それは愚行を繰り返す連邦に反目する一部のコロニー居住者達が、独自に開発したガンダムで、地球連邦軍の施設や部隊に攻撃を仕掛ける反抗作戦であった。
ヒイロが駆るコロニーのガンダムの1機・ウィングガンダムは連邦の部隊を圧倒的な火力で掃討し、地球へと降下する。
その最中、敵を同じくするネオジオンのオペレーション・ファントムとも重なり、マリーダが駆るクシャトリヤと邂逅した。
だが、マリーダは戦時中のマインドコントロールの影響で、ウィングガンダムを敵と認識して襲いかかるのだった…
ウィングガンダムとクシャトリヤが、反発し合ってもつれ堕ちていく。
広大な空に堕ちゆく2機のMS。
厳密に言えば、クシャトリヤがウィングガンダムを下へ押し付けるように組み合って加速していた。
ウィングガンダムのバインダー出力が抵抗するが故に、2機の軌道がいびつになりながら空を駆け抜ける。
マリーダは、憎悪に満ちた感情でクシャトリヤを操る。全てはかつてのネオジオンが組み込んだ洗脳効果の後遺症であった。
「ガンダムは敵っっ!!!」
組み合ったまま、マリーダはクシャトリヤのメガ粒子ブラスターを至近距離で放つ操作を始める。
マリーダは完全に過去の柵(しがらみ)に取りつかれていた。
皮肉にも、敵を同じくしたウィングガンダムがそうさせてしまったのだ。
至近距離でメガ粒子ブラスターがチャージされ始めた。
GND合金といえど、このクラスの攻撃を零距離で喰らえばダメージは免れない。
「っ!!させるか!!」
ヒイロは即座に判断し、これに対してウィングガンダムの両肩に取り付けられたマシンキャノンで対抗する。
固定式のマシンキャノンの銃口から至近距離で高速連射される弾丸。
クシャトリヤの装甲面で連続爆発を発生させる。
「ぐっっ……!!」
牽制兵器とは言え、ウィングガンダムのマシンキャノンは、ジェガンを容易く粉砕させる威力を持つ。
その衝撃にクシャトリヤは怯んだように離脱する。
クシャトリヤの胸部からはその威力を物語る黒煙が出ていた。
離れた2機であるが、互いに機体を翻して体勢を整える。
ウィングガンダムはバスターライフルを左手に持ち替え、シールドに格納されたビームサーベルを取り出した。
振り払われたビームサーベルユニットからはライトグリーンのビームの刃が形成される。
対し、クシャトリヤも手首に格納されたビームサーベルを取り出した。
同じくライトグリーンの刃が形成される。
2機は互いにぶつかるかのように加速する。
振りかざした両者のビームサーベルが激突。
激しい稲妻のようなスパークを発生させた。
目映いエネルギーがぶつかり合い、金属を溶かすかのような音を上げて両者を照らす。
力強く拮抗するウィングガンダムとクシャトリヤ。パワーはほとんど互角であった。
一瞬の隙を突いて、ビームサーベルを捌くウィングガンダム。素早い動きで次の一撃を振るう。
再び激突するビームサーベル。
クシャトリヤも素早い動きで対応してみせる。
その状態から機体を翻して更に一撃を振るうウィングガンダム。
互いに何度もビームサーベルを激突させ合う。
ビームサーベルを交わせ、2機は数秒間拮抗する。
その隙に再びクシャトリヤはファンネルを射出し、ウィングガンダムの背後を捉える。
狙いはウィングバインダーであった
ファンネルが一斉にビームを放つ。
火線がはしり、爆発の衝撃がウィングガンダムを襲う。機体の剛性が桁外れな反面、衝撃は機体の内部に響く。
「っ…!!」
攻撃が直撃した直後にエラーアラートが鳴り響いた。
モニターにウィングバインダーの異常を警告していた。
「ウィングバインダー出力異常……流石はニュータイプだな……ウィングバインダーの出力口を狙ったか!!」
次第にクシャトリヤの質量に押され始めるウィングガンダム。
これに伴い、クシャトリヤは再びウィングガンダムをホールドした。
マリーダは、ウィングガンダムをそのまま自ら諸とも海に沈めるつもりであった。
「堕ちろ!!!ガンダム!!!」
クシャトリヤの加速と共に、ウィングガンダムに凄まじい加速Gがかかる。
加えて地球の重力が2機を一気に海面へと引きずり込む。
「くっ…!!!」
「くぅぅっっ……ガンダムは……斃すっっ!!!」
耳を痛ませる甲高い高速音を発生させながら、2機は海面へと叩きつけられた。
これ程の加速Gと海面に叩きつけられた衝撃は、生半可なものではない。
凄まじい海水の水柱を巻き起こしながら、ヒイロとマリーダを乗せた2機は海底へと沈んでいった。
その頃、世界各地でコロニーの意志を携えた者達が舞い降りる。
カナダ・地球連邦バンクーバー補給基地。
バンクーバー沖に面した地球連邦軍の大規模な補給基地の一つ。
この基地では、連邦軍の主な補給物資(兵士達の食糧、兵器のパーツ等)を生産・提供・保管・運送を行っている。
今も尚、各地で展開されるジオン残党との紛争において、要の一つであった。
基地や基地の周辺では、月下の元で警備にあたるジェガンやジムⅢの姿が見られる。
「この辺りか?隕石が落下したというポイントは?」
「ああ。この辺りだ。だが油断するなよ。例の反乱分子かもしれん」
「無論だ」
基地周辺に隕石落下の報告を受けて調査に来ていたのだ。
無論、彼らは不足の事態にも備えて警戒する。
案の定、間もなくして彼らに異常な現象がふりかかる。
「しかしい……は…らん…し……」
「あ?何言ってるか解らん!!」
ノイズが突如混じり、通信が乱れる。
ついには通信が不能なまでになり、ノイズに支配される。
さらにモニターまでもが乱れ始めた。
「くそ!!なんなんだ!!通信ができん……!!」
その時だった。月下に照らされた謎のMSが姿を見せる。
そのMSは宙に舞い、鎌の刃のようなビームサーベルを振るいかざした。
「な!!?なんだあれは!??」
ビームの鎌をかざしたMSが、空中から一気に舞い降りる。そしてモニターから消えた。
「消えた!??一体な………ヴぁがはっ―――」
ビームの熱で金属を斬り裂く音と共に、パイロット諸ともコックピットが焼灼された。
そこには黒いガンダムが死の鎌を振っていた。
斜めに寸断されたジムⅢが爆発を起こす。
そしてその爆発の炎に照らされたガンダムが姿を見せた。
振り返りながら不気味に光る両眼(メインカメラ)が、 連邦兵を更なる恐怖を駆り立てる。
BGM 「黒い風が死へ誘う」
≪XXXG-01D ガンダムデスサイズ≫
通信が困難になっていたのは、ガンダムデスサイズが放ったハイパージャマーが影響を及ぼしていた。
ガンダムデスサイズの両肩に装備されており、通信障害を発生させる粒子の一種を左右へ放つ。
「が、ガンダムだと!??バカな!!連邦の英雄とも言えるはずの………否………こいつは悪魔か!?!」
連邦兵がそう言い放った直後にガンダムデスサイズは、大きくジェガンを斬り上げた。
死の鎌・ビームサイズ。
ガンダリウムを容易く切断する程の出力を持つ、ガンダムデスサイズのメインウェポンだ。
ジェガンの斬り上げられた機体が爆発する。
炎の中で、佇むガンダムデスサイズ。
まさに死神だ。
「悪魔じゃない……死神さ」
その時、遅れてジムⅢ小隊が現場へと駆けつけ、ガンダムデスサイズに向かい、ビームライフルやミサイルランチャーの攻撃を放った。
「おわっと!!?」
コックピットに響く衝撃。
ガンダムデスサイズにビームが着弾。
更にミサイルが直撃し、爆発が徐々にデスサイズを包む。
ミサイルが幾度も直撃して、ガンダムデスサイズを爆煙が包む。
3機のジムⅢは、撃破を確信して攻撃の手を緩めた。
立ち込める爆煙……次の瞬間、これを突き破るようにガンダムデスサイズがビームサイズを振りかざして飛び出す。
「そらよぉっっ!!!」
ザシュバァアアンッ―――!!!
