新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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エピソード19「抗いの戦士達」

地球連邦軍 香港スペースポート基地

 

 

 

「龍のガンダム!!!いつかの借りは返させてもらう!!!」

 

ディエスが駆るバイアランカスタムは両腕のメガ粒子ビームキャノンを撃ち放ち、シェンロンガンダムを狙い撃つ。

 

シェンロンガンダムは敢えて真っ向から直撃を受けながら爆発に包まれた。

 

「直撃……だが仕止めたと思わせ……」

 

ディエスは見透していた。

 

爆発を突き抜けるシェンロンガンダムの姿を。

 

くわっとディエスが目を見開いた直後、案の定シェンロンガンダムは撃破されずに爆発を突き抜ける。

 

「覇ぁああああああああっっっ!!!」

 

五飛の気迫と共にビームグレイブが唸り振られ、バイアランカスタムへと叩き下ろされる。

 

その斬撃は、バイアランカスタムのレフトアーム側のメガ粒子ビームキャノンを破壊し、更に斬り払いを見舞う。

 

ディエスはその斬撃を即座にビームサーベルで受け止めた。

「ビームの爆発をモノともせずに攻め入るっ……!!!流石、メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムだ!!!」

 

「その機体……あの時のバイアランの男……ディエスか!??」

 

「そうだ!!!三度目の激突になるな張 五飛!!!今回こそは……勝たせてもらう!!!」

 

「抜かせ!!!俺の正義の前に貴様は勝てん!!!」

 

「こちらも正義を背負っての戦いを挑んでいる!!!」

 

強く前姿勢で出る五飛。

 

トレーズとの敗北で長らく生じた五飛の精神的な傷は完治していた。

 

シェンロンガンダムの蹴りがバイアランカスタムの胸部を突き飛ばす。

 

だが、直後にバイアランカスタムのライトアーム側のメガ粒子ビームキャノンが放たれ、シェンロンガンダムの胸部に直撃。

 

爆発と共にシェンロンガンダムの機体を吹っ飛ばした。

 

「ちぃ……!!!飛び道具を多用するのか!!!貴様!!!」

 

「牽制と試しに過ぎん!!あくまで俺も……こうだ!!!」

 

加速してシェンロンガンダムへと斬りかかるバイアランカスタム。

 

シェンロンガンダムもまた加速してビームグレイブを突き立てる。

 

 

 

ギャギャギィィィイイイイ!!!

 

 

 

激突と拮抗がスパークの閃光を持続させる。

 

互いに捌き合い、ビームの刃を連続でぶつけ合う。

 

ディエスのバイアランカスタムは、装甲やジェネレーター、駆動ジョイントを強化しており、ガンダムと渡り合えるカスタマイズが施されていた。

 

対ガンダム戦を想定した改修機となっていた。

 

一瞬の斬撃の隙を縫い、バイアランカスタムのビームサーベルがシェンロンガンダムの胸部を斬り払う。

 

装甲には焦げ跡と少しの熔解跡が残るが、やはり彼らのガンダムの装甲強度は破格の強度だ。

 

ギンとカメラアイの眼光を放ったシェンロンガンダムは、ビームグレイブを頭上で振り回しながら強烈な一撃を叩き込んだ。

 

ビームサーベルでそれを受け止めたバイアランカスタムは、再度拮抗させながらパワーをぶつける。

 

その一方で、スペースポート一帯で迎撃体制にあるジェガン、リゼル、スタークジェガン、ジムⅢ、ロトの大部隊の中へガンダムデスサイズが、ガンダムヘビーアームズが、ガンダムサンドロックが突っ込んでいく。

 

 

ザシュバァアアアアア!!! ザギャシャ、ズバシャァアアアアアアン!!!

 

 

 

ガンダムデスサイズのビームサイズは手当たり次第にジェガンやジムⅢ、ロトを斬り刻んでは斬り飛ばし、狙いを選定したリゼルに向かいバスターシールドを放つ。

 

 

 

バシュドォオオオオッッ……ザガギャッ―――ドォシュガァアアアアアアア!!!

 

 

 

バスターシールドの両端の刃がリゼル2機を切り裂きながら、狙いを選定したリゼルのコックピットにビームの刃が突き刺さる。

 

リゼルは空港施設に惰性と共に突っ込み、串刺しにされたまま爆発した。

 

「相棒ごと宇宙へ上がらさせてもらうシャトルはこの基地のシャトルが一番最適なんだ!!阻んでくるうるせー連中は斬りまくらせてもらうぜ!!!」

 

 

 

ドゥヴォヴァドゥルルルルルルルルゥ!!! ヴァダララララララララァ!!!

 

 

 

ビームガトリング、ブレストガトリングの連射砲火がロト、リゼル、ジムⅢ部隊を蜂の巣に砕き散らす。

 

「かなりの戦力だ。だが、一対多型戦を想定している上だ。問題はない。今日こそは宇宙へと上がらせてもらう……!!!」

 

 

ギャギシャアッ、ディッガギャン、ザッガギャ、ディシュガ、ザザザギャシャアアア!!!

