新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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エピソード20 「仮面の対決、再び」

トールギスとシナンジュ。

 

OZとネオジオンの仮面の男同士が銃を向け合う。

 

互いに笑みを浮かべるゼクスとフロンタルは同時にその引鉄を引き、ドーバーガンとビームバズーカ・ランチャーの高出力ビーム渦流が放たれた。

 

双方は激しくぶつかり合い、高出力エネルギー同士の反動爆発を起こして相殺し合う。

 

目映い爆発の向こうより互いに飛び出す2機。

 

先にシナンジュが単発式にビームバズーカ・ランチャーを放つ。

 

対するトールギスは、バーニアの加速でこれを回避し、同じく単発式にドーバーガンを放った。

 

「ふっ……奇しくも互いに同じ攻撃か……!!!」

 

ゼクスはダブるフロンタルの攻撃方法に妙な感覚を捉え、攻撃を躱す。

 

「OZの白い閃光……ライトニング・バロン……私と同じ攻撃をするか……!!」

 

フロンタルもゼクスと同様の感覚を覚えながらドーバーガンのビームを躱すと、トールギスへと加速した。

 

同時にシナンジュがレフトアームのソード形状のビームトマホークを構える。

 

トールギスも加速し、ビームサーベルを取り出してシナンジュにぶつかる勢いで加速した。

 

「赤い彗星の再来!!!実にコルシカ以来だッッ……!!!」

 

「OZの白い閃光!!!」

 

 

ギャギガァアアアアアアアッッ!!!

 

 

激突するトールギスとシナンジュの刃が目映いスパークをはしらせ、二人の仮面を照らす。

 

 

 

ギャギガァアアアアアアアッッ!!!

 

 

 

「骨のある剣撃……やはりこうでなくてはな……!!!づぁあああああっっ!!!」

 

「おぉおおっっ!!!」

 

 

 

ヴィギッ、ギャァアアアアッッ、ザガギィイイイイイ!!!

 

 

ギャインッッ、ヴィギギギギギギィイイイッ……ギャギィヴィイン、ザジュギィィッッ!!!

 

 

 

ゼクスとフロンタルは気迫の声を上げながら何度も互いに斬撃を打ち合い、機体同士を激突させるような軌道でネオジオン同士が火花を散らす宇宙(そら)を駆ける。

 

一旦刃を捌き合った両者は大きく弾くように離れ、再びその刃を重ねる。

 

フロンタルは通信をトールギスへと向けた。

 

そしてこの時、二人は初めて互いの仮面の姿を見る。

 

「OZが武力介入とはな!!しかもほぼ単機とくるか!!」

 

「我々は独断行動の特権があるのでな……私の心情的に黙ってはいられなかったのさ……!!!」

 

会話の合間にビームトマホークを捌き、腕と胸部に斬撃を打ち込むトールギス。

 

対し、シナンジュは再度ビームトマホークで受け止めてみせる。

 

「……貴君も伊達や酔狂で仮面を着けているわけではないのだな。なかなかの……手強さが伝わる!!!」

 

ビームライフル数発をトールギスとの至近距離で放つフロンタル。

 

だが、トールギスはバスターランスの刀身でこれを受け止めた。

 

バスターランスの材質はガンダニュウム合金、即ちGND合金で製造されている。

 

故にビームライフルではびくともしない。

 

ゼクスはバスターランスの反撃と共に、自らの仮面に触れる事を言ってみせる。

 

「私とて、シャアの真似をしているわけではないさ。語りはしないがこの仮面には着けている以上の、それ相応の理由があるのでな……!!!」

 

「ふっ……私はプロパガンダのつもりでこの仮面をしている。故に私自身をシャアの再来、あるいは亡霊として、宇宙の民の想いを受ける器と規定しているのだよ!!!」

 

宇宙の民の想いに答え受け止める器。

 

フロンタルは自らをそう戒めていた。

 

だが、今彼の周囲には、彼のやり方に謀反を起こしたネオジオンのMS達が展開している。

 

ゼクスには器と言う言葉が虚しく聞こえた。

 

「宇宙の民の器か……その割には随分と想いが溢れているな。所詮貴様はシャアの紛い物か!!?」

 

「何!!?」

 

その言葉にフロンタルは大きな憤りを覚える。

 

刃を交わすトールギスの背後では幾多の爆発が起こっては消え、起こっては消えている。

 

ネオジオン同士の総滅戦。

 

認めたくない現実とプライドがフロンタルに去来する。

 

「認めたくないものだな……!!!」

 

フロンタルの感情を表すかのような縦横無尽の軌道の激しい斬撃が、トールギスへと打ち返される。

 

そして、2機は再び弾き合いながら流星のごとき軌道を描いてぶつかり合う。

 

その激突し合うゼクスとフロンタルの行動を見ながら、アンジェロは親衛隊達にその戦いのなんたるかを覚らせる。

 

「親衛隊の諸君。大佐はあのOZのゼクス・マーキスと剣を交えておられる。だが、それは至高の対決。決して手は出すな!!我々は我々の敵……謀反を犯した者達の粛正に務める!!!」

 

「了解!!」

 

アンジェロの命令の下、親衛隊のギラズールが散会し、ローゼンズールと共に反目するネオジオンサイドのMSへと攻撃を仕掛け展開する。

 

親衛隊機達のビームマシンガンの高速ビーム連射が、謀反を犯したネオジオン兵に撃ち込まれる。

 

中でも屈指の生真面目さを持つセルジ少尉、キュアロン少尉の機体がビームマシンガン、シュツルムファウスト、ビームトマホークを駆使して積極的に攻撃する。

 

「フロンタル大佐は、深いお考えがあっての行動をされてきた!!!宇宙の民達を誰よりも考えていらっしゃるのだ……!!!」

 

セルジ機の旋回しながらのビームマシンガンの射撃が、ドラッツェ、ガザDを撃ち墜とし、加えて放ったシュツルムファウストを躱して迫るギラドーガにビームトマホークの刺突を斬り混む。

 

キュアロン機はシュツルムファウストを連続で射出し、ズサ2機、ギラドーガ1機を破砕させる。

 

ビームサーベルを取り出して迫るバウにも、シュツルムファウストを放ち下半身を破砕させた。

 

バウは上半身のみでも機能する為、そのまま斬撃を浴びせ迫る。

 

キュアロン機はそれにビームマシンガンを撃ち込み、粉々に破砕させてみせた。

 

ネオジオン同士が再びアクシズをめぐっての内乱に投じていく。

 

ムサカ級やエンドラ級の艦隊同士の砲撃戦が宇宙を駆け、MSや対する戦艦を撃って爆発を連鎖させる。

 

その間を縫うようにMSが駆け、射撃戦を展開。

 

更に爆発の範囲を拡大させていく。

 

互いに同じ組織を削り削ぐような嵐のようなその光景にはネオジオンの変革よりも、終焉を予感させてしまうものがあった。

 

レウルーラのブリッジ内で、ライル艦長がそれを危惧してならない中で指揮を下す。

 

「今だ謀反者達の規模がわからん!!攻撃をかけるMS機影には対空射撃応戦せよ!!メガ粒子砲撃も断続して続けろ!!」

 

展開される激戦に視線を送り、ライルは危惧の思惑をつのらせる。

 

(この宙域にはネオジオンの主勢力がいた……そこに謀反者達の勢力が入り込んだ……このまま戦闘が続けば、いずれにせよ組織存続に打撃が及ぶ……!!!)

 

ライルは目に写る撃破され、撃破するMSを見ながらフロンタルにかつてのハマーンを重ね、シャアを改めて想う。

 

(かつてのハマーンもグレミーの勢力に謀反を許し、自滅していった。この戦闘が続けばフロンタル大佐も同じ一途を踏みかねないな……対し、シャア総帥は……決して謀反をさせはしなかった……否、謀反を抱かせるような考えは決してなかった!!!)

 

ライルは起こる状況に悔しさを重ねながら、手を握りしめた。

 

(パラオを始めとする資源衛生民のネオジオンは過激な行動は望んでいなかった。フロンタル大佐は……それを全く汲まない……否……加担した私も同じか……!!!)