一瞬の出来事であった。
横一線の一振りで3機のジムⅢがビームサイズの餌食となり、無惨に斬り飛ばされた。
3機まとめて爆発を起こし、巻き起こる爆発音も三重に響き渡った。
「さて、挨拶は終わりだ。いこうか相棒。初仕事はこっからだぜ」
デュオは、不敵に呟くとバンクーバー基地へとガンダムデスサイズを赴かせた。
ビームサイズを握り加速するデスサイズ。
そのスピードと加速力は他のMSの一線を画していた。
補給基地では、基地のMSの反応が消えたことで基地のMSが、一斉に警戒にあたっていた。
ジェガン、ジムⅢの小隊が一斉展開する。
その中へとガンダムデスサイズが威風堂々と突っ込む。
加速しながら、ライトアームを引き締めて片手でビームサイズを構える。
「でやぁあああっ!!!」
突っ込む勢いでビームサイズを斬り払い、ジムⅢ2機を斬り飛ばす。
そこから機体を次のターゲットへ反転して斬り払う。
ジェガンの胸部を寸断し、その奥にいるもう1機のジェガンへと更に踏み込む。
レフトアームに装備された棺桶を模したようなバスターシールドを展開させ、先端からビームの刃を形成させた。
そして殴り込むようにジェガンを刺突。
ジェガンは胸部を中心に爆発し、機体が粉々に粉砕された。
一瞬にして3機を仕留めたガンダムデスサイズは、加速して、次のターゲット群へと襲いかかる。
その加速の影響を受け、基地の建造物が破壊され、次々と倒壊する。
まずはジムⅢ2機を一振りで斬り払い、ビームサイズを両手に持ち替えて振りかざし、ジェガン2機を斬り飛ばす。
吹っ飛ばされたジェガンの上半身が、補給物資庫に落下。爆発を巻き起こしながら補給物資庫を破壊、炎上させた。
反撃に転じようと、ビームサーベルをかざして斬りかかる1機のジムⅢ。だが、振り払われたバスターシールドのビームの刃で容易く斬り裂かれ、爆発する。
ガンダムデスサイズは、更に向かってきた他のジムⅢをバスターシールドで刺突する。
破裂するかのようにジムⅢが爆発。吹き飛んだ爆風の中に不敵にガンダムデスサイズは立つ。
「さぁ、今度は誰だぁ?死神に誘われたいやつは!??」
再びガンダムデスサイズを加速させて基地を駆け抜けるデュオ。
止まるところを知らぬ死神の宴。
ジェガンやジムⅢ達に抵抗へ転じることも許さないガンダムデスサイズ。
迫る機体があれば、バスターシールドで刺突し破壊。振るわれるビームサイズがジェガンやジムⅢを連続で次々と斬り飛ばしていく。
「おらおらぁぁっ!!!斬って斬って斬りまくる!!!!」
デュオ曰く、高速移動しながら俊敏に斬って斬りまくるガンダムデスサイズ。
ハイパージャマーの影響でモニターに敵を確認できず、訳が解らぬまま連邦兵達は死へ誘われていく。
基地内は前代未聞の惨事となり、斬り飛ばされたMSの残骸が爆発し、次々と誘爆発が巻き起こっていく。
1機のジェガンをビームサイズで斬り飛ばしたガンダムデスサイズの両眼(メインカメラ)が威圧感を醸し出して光る。
「連邦さんよ……これが散々あんたらがやってきた蹂躙てやつだぜ。味わい加減はどうだぁ、おい!!?」
デュオはありったけの皮肉を叩きつけながら、更に敵を斬り飛ばしてみせる。
燃え盛る基地内の炎の中からガンダムデスサイズが飛び出し、施設内のありとあらゆる補給物資の破壊する。
「さぁ……ウォーミングアップしたところで、本題の補給物資倉庫を破壊しますか!!!」
基地を破壊しながらターゲットである補給物資庫にも攻撃をかけるデュオ。
そこへ業を煮やした1機のジェガンが、ビームサーベルでガンダムデスサイズに斬りかかる。
その刃には同胞への哀悼とガンダムデスサイズへの敵意の念がこもるかのように出力が増大されていた。だが……
ズシュドォォォッ―――!!!