 

 

 

その中でもPXシステムの青白い閃光を放ち、凄まじき速さで敵機を斬り砕くガンダムサンドロックは一線を画していた。

 

「ふふふ……全てを破壊させるよ……まっててね……ロニ……だからさ、邪魔なんだぁああああああああっっっ!!!!」

 

カトルはロニを奪われた一件のショックにより一変してしまっていた。

 

純粋が故に奪われた現実と彼女におよんだ汚れに耐えきれず、優しさと強さを合わせた少年の心は狂気に支配されていた。

 

カトルの狂気に呼応するようにガンダムサンドロックは青白い残像を描きながら破壊に破壊を重ねる。

 

超高速で縦横無尽に駆け抜けながら、手当たり次第に連邦のMS達を斬り砕き、斬り潰していく。

 

平均にして一秒につき3機を斬り潰していた。

 

ガンダムサンドロックは鬼神めいた機動力で破壊の限りを尽くし、更なる加速をかけて次なる破壊を続ける。

 

「宇宙には……今の僕に必要な力が……!!!」

 

そのカトルの心中の中には、ウィングガンダムに酷似したガンダムのイメージが抱かれていた。

 

「『ゼロ』の力が……あるんだぁあああ……!!!」

 

 

 

更にその一方で、アディン達は空賊のMS達との戦闘に突入していた。

 

ガンダムジェミナス・バーニアン01がギャプラン、アッシマー、キハールのビーム攻撃を軽快な機動力で躱す。

 

バーニアンユニット自体は本来宇宙用のユニットであるが、大気上でも十分に運用可能だ。

 

更に使用場所を選ばない万能ジェネレータであるGNDドライヴがあれば至極当然であった。

 

両肩のバーニアユニット、背面のウィングユニット、脚部の高機動ユニットの各部分からGNDエネルギーの炎を噴射しながら機体を回転、加速をかけて姿勢をコントロールする。

 

「海賊か空賊だかなんだか知らねーが、ジェミナス・バーニアンの性能試しに付き合ってもらうぜ!!!」

 

メインモニター上に捉えたキハール3機を見据えたアディンは、鋤かさずアクセラレートライフルのトリガーを引く。

 

 

 

ヴダァヴァアアッ、ズドォヴァアアアアッ、ヴィズヴァアアアアアアア!!!

 

 

 

撃ち放つビーム渦流が一瞬にして攻撃を仕掛けるキハール3機を撃ち抉った。

 

爆散する3機のキハール。

 

更にそれを掠めた1機のアッシマーが、高エネルギーの影響により誘爆を起こして爆散した。

 

姿勢を制御しながら更にアッシマー3機に向かってアクセラレートライフルを撃ち放つ。

 

アクセラレートライフルのビーム渦流はアッシマーの胸部を撃ち抉る。

 

他の2機も機体を撃ち抉られ、爆発四散。

 

射撃のテクニックは以前のアディンよりも更に上がっていた。

 

ギャプランのメガ粒子ビームキャノンがガンダムジェミナス・バーニアン01を狙い撃つ。

 

「残念!!!簡単には中たらねーぜ!!!もっとも、中っても破壊できないけどな!!!」

 

アディンは巧みに躱すと、銃口をギャプランに向けチャージショットを放つ。

 

ギャプランはこれを躱す軌道に回避する。

 

だが、アディンはその方向へ銃口を移動させ、持続するビーム渦流にギャプランを呑み込ませてみせた。

 

ギャプランは機体をビームにかき消され、たちまち爆散四散した。

 

「キメてやったぜ!!!っとぉ……!!!」

 

キハール4機が下方向よりビーム射撃を仕掛けてくる。

 

アディンは機体を機敏に動かしながら、ターゲットをロック・オン。

 

アクセラレートライフルを連続射撃で撃ち放つ。

 

上方からのビーム渦流が1機、1機に直撃し、削り飛ばすように破砕させた。

 

更に反転し、ドダイ改に搭乗した3機のハイザック改のビーム狙撃を躱す。

 

「ウザい奴らだな!!キメ飛ばすぞ!!!」

 

苛立ちと余裕の混じった感情にのせてチャージショットを撃ち放つアディン。

 

1機のハイザック改を直撃させながら2機のハイザック改の片腕を削り飛ばし、誘爆を伴わせ爆砕させた。

 

その一方で、オデルのガンダムジェミナス・バーニアン02も軽快な機動フットワークでドダイ改に搭乗するマラサイやガルバルディβ、ハイザック、ジムクェル、ジムキャノンⅡ達のビーム攻撃群を躱しながら戦闘体制に入る。

 

ジェミナス・バーニアン02の量肩のバーニアンユニットは大型のものになっており、瞬発的な上昇下降の機動に適したタイプだ。

 

「野盗相手だが、加減は一切なしだ!!ジェミナス・バーニアンの機動テストに付き合ってもらう……!!!」

 

敵機群の上へ上昇したガンダムジェミナス・バーニアン02は、レフトアームに握ったアクセラレートライフルをチャージショットで撃ち放つ。

 

 

ギュリュリュリュリリリィィィ……ヴズヴァアアアアアアア!!!