 

ネオジオンが再び分裂した理由は、最初のオペレーションに身を投じた兵を捨てゴマのように扱ったフロンタルの姿勢、当初の残存軍支援からコロニー落とし等に目的がすり替えられた事、その過激な行動が更なる連邦やECHOESによるジオン系スペースノイド排除体制を拡大させたことにあった。

 

特に風当たりが厳しくなった平和を懐く穏健派のネオジオン勢に大きな不信を買った事が大きな事実であり、それはECHOESの治安維持を名目にした殺戮にも繋がっていた。

 

彼らは既に、かつてのアクシズ落としをシャアの行動の功績と共に人としての過ちと認識しており、平和を望みながら自治権確立を夢見ていた。

 

だが、フロンタルはコロニー共栄圏という自治権確率を飛び越えた考えを持っており、それは地球を支配さえせずに切り捨てるという考えであった。

 

そこへ更にダイクン派、ザビ派、両統合派の側面も相まってこのような状況を招いてたのも事実である外なかった。

 

今、ネオジオンにかつてない存続の危機が襲いかかっていた。

 

ネオジオン勢力のガタつきは、戦闘域から距離を置いて地球圏に配信される。

 

レウルーラのモニターに、オペレーターからの報道の知らせと合わせて、客観視点の戦闘情景が映し出された。

 

「ライル中佐!!民間報道でこの宙域の模様が地球圏に……!!!」

 

そこに映し出された光景は、想像以上の範囲に渡る戦闘宙域の映像を映し出していた。

 

ライルは改めて今、ネオジオンが二分していることを悟り、自身の中でかつてのハマーン時代のネオジオンを彷彿させていた。

 

「ふ……本当に……ハマーンとグレミーの二の舞のようだな……!!!」

 

ビームがはしり、爆発が無数に絶えず発生する宙域の戦闘光景は最早、戦争以外の何物でもなかった。

 

エンドラ級の砲撃がムサカ級を轟沈させ、ムサカ級の対空射撃にギラドーガが撃たれ破砕。

 

バウがモノアイを光らせながらビームサーベルを取り出してギラズールに斬り込み、斬撃を浴びせ撃破する。

 

ギラズール、ギラドーガがビームマシンガンを連射しながら迫り、ガ・ゾウム、ガザD、ズサを撃破しながら駆け抜ける。

 

ビームトマホークを振り回すドライセンの大振りがドラッツェとガルスJを斬り飛ばし、そのドライセンにビームマシンガンを放ちながらギラドーガが突っ込む。

 

そして、撃たれながらドライセンは三連ビームキャノンを放ち、ギラドーガを粉砕。

 

だが、ギラドーガがドライセンに突っ込み、誘爆を巻き起しながら2機は爆炎を巻き上げながら破砕。

 

ドーベンウルフのビームランチャーの砲撃が、軸線上の幾多のMSを破砕せ、更に連続砲撃しながらエンドラを轟沈させて見せる。

 

ギラズールとギラドーガによる撃ち撃たれの射撃戦が展開し、撃破する者、される者とがひしめき合う。

 

その最中、アンジェロのローゼンズールが、有線式アームメガ粒子砲を巧みに撃ちながら、かつての友軍機のギラズールやギラドーガ、バウ、ガザC、リゲルグ、ドラッツェを容赦せずに破壊する。

 

更に対峙したザクⅢに対し、シールドメガ粒子砲を至近距離からぶちかまし、モノアイを発光させながらバウとギラドーガにアームクローを打ち込むように刺突させた。

 

そして、零距離のアームメガ粒子砲。

 

「元」友軍機達の爆発を背に、ローゼンズールはアンジェロの激しい感情を乗せながら華麗に飛び出す。

 

「大佐を裏切る者、反旗を翻し者達は……万死に値する!!!覇ぁあああ!!!」

 

ギラドーガ数機が、自在に動くローゼンズールのアームクローによりズタズタに引き裂かれ、次々に爆砕する。

 

爆発の火中にローゼンズールは爆発に照らされながら、その姿に威圧を放った。

 

「大佐のお考えこそが!!!コロニー共栄圏思想こそが!!!スペースノイドの未来を繋ぐ考えなのだ……!!!」

 

アンジェロは戦闘領域に目を送り、目頭を血走らせた。

 

 

 

アフリカエリア上空・ガランシェール

 

 

 

ガランシェールの船内の一室で、遂に眠っていた戦士、ヒイロが八ヶ月以上に渡る眠りから目覚めていた。

 

駆けつけたアディンと軽く拳を突き合い、アディンは感情を熱くさせながら讃える。

 

この状況下にあっての戦友の死の淵からの復活は、喜ばしいことこの上無かった。

 

「ヒイロっ!!!待ちくたびれたぜっ!!!心配かけさせやがってー!!」

 

「ふん……」

 

拳をかざし合ったヒイロも、不敵たる余裕の笑みを口許に浮かべていた。

 

「一時はもう植物人間のままもう目覚めねーかと思っちまったんだかんな!!!ったくよー!!!」

 

「……俺は簡単にはくたばったりはしない」

 

「へへっ……らしいぜ、ヒイロ!!」

 

アディンの隣にいるプルも、手作りスープを手にしながらヒイロの復活を喜んでいた。

 

「アディンも、あたしもみんな心配ずっとしてたんだよ。あたし、合間、合間でヒイロの看病もしてたんだから♪」

 

「そうか……感謝する」

 

「ありがとう☆でもマリーダじゃなくてゴメンね☆ふふ♪だって、目覚めていきなりマリーダって叫んだんだから、ビックリしちゃったよ」

 

「な……!!?」

 

プルのその発言にヒイロは珍しく動揺した。

 

それを見たアディンはからかわずにはいられなかった。

 

「さっすが、マリーダ命!!!じゃー、マリーダいなかったら気力なくなってて死んでたかもな~ヒイロ!!」

 

「アディン……後でお前をコロス」

 

冗談か否かヒイロはアディンに鋭い視線を突き刺して、殺人宣告をしてみせる。

 

「ジョークだ、ジョーク!!!ムキになんなよな!!!相変わらずナイフみたいなヤツだな!!」

 

「はいはい、いきなりケンカしない!!はい、ヒイロ!プルが作った特製スープだよ~。さっき作ったばかりなんだぁ♪」

 

プルはヒイロとアディンの間に入りながら、プル特製スープをヒイロにすすめる。

 

既に部屋にはスープの香ばしい香りが立ち込めており、二人の食欲を促していた。

 

「そうか、悪いな……」

 

「いいな~ヒイロっ!!俺も飲みてーよ!!」

 

「ふふっ、アディンのもあるから!妬かなくてもいーよ☆」

 

「い!?!妬いてない!!!俺は単に食欲が……!!!」

 

「えー?プルに感情の隠しゴトは効かないよ☆えへっ、なんか嬉しい♪」

 

「っ~……!!調子狂うっ!!」

 

プルはニュータイプ故に相手の感情が直ぐにわかる。

 

アディンは何気にプルに対する感情に変動が起こっていた。

 

アディンとプルは既に半年と数ヵ月をオルタンシアで過ごしてきた。

 

毎日に及んでのプルからの好き好き攻撃を受けていれば、ある意味それは自然な流れだ。

 

するとヒイロは、かつてのアディン・ロウからの言葉を今のアディンに告げる。

 

「アディン……感情に従え。それが正しい人の在り方だ。素直に認めろ」

 

「ひ、ヒイロまで何言い出すんだよ!!むおー!!!」

 

「……俺がかつて、別のアディンという男から習った言葉であり教訓だ。感情で行動し、道を選ぶ。俺自身、そう生きてきた」

 

以前マリーダにも伝えた言葉を、奇しくも同じ名のアディンに伝えた瞬間だった。

 

「感情で行動する……って、俺二人目!??」

 

「アディン、言うトコそこじゃない!!」

 

プルに突っ込まれ、アディンがわいわいしているその間に、ヒイロはプルに手渡された特製スープを頂く。

 