斬りかかる加速力を逆手にとられ、バスターシールドでコックピット諸とも串刺しにされる。
スパーク音を空しく響かせて、ジェガンはバラバラに爆砕した。
「悪いな………俺の姿を見た奴は、みーんな死んじまうんだ……」
そして再びビームサイズを振りかざしてガンダムデスサイズは爆煙の中から加速した。
北欧・地球連邦軍ドーバー基地。
この日、ダカールでの議会を終えた連邦軍の一部の要人達が、この基地にあるスペースポートのシャトルに乗り込もうとしていた。
「思ったよりも議会が早く終わったな。このあとは各コロニーの軍備増強会議だ」
「はい。しかし、ネオジオンやその他の反乱分子が活動中です。今のタイミングだと危険なのでは?」
「だからこそ一つでも多くのコロニーをねじ伏せる!!今のコロニー……いや、いつの時代もコロニーはろくでもないからな!!特にニュータイプなどと!!新人類の人種は危険だ!!だからこそ秩序が必要なのだ」
「確かに…スペースノイドは所詮地球に入りきらなくなった人類です。変革しようがたかが知れた人種です」
「ははは!解っているじゃないか!!」
スペースノイドからしてみれば明らかな侵害的な発言をしながら、要人と側近はシャトル機内に着座する。
他の連邦要人達も着座しており、雑談を重ねて離陸を待っていた。
どの要人もスペースノイドに対する偏見の話題で持ちきりであった。
「皆同じだな。思っとることが……ん?!!なんだあれは!!?」
その時だった。
要人が上空にふと視線を向けた方向に墜落していく未確認飛行物体を目にする。
その未確認飛行物体は、基地の広大な敷地目掛けて墜落してくる。
「あれは一体?!!」
皆がざわつく中、未確認飛行物体は空中爆発する。激しい爆発音と共に残骸が降り注ぐ。
直後に別の地響きが鳴り響き、凄まじい粉塵が要人達のシャトルに襲いかかる。
「うあああ!!!」
我が身が第一と言わんばかりに身を伏せる要人。
粉塵が晴れるに連れ、怯えきった表情を上げた。
するとそこには、赤いカラーリングが主体色のガンダムが立っていた。
レフトアームには長身のガトリングが握られていた。
「は!??ガンダム!!?」
「な…?!!」
BGM 「返り血と火薬の匂いの中」
≪XXXG-01H ガンダムヘビーアームズ≫
愚か者達が敷き詰められたシャトルをモニターで見つめるトロワ。
冷静な眼差しで淡々と任務を実行に移す。
「エージェントの申告通り、連邦要人を乗せたシャトルを確認。基地のスペースポートと同時に破壊する」
モニター映像のシャトルをロック・オンマーカーが捉える。
ガンダムヘビーアームズの胸部ハッチがバキンと左右に開き、2門のブレストガトリングが姿を見せた。
そしてそれは、シャトル目掛けて火を吹く。同時に両肩のマシンキャノンも連動して発射された。
連射されるエネルギー弾丸が雨の如く降り注ぎ、シャトルを蜂の巣にして瞬く間に粉砕させる。
ヴァルルルルルルルルルルルゥゥゥッ―――!!!!
「ぎゃあああ―――!!!?」
轟音を鳴らして薄汚い要人達を乗せたシャトルが爆砕。一瞬にして偏見の塊達が粉砕された。
続けてガンダムヘビーアームズは、両肩と両脚のハッチを展開させる。姿を見せたホーミングミサイルとマイクロミサイルが、一斉にスペースポート目掛けて発射された。
ガガガシャン………ドドドドドドバシュシュシュシュゴォォォォ………ゴォゴォゴォゴォガアアアアン!!!
そしてミサイル群は、警備に当たっていたジムⅢの部隊を巻き込みながらスペースポートと基地を破壊する。
激しい爆発を巻き起こしてスペースポートが崩れ去る。基地も瓦礫と化し、ジムⅢ部隊の残骸が転がっていく。
この緊急事態に、基地のMS部隊が一斉に動き始める。
ジェガン部隊、ジムⅢ部隊、ガンタンクの後継機であるロトの部隊が展開。各機が一斉に武装をガンダムヘビーアームズへと向けた。
ジェガンやジムⅢのビームライフル、ロトのキャノン、メガマシンキャノンが一斉に放たれる。
流星弾雨の如く注がれる連邦軍のMS部隊の攻撃。
集中砲火を浴びたガンダムヘビーアームズは、爆発に包まれた。
だが、煙の中からは全く無傷のガンダムヘビーアームズが姿を表した。
「単機の敵に対し、数で極限の火力を集中させる…確かに最適な攻撃判断だ………だが……」
敵部隊に向けて、再びブレストガトリングを展開させ、同時にビームガトリングを構えるガンダムヘビーアームズ。そして主たる武装を開放させた。
ヴォヴァルルルルルルガガガガガガラァッ―――!!!
容赦無き破壊力をMS部隊へぶっ放すその攻撃は、あたかも玩具のようにMSを粉々に爆砕していく。
前方に展開するジムⅢ部隊がブレストガトリングに蜂の巣にされ粉砕。左側に展開するジェガン部隊もビームガトリングで砕かれる。
ガンダムヘビーアームズはその場からブースターで加速。あえて部隊の真っ只中へその身を投じようとする。
旋回移動しながら攻撃をかわし、ビームガトリングとブレストガトリングを連射し続けるガンダムヘビーアームズ。
攻撃を受けたジムⅢやロトが次々と蜂の巣にされ、爆発・粉砕されていく。
「こちらの戦力を把握する前に行動すべきではなかった」
ガンダムヘビーアームズは攻撃を連射し続けながら一気に部隊へ飛び込む。ロト3機を破壊しながらライトアームのアーミーナイフを展開。機体を翻しながら1機、2機とジェガンを斬り砕く。
そこから機体を反転させ、振り返りながらビームガトリングとブレストガトリングをぶっ放し、更なる攻撃をかけ続けた。
トロワは顔色一つ変えずに淡々とMSを駆逐しながら任務に集中し、モニターに写る破壊映像を見ながら呟く。
「……俺達のガンダムを見た者を、生かして返すわけにはいかない……全てを消滅させる……」
ガンダムヘビーアームズの縦横無尽の攻撃を前に、無惨に砕け散っていくMS部隊。最早蹂躙の域に達していた。
地球連邦が誇る連邦MS達はガラクタに成り果て、躯を残す定めとなっていた。
「これからの時代で、貴様達に過去の諸行の精算をしてもらう……これはその序章だ……」
トロワは、砕け散っていく連邦のMS部隊を見ながら、ビームガトリングとブレストガトリングの弾雨を浴びせ続ける。