 

 

上方向から撃ち放たれたアクセラレートライフルのビーム渦流が、マラサイ2機を叩き砕くように破砕させた。

 

更にハイザック2機を狙い撃ち、ビーム渦流の直撃の下に爆砕させた。

 

ジムクェルやジムキャノンⅡの砲火が放たれるが、ガンダムジェミナス・バーニアン02は瞬発的な機動力で躱し続け、ジムクェルとジムキャノンⅡを狙い撃ち破砕。

 

オデルは機体を一気に加速上昇した上に加速下降。

 

更にビームソードを抜きながらの加速下降をし、ガルバルディβを激しく捌き斬った。

 

そこから飛びかかるように他のマラサイ、ハイザック、ガルバルディβに斬りかかり、機動力を乗せた斬撃たる斬撃を繰り出す。

 

更に2機のハイザックを斬り飛ばすと、再びアクセラレートライフルをチャージショットし、ジムクェル、ガルバルディβ、ハイザック、ジムキャノンⅡを連続破砕させた。

 

その最中、空賊の別動隊のバーザムや陸戦ジム、ジムカスタム、ハイザック改、ガルバルディα、ネモⅢ、イフリート、ズゴックの機体群が、ガランシェールへと迫っていた。

 

ブリッジ内でフラストが叫ぶ。

 

「所属不明機、本船に複数機接近!!!対空措置が間に合いません!!!」

 

「スキウレの準備はできていないのか!??なんで今日に限ってギラズールがスタンバイできていない!??」

 

なっていない対空措置に対しジンネマンも叫ぶ。

 

「今回、ガンダムが味方にいることで油断していたものと……」

 

「なにぃ!??戦闘に油断など命取りだ、馬鹿!!!」

 

「後でキツク言っておきます!!!」

 

「そう言う問題かぁ!??」

 

ジンネマンとフラストのやり取りを割るようにギルボアが叫ぶ。

 

「攻撃が来る!!!急速回避させます!!!」

 

ギルボアの操舵捌きの下、前方より来るビーム攻撃を回避する運動に入るガランシェール。

 

激しい遠心力と振動に船内が見舞われる。

 

「うおぉおお!??」

 

その時、回避するガランシェールの面前に迫っていた陸戦ジムや、ジムカスタム、ガルバルディαのMS達が、複数のファンネルの連続ビーム攻撃に撃たれた。

 

 

 

ドゥダダダダシュゥウウウウウ!!!

 

ドォガガゴゴバァバァアアアアア!!!

 

 

 

直後、ガランシェールの前をキュベレイMk-Ⅱが舞った。

 

「パパ達はやらせないよ!!!ガランシェールは、あたし達やマリーダの帰る場所なんだから!!!ファンネル達、みんなで一斉射撃!!!」

 

バッと手をかざしたキュベレイMk-Ⅱ前に複数のファンネルが並んだ。

 

並列に並んだファンネルからビームが一斉かつ完全同時にハモニカ砲方式に放たれた。

 

 

 

ディギシュダァァアアアアアアアア!!!

 

 

 

更にかざしたキュベレイMk-Ⅱの手首の付け根部のハンドランチャーからもビームが同時に放たれており、前面上の射撃死角は皆無に等しい。

 

撃ち放たれたビーム群は、狂い無く迫っていた別動隊のMS群を射抜いて完全爆砕させた。

 

「まだまだ来る!!いくよ、キュベレイ!!!」

 

プルはキュベレイMk-Ⅱを加速させ、迫るキハールやバーザムの機体群に向かう。

 

加速するキュベレイMk-Ⅱにファンネル達も周囲に付きながら追従する。

 

プルは普段は見せない引き締まった厳しい表情で次なるターゲットをイメージしながら攻め入る。

 

その間に空賊のMS乗りの思考も僅かにプルの意識に入り込んでくる。

 

「攻めてくるMS達……パパ達の船を狙うことしか考えてない……もちろん、命なんてないがしろに考えてる……あたしだってあんた達を全く躊躇無く撃ったりしてないんだからね……!!!でも、大切な人達の命狙っているからには……あたしもやらせてもらうんだから……!!!」

 

射程圏内に入り、目を閉じてターゲットイメージに集中するプル。

 

アッシマー3機、キハール3機、ガルバルディβ3機がビーム射撃を開始する。

 

ニュータイプ独自のひらめきがはしり、プルはかっと目を見開いた。

 

「そこ!!!みんなお願い!!!」

 

ファンネルに呼び掛けるプルの声と共に、一斉にファンネルは幾つかのグループに別れて飛び立つ。

 

アッシマー、キハール、ガルバルディβの機体群はファンネルの突然のビーム射撃に翻弄される。

 

ビームライフルを放って狙うが、俊敏なファンネルには全く中る気配がない。

 

その間に、ファンネルはマシンガン並の連続射撃を始め、瞬く間にアッシマー、キハール、ガルバルディβの機体群を撃ち砕き散らしていく。

 

更に周囲にを囲み、オールレンジ射撃の雨を与える。

 

まさにファンネルの真骨頂の攻撃方だ。

 

9機いた機体群は一瞬の間にして爆発の華と化した。

 

「―――!!!いけない!!!」

 

プルは突然嫌な予感を察知し、ガランシェールへと舞い戻る。

 

「パパ達がやられちゃう!!!」

 

その時、空賊のギャプラン改がガランシェールへと向け、母艦のガウ攻撃空母から加速を開始する。

 