(……うまいな)

 

オデルもスープを飲むヒイロに向け、仲間として復活を讃える言葉を贈る。

 

「ここへ来ての復活……よく生死の堺を闘いきったな、ヒイロ!!!流石だ!!!」

 

「……称賛の言葉など俺にはいらない」

 

「ふ……それもそうだな。だが、連絡がつかないカトル達に知らせたらまたとない朗報だぞ、ヒイロ。それだけお前は必要とされて、慕われてる事を忘れるなよ」

 

「あぁ……了解した……それで、ここはどこだ?」

 

ヒイロの質問にアディンは手を頭の後ろで組みながらひょうひょうと答えた。

 

「ネオジオンの偽装貨物船、ガランシェールの中さ。マリーダの仲間の船だ」

 

「マリーダの仲間!??」

 

「あぁ。色々あって結託したんだ。マリーダを無事この船に帰すまでの用心棒みたいなヤツとしてな」

 

ヒイロの脳裏に以前マリーダから聞かされていた彼女の仲間についての話が蘇る。

 

ヒイロは頻りにマリーダを意識していた。

 

その感情を察知していたプルが、重態だったヒイロを船に乗せた理由を切り出した。

 

「ふふっ、それでマリーダが見つかった時の事を考えて、ヒイロを乗せてもらうようにも頼んだんだよ♪直ぐにお互いが会えるように!」

 

「あ、そうそう!!ヒイロのMSも乗せてあるんだぜ!!ハワードのおっちゃんとラルフのコネで手に入れたエアリーズだけどな!!」

 

「エアリーズ……」

 

「エアリーズといっても、ハワードチームのカスタマイズが施してあるらしいぜ!!」

 

普通であればヒイロを気遣い、戦闘するのを止める筈であるが、アディン達はそうはしなかった。

 

腕組みしながらオデルも答える。

 

「ヒイロの事だ。俺達が安静を薦めて言っても、決して聞かずに戦闘するだろうと思ってな。だから用意しておいた」

 

「……オデルの言う通りだ。俺は如何なる状況、状態でも闘う。制止すれば退ける。俺の機体を用意してくれた事にも感謝する。だがその前に……」

 

「あん?なんだ、ヒイロ?」

 

ヒイロは、アディン達に自らの状況と周りの状況把握をオデルに要求した。

 

「……俺は一体どれ程……俺が意識を失っている間に俺達の状況は、世界情勢はどう動いた?説明してくれ」

 

「あぁ、そうだな。説明しよう……」

 

ヒイロはスープを飲みながら、オデルからこれまでの情報を聞いた。

 

世界情勢、現在の自分達の状況、これからの目的……ヒイロが必要とする情報を洗いざらいに取り入れた。

 

「……第三次ネオジオン抗争の激化、ECHOESの超法規的な殺戮、ネオジオンの分列、デュオ達と思われるガンダムが香港のスペースポートを強襲……そして今俺達はマリーダの仲間と結託して行方不明になったマリーダの捜索を続行しながら宇宙も目指している……か……了解した。それでマリーダの手がかりは何か掴めているのか?」

 

ヒイロは状況を把握し、マリーダについてオデルに質問するが、ため息混じりで現実の回答をするにとどまってしまう。

 

「いや……残念だが、明確なものは掴めていない。この船のお仲間さん達も半年以上も見つけられていないときている」

 

「そうか」

 

未だ手がかりを掴めていない状況。

 

硬く動かない時間にもがいている感覚にみまわれていた。

 

「でも、実はあたし……段々とマリーダの感覚を感じるてきてるんだよ……マリーダは地球にいて、今のあたし達からずっと西の方にいる……!!」

 

だが、プルのその一言がその硬い時間に変動を生じさせる。

 

彼女がガランシェールに乗船したことが、マリーダ捜索に関する進展の兆しが見え始める瞬間を迎えたと言っても過言ではない。

 

プルは確かにマリーダの感覚を感じていた。

 

ヒイロとアディン、オデルはプルのその言葉に驚きと期待を覚える。

 

「何?!!」

 

「マジか、プル!??」

 

「確かなのか!??」

 

「うん……ついさっきから予感っていうか、マリーダの感じが増してきてる!!マリーダの感じがずーっと西の方から伝わってくるんだよ。でも……一緒に嫌な感じもする……何か黒いような重いような……暗い何か……」

 

彼女の独特な感性表現があるが、それらは洗脳され、負の感情に支配されたマリーダやベントナを指していた。

 

ニュータイプの感覚が示す目に見えない手がかり。

 

通常ならばあしらわれて終わることが多々のようであるが、アディン達はプルの力を信頼しているが故に、余計な言葉を挟む事はなかった。

 

プルのその言葉を信じ、アディンは早速プルと共にジンネマン達へ告げにいく。

 

「進路を西の方に!??」

 

「ああ!!プルがそう感じているんだ!!少しは進展の可能性があると思うぜ!!」

 

「さっきから西の方にマリーダの感覚を感じているんだよ、パパ!!まだ弱いけど、段々感覚が強くなってくる……!!」

 

パパと呼ばれ、ジンネマンは一瞬引き締まった表情が崩れかけるが、直ぐにまた引き締めてフラストに現在位置の情報を要求した。

 

「(パパ……!!!)むぅ……フラストっ、現在位置はどのあたりだ!??」

 

「現在位置はアフリカエリア・ガルダーヤ上空です!!」

 

「ガルダーヤか……周辺におけるMSの機影はあるか!?」

 

「索敵します!!」

 

その指示に、フラストは航路上及び周辺の情報を索敵し始めた。

 

フラストが索敵操作をするその隣で、操舵を握っていたギルボアが、思い出したかのように言う。

 

「そういえば、ガルダーヤはかつてのネオジオン抗争でネオジオンが現地のテロリストと共に強襲した街と聞きますよ」

 

それを聞いたフラストは、操作しながら補給提案を出す。

 

「そう考えると寄りづらそうだが、現在は復興し、貿易やら補給やらを受け持っている街。ここいらで一旦補給という手も」

 

「何言ってんだ、フラスト!!この船じゃ着水はできても着陸は極めて難しい!!機体の破壊に繋るぞ!!!」

 

「しかし……そろそろ食料やその他の物資も尽きて来る頃だと思いますよ。この前もクッキー作ろうと思ったんですが、ちょっとやめときましたよ」

 

ギルボア曰く、ガランシェール内の物資は無くなってはいないが、気を抜いていれば近々底を尽きかねない状態だった。

 

それを聞くや否や、料理熱心なプルが飛び付いた。

 

「えぇ!?ギルボアさんてクッキー作るの~!??今度教えて~!!!あたしも作りたい!!!」

 

「あぁ!!教えてやるよ~!!ね、キャプテン?プルもそう言ってますよ?」

 

ギルボアのその言葉と、クッキーを作りたがっているプルの視線を浴び、ジンネマンはいてもたってもいれず、許可せざるを得なかった。

 

「~……っっ、許す!!!心に従えい!!!ギルボア!!お前の操舵の腕にかける!!」

 

(おいおい……話が、目的があからさまに脱線してんすけどー!!!)