増援で駆けつけたジェガン部隊やロト部隊もビームライフルやキャノン砲で砲撃をかける。
だが、ガンダムヘビーアームズはブースターで宙へ舞い上がり、注がれる攻撃をかわす。
そしてホバリングしながら、下方に向けてガトリング武装を撃ち放つ。
雨あられの如く注がれるビーム弾雨が、押し潰していくかのようにMS部隊を、はしからはしへと砕き散らしていく。
「単機で多数を相手する場合、あらゆる角度から徹底的に火力をぶつける……」
トロワはガンダムヘビーアームズを下降させる操作をしながら攻撃をかけ続ける。
ジムⅢやジェガンが撃ち斃され、ガシャンガシャンと斃れこみ爆発していく。
そしてガンダムヘビーアームズは、ロトの面前に着地。ビームガトリングをコックピットに押し当てて、零距離射撃した。
激しく装甲が粉砕し、機体がバラバラに爆発。その光景をトロワは顔色一つ変えずに直視していた。
中東・カタール郊外
中東諸国やアフリカ大陸の各地も、未だに続けられるジオン残党軍の主な活動域の一つでもあった。
だが、各地のどの勢力もジオン再興とスペースノイドの自治権確立を掲げて闘っていた。
それはジオン残党の誰もが共有するものである。
そして彼ら以外にも、中東各国が連邦に対し反感を持っていた。
連邦が中東諸国にもコロニーと同様の侵害をしていた為、それに合間って民間がジオン残党と共闘することも珍しくはなかった。
この日もジオン残党と、討伐にあたる連邦軍の戦闘が巻き起こっていた。
落下した未確認飛行物の捜索にきた連邦勢力とジオン残党が鉢合わせた為に戦闘が開始されていた。
デザートザクや、ザクキャノン、ドムトローペン、ゲルググがマシンガンやキャノン砲、バズーカを駆使して抵抗している。
だが、相手は最新鋭の熱砂仕様のジェガン、ジムⅢだ。圧倒的に不利な状況であった。
その連邦勢力の中に、他のMSとは異なるデザインの機体が混じっていた。
テレビの液晶モニターのようなモノアイが特徴的だ。
MSリーオー。メイン兵装はビームマシンガンや、バズーカを発展させたドーバーガンを主体とするMSだ。中にはショートバレルのビームキャノンを両肩に装備したタイプも確認できる。
このMSこそが、ヒイロが言っていた「例の組織」のMSである。地味な機体であるが、性能はジェガンクラスの性能を持っていた。
これらの連邦の機体群の攻撃がジオン残党に襲いかかる。
ロートルとなってしまった機体では、物量攻撃は一溜まりもなかった。
次々と直撃を受けて斃れていくジオン残党のMS達。
ジェガン、ジムⅢ、リーオーの部隊がじわりじわりと攻め混んで進行する。
ジオン残党の中に、ゲルググを駆る少女がいた。ロニ・ガーベイ。中東諸国を中心に展開する大企業・ガーベイエンタープライズの令嬢だ。
ガーベイエンタープライズもまた、裏でジオンを支援協力していた。彼らもまた、連邦の在り方に反感を持っていたのだ。
故にその疑いを連邦に迫られ、社長であるマハディ・ガーベイやその妻の命が連邦に狙われたこともあった。
実際にマハディは左脚を失い、その妻の命が奪われていた。
その関係もあり、民間人でありながらも彼女自身の意思で闘っていたのだ。
「くっ!!負けるものか!!中東の土地を汚し、独裁する者達になど!!」
強い意思でゲルググのトリガーを弾くロニであったが、迫る連邦勢力に対抗するには限界があった。
攻撃を続ける中で同胞が次々と撃破されていく。
「……絶対に許さない!!父の脚を奪い、母の命を奪ったお前達だけは!!!」
1機のリーオーのドーバーガンが奇しくもロニの機体をロックした。ゲルググのコックピットにもロック・オンされた事を警告するアラートが響く。
「ロックされた!??くっ!!!」
死が迫る覚悟を強いられ、きゅっと目をつむるロニ。
その時だった。
ドーバーガンを構えたリーオー が、瞬間的に何者かの斬撃を受け、両腕を斬られて崩れ落ちた。
そのリーオーを踏み越えて、1機のガンダムが姿を見せた。
BGM 「屍に埋もれた平和を探して」
≪XXXG-01SR ガンダムサンドロック≫
両眼を発光させるガンダムサンドロック。更に別方向から3機のMSが姿を表す。
マグアナック隊。サンドロックの僚機として予めアラブで開発された部隊だ。アラブもまた、コロニーと提携していた。
隊長である、ラシードが部下のアブドルとアウダに指示を下す。
「お前ら!!攻撃をかけるぞ!!ただし、まだ命をとるなよ!!!」
「へい!!」
「おおおっ!!」
隊長のラシード機とアブドル機がビームライフルで射撃を掛けてMS部隊に牽制し、武装やアームを破壊した。
その間に敵機に接近しながら、アウダ機が1機のジムⅢの頭部をレフトアームのクローで破壊し、機能を奪う。
そしてカトルはガンダムサンドロックのコックピットから連邦のMS部隊に訴えた。
「連邦のMS隊に告ぐ。今すぐ武器を捨てて投降しろ!!命まで奪わない!!繰り返す…今すぐ武器を捨てて投降しろ!!命まで奪わない……!!!」
「ふざけるな!!!連邦軍人が得体の知れないガンダムに従う訳がないだろう?!!」
連邦軍人として、投降など言語道断。言うまでもなく、抵抗の姿勢を貫く。
リーオーのパイロットも従うはずもなく、ドーバーガンをロックオンする。
「あの反乱分子の噂は本当だったか!!ふん、撃破するまでだ!!!!」
カトルの呼び掛けに応じず、MS隊は攻撃を再開する。攻撃の集中砲火を浴びるガンダムサンドロック。
マグアナック隊もまた、離脱して一時後退する。
ガンダムサンドロックに直撃する攻撃のほとんどが装甲表面で弾かれていく。
全く攻撃を受け付けていなかった。
「……言った筈だ。投降しろってね………マグアナック隊の皆さん、手出しは無用です。では……いきます!!!」
「了解しやした!!聞いての通りだ!!手を出すなよ!!」
「了解!!」
再びガンダムサンドロックは両眼を光らせ、双方のマニピュレーター(手)に握られたヒートショーテルの刀身を重ねあてる。
そして大きく振りかぶり、部隊目掛け特攻した。
加速しながら一気にヒートショーテルを振り下ろすガンダムサンドロック。
ディッキャイイイイイインッッッ!!!