発進したギャプラン改の加速力は半端がなく、並のMSでは追撃は非常に困難だった。

 

そのギャプラン改と母艦に狙いを定めたガンダムジェミナス・バーニアン02とがすれ違う。

 

「ん!?1機のみで!??まぁ、いい!!アディンとプルに任す!!!PX、オーバードライヴ!!!」

 

狙えない事はないが、元凶たる母艦を叩かねばならない。

 

しかも3機が存在しており、狙いを定めたからには逃す手はなかった。

 

PXを発動させたガンダムジェミナス・バーニアン02は、青白い閃光と化して縦横無尽にガウを斬り刻み始めた。

 

その1機は瞬く間に撃墜された。

 

プルは先駆けてギャプラン改の行動を察知し、ガランシェールの面前へと飛び込む。

 

「やらせない!!」

 

「プル!!?」

 

ガランシェールの前方に再びキュベレイMk-Ⅱが飛びこんだ。

 

ブリッジ内から見ているジンネマン達からは突然の行動に疑問よりもよからぬ勘が過る。

 

そのすぐ後に突っ込んで来るギャプラン改をガランシェールの計器類のセンサーが捉え、フラストが報告した。

 

「キャプテン!!前方より高速物体が迫ってます!!!きっとプルはそれを!!!」

 

「真っ向から受ける気か!??ならん!!!」

 

プルは意識を集中し、速度と射撃のイメージを始める。

 

イメージの意識の中にギャプラン改のイメージを集中させていく。

 

加速するギャプラン改は、プルのイメージの感覚を覆す程の速度で迫る。

 

「キタっ―――!!!」

 

集中を研ぎ澄ませたファンネルの射撃が、ギャプラン改を狙い撃つ。

 

直撃。

 

だが、慣性の影響を受けた機体の前部が、更に加速をかけて飛ぶ。

 

キュベレイMk-Ⅱやガランシェールに直撃すれば致命的なダメージは避けられない。

 

「そんな―――!!?」

 

その刹那。

 

「PXオーバードライヴ―――!!!!」

 

 

 

ズガギャアアアアアアア―――ッッッ!!!

 

 

 

PXを発動させたガンダムジェミナス・バーニアン01が、シールドを構えながらギャプラン改の残骸へと突っ込んだ。

 

「アディン―――!??」

 

ギャプラン改の残骸は大きく吹っ飛んで砕け散る。

 

PXを解除させたガンダムジェミナス・バーニアン01は、アクセラレートライフルをシールドに収容し、キュベレイMkⅡとガランシェールに向かってサムズアップしてみせた。

 

「へっへへ……未来担うニュータイプはやらせねーってね!!!プルは俺が守る!!!」

 

超高速を実現させるPXシステムだからこそ成せた技であった。

 

「くすっ、アディン……ありがとう!!えへへ……」

 

プルはアディンの姿勢に対し心底から胸がキュンとなり、嬉さと共に胸が熱くなるのを覚えた。

 

一方のオデルもまた、3機のガウをPXで撃墜しきっていた。

 

ガランシェールのブリッジ内でも安堵が流れ、ジンネマン達は胸を撫で下ろす。

 

それと同時にアディン達の実力を目の当たりにし、感服なまでの感情を実感していた。

 

「ふぅ……ハラハラはしたが……あれほどの数の敵機を全滅させちまった。予想を遥かに上回る程の実力だ……大したもんだの言葉じゃ到底収まらん……!!!それにプルもマリーダに勝るとも劣らないセンスを持っている……!!!だが、かといって……」

 

ジンネマンに先程の危機的状況が浮かぶ。

 

もしアディン達がいなければ只では済んでいなかっただろう。

 

プルが戦闘に赴く事に抵抗を懐くが、本人の意志を尊重し否定はできない。

 

 

ガシャアアアッ!!

 

 

 

「おわ!!?ぷ、プル!!MSで抱きつくな~!!」

 

「アディンー♪」

 

ジンネマンはキュベレイMk-Ⅱに抱きつかれるガンダムジェミナス・バーニアン01を見つめ、今はアディンに掛けようという考えで維持した。

 

「考えても仕方ない……プルの決意も否定できんしな。あのガンダムの小僧の働きぶりに掛けるしかねーか……」

 

「ですね……にしても、見る限りラブラブっすよ?MSで抱きついてますし……その変はどーなんすか!?お父さん!!」

 

「やかましいわっ!!フラスト!!」

 

 

 

各地の場所で再びGマイスター達が戦う。

 

それは半年以上の潜伏状況を打ち破っての反逆だった。

 

共通なる想いは宇宙へ、コロニーへ戻る事だ。

 

そして、壊滅へと追い込んだ元凶の一つ、特殊部隊ECHOESに一矢報いる。

 

だが、カトルだけは違っていた。

 

「ふっふふふ……あはははは!!!僕は宇宙にあるガンダムの力を貰いにいくんだ……そして……全てを破壊してやる……だから邪魔だぁああああ!!!!」

 

ヒートショーテルの高速かつ強烈な斬撃が連続で繰り出され、対面するMSを全て叩き斬っていく。

 

だが、PXの恩恵も残り一分を切った。

 