 

アディンの心の突っ込みが入る中、ジンネマンが破れかぶれに言い放った直後に、フラストから良からぬ報告が言い放たれた。

 

「あの……盛り上がってるところ悪いすけど、連邦がが、ガルダーヤを占拠しているようです。ここは大人しく通過すべきかと思いますよ」

 

あろうことか、今は連邦軍がガルダーヤを占領していた。

 

あるエリアを除き、連邦軍が地球のエリアを占拠するのは極めて異例の状況であった。

 

「むぅ……物資……マリーダ……はっ!!?えぇい!!話が脱線していた!!フラスト、ここから西方角に何らかの重要なポイントはあるか!??」

 

話の流れを修正したジンネマンの指示に、フラストが素早く操作する。

 

するとメインモニター上のマップに、二ヵ所のポイントが算出された。

 

ダカールとオーガスタ基地だ。

 

「あぁ、はい!!ざっと見ると……―――概算の延長線でダカールとオーガスタが算出されました!!プルが言ってる感覚ってのはきっとこのあたりだと思われます」

 

ダカールもオーガスタ基地も、マリーダに関する可能性が高い場所。

 

最もダカール基地は、いの一番に調べたが、戦力が至らず撤退したポイントであった。

 

ジンネマンがここからの行動を考える中、突如通信が入った。

 

「ガルダーヤ上空を通過中の船舶に告ぐ!!ここは連邦の占領下だ!!速やかに降下し停船せよ!!繰り返す!!速やかに停船せよ!!さもなくば撃墜する!!」

 

ジンネマンは頭をかかえながら、フラスト、ギルボアは苦笑いしながらやれやれと言わんばかりに首を振る素振りをする。

 

すると、ジンネマンはアディンとプルに出撃を頼んだ。

 

「アディン……軽く下の奴等を掃除してきてほしい。プルはサポートしてあげなさい。無茶はするな」

 

「へへ、お安いご用!!もう逃げ隠れはしないかんな!!!キメルぜ!!!」

 

「わかったよ、パパ!!プルも行ってきます!!プルプルプル~!!」

 

二人は張り切ってブリッジを後にする。

 

すると、フラストが寝そべりながらジンネマンに聞く。

 

「いいんですか?プルを戦いに突き動かしてしまって……」

 

「マリーダ同様、本人の意思を尊重したまでだ。誰も戦いに娘を送り出して心配できないわけないだろ?」

 

「娘のやりたいようにやらせる……か」

 

「キャプテン、娘とくれば本当甘いすからね!!ま、俺も娘いるから解ります。しかし、甘々も程々にされた方がよろしいかと……」

 

フラストとギルボアの二人からの口攻撃を受け、ジンネマンはあたけるように言い放った。

 

「や、やかかましい!!!そこはほっとけっっ!!!」

 

だが、走りながら移動していた矢先にプルは突如頭を抱えて歩き始める。

 

「うっ……!!!なんか……急に嫌な感じがしてきた!!!あの街は……ガルダーヤは……!!!」

 

「どうしたんだ!?プル!!?」

 

「う……ん……ただ今から向かう街、すごく嫌な人達が集まってて……更に一杯悲しみが溢れてる……」

 

プルは急に嫌な感覚をガルダーヤに覚えていた。

 

共に駆けていたアディンも止まり、負の感応を示してるプルが心配になる。

 

「おいおい、大丈夫かよ!??無理すんなよ!!!」

 

「どの道、ガランシェールが攻撃されちゃうし、嫌な感覚放ってる人達も許せない!!!大丈夫だよ!!アディン!!!あたし達で街を解放してあげなきゃ!!!」

 

「そうか……しゃあっ!!!キメてやろうぜっ!!!」

 

MSデッキに移り、ジェミナス担当メカニックであるディック・ヒガサキと、ガランシェールのチーフメカニックであるトムラが3機を送り出す。

 

「はりきりだな!!アディン!!ちゃんと彼女をサポートしてやれよ!!」

 

「ディックさんよ~……サポーターはプルだぜ!!それに彼女じゃねーし!!」

 

「ははー……この期に及んでまだ言うか!!まーいーや、PXはくれぐれもリミットオーバー解除させるなよ!!!それこそ自爆だぞ!!!」

 

「この期に及んでって……はぁ、無闇に使わないよ。それにGマイスターなら自爆覚悟はあるぜ!!!」

 

その時、アディンに突如としてヒイロからの通信が割って入った。

 

ヒイロは自らデッキに赴いてきたのだ。

 

「ならばお前に忠告する……」

 

「ヒイロ!??おいおい、目覚めて間もないけど大丈夫なのかよ!??」

 

「痛みなど、精神で体を凌駕すればいい。だがな……自爆は死ぬほど痛いぞ」

 

「……死ぬほど痛いって……へへ、ははははは!!なんか変に説得力あんぜ!!!」

 

「せいぜい気張ってみせろ、アディン」

 

「言われるまでもねーって!!アディン・バーネット、キメルぜ!!!」

 

一方、トムラがプルにキュベレイMk-Ⅱの機器についてレクチャーする。

 

「プロト・ミノフスキークラフト……まぁ、飛行装備って言うのかな?作動は正常だ。ファンネルとかのサイコミュはプルの感応データから改めてレベル調整しておいた!!」

 

「了解、ありがと!!エルピー・プル、行くよ!!!」

 

「じゃあ、ハッチ、開けるぞ!!いいかい、ディックさん!?」

 

「OK、トムラ!!オデル!!二人のお守りよろしくな!!ジェミナス、キュベレイ、テイクオフ!!」

 

「お守りか……ま、確かにな。弟と妹だ……オデル・バーネット、出る!!!」

 

ガランシェールのゲートハッチが開き、ガンダムジェミナス・バーニアン01、02、キュベレイMk-Ⅱが投下される。

 

各機はガランシェールを飛び出すように降下し、突き放つように機体に加速をかけて翔んでいった。

 

ヒイロは風に吹かれながら見下ろすと、代用機体のエアリーズを見つめる。

 

(……武装はロケットランチャーにビームガトリング、レーザーチェーンガン、そしてプロトバスターライフルか……)

 

機体の隅々に目を配りながらいたヒイロにディックが気づいたが、重症だった体に対して平然としているヒイロに驚きを隠せなかった。

 

「ヒイロ!!?おいおい、大丈夫なのか!??」

 

「ディック・ヒガサキ……」

 

駆け寄るディックをフルネームで呟くと、ヒイロは再びドラグナーに視線を向ける。

 

すると駆け寄ったディックは危惧した意見を溢した。

 

「ダメだろうが!!!安静にしとけって!!!」

 

「止めても無駄だ……これ以上俺に安静は必要ない。それにこの先にマリーダがいるかもしれない……エアリーズはロールアウトしているのか?」

 

ディックはやれやれと言わんばかりにため息とどうじに帽子のツバをいじり、機体のおおよその解説をした。

 

「はぁ……ま、解ってはいたが言っても聞かねーな!お前は!ロールアウトは済んでるよ!武装は初期のバスターライフルを装備させておいた。やはりヒイロが乗るからにはそっちの方がらしいってな!」

 

「感謝する。だが、今回は出す必要は無さそうだな」

 

「どこぞの基地を制圧するわけではないからな。目覚ましたばかりだ。機体共々次に備えておけよ!」

 

「あぁ、言われる間でもない」

 

ヒイロは、そう言うと黙々と新たな機体のセットアップ作業に手をつけ始めた。

 

自分の機体は自分で手を施す。

 

実際に強い痛みを伴う状態であったが、ヒイロ自らが言っていたように、気力で痛みを耐えていた。

 

 

 

一方、ガルダーヤを占拠していた連邦軍のジェガンやジムⅢ部隊がガランシェールから降下した機影を視認し、対空迎撃行動に移る。

 

「警告を促した船舶からMSの機影を視認!!」

 

「迎撃に移る!!ここは連邦の占領下……最も治安維持の名目を被った欲求ぶちまけ場だけどな!!!」

 

連邦軍の一部の者達は、貯まった欲求をガス抜きするために、民間施設をターゲットにする者達がいた。

 

自分達の欲求のみを満たす遊び場感覚であり、上層部も見て見ぬふりをしているのが現状である。

 

暴力・強盗・窃盗・強姦等が無法に許される人道外れたエリアと化していた。

 

ジェガンのパイロットが対空迎撃行動に移る最中、その降下する機影の正体を視認する。

 

「!??ニュータイプ機……!??更に……が、ガンダムだと!??」

 

驚きは隠せない。

 

想定を凌駕する存在が現れたのだ。

 

だが、彼等は対空迎撃を続行する。

 

「か、構わん!!対空迎撃、開始!!!」

 

ガルダーヤの街からMS部隊による数多くのビームやミサイルが一斉に放たれる。

 

ガンダムジェミナス・バーニアン01、02、キュベレイMk-Ⅱは容易く攻撃を掻い潜って攻撃を仕掛ける体勢をとった。

 

その最中にオデルが先行するアディンとプルに、街を考慮した指示を出す。

 

「アディン、プル!!街中で戦闘はマズイ!!滑空しながら街の外へ飛び出して敵機を陽動!!!戦闘は極力街中を避けろ!!!」

 

「あいよ!!!」

 

「了解!!プルプルプルプル~!!!」

 

各機は三方向へ滑空しながら、ガルダーヤの街を駆け抜ける。

 

機体を翻しては、軸自転しながらの操縦をして見せるプル。

 

オーガスタにおいても訓練をしてきた為か、体の一部のようにキュベレイMk-Ⅱをコントロールする。

 

「キュベレイには中らないよ!!!ファンネル、お願い!!!」

 

キュベレイMk-Ⅱの尾にあたるファンネルコンテナからファンネルが射出され、射出されたファンネルは追撃するジェガンやジムⅢを一斉に撃ち始める。

 

 

 

ドドドダダダシュゥウウウウ!!!