左右にいた2機のジムⅢの胸部が斜めに寸断され、爆発。
爆煙の火柱をけたたましく上げた。
その場から加速し、ジェガンを左手のヒートショーテルで斬り飛ばして、機体を反転させ右手のヒートショーテルでリーオーを叩き斬る。
攻撃は止まらない。
回り込むように跳躍し、ジムⅢを逆刃で横一線に斬り、その勢いでジェガンに斬りかかって斬り飛ばして見せた。
リーオーもビームマシンガンやキャノンで近距離砲撃する。
だが、やはり効果はない。迫るガンダムサンドロックは、リーオー2機を一気に叩き斬って駆け抜ける。
ジムⅢやジェガンのミサイルやグレネードも受け付けず、次々と斬り落とすように斬撃をあびせていく。
一時着地したガンダムサンドロックに、先程のリーオーが、残るブースターで特攻を仕掛けてくる。
「うぉぉおお!!!!『OZ』に栄光をっ!!!!」
だが、特攻しながらもヒートショーテル片振りで無惨に斬り捨てられ、リーオーは地表を転がり爆発した。
そして残りの5機に加速し、ガンダムサンドロックは一気に斬りかかる。
ヒートショーテルでジムⅢ2機を斬り落とし、ジェガン2機を斬り払っては叩き斬る。
その動きは実にスピーディーでリズミカルだ。
駆け抜けたガンダムサンドロックの後方で撃破された機体が連続で爆発を起こす。
ヒートショーテルをもたげ、その爆発を背景に立つガンダムサンドロック。
まさに魔神さながらの威圧感だ。
突然の救世主の出現にロニは、息を呑んで釘付けになっていた。
「すごい……!!」
最後のリーオーが血迷ったかのように武装を捨てて、ビームサーベルを装備した。
だが、ロニのゲルググに目掛け斬りかかる。
「え!??」
「そっちへ!??やらせない!!!」
呆気に取られるロニ。このままでは串刺しにされて焼灼されてしまう。
だが、突然過ぎて体が反応できない。
カトルはレバーを押し込み、ガンダムサンドロックを加速させた。
ロニのゲルググへ迫るリーオーのビームサーベル。
ビームサーベルがロニのゲルググに突き刺さろうとした刹那、ガンダムサンドロックがリーオーに突っ込んだ。
装甲にヒートショーテルを押し当てられながら、ぶっ飛ぶリーオー。
ガンダムサンドロックはリーオーに押し当てたヒートショーテルを振り上げ、一気にクロスさせた斬撃を見舞う。
斬り裂かれ激しく爆発するリーオー。ロニの危機は去った。
「敵勢力を殲滅。手始めの任務完了。ジオンのパイロットの方、大丈夫ですか?」
任務を完了させたカトルは、生き残ったジオン残党の部隊に通信で呼び掛けた。
その声を聞いたロニはすぐに反応した。
「……その声は、カトル!?カトルなの!?」
「え!?もしかしてロニ!?君なのかい!!?」
中国・揚子江 連邦軍基地
広大な揚子江に造られた連邦軍の基地。
ここには主に攻撃輸送機ガルダ級が配備され、中国エリアの連邦軍は、ここを拠点にして各地に展開していた。
強大な経済大国となっている中国であるが、発展途上のエリアに関して連邦及び例の組織は、差別や偏見を掲げて人権無視の対応をしていた。
MSを持てずに、生身でゲリラ戦闘をせざるを得ない反抗勢力も少なくはなかった。
よしんばMSを得ても、ジムコマンドやザクで対応をするしかなかった。
無論、抵抗力は知れていることは言うまでもない。
連邦勢力は確実に中国の国に凄まじき格差社会を作り上げていた。
この日もまた、弾圧に向かうMSを乗せたガルダが発進しようとしていた。
その時、揚子江の河から1機のMSが飛び出す。
そのMSは、離陸しようと加速するガルダの前に着地した。
BGM 「龍が泳ぐ時 全ては終わる」
≪XXXG-01S シェンロンガンダム≫
「な!?なんだ!?滑走路に………MS?!!」
突然の事態にパニックするガルダ機長。
近づくにつれ、それがガンダムだと確認した。
「ガンダム!??何故ガンダムが??!!」
「はぁああああ!!!」
シェンロンガンダムのコックピットで凄まじき気迫を放つ五飛。
その気迫を体言するかのようにシェンロンガンダムが離陸したガルダの機首部を目掛け、龍を模したライトアームのドラゴンハングを伸ばす。
鋭利な龍の牙が、ガルダの機首に突き刺さり、機首周りが爆発する。
シェンロンガンダムは、潰れた機首からドラゴンハングを引き抜いて飛び立つ。
ガルダは、低空から墜落して体勢を崩す。
こうなれば破壊されるしかない。
翼がへし折れ、滑走路を滑りながら、機体を削りながら動きを止めた。
着地したシェンロンガンダムは、滑走路に並んだガルダ級に向かって飛び乗り、ドラゴンハングを機首にかざす。
ドラゴンハングに装備された火炎放射機が、文字通りに火を吹く。
火と言っても、対MS用の超高熱の火だ。
ジェット噴射の勢いの青白い炎がガルダ級の機首に襲いかかる。
瞬く間に機首が高熱で溶けて、内部に炎が入り込む。
更に内部で爆発が発生し、機首自体も形が変形して潰れていく。
このガルダは完全に機能を失った。
シェンロンガンダムは悠然と破壊したガルダの上を歩く。
次のガルダに跳び移ると、同じ要領でガルダに火炎放射を浴びせる。
無論、この事態にMS隊がスクランブル発進する。
ジムⅢやフライトユニットを取り付けたリーオーの部隊が発進していく。
更には試験段階のジェガン系重MS・グスタフカールが出撃する。
ガルダ級を効率良く破壊していくシェンロンガンダムを、先行したリーオー部隊とジムⅢ部隊が包囲する。
「所属不明のMSに告ぐ!!貴様は完全に包囲された!!大人しく投降しろ!!」
「ふん…なめられたものだな………」
五飛は警告を完全に無視して、次のガルダ級に跳び移り、火炎放射を浴びせる。
更にそこから飛び立ち、飛び降りながら隣接するガルダの機首を左のマニピュレーターに握られていた青竜刀のような剣・撩牙で 斬り落とした。
「な……どういうつもりだ!??なめているのか!?かまわん!!!!奴を殺せ!!!!」
馬鹿にしたような行動に業を煮やしたパイロットは攻撃命令を下す。各機がシェンロンガンダムに集中砲火を浴びせる。
ジェガン部隊も駆けつけ、ビームライフルで加勢する。
「やったか……な!?効いていない!??」
攻撃を浴びながら動き始めるシェンロンガンダム。
ここから五飛は本領を発揮させる。
「俺の名は張 五飛!!逃げも隠れもしない!!行くぞナタク!!!」
シェンロンガンダムをナタクと呼び掛けて突撃するシェンロンガンダム。
ジムⅢに飛びかかり、ドラゴンハングで高速に穿つ。
ギュイィィィッ……ディガギャアアアアン!!!
装甲がドラゴンハングに貫かれ、零距離から火炎放射を喰らい、ジムⅢは激しく爆発する。
1機のジムⅢを破壊したシェンロンガンダムは、跳躍しながら撩牙を振りかぶる。
着地と同時に間合いに踏み込み撩牙をジムⅢ部隊に振るう。
フヒュゴッ……ズディギギャアアアアン!!!
一振りで3機のジムⅢを斬り飛ばした。
そこへ空中からビームマシンガンの集中砲火が、シェンロンガンダムに撃ち注がれる。
フライトリーオー部隊の攻撃だ。
シェンロンガンダムは勢いよく飛び立ち、フライトリーオーの1機をドラゴンハングで鷲掴みならぬ、龍掴みにする。
そのまま急降下しながら滑走路に叩きつけてフライトリーオーを粉砕。
更に空中にいる機体に火炎放射を浴びせる。
ジュシュゴォォォォ………!!!