カトルは力の限りに破壊しつくしていく。

 

今のカトルの脳裏にあるのは先にイメージした別のガンダムの存在であった。

 

そのガンダムの力を手に入れる事を念頭に置いての強行を重ね続けていく。

 

その最中、デュオからの通信がカトルの所へと入る。

 

「おい、カトル!!いくらなんでも突っ込みすぎだ!!!無茶し過ぎるな!!!PXもリミットオーバーすりゃあ、しばらく性能低下しちまうんだ!!!加速できねー、機動力低下、各ジョイントの可動も鈍くなる!!!」

 

「……関係ないよ」

 

「あぁ!??なんでだ!??このままじゃ、お前……!!!」

 

「関係ないって言ってるだろぉおお!!!!」

 

「カトル!??」

 

ヒステリックに感情を一瞬爆発させたカトルにデュオは驚きを隠せなかった。

 

カトルは更に怒鳴りながら敵機を破壊していく。

 

「ロニを奪われ、守る事もできない僕はぁああああ!!!!どーでもいいんだよぉおおおおおお!!!!」

 

ガンダムサンドロックを駆るカトルは、気違いなまでに敵機群をPXに任せに滅多斬りにし、その勢いのままHLV発射施設まで特攻した。

 

「カトルゥウウウウウ!!!」

 

ガンダムサンドロックは狂った弾丸のように敵機を吹っ飛ばし、蹴散らしていく。

 

その最中PXが解除され、ガンダムサンドロックは慣性の惰性のみで発射施設に突っ込んだ。

 

その衝突の衝撃は、施設を一気に廃墟レベルに崩壊させた。

 

「ばっかやろぉおおおおおおおおおっっ!!!」

 

「カトル……!!!っ……背負い込み過ぎだ!!!なんでも自分のせいにし過ぎだ……カトルっっ!!!」

 

デュオはカトルの狂ってしまった事とその行動に叫び、トロワも仲間の変わり果てた行動に憂いを隠せない。

 

攻撃を止めたガンダムデスサイズとガンダムヘビーアームズに敵機の射撃攻撃が集中する。

 

「がぁ!??っちぃいいいい……!!!」

 

「くっ……物量効果か!?」

 

その直後、スタークジェガン達が急接近し、バズーカの銃口で包囲するように2機の装甲に押し当てた。

 

ゼロ距離からの連発射撃が襲う。

 

「ぐああっ……!!!っちくしょうが……!!!」

 

「くっ……内部の電子系統がやられる……!!!」

 

重砲弾の連発射撃の衝撃が、電子制御系統にダメージを与え、幾つかのエラーが表示されるようになる。

 

「っ……やってくれるぜ!!!ならよぉ、PX、オーバードライヴ!!!」

 

PXを発動させたガンダムデスサイズは、一気にスタークジェガン達を弾き飛ばし、ビームサイズによる無双斬撃を開始した。

 

最早後先など考えず敵機群を破壊しまくるデュオ。

 

高速で振り回されるビームサイズにスタークジェガンやジェガン、ジムⅢ、リゼルが滅茶苦茶に破斬されていく。

 

「今が使い時か……!!!」

 

トロワもガンダムビーアームズのPXを発動させ、機体を軸にしたアーミーナイフの回転斬りでスタークジェガンを斬り飛ばすと、弾くように加速してアーミーナイフによる連続斬撃を繰り出す。

 

更に近距離からブレストガトリングをぶっ放しながら回転し、周囲の敵機群を削り飛ばすように砕き散らした。

 

ビームガトリングをかざしながらの回転射撃も加え、更に敵機群を撃ち砕き散らす。

 

こうなれば連邦サイドは一気に不利となり、破壊の限りに破壊されていく以外無い。

 

五飛は一瞬奮起したデュオ達を見る。

 

「ふっ……その意気だ……だが、俺はあくまで俺の力でやるっ……覇ぁっ!!!」

 

五飛は直ぐ様にバイアランカスタムへと斬撃をかける。

 

あくまでPXを殺して闘う。

 

ビームとビームの刃が幾度もぶつかり合う。

 

「龍のガンダム……相変わらずの出鱈目たるパワーだ!!!強化されてなくば、直ぐにアーム系統がやられていた……だが、俺も意地で勝ちにいかせてもらおう!!!」

 

刹那の隙を見切ったディエスは、軸を回すかのようにビームグレイブを捌き、ビームサーベルの連突きをシェンロンガンダムの胸部に見舞う。

 

「っ……ふん!!貴様、少しはできるようになったか!!!」

 

「言うな、五飛!!向こうでは仲間が青く速くなる機能を使っているが……貴様は使わないのか?」

 

「ふん……俺は俺の力で押し通す!!!一対一の勝負なら尚更だ!!!那托をナメるな!!!俺は俺だっ!!!」

 

己自身の力で闘う姿勢を五飛は貫く。

 

己が信念を籠めたビームグレイブの連続突きを一心に繰り出す。

 

シェンロンガンダムの突きが中れば間違いなく致命的なダメージを受ける。

 

ディエスは意地でも受け止め捌き続けて攻めた。

 

「くぅうううっっ……!!!づああああああ!!!」

 

奇しくもバイアランカスタムの突きが、シェンロンガンダムの左目を突き当てた。

 

シェンロンガンダムのコックピットのモニター片面の画面が消える。

 

「カメラをやられたか……!!!」

 

「体勢を崩した今を逃さん!!!だぁぁああああ!!!」

 

 

 

ディギャズッ、ガザギャッ、ダダダダギャアアアアン!!!