 

ズズズズドドドゴヴァアアアン!!!

 

 

 

ビームは一寸の狂いなく機体群を撃ち抜いて無力化へと導く。

 

ファンネルはその後、個々にビームで敵機の装甲を砕き、キュベレイMk-Ⅱに追従しながら飛行する。

 

「引き付けてから仕留めたげる!!!みんなついてきちゃってよ♪」

 

プルの思惑通りにジェガンやジムⅢがビーム射撃をしながらキュベレイMkⅡを追撃し始めた。

やがて郊外に出ると、キュベレイMk-Ⅱは右手首のハンドランチャーを取り出してビームサーベルの刃を発動。

 

接近してきていたジェガンを振り返りながら薙ぎ斬り払う。

 

「それっ!!!」

 

 

 

ザガシュゥウウウウッッ!!!

 

ドゴバァアアアアアアアアアッッ!!!

 

 

 

「やぁあっ!!!」

 

 

ジュギャガァアアアアアアッ!!!

 

ズダァガギャァアアアアアアアアアッ!!!

 

 

 

更に降られたビームサーベルの斬撃に、もう1機のジェガンが斬り裂かれ爆発四散。

 

更にキュベレイMk-Ⅱはレフトアームのハンドランチャーとファンネルのビーム射撃を同時に一斉に放った。

 

「ファンネル達!!!みんなで一斉に!!!」

 

4機のジェガンと、同じく4機のジムⅢの機体達は、瞬く間にビームに撃ち砕かれ、機体を崩壊させるように砕け散り、爆発していった。

 

「なんか、ホントに嫌な感じしかしてこない……っ、見えるよ!!!」

 

キュベレイMk-Ⅱの背後から斬りかかろうとしたジェガンに、ファンネルのビームが撃ち抜き、更にビームサーベルの斬撃により斬り飛ばす。

 

「あたしには全て見えてるんだよ!!やぁっ!!!」

 

今発揮しているプルのニュータイプ能力は、先から先を次々に予知し、戦闘に対応させていた。

 

それと同時にこの地に蔓延る連邦兵士達の邪なものがプルの感覚を刺激させる。

 

「この連邦軍……ここの住民の人達にスゴくヒドイコトをしてる……ここの人達の悲しみも伝わってくる……」

 

プルは瞳を閉じながら、自らのニュータイプの感覚を集中させ、ガルダーヤに染み込んだ悲しみを感じ取る。

 

遊び半分に射撃の的にされ虐殺された者達、欲望のままに弄ばれた挙げ句、非人道な虐殺を受けた女性達、目の前で両親を射殺され、暴行を受けた子供達、守るべき者の為に抵抗し、逆に殺害された者達……語り尽くせない程の負の感覚がプルに押し寄せた。

 

ガス抜きと称された許されたものではない連邦兵士達の諸行。

 

「苦しさ……悲しさがスゴい……とても許せない!!!キュベレイ!!こんな悪いやつらはやっつけちゃおうっ!!!」

 

プルの感情を表現するように展開していった各々のファンネルが、ビームを撃ち放ちながら連邦軍の野戦キャンプ施設や起動前のMSを狙い、一斉に雨のよううに乱れ撃つ。

 

「この街の人達の分のお返しだよ!!!」

 

プルの感情を籠めたファンネルの射撃は、町に被害を与えるコトなく連邦軍を仕留め切った。

 

彼女の高いニュータイプの力が成せた技だった。

 

一方、アディンは誘き出したジェガンやジムⅢの射撃攻撃を躱しながら、反撃に転じようとしていた。

 

アディンがモニター上に捉えた敵機群にアクセラレートライフルをロックすると、ガンダムジェミナス・バーニアン01もそれに合わせアクセラレートライフルを構える。

 

「今は連邦の連中が占拠かよ!!ったく!!自分達のエリアの地球で占拠とか意味あんのか!??」

 

 

 

ヴィギリリリ……ヴヴヴァアアアアア!!!

 

ジュゴアアアアッ、ゴバババゴォオオオオオッッ!!!

 

 

 

唸り放たれた小規模のビーム渦流がジェガンと2機のジムⅢを破砕させる。

 

アディンはその一発を皮切りにしてアクセラレートライフルを連発。

 

中出力のビームが狙い撃ったジェガン、ジムⅢの各機の上半身部を吹き飛ばす。

 

ネモⅢ3機がビームキャノンを放ち、ガンダムジェミナス・バーニアン01へ直撃させる。

 

「やったか!??」

 

「油断するな!!!奴等のガンダムならばこれしきでは……!!!」

 

ネモⅢのパイロットが危険を促した瞬間に、爆発地点からガンダムジェミナス・バーニアン01が舞うように飛び立った。

 

「キメるぜ!!!」

 

ネモⅢのパイロットは対空攻撃へと移り砲撃を開始する。

 

「やはりか!!!撃て!!!撃てぇ!!!」

 

ビームキャノンのビームがガンダムジェミナス・バーニアン01を再び直撃するが、その爆発の中からガンダムジェミナス・バーニアン01が両眼を発光させた。

 

その直後にアディンは、ロックしたネモⅢに向けアクセラレートライフルのビーム渦流を撃ち放った。

 

 

ヴィギュヴァアアアアア!!!

 

 

 

「な!??がぁあああああ!!!」

 

 

 

ヴァズガァアアアアアア!!!

 

 

叩き潰すようにネモⅢ3機を破砕。

 

更に飛び立ちながらミサイル攻撃を敢行するスタークジェガン2機に対し、ガンダムジェミナス・バーニアン01は旋回軌道を描いて下方に回り込み、アクセラレートライフルを撃ち放つ。

 

斜め下から迫るビーム渦流がスタークジェガン2機を抉り飛ばし、激しく爆砕させた。

 

「隊機殲滅完了!!だが、長居はできねーな。兄さんは!??」

 

 

 

ジャキッ、ヴィギリリリリリリィ……ヴヴァダァアアアアアッッ!!!!

 

 

 

アディンがオデルに呼び掛けた時、ガンダムジェミナス・バーニアン02は、アクセラレートライフルの高出力射撃を放っていた。

 

 

ドッドドドゴゴバァッッ、ヴァズグディガァアアアアアアアアッッ!!!