リーオーの機体が熔解し、動力炉が異常高熱に満たされ爆発する。
残りのフライトリーオー3機が、ビームマシンガンを乱射してシェンロンガンダムへ特攻する。
「我々をなめるのも大概にしろぉ!!!」
これに対し、シェンロンガンダムはドラゴンハングを縮めて、背中に納めていたビームグレイブを取り出す。
そのビームの刃は薙刀のような形状をしている。
撩牙と共に振り払いながら構えるその姿は、正に中国の武人だ。
「はぁああああああ!!!」
五飛の気迫と共にフライトリーオーに飛びかかるシェンロンガンダム。
レフトアームを締めて構えた撩牙が振り払われる。
フライトリーオー1機を斬り飛ばした後に、ビームグレイブで一気に斬り払う。
ヴィギギャアアアアアアアンッ!!!
フライトリーオー2機をビームグレイブが容易く斬り裂いた。
シェンロンガンダムの面前で爆砕した。
その爆発を突き破り、ジェガンとジムⅢの部隊へシェンロンガンダムは突っ込む。
ビームライフルを物ともせずに、ビームグレイブと撩牙を巧みに組み合わせて次々とジェガンやジムⅢ達を斬り払う。
「貴様達の存在は悪!!!!そして正しき者が貴様らを潰す!!!!」
シェンロンガンダムの烈火の如き無双乱舞は止まらない。
流れるような動きで、シェンロンガンダムはジェガンやジムⅢ達を激しいまでに斬り砕いていく。
「貴様達は弱すぎる!!!!弱い者が楯突くな!!!!」
シェンロンガンダムの踏み込んだビームグレイブの一振りが、ジムⅢ3機、ジェガン2機を斬り飛ばす。
一気に爆発と爆風が巻き起こる。
撃破された多数のMSが燃え上がる中に、シェンロンガンダムが佇む。
「雑魚ばかりだな!!!!強いやつはいないのか!??」
覇気を放つ五飛に答えるかのように、グスタフカールがビームサーベルで襲いかかる。
轟と振るわれたグスタフカールのビームサーベルの攻撃を敢えて受けるシェンロンガンダム。
グスタフカールは滅多斬りの勢いでシェンロンガンダムを斬りつける。
だが、斬られるというよりも鉄の棒を鉄に打ち付けているかのような感じだ。
じわりじわりと引き下がるシェンロンガンダムであったが、次の一撃で攻撃を受け止める。
ビームグレイブ本体と撩牙の刃でグスタフカールのライトアームを受け止めた。
「その程度かっ!!!!」
シェンロンガンダムは、グスタフカールのライトアームを弾き飛ばし、ビームグレイブで高速の突きを繰り出す。
連続で装甲が刺突され、無惨に斬り砕かれていくグスタフカール。
止めの一振りが炸裂し、上下半身が吹っ飛ばされて爆発した。
「ナタク……次は強い奴と戦いたいものだな」
五飛は、そうシェンロンガンダムに語りかけながら、再び基地に向けて火炎放射の攻撃をかけた。
北米・オーガスタ基地
かつての連邦軍の最大の過ちの組織・ティターンズが非人道なニュータイプ研究をしていた場所、オーガスタ基地。
厳密に言えば、人工的にニュータイプを作り上げてきた機関と言った方がよいだろう。
今尚、オーガスタのニュータイプ研究所は存在し、決して表沙汰にすることなくニュータイプの研究を続けていた。
だが、今は被験体の人数そのものが、皆無に等しい状態で数名がいるだけであった。
この日も研究を終えた被験体を生暖かく扱う研究員がいた。
「今日もよく頑張ってくれたね。ありがとう、プル」
「うん……」
被験体はプルと言う少女であった。
そう、マリーダの遺伝子のベースを持つプルシリーズの母体とも言える存在だ。
だが、記録上で彼女達の殆どは第一次ネオジオン抗争で戦死していたはずであった。
研究員 (かつてのアクシズから発見された冷凍冬眠カプセルに入っていた少女……ネオジオンの当時のデータにあったプルシリーズ…か)
彼女は、第一次ネオジオン抗争終結後に連邦軍の手に落ちたアクシズから発見されていた。
その後、極秘にオーガスタ基地のニュータイプ研究所に身柄を移した為に公式記録に残っていなかったのだ。
すなわち、彼女は真のオリジナルのプルである。
断続的なコールドスリープを施されていた為に、未だ12歳の少女のままであった。
「さぁ…次に起きた時にまた頑張ってくれ。その時はパフェでもご馳走しよう」
「うん…」
研究員は、冷凍冬眠カプセルを操作してハッチを開けると研究員はプルに触れながら周囲を確認した。
「それともうひとつ……いいことしよう」
「いいこと?何……えっ!?」
研究員は怪しい手つきでプルの太ももを撫でると、更にお腹に手を回した。
研究員は理性を捨てて、あらぬ行為を実行しようとしていたのだ。
プルは不快感を露に抵抗する。
「嫌っ……お願い……やめて……!!」
「なになに………昔は被験体によくやったものだ。何せこんなことしても罪にならない………君はモルモットちゃんなんだから♪私はもう我慢ができなくてね~」
「助けて……え!??」
イヤらしくプルの耳許で囁き、彼女の服に手をかける研究員。
だが、プルはその不愉快さを超越する感覚を覚えた。
「何?…………胸がきゅんきゅんする!!」
「え!?じゃあ胸をさらにきゅんきゅんさせてあげよ……」
研究員が行為に及ぼうとしたとき、研究所に警報音が鳴り響く。
更に直後、地響きが走った。
既に戦場とは無縁になりつつあったオーガスタの研究員にとっては、パニックになるには充分であった。
「な!??なんだ!!?」
研究員が動揺した隙にプルは、その場を脱出して部屋から飛び出した。
「あ!!!!待て!!!!くそ!!!!」
プルはサイレンが鳴り響く中、必死に廊下を走る。
彼女のニュータイプの勘がそうさせていた。
「この感じ!!近くにきてる!!!」
走るプルの後方から先程の研究員が叫びながら追いかけてきた。
「被験体が逃げた!!捕まえてくれー!!」
「あんないたずらされたら誰だって逃げるよ!!変態!!」
それに対し、プルは咄嗟に先程の一件を暴露して走った。
誰もが研究員に振り向き、逆に研究員を阻む。
「あ、ちが、違う!!私は……!!」
その時、研究所全体に轟音と地響きが鳴り響いた。
「あう!!」
振動で足下がおぼつかなくなり、倒れそうになるプル。
そこへ彼女を支える研究員の者が表れた。
「おっと…大丈夫かい?」
どこかヒイロに似た面影のある青年だった。彼の名はラルフ・カート。研究員の姿をしているが、ヒイロ達の組織のエージェントであった。
「ありがとう……」
ラルフは、スマホ型のポケットデータベースを取りだし、 彼がハッキングして得たオーガスタ研究所の情報と照らし合わせる。
「!?………………間違いない、救出対象だな……行こうか?」
「うん♪」
プルは勘で彼の感じが解っていた。
そしてその先に胸をきゅんきゅんさせるモノがあることも。
再度轟音が鳴り響く中、ラルフはプルの手首を握って走り出す。
「きゃ!!!」
「間違えてここを撃ってくれるなよ、アディン、オデル!!」
オーガスタ基地にサイレンが鳴り響く中、2機のガンダムが基地に夜襲をかけて駆け抜ける。
既に撃破されたジムⅢやジェガンの残骸が燃え上がっていた。
BGM 「G-UNIT」
≪OZX-GU01A ガンダムジェミナス01≫
≪OZX-GU02A ガンダムジェミナス02≫
「間違えて研究所に撃つなよ!!アディン!!」
「解ってるって!!さぁ、俺達がキメルぜ!!」
駆け抜けるガンダムジェミナス。
息を合わせてアクセラレートライフルを撃ちながら攻め込んでいく。
高出力の太いビームが何発も撃ち込まれ、警備のジムⅢやジェガンを次々と撃ち斃して行く。
進行軌道をクロスさせて2機は炎上するMS群を後にしていく。
オデルは、放たれるジェガン部隊の攻撃をかわしながら、モニターに映る部隊に次々と狙いを定める。
「悪く思うな……連邦に所属したことを恨めよ!!!」
シールドでアクセラレートライフルを支えながらガンダムジェミナス02はジェガン部隊に向けてトリガーを弾く。
ドゥヴィィッ、ドゥヴィィッ、ドゥヴィィ、ドゥヴィィ、ドゥヴィィィィ!!!