 

 

 

バイアランカスタムの華麗なビームサーベル捌きがシェンロンガンダムのボディーを突き続け、連続の斬撃ダメージを与えた。

 

衝撃により、シェンロンガンダムはアスファルトへと吹っ飛ぶ。

 

「くっぅっうっっ……!!!だがっ……!!!」

 

五飛は衝撃をこらえ切り、シェンロンガンダムを立ち上がらせた。

 

そしてブーストダッシュをかけながら唸り振るうビームグレイブをバイアランカスタムへ叩き付けた。

 

ビームサーベルで受け止めるディエス。

 

更なる負荷がバイアランカスタムの機体各部に及ぶが、まだ持ちこたえる。

 

2機が激突している最中、デュオとトロワがMS隊を壊滅へと追い込んでいく。

 

ビームサイズとビームガトリングの高速斬撃と射撃がMS部隊を総崩しにしていく。

 

「PXが有効な内に片付けさせてもらうぜ!!!カトル……無事でいろよな!!!」

 

「カトルは今、背負い過ぎた想いにやられている……いつものカトルじゃない……!!!」

 

その間に突っ込んだまま動かなくなっていたガンダムサンドロックにジェガンやリゼル部隊が取り囲む。

 

このまま何もなければ、鹵獲は免れない。

 

衝撃でカトル自身が気絶している可能性が高い。

 

トロワは遮るかのようにいる部隊を蹴散らしながらガンダムサンドロックに向かう。

 

その時であった。

 

ガンダムサンドロックが突っ込んだ発射施設のシャトルが、突如とジェット噴射を開始した。

 

「ふっふふ……みんな……先に行くよ……!!!」

 

カトルが狂喜を浮かべた直後、シャトルが発射した。

 

カトルは既にガンダムサンドロックを収容させ、シャトルを操縦していたのだ。

 

「カトル!!!あいつ、どんどんいっちまいやがって!!!今のあいつは色々ヤバくなっちまってやがる!!!」

 

「ああ……それにさっきからカトルは繰り返し『ゼロ』と言っていた……!!!」

 

「ゼロって……ウィングガンダムゼロか!??ありゃ、確か適正あるヒイロと五飛以外乗れねーはずだろ!??」

 

「あぁ……現に俺達は適正テストの際にあのシステムに呑まれた……何度やってもな」

 

「それに下手すれば死ぬ……そんなのに今のカトルが実戦で乗ったらヤバイぜ!!!」

 

「あぁ……本来今のような状況になった時にヒイロ、若しくは五飛が行動に出る計画だった。だが、ゼロの機体そのものが危険過ぎ、かつ世界のパワーバランスそのものを崩壊させかねない。文字通り、破壊のガンダム……あくまで最終手段の機体だ……」

 

「だが、実際問題……五飛は絶対にシェンロンを乗り続けるだろうな……そーいえば五飛は!?」

 

「まだあのバイアランと交戦中だ!!」

 

「相変わらず真剣勝負がお好きで!!」

 

MS部隊を壊滅させたデュオとトロワは、真剣勝負の無礼を承知で五飛に通信を入れた。

 

「おい、五飛!!真剣勝負中失礼するがよ、俺達はシャトルにこれから取りつく!!!増援が来る前に行こうぜ!!!」

 

「!先に行きたくば先に行け!!!この男との勝負に決着が着き次第俺も上がる!!!」

 

五飛は案の定真剣勝負に身を投じ、デュオの言葉を断る。

 

無論、五飛の性格上、承知のことであった。

 

「やっぱか……あいよ、先に行かせてもらうぜー。必ず来いよな!!!」

 

「カトルがゼロに乗り込む可能性がある……あいつを止める為にも先に行かせてもらう」

 

「ふん!!どのみち俺に構うな!!!行け!!!」

 

デュオとトロワは、カトルを追うように発射施設内に機体をスタンバイさせると、HLVを発射させる。

 

刃を交えるシェンロンガンダムとバイアランカスタムの後方で2機のHLVが射ち上がっていく。

 

ディエスは、シェンロンガンダムの向こうに見えるHLVを見送ると五飛に問いかけた。

 

「貴様は……宇宙へ行くのか!??」

 

「あぁ!!俺達を壊滅へと追い込んだ悪が宇宙にいる……今一度俺達の正義を下す!!!」

 

「宇宙か……俺はずっと空に根差していた……このご時世に未だに行ったことがない」

 

「だからなんだ?」

 

「……行け……宇宙へ」

 

「何?!!」

 

「戦いの場は宇宙になりつつある……貴様との決着は宇宙で着けよう……」

 

「っ……!!!貴様は馬鹿にしているのか!??俺をナメるな!!!」

 

手の平に転がされたかのようにとらえた五飛は、怒り任せにビームグレイブを捌いて、叩き付けた。

 

ビームグレイブをビームサーベルで受け止めながらディエスは言葉を返した。

 