 

 

 

迫り来るビーム渦流が、一撃でスタークジェガン2機、ジェガン4機、ジムⅢ3機を駐屯施設拠点諸とも爆砕・消滅させた。

 

ターゲット消滅をモニターで確認を取ったオデルは、そこでアディンに返答を返した。

 

「こちらオデル。たった今駐屯施設を破壊した!!そこ以外に連邦軍の兵士の判別は生態センサーに反応しない。制圧はできたな!!」

 

既にガンダムジェミナス・バーニアン02は敵機を殲滅完了していた。

 

一部の連邦軍に占拠されていたガルダーヤは、アディン達の行動により、電撃的に制圧が解除された。

 

その状況をガランシェールの船内通路からヒイロは見ていた。

 

「やはり短期でケリが着いたか……当然と言えば当然だな……くっ!!」

 

ヒイロは自爆の痛みを堪えながらその場を後にすると、通路の先にマリーダの姿を浮かべる。

 

彼女との出会いはGマイスターである生き方を選んだヒイロにとって特別なものになっていた。

 

兵士として生き、任務に生き、戦いに生きる。

 

同じ存在感に惹かれずにはいられなかった。

 

行方不明の彼女を探す手掛かりは、現在姉であるプルの感覚に掛かっている。

 

ニュータイプの力頼りではあるが、今はそれが最もな道筋だ。

 

かつその力が力だけに期待も高まる。

 

視線の先に今ある事を集約し、ヒイロは決意を新にした。

 

「マリーダを探し、この船に帰す。それが今の俺の任務になる……その次は俺達を追い詰めたECHOESを叩く!!だが、根本の任務はOZ打倒に他ならない……!!!」

 

 

 

北米・オーガスタ基地

 

 

 

オーガスタ研究室の所長室で、ベントナにアナハイムのある関係者からの特命の連絡が入いり、事の動きが新たな流れを見せようとしていた。

 

「な、何ですと!??プルトゥエルブを!?!」

 

驚愕と動揺を露にするベントナの連絡先には、民間MS工業メーカー・アナハイムのカーバイン社長婦人であり、ビスト財団のサイアムの妹、マーサ・ビスト・カーバインの姿があった。

 

「えぇ。事態は一刻を争います。事態が変わる前に手を打ちます。ユニコーンがOZの手にわたる前にユニコーンを破壊します。ラプラスの箱の存在は我々以外に知られる訳にはいきません。手掛かりは潰さねばなりませんのですよ」

 

「しかし急に申されても……!!」

 

「我々も既にOZの一部……これを期に箱を永遠に封印するの!!!まずはバンシィとプルトゥエルブをよこしなさい!!!ふふふ……プルトゥエルブ……その人形は私色に染め上げてあげます。近日中に伺いますわ」

 

マーサとの連絡を終えたベントナは、早速プルトゥエルブの施しの準備を始めるべく、彼女のいる研究室に向かった。

 

プルトゥエルブは一人調整室で裸のまま拘束されており、身体中にネオグリフェプタンの投与器が刺さったまま放置されていた。

 

半ばベントナの趣味の世界も入っていた。

 

「くっ……月の女帝め……!!!プルトゥエルブをも自分のモノにする気かっ!!!」

 

躍起になったベントナは、強引にネオグリフェプタンの投与器をプルトゥエルブから引き離し、器具を床にぶつけまくる。

 

「うくぅあああああっ……!!!」

 

プルトゥエルブは強引に引き抜かれた部分からの激痛に目覚め、痛みの余りに悶絶する。

 

「っ……!!!くぅぅあああ……!!!」

 

「悲しい知らせだ~……マスターを変更する運びになったぁー……だからおわかれなんだなぁ……ひひひひ……!!!」

 

「かはっ……!!!」

 

ベントナはプルトゥエルブに迫り、深い接吻を与えた。

 

「よって……今からはわたしの気が済むまで奉仕をしてやる!!!お前には女性の機能はなぁい……!!!好きにさせてもらうぞぉ……!!!わかったかぁ!??」

 

「はい……マスター……」

 

プルトゥエルブは身を委ねざるを得なかった。

 

ベントナとの通信を終わらせたマーサは、データベースに手をつけていた。

 

そのデータベース上には新たなガンダム、「ガンダムデルタカイ」のデータが記載されていた。

 

「現在リディ少佐がユニコーンを乗っている……彼は箱に関わるマーセナス家の嫡男。下手な事があると面倒ね……代わりの機体を予定させましょう。ビスト財団の党首である兄さん諸ともユニコーンを破壊する運びに……!!!ふふふ!!!」

 

マーサの狙いの絵には更なる思惑が描かれていた。

 

ユニコーンをデルタカイと交換するかのようにビスト財団に戻し、戻ったユニコーンをラプラスの箱の秘密を知るビスト財団の党首・サイアムと共にビスト邸ごと破壊するというものであった。

 

マーサは妖しいまでの笑みを浮かべながらデルタカイのデータを閲覧する。

データベース上のガンダムデルタカイは、既にOZの傘下になったアナハイムの月面工場にて既に形となっていた。

 

傍らにはドクターJ達やペルゲが関係者と共にいた。

 

ドクターJ達は捕虜扱いの為、手錠が嵌め込まれていた。

 

「新たな機体、ガンダムデルタカイ。この機体に我々の技術を移植させるとのことだ……くっくく、やっとお前さん達も魂を売るか!!狂ってるの~!!!」

 

「ふん!!お前に言われたくはない!!!お前の方がよほど狂っておるわ!!!」

 

本心から魂を売ったペルゲに対し、遺憾を露にして反発するドクターJ。

 

プロフェッサーGはそれに続くように持論を吐露し、半ばペルゲを肯定する。

 

「左様!!だが、人間大いに狂って結構!!!この機体にGNDドライヴや『ZERO』のシステムを組み込む事もな!!!やれることはやる!!!好きに利用するがいい!!!」

 

OZはメテオ・ブレイクス・ヘルの博士達の功績を評し、利用価値を見出だしていた。

 

プロフェッサーGは表向きな発言をペルゲにぶつける。

 

「くっくく……何と言おうと負け犬の老人集団だ。何とも思わんよ……」

 

彼らの技術をOZの内部に注ぎ、主に武装面においてのMS体制の絶対的なる変革を図り、その思惑は既に右肩上がりに進んでいた。

 

その現れとして、アスクレプオス、ヴァイエイト、メリクリウスの開発・配備やECHOESのMSの武装強化がある。

 

前者のスペックは既に7機のガンダムの性能を上回る数値を叩き出しており、パイロットであるトラント、ミューラ、アレックスの戦闘能力が模擬戦闘を重ねる毎に卓越したものになっていった事もその要因であった。

 

模擬戦闘中、彼らの所にネオジオンの内乱の情報が入り、アスクレプオスのコックピットのサイドモニターにその情報が表記される。

 

その情報を読み取ったトラントは、ミューラとアレックスにその情報を促した。

 

「ミューラ、アレックス!!何やら面白い状況になっているぞ」

 

「なんすか?突然。模擬戦闘中っすよ!」

 

「面白い状況って一体……!?」

 

「ふっふふふ……共通回線だ。お前らも見てみろ!!この近くの宙域だ。俺達は運がいい!!ネオジオンの連中が身内同士でもめ事をおこしている……!!!」

 

情報はOZ共通の通信回線から回っており、既にヴァイエイトとメリクリウスのモニターにも表示されていた。

 

「へぇ……なら、大事の前の余興……どうっすかね!??」

 

ミューラは楽し気に、にんまりとした表情を浮かべながらトラントに軽く考案の発言をする。

アレックスもまた便乗するように名乗り出る。

 

「こちらアレックス特士~……この機会に機体の実戦テストを奨めたい考えがありまーす!!!」

 

トラントは、ふっと口許に不敵な笑みを浮かべるや否や二人と模擬戦闘テスト監視をしていた部隊に通信を送った。

 

「……我々は本時刻を持ち、これより実戦テストに移行する……大事の前に備えた実戦も必要と判断した為だ。ミューラ、アレックス両特士!!ネオジオンの戦闘宙域に向かうぞ!!!」

 

「了解!!!」

 

二人は即答で機体を加速させ、飛び立つアスクレプオスに続く。

 

「お、おい!!!何を勝手に……!!トラント特尉、戻れ!!!」

 

制止を呼び掛けるテストデータ班の部隊長の声に、トラントはOZの特権を押し付けた。

 

「我々はいつ如何なる時も独断の判断で動ける……違うか!??」

 

「トラント特尉……!!!」

 

すぐに通信は切れ、瞬く間に3機は戦闘宙域に向かって行った。

 

トラントは得意気な表情で機体を更に加速させる。

 

彼らの思惑はデータ計測やテストではなく、単に蹂躙駆逐を図ろうとしていた。

 

それは騎士道から逸脱した狂気の行動だ。

 

最早キルヴァ寄りの概念に近い。

 

過ぎた力は時に人の人格的なモノを歪ませる。

 