放たれる一発、一発が、狂いなくジェガンに直撃させていく。
オデルは、射撃に能力が長けていた。
その能力は、ヒイロやトロワに匹敵している。
攻撃の手を緩めず、流星の如く駆け抜けるガンダムジェミナス02。
狙い撃たれたビームが、出撃したジムⅢ部隊を撃ち落として爆発させる。
緊急事態にスクランブル発進する空戦MS・エアリーズ部隊。
この機体も例の組織の機体である。
低空飛行しながら6機のエアリーズがビームチェーンガンを撃ち放って迫る。
攻撃を受けながらガンダムジェミナス02はアクセラレートライフルを振りかぶって、改めて構える。
銃口にエネルギーがチャージされ、次の瞬間、バスターライフル級のビームが撃ち放たれた。
ヴィギュリリリリィィ………ヴヴァダァァァァァァ!!!
チャージショットされたアクセラレートライフルの強烈なビームは、エアリーズをかき消して直進し、MSの格納庫をも抉りながら破壊した。
対し、アディンは接近戦に長けていた。
アクセラレートライフルをシールドに収用し、ビームソードを取り出して、突撃する。
「いっくぜぇぇ!!!」
気合充分でジムⅢ部隊に斬りかかるガンダムジェミナス01。
斬り払われたビームソードの鋭利なエネルギーの刃が、3機のジムⅢの胸部を斬り捌く。
ヴィィギャイイイイイッッ!!!
「せやあぁっ!!」
その流れで、ビームライフルを撃とうとしたジムⅢを斬り上げて撃破し、機体を回転させてもう1機のジムⅢを一刀両断に真っ二つにした。
背後で爆発するジムⅢを尻目に、ビームソードを振り払うと、ビームマシンガンを発砲するリーオー部隊へ再び突撃する。
唸るビームソード。斬り払って回転をかけ、また斬り払う。
ヴィギュガァァ!! ビュフュンッ、ザディギャアアアア!!!
加速の勢いで袈裟斬りを見舞い、そこから更に加速して抜刀するかのような勢いで斬り払う。
自転しながら回転して飛びかかり、一気に叩き斬った。
立て続けに斬撃されたリーオーが爆発。ジェミナス01が駆け抜けた後には残骸の炎だけが残っていた。
悠然と聳え立つ2機のガンダムジェミナス。一瞬にして基地の戦力は無力化した。
だが、ガンダムジェミナス02は攻撃をかけ続け、オーガスタ基地の施設を撃つ。
「基地に攻撃しながら注意を引かせる!!ラルフと合流するぞ!!」
「OK!!」
2機のガンダムジェミナスは研究所の施設へと移動し、ラルフが指定したポイントへと着地する。
そこにはラルフとプルの姿があった。
アディンはモニタースクリーンにアップ表示して確認する。
「いたいた!!よし!!」
ガンダムジェミナス01がライトマニピュレーターを開き、ラルフ達の所へとかざした。
置かれたマニピュレーターを目の当たりにして、プルは先程の胸きゅん感覚の大元を感じとる。
「ねぇ、あたしこっちに乗りたい!さっきからあたしが感じてたきゅんきゅんする感覚、このMSから出てるんだよ!」
「ん?別に構わないが…(何を言ってるんだ?)アディン、この娘を頼む」
ラルフはプルの言ってる事がよくわからないままアディンにプルを委ねた。
「了解!!」
「どさくさに変なコトするなよ」
「な!?何言ってるんすか!!?しないっすよ、もう!!」
「フッフフフ…ジョークさ…オデル、俺の方も頼む!!」
「ああ!」
ガンダムジェミナス01と引き換えてガンダムジェミナス02のマニピュレーターがラルフのもとへ置かれた。
プルは可動するガンダムジェミナス01に振り落とされないように、しがみつく。
そしてコックピットに乗り込むやいなや、プルはアディンにいきなり抱きついた。
「プルプルプル~!!」
「おわ!?な、なんだ急に!?」
いきなりの行動に、アディンは赤面しながらあわてふためく。
「あなただ!!きゅんきゅんの正体!!やっと会えた!!」
「はぁ!?何なんだ~?!」
「あたしは、プル♪エルピー・プル♪よろしくね!!」
対面でアディンに座るプル。
アディンもこの際どい体勢に動揺しまくっていた。
とりあえず、どぎまぎしながら自己紹介で返すアディン。
「え!?あ、お、俺はアディン!!アディン・バーネットだ!!」
「アディン!!かっこいい名前!!ますます気に入っちゃった♪」
「弱ったな、もー…」
その時、右側面モニターにオデルが通信をかけてきた。
「アディン………って、いきなり何てかっこうしてる!?……あとで話がある!!とりあえず今はオーガスタを離脱するぞ!!」
「話って……違うぜ!!兄さん!!誤解だ~!!」
「?」
プルの調子に振り回され、先程の活躍振りが嘘のような空気になっていた。
かくして、2機のガンダムジェミナスはオーガスタを離脱する。
半永久機関である、GNDドライブを稼働させながら空中を移動していた。
ヒイロ達のガンダムにはこのGNDドライブが主機関となっており、ハイパワー、エネルギー供給、高機動、単機での空中飛行を実現させていた。
更にガンダニュウム合金を纏っているのだ。
故に、連邦性ガンダムとは異なるアビリティーを有していた。
「しかし…なんだこの状態…?」
プルは、先程の体勢のまま抱っこ状態でアディンに抱きついたまま眠ってしまっていた。
その時、犯行声明回線がオートで開いた。
モニターに、メガネをかけた三指の義手の怪しい老人が映った。
「ドクターJ!!」
「遂に……始まるな、ラルフ」
「ああ!」
ドクターJと呼ばれた老人が、犯行声明を宣言し始めた。
任務を終えた各ガンダムのパイロット達もこの犯行声明を見ていた。
デュオ、トロワ、五飛は、アディン同様移動しながら、カトルはサンドロックのコックピットでロニと共に犯行声明を見ていた。