「違うな!!!これは男としての、兵士としての話だ!!!組織としても、己としても宿敵のガンダムを敵地で仕止める……貴様の正義と同じく、俺の正義のカタチだ!!!」

 

「随分と身勝手な正義だな……!!!」

 

「ふん……承知だ……さぁ、行け!!!」

 

五飛は口許をニヤつかせると、ディエスへ一言吐き飛ばす。

 

「借りは必ず返上しに叩き付けるぞ……覚悟しておけ!!!」

 

「無論、望む所だ」

 

戦場で出会った男同士の約束に二言はない。

 

それから間もなくしての後、ディエスは飛び去るHLVを見上げながら無言で見送る。

 

五飛もHLVの操舵レバーを握りながら無言のままモニターを見据える。

 

戦いの決着の場を宇宙にするという約束と借りを握りながら次なる戦場を目指す。

 

Gマイスター達は、それぞれの想いとカタチで宇宙へと飛翔していった。

 

 

 

現状況下、地球では連邦軍とジオン残存軍が、宇宙では地球連邦軍とネオジオンの図式で戦闘が行われており、その側面ではECHOESの暗躍、反フロンタル派のネオジオンの出現もあり、混迷に混迷を重ねていく傾向にあった。

 

そして、その混迷は更なる混迷を呼ぶに至る。

 

フロンタル派のネオジオンが遂にアクシズを掌握した最中、これを危惧する反フロンタル派のネオジオンがアクシズを保持していた宙域に進軍し、第一次ネオジオン抗争末期を彷彿とさせる事態を見せる。

 

反フロンタル派の大半は、アクシズを落とす行き過ぎた行為と、オペレーション・ファントムで仲間を見捨てた姿勢、そして、フロンタルの思惑に対し遺憾を示す者達であった。

 

ここへ来ての同士討ちはフロンタルも読んでおらず、予想を覆す程の反勢力の抵抗に憤りを感じてならないでいた。

 

フロンタルはシナンジュを駆りながら、元同胞を躊躇いなく撃ち射抜き続ける。

 

「再びアクシズを地球に落とす事をよしとしない……これではまるで……」

 

ビームライフルの連続射撃が、ギラドーガやズサ、ガザC、リゲルグを撃ち抜き、接近しながらギラドーガをビームトマホークの斬撃で破斬する。

 

振り向きながらバウを斬り裂き、ビームトマホークを振り回して接近したドライセンを斬り捌いた。

 

爆発を掻い潜り、狙撃主のごとくビームライフルでガゾウム、ガザD、ドラッツェ、ゲルググJを撃ち墜とす。

 

「グレミーに楯突かれたハマーンのようだな……!!!この行為がオペレーション・ファントムを無駄に帰す行為と……」

 

ギラズールがビームトマホークをシナンジュに振るうが、それをシナンジュは斬り飛ばした。

 

「何故わからん!!!」

 

反目する同胞に、容赦は全くなかった。

 

更に新兵器・ビームバズーカランチャーの銃身をビームライフルにセットし、ドーベンウルフとドライセンに向けて発射する。

 

 

 

ヴゥッ……ヴヴァガァアアアアアアアアッッ!!!

 

 

高出力のビームの渦が突き進み、2機の巨体を抉りながら後方のギラドーガとバウも捲き込んで破砕させた。

 

それは彼に深い忠誠を誓うアンジェロも同じであった。

 

つい先日までここまで来た同胞の反逆にも、フロンタルに反目する時点で全く同情はしていなかった。

 

ローゼンズールが容赦ないビーム射撃を同胞に見舞う。

 

アームクローがオールレンジで動き、放たれるアームメガ粒子砲が、ガザD、ギラドーガ、バウ、ギガン、ゲルググを連続で破砕させる。

 

向かい来るドライセンに対し、シールドメガ粒子砲を放ち、高出力ビームの下に破砕。

 

更にその後方にいたズサやガルスJも捲き込んで破砕させた。

 

その最中、親衛隊機のギラズールまでもが反逆に来るのを確認した。

 

「裏切り者がぁ……!!!何故大佐の素晴らしき考えが理解できんのだ!??貴様らはぁあああ!!!」

 

感情を高ぶらせたアンジェロは、1機のギラズールを滅多斬りに斬り砕いて爆散。

 

怒りの限りなまでに無惨に破壊した。

 

駆け抜ける2機の軌道の閃光。

 

その周囲には後を追うかのごとく爆発閃光が生まれ出る。

 

周囲では艦隊戦闘のビーム射撃が行き交う中で、ネオジオン同士のMS達もまたビーム射撃を展開させながら火華を散らし、また命を散らしていく。

 

残存軍同士の攻防。

その戦闘は、正にネオジオンの、ジオンの歴史が終局に向かうかのようにも思う光景であった。

 

だが、フロンタルやアンジェロ、親衛隊の存在が反逆側の攻略を難しくしているのも事実であった。

 

ネオジオン第二次内戦勃発の報道は地球圏各地に伝えられた。

 

それは既にトレーズの下へと伝えられており、予想されていた連邦対ネオジオンの図式が崩れかねない状況と判断されていた。

 

以前、連邦は高みの見物を決め込んだ傾向があった為だ。

 