それは一人の純粋故に歪んでしまった少年にも及んでいた。

 

地球から飛び立ったカトルは、L4コロニー群にあるウィナー財団のラボを目指していた。

 

シャトルの自動航続設定の作業を進めながら、高まる力への期待と同時に狂気を膨れ上がらせていた。

 

「くっくく……ふふふ……!!!必ず、必ず!!!破壊してみせるよ……連邦のガンダム、いや!!ボクが敵と認めた全てをね!!!そしてロニを取り戻すんだ……!!!」

 

その狂気に囚われたカトルを追うガンダムデスサイズとガンダムヘビーアームズの姿があった。

 

デュオは概算座標を基に、機体を向かわせる。

 

「PX使ったら一定エネルギーまで溜める必要がある。しばらくはまともに戦闘できないぜ……で、どうする?トロワ。もし本当に今のカトルがゼロを動かしちまったら間違いなく破壊に及ぶぜ」

 

「確かに今のカトルならばやりかねない。というよりもカトル自身がゼロシステムの指示に呑まれた生態ユニットになってしまう……!!!」

 

「そうなったら……まずL4のコロニーっつーコロニーが消えるな。きっと……!!!」

 

「今現在も途中での戦闘や拿捕も有り得る。PXの為のエネルギーが溜まり次第、通常加速で追う!!」

 

「あぁ!!なんとしても御曹子お坊ちゃんの暴走を止めなきゃな!!!それに、例のECHOESの連中も何処にいるかわかんねーかんな!!!あーと……五飛、聞こえっかー!?おい、五飛ー……」

 

デュオが遅れて飛び立った五飛に通信を送るが、五飛は普段から音信不通が当たり前のスタイルをとっている。

 

故に返答の期待は半分である。

 

「何だ?」

 

モニターに五飛の顔が表示され、直ぐに返答が来た為、デュオは逆に風の吹き回しのような感じにとってしまう。

 

「おぉ!!こんなこともあるんだな!!逆に変だぜ……」

 

「何だ!?つまらん話なら切るぞ!!」

 

「つれねーな~勘弁してくれー……あー、嘘、嘘!!今俺達はL4に向かって体制の建て直しとカトルの暴走を止めるような方向で動いているんだが五飛はどうする!??」

 

「俺は俺達の悪、ECHOESを叩く!!!お前達はお前達で動け!!俺は単独で転戦する!!!」

 

「あたっ……~っ、結局かよ!!!」

 

「俺は常にその姿勢だ!!!俺の戦いの信念はテコでも動かんぞ!!!」

 

デュオは結局いつもの単独転戦の肩スカしを五飛に食らった。

 

頭をかきながら、言っても聞かない五飛に善戦を祈り託す。

 

「へいへい……やっぱそーなるか……わーった、わーった!!!ほんじゃぁ、ま……そっちは任せるぜ!!けど、何かありゃ言えよな!!」

 

「ふん……何かあればか……早速例の奴らを見つけた……行くぞ!!!」

 

「マジか!??おい、五飛!!!」

 

あろうことか通信中に五飛は戦闘に突入した。

 

五飛の発言からして十中八九ECHOESだ。

 

デュオもここから先に至っては必要以上の警戒を余儀無くされる。

 

「ECHOES……遭遇しかねないってか!!!厄介だなっ、たくよー!!!」

 

「四面楚歌という言葉があるが……その状況に俺達は正に晒されている……しかし、どのような状況にあれ俺達は闘うだけだ」

 

トロワは改めてGマイスターの姿勢を語った。

 

一方、五飛は遭遇したECHOESジェガン部隊目掛け、シェンロンガンダムを突撃させていく。

 

彼らはネオジオン系の居住区のある資源衛生に破壊行為を仕掛ける寸前の状況にいた。

 

シェンロンガンダムはビームグレイブを片手で振り回しながら、敢えてビームの集中砲火を正面から浴びながら斬撃を振るう。

 

 

 

ザガギャアアアァッ、ッドバォガァアアアアア!!!

 

ドヴィン、ドヴィン、ドヴィン、ドドドドゥゥ……ドガゴアアアアアアッ!!!

 

 

 

「ちぃ……!!!」

 

擬似GNDドライヴのビーム攻撃はダメージと衝撃をシェンロンガンダムに与えた。

 

直撃部は僅かだが焦げて傷が発生していた。

 

五飛は爆発の衝撃を耐え忍ぶと、ビームグレイブをECHOESジェガンに向けて刺突させる。

 

 

 

ザァシュドォオオッッ!!!

 

 

「覇ぁああああ!!!」

 

ECHOESジェガンを突き刺したまま、別の機体へ叩きつけ、素早くビームグレイブを抜き取り、2機のECHOESジェガンをまとめて斬り払う。

 

 

ザァシュバァアアアアアアンッッ、ヴァズガォオァアアアアアッッ!!!

 

 

 

シェンロンガンダムの力強い攻めの攻撃。

 

そこにはメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムの闘う姿勢があった。

 

しかし、ECHOESジェガンとロトはシェンロンガンダムを囲むように集中砲火を浴びせる。

 

ビームバズーカ、ビームキャノンの嵐。

 

シェンロンガンダムはそれらの爆発と衝撃を掻い潜りながら現れ、ロトにビームグレイブを串刺しにし、突き刺したまま斬り払う。

 

その斬撃は側面側にいたロト2機を一気に斬り払った。

 

「これがECHOES……口ほどにもない!!!」

 

だが、その時、ロトが特殊なミサイルを連射。

 

シェンロンガンダムに着弾すると共に、モニターをはじめとする各計器類が異常を出し始めた。

 

「何だ!??」

 

そのミサイルはECHOESオリジナルの計器類等の電子機器を狂わせる特殊ミサイルだった。

 

モニターの映像が乱れ、ロック・オンも断続を繰り返す不調をきたした。

 

その間に、隊長機らしきジェスタが、ビームサーベルを振りかざし、シェンロンガンダムに斬撃を浴びせる。

 

それでも斬るに至らないが、強化されたビームの斬撃は僅かにダメージを蓄積させる。

 

更に援護射撃の集中砲火が重なっていく。

 

「ふふふ……ECHOESよ……強いな……!!!汚い戦法で相手を陥れる……」

 

五飛は一身に攻撃を受けながら瞑想を始めた。

 

シェンロンガンダムの装甲には幾多のGNDエネルギービームが注がれ、その鋼の戦士は度重なる爆発に包まれていった。

 

 

 

アクシズ・ネオジオン内乱宙域

 

 

 

ネオジオン同士での戦闘が激化する中、トールギスとシナンジュは尚も刃をぶつけ合っていた。

 

振るい振るわれる斬撃は、互いの装甲に触れさせることなく繰り返される。

 

二度弾き合いながらの斬撃がぶつかった時、力は拮抗した。

 

「……赤い彗星の再来。これ程までに決着が着かぬとはな……!!!」

 

「私はネオジオンの器だ!!こんな所ではまだ終らんよ!!!」

 

ビームサーベルを捌き外し、ビームバズーカランチャーを近距離より撃ち放つシナンジュ。

 

スレスレでビームを躱し、ビームサーベルでビームバズーカランチャーを斬り落とすトールギス。

 

ビームバズーカランチャーの銃身は爆発。

 

その反撃にと言わんばかりにシナンジュは蹴りを繰り出し、トールギスのレフトアームのバスターランスを弾き飛ばした。

そこから再度互いの刃をスパークさせながら、機体を激突し合うように激しいぶつかり合いの加速軌道を描く。

 

斬撃は斬り払い、袈裟斬り、唐竹の斬撃がきめ細かい組み合わせで打たれる。

 

2機は、アクシズの外壁に突撃し、外壁面をスレスレに駆け昇るように駆け抜け再びぶつかる。

 

「シャアが成せなかった衝撃を地球にぶつけ、そしてスペースノイドのみが有利に立てる世界、コロニー共栄圏の実現へ向かうはずだった!!!」

 

「だが、これでは最早振り出しに近いな、フロンタル!!!貴様の器量の結果ではないのか!??」

 

「またしても貴様っ……!!!」

 

フロンタルは歯軋りし、トールギスに向けてシナンジュの蹴りを繰り出すようにコントロール。

 

 

 

ディガァアアアアアアッ!!!

