ふっふふふ……これ程効率よいNT-Dの実験は他に無いわ!!!発案した私自身を評価したいわ!!!うっふふふ!!!」

 

「私も貴女を称えますよ、ミズ・マーサ……しかしながら、更に私が達作ったプルクローンをプルトゥエルブとバンシィの生け贄にするとは!!!場所もまた……ダブリンときている……くっくく、悪趣味でございますなぁ……!!!」

 

「ベントナ……口は慎む事ね……」

 

「はっ……申し訳なくございます!!!」

 

 

 

混迷が地球圏を覆う中、ゼクスはサンクキングダムの上空にその身を存在させていた。

 

オペレーション・プレアデスの一環も踏まえての一世一代の奪還作戦である。

 

トールギスに自らの想いと覚悟を告げる。

 

「私はこの日の為にこの道を歩んで来た……トールギスよっ、今こそお前の力を借り、我が亡国を奪還してみせよう!!!」

 

一方、ヒイロ達はプルの感覚がマリーダを示す方角に進路を向けて向かっていた。

 

オデルはディックやトムラとガンダムジェミナス02の機体セッティングの再調整のやりとりをし、一方でのガランシェールのブリッジでは、その先を見据えながら虚空を見続けるヒイロ達の姿があった。

 

娘よろしくジンネマンに寄りかかるプルの頭をぽんぽんと撫でるジンネマン。

 

そのやり取りに一時だけ笑いながら再び真剣な眼差しで前を見るアディン。

そして腕組みしながらその鋭い眼差しの先に振り返りながら微笑むマリーダのイメージを見るヒイロがいた。

 

(マリーダ……囚われているのならば必ず助け出す……マリーダの為に行動する……それが今の俺がやるべき任務だ!!!)

 

ヒイロはその先に迫る覚悟に静かなる闘志を抱き続けた。

 

 

To Be Next Episode





発動したオペレーション・プレアデスは地球圏規模の激震を拡げていく。

だが、それは戦闘と言うよりも蹂躙に近いものであった。

リディはOZとして、新たなガンダム、デルタカイを駆って出撃し、アクシズの戦闘に介入する。

キルヴァ、ロニ、トラント、ミューラ、アレックスもまた各域で攻撃を押し進める。

そしてゼクスもまた、トレーズと共に連邦に占領された故国・サンクキングダムの奪還にこれまでの全てをかけて身を投じる。

地球圏に激動の時代の濁流が流れるその一方で、マーサとベントナの思うがままに翻弄されるマリーダは、ダブリンでNT-Dによる模擬戦という名の戦闘実験に加担してしまう。

次々と量産型キュベレイを破壊し、苦悩しながら理不尽な罪を重ねていくマリーダ。

遂にヒイロ達が迫る時が来たが、既にマリーダは絶望的な淵に立たされていた。

だが、極限の果てに奇跡の声が囁く。


次回、新機動闘争記 ガンダムW LIBERTY

エピソード22 「サイレント・ヴォイス」


任務……了解っ!!


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