「地球連邦軍…並びにジオンを始めとする反連邦の者達へ告ぐ…我々はメテオ・ブレイクス・ヘル。我々独自のガンダムを所有する、私設武装組織じゃ。我々は連邦の多大なる愚行を存じておる!!実際に連邦による大量弾圧によって多くの犠牲が出ておる!!未だにコロニーの自治権を否定し、宇宙に適応したニュータイプを迫害する………もうこれ以上の連邦の愚行は御免被る!!我々は、ガンダムを反抗の象徴として、連邦政府に攻撃をかける!!我々は、メテオ・ブレイクス・ヘル………打倒連邦に立ち上がった、私設武装組織である!!!」
「遂に……遂に始まっちまった……もうあとには引けないぜ……相棒」
デュオは自動操縦モードに切り替えてシートに寝そべり、ガンダムデスサイズに語りかける。
「始まるな………」
焼け野原となり、燃え盛るドーバー基地の中でトロワは腕組みしながら、平然と犯行声明に目を通していたしていた。
「ナタク………ここからが真の闘いだ。共に宇宙の悪を斃すぞ!!!」
揚子江基地の対岸で、燃え盛る揚子江基地を見ながらシェンロンガンダムと共に闘いの運命に挑む五飛。
「……これが僕の……いや、僕達の覚悟さ」
「本気なの!?ジオン軍やネオジオン軍でも成しえていないことをあなた達だけで闘う気!?余りにも無謀だわ!!」
「無謀でいいんだよ。誰かが無謀な闘いをしなければいけない。そうでなければ……」
「何故カトルが……あなただってウィナー家の御曹子なのに……あ、でも私も似たようなものか。ガーベイ家の令嬢なのにMSに乗ってる…」
「お互い様だね」
カトルとロニの家柄は、宇宙と地球とで企業提携を結んでいた関係で、幼馴染みの関係にあった。
カトルはそんな彼女を、あえて犯行声明に立ち会わせていたのだ。覚悟を知ってもらう為に。
この犯行声明は地球圏各地に一斉配信されていた。
街中のテレビ、マスコミ、一般家庭など、様々な場所から人々がこの放送を目にしていた。
連邦軍側やジオン側も、余りにも無謀な犯行声明に驚きを隠せない。
「あの時のガンダムが彼らだったのか!?しかし無謀だ……どれ程のことをやってのけるつもりだ?」
ジンネマンは、コトの難しさを理解しているが故に、我が身のように深刻な気持ちになっていた。
一方、オペレーション・ファントムで地球に降下したネオジオンのパイロット達もこの犯行声明に興味を惹いていた。
連邦のMS部隊を駆逐した、真紅のMSシナンジュと、紫のギラズールカスタムが佇む。
シナンジュのコックピット内には、シャアの再来と呼ばれる男・フル・フロンタルが搭乗する。
実質上、現ネオジオンを統率している立場の人間だ。
一方のギラズールカスタムには、彼を心酔するアンジェロ・ザウパーが乗っていた。
「ほう……なかなか興味深いな……連邦に反目するガンダムか!!」
「大佐、やつらは敵となりうるのでしょうか!?」
「それは今は何とも言えん。一応は敵を同じくする同志と捉えようか……オペレーション・ファントムもまた数奇なタイミングで発動されたな!!」
「はい!!大佐!!」
連邦軍・コルシカ基地において、連邦のエース、リディ・マーセナスが遺憾を示していた。
「こいつらは馬鹿か!?!連邦なくして秩序が保てるはずがない!!!それに、ジオン達の愚行なくして軍事行動は起こさん!!!!連邦をなめるな!!!」
壁に拳をぶつけるリディ。彼は連邦のエースパイロットであり、連邦軍の軍人であることに誇りを持っている。故に怒りがこみ上げる。
「激しく意気込みすぎだな、リディ少佐」
「これは、OZのシャア……いえ失敬、ゼクス・マーキス特佐!!」
シャアやフロンタルに酷似した彼は、連邦内部の秘密結社・OZに所属するエースパイロットだ。
そのOZこそ、「例の組織」とヒイロ達が言っていた組織なのだ。
シャアと言われてしまいがちなことは、承知の上でゼクス・マーキスは仮面を被り、紅い騎士のような服を纏っていた。
それほどまでに深い信念が在る表れでもあった。
「ふ……そう言われても仕方ないがな……それよりも、先程このガンダムとネオジオンの件で緊急措置がとられた。私の部隊とリディ少佐の部隊とで調査が命じられた」
「え!?!そうですか!!!喜んで拝命致しますよ!!!」
「頼む。だが、非常に危険な任務であることは肝に命じたほうがいい」
「それならば、覚悟は軍人故にできています!!」
「いや、私が言いたいのは、このガンダムは今までの常識では考えられない程、危険な機体だということだ。実際に遭遇した全てのMS部隊が基地ごと壊滅された事実がある!!」
「一人残らず……ですか?!!」
「ああ。どの報告も辛うじて生き残った基地内の兵士や、後から来た部隊からの報告だ。MS部隊は1機残らず全滅している。しかも、ガンダムは7機確認されている」
「7機のガンダムが?!しかし………連邦の英雄たるガンダムが………連邦の敵となるなんて………!!!」
「別物と意識したほうが良いだろう。我々の敵は計り知れない化け物のようだ。更に袖付きネオジオンが地球に攻撃を仕掛けてきている。忙しくなりそうだ」
「ネオジオンに……反乱分子のガンダム!!」
繰り返される犯行声明の映像に厳しい眼差しでリディは見つめた。
一方、ヒイロとマリーダが沈んだ海底には、ウィングガンダムとクシャトリヤが並ぶように倒れこんで眠っていた。
ヒイロ、マリーダは互いに強烈過ぎるGで気を失っていた。
だが、戦う為の運命を背負った二人の運命の歯車は、ゆっくりと……惹かれ合うかの如く、確実に回り始めていた。
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