 

 

 

「うぉおおおおっ―――……がはぁああっ!??」

 

トールギスは大きく吹っ飛ばされ、アクシズの外壁に激突した。

 

だが、ゼクスはトールギスの殺人的なGに耐える男だ。

 

衝撃を耐え抜き、直ぐにトールギスの機体体勢を整えさせ、バーニアの出力を利用した蹴りを繰り出させた。

 

「……っ、倍返しとでも言おうか!??覇ぁああっ!!!」

 

 

 

ドッッォオオッッ―――ガズドォオオオオッッ!!!

 

 

 

「―――っ!??」

 

シナンジュの蹴りを上回る衝撃を、フロンタルはシナンジュと共に一身に受け、声を上げる間もなく外壁に接触しながら吹っ飛ばされ、挙げ句にはアクシズの核パルス部に突っ込んだ。

 

一方、この戦禍に向けてユニコーンガンダムが、ネェル・アーガマより出撃体勢に入る。

 

展開する全天式モニターに各情報が表示され、その映し出される光景には、手前から奥面に至るまで爆発の華が咲いては消え、咲いては消える空間が広がる。

 

リディはその嵐のような光景に視線を突き刺し、艦内に残るミヒロを気遣う。

 

「ミヒロ……今はこの戦禍に持てる力を尽力させよう。例の話はまた後で言う」

 

「うん……了解。ちゃんと帰ってきてくださいね……」

 

「了解!!ユニコーンガンダム、リディ・マーセナス!!出る!!!」

 

カタパルトからユニコーンガンダムが高速で飛び出し、僚機のリゼルやスタークジェガン部隊も飛び出していった。

 

その光景を見ていたケネスが心の中で呟く。

 

(もし……第一次ネオジオン抗争の時に彼らのような勇者がいれば戦況は違っていただろうな……今は彼らの姿勢に賭けるべきだな。勇ましい模範と言える……)

 

ネェルアーガマより発艦したリディは、モニター上に、次から次に出会すネオジオンのMSを流れるようにロックする。

 

機体を反転させ、後方に吸い込まれていくギラズールやギラドーガにビームマグナムとビームバズーカを撃ち込む。

 

チャージされた高出力ビーム弾と高出力ビームが2機の胸部を抉り貫いて破砕させる。

 

バウやドライセンの部隊も三連ビームキャノンやビームライフルを放ちながら迫り来る。

 

その間にリゼルやスタークジェガンの部隊が散開し、ガザDやギラドーガ、ガルスJの部隊に攻撃を仕掛ける。

 

ビームの火線が行き交い、両者側の何機かが撃墜された。

 

その時、ユニコーンガンダムに灰色のヤクトドーガが迫り、ファンネルで攻撃を仕掛ける。

 

「出たな、ニュータイプ!!!俺は認めはしない!!!所詮、宇宙都市伝説だ!!!」

 

昂るリディの感情に呼応するように、ユニコーンガンダムのNT-Dが発動。

 

リディのコックピットシートが変形し、NT-Dモードへと移行する。

 

そして、機体の各部を変形させ、瞬く間にデストロイモードへと変貌を遂げた。

 

ファンネルの攻撃をIフィールドで弾いた上で、ユニコーンガンダムはファンネルの主導権を掴み、ヤクトドーガのファンネルをジャック。

 

ビームをコックピットに一点集中させるように放ち、ヤクトドーガを自らのファンネルで破砕させる。

 

そしてビームバズーカを3機のドライセンに撃ち込む。

 

破砕爆発し、バラバラになったドライセンを突き抜け、バウ4機にビームマグナムを一発、一発撃ち込み、機体を抉り飛ばした。

 

更にその弾道を掠めたギラズールやガルスK、ゲルググ、重装ギラドーガ、ガ・ゾウム、ドラッツェを次々に爆砕させ続ける。

 

高速で躍動しながらビームマグナムを連発するユニコーンガンダムの姿は正に鬼神のような攻めを見せていた。

 

ザクⅢの放つメガ粒子砲も全く受け付けず、至近距離からのビームマグナムで豪快に破砕させ、リゲルグとドーベンウルフの攻撃も躱し、ビームバズーカをドーベンウルフに押し当てる。

 

これも至近距離からの射撃で破砕。

 

リゲルグにはビームマグナムを食らわせ、後方にいたギラズールとギラドーガと共に撃破した。

 

「……そうだ……俺は新たな時代を築く兵士となる……古い膿は今ここで排除する!!!」

 

リディは嵐の戦禍を駆け抜け、出会う敵機を次々に撃破していく。

 

その勢いを止める機体は現れない。

 

「この戦域のネオジオンは……今ここで全て駆逐する!!!ユニコーンガンダム!!!ニュータイプデストロイヤーの真髄を示せ!!!」

 

リディはロックしたサイコドーガ6機に襲いかかり、ビームマグナムとビームバズーカで次々に破砕させた。

 

一方のミスズは、リゼル・トーラスを駆りながらネオジオンの機体を撃破し、同時にゼクスに気を向ける。

 

「ゼクス……フロンタルとの決着はまだ着かないのか!??」

 

ゼクスは尚もフロンタルと刃を交え続け、アクシズの外壁面で激突を繰り返し、互いの仮面にスパークを照らす。

 

戦い続けるシナンジュはヘッドユニットを損傷し、トールギスはシールドのジョイントを切断されていた。

 

2機は刃を交わしながら間合いを広げて対峙し合い、フル加速駆け抜けながら、抜刀斬撃の刃をぶつけ合う。

 

「おおおおおっっ!!!!」

 

 

 

ザジュガァアアアアアン!!!

 

 

 

重なりあった斬撃の気迫の末、トールギスのライトバーニアとシナンジュのライトレッグが激しく斬り飛ぶ。

 

「フロンタル……!!!」

 

「ゼクス……!!!」

 

互いの機体を損壊し、ゼクスとフロンタルは流星のごとく対決の場を駆け抜け、二人の仮面の男達は戦闘から互いの機体への辛酸を食い縛りながら離脱した。

 

その頃、歴史の裏から静かなる激動の気配が動いていた。

 

オペレーションプランを手にしたディセットとトレーズが、ルクセンブルクOZ総本部の一室から街の景色を見ながら語る。

 

「一人一人の行動が歴史を作る……これから始まる激動のOZの働きもまた歴史を変える。古き体制は我々が正さねばならない」

 

「しかし、トレーズ閣下!!自らまた戦場に赴くのは危険すぎると私は……!!!」

 

「覚えておきたまえ……戦いにおいて律儀を忘れてはならない。上に立つ者こそが前線でその剣を振るうのだ……」

 

「トレーズ閣下……!!!はっ!!!」

 

オペレーション・プレアデス発動までのカウントダウンは彼らの目の前で流れ始めており、宇宙世紀に革命が起こる日は目前に迫っていた。

 

 

 

To Be Next Episode




ネオジオン同士の激戦の嵐が止まない中、リディ駆るユニコーンガンダムは伝承のユニコーンのごとく戦場で暴れる。

そのユニコーンに、一輪の紫の薔薇が鋭利なトゲをかざして迫る。

時を同じくし、OZのトラント、ミューラ、アレックス達はOZの新型機でアクシズの戦闘に介入し、猛威を振るう。

重なる激戦に遂にフロンタルは撤退を選択する。

ヒイロ達はガルダーヤを後にする中で、ジンネマンの過去やプル達に関する話を聞く。

ヒイロ達は改めて今を戦う意義を確認する一方で、囚われているマリーダに更なる屈辱と苦痛が襲う。

一方、ゼクスやリディにはOZの新たなオペレーションの流れが始まる。

過去の戦乱の残り火が立つ中、OZは新たな歴史の動きを起こす。


次回、新機動闘争記ガンダムW LIBERTY

エピソード 21「オペレーション・プレアデス、発動」


任務了解……!!!


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