即ちネオジオンが再び自滅する可能性と連邦の高みの見物的な現状維持体制が示唆されていたのだ。

 

当初の発動計画は両勢力の疲弊に介入するカタチからオペレーションを発動させるものであった。

 

総帥室にて、ディセットは直接トレーズにオペレーションの促進を投げ掛ける。

 

「トレーズ閣下、連邦の勢力が現状のまま維持されれば、当初の思惑にズレが生じます。決起体制は実質万全の常態になりました!!オペレーション発動許可を頂きたく……!!!」

 

するとトレーズは気づかせるようにディセットへと言葉を運ぶ。

 

「ディセット……言ったはずだ。この一件はお前に一任していると」

 

「しかし……!!」

 

「……かつての連邦はネオジオンを見て見ぬふりをした時期があったな。我々が予測していた展開は、アクシズ落下を阻止すべく連邦が主勢力をネオジオン全勢力にぶつける攻防……恐らくはネオジオンの自滅を辿る……連邦にかつての悪癖があればOZは疲弊していない連邦と交戦する事となる……歴史は語る……」

 

トレーズはしばらく考察した後に、目を見開き決断の意を促すように伝える。

 

「自身の決断に躊躇するなディセット。お前の意思は堅苦しくなく、自由なのだ!!」

 

「は!!では、臨時で極秘の最終議会を直ちに開き、上層部へ伝達致します!!」

 

「私自身が任せているが故にもっと意思は強くあれ、ディセット……任せたぞ」

 

「は!!ありがたきお言葉……心に染みます!!では、早速行動に移行します!!失礼致します!!」

 

ディセットは深々と感謝の意を伝え、行動に移っていった。

 

ディセットを見送ると、トレーズは席に着座し、世界情勢のデータベースを閲覧する。

 

「歴史が少しばかりの悪戯をしたようだ。我々が歴史の悪戯に翻弄されてはならない……悪戯には相応に対処する。そして、導入時の戦力は極力リーオーとエアリーズ、有人機のリゼル・トーラスで願いたいものだ……無論、上層部は私の戦いの理想像に構うことはないだろうがな」

 

OZが連邦の一部を取り込みながら確実に台頭への秒読み段階に入っていく。

 

それは正に宇宙世紀の革命のカウントダウンを意味していた。

 

それより数日後、ネェル・アーガマと行動を共にしているゼクスやミスズにも、暗号回線を通じてオペレーション発動日時が伝えられた。

 

ゼクスとミスズは、ネェル・アーガマ内の一室にて、自身のポケットデータベースを介しながら正規に受け取っていた。

 

「ふっふふ……遂に来るか……!!」

 

「あぁ……発動直前までに全MS及び戦艦に搭乗若しくは武装をせよ……か。世界・地球圏規模のクーデターだ。壮絶な状況になるだろう」

 

「歴史的な戦闘が展開されるだろうな。あの痴話喧嘩の類いな訳はあるまい……」

 

窓の外へと視線を移すミスズ。

 

二人がいる一室の窓の向こうでは、ネオジオンの内乱の情景が映つる。

 

やはり連邦は高見の見物姿勢を決め込んでいた。

 

無論、ゼクスやミスズの意はそれに反していた。

 

「あの中ではフル・フロンタルが闘っている……仮にあの中の戦闘が彼の最後だとしたら決着を着けたくてならない」

 

「ふっふふ……疼くか?ゼクス。私も正直、高見の見物は性に合わん……OZの特権でどの道我々は動ける。行くか?」

 

「時も近い。そうさせてもらおう……!!!」

 

行動を移したゼクスとミスズは、OZの特権である「いつ如何なる時でも独自の判断で行動をできる」事を実際に行動した。

 

ネェル・アーガマを後にするトールギスとリゼル・トーラス。

 

ゼクスは目の前に迫る戦闘に高揚感を覚えていた。

 

「トールギスは、1機で1000機のMSを相手にする戦闘が想定されたMSだそうだ。流石、あのガンダムの先祖だ……と言うところか!!!お前の無双両成敗、試させてもらおう!!!」

 

「ゼクス……独り言か?」

 

「ふっ……愛機への語りかけだ。後はリディがうまくやってくれるかだな……見込みがあるだけに気がかりだ。じゃじゃ馬の白馬の王子はネェル・アーガマの姫様を連れ出したい一心だったしな」

 

「お前もだゼクス。私を連れているぞ」

 

「ふっふふ……言うな、ミスズ!」

 

気にかけとのろけを踏まえながら2機は瞬発的な加速をかけてネオジオンの内乱へと向かった。

 

一方、リディは連邦とOZに思いが揺れるミヒロを説得していた。

 

日付が迫っている為にリディが焦る中、ミヒロはリディに訴える

 

「ちょっと、リディ!!私、まだ心に準備できてない!!帰るあてはあるの!?」

 

「ミヒロ!!時間が無いんだ!!俺はお前を失いたくない!!」

 

「だからと言って、今までの仲間を撃てるの!?OZのクーデターってそう言うことよ!?」

 

「それは……けど、俺はクーデターでミヒロを失いたくない!!お前を守れる最善の方法と踏んだから、俺は……!!!少なくともネェル・アーガマは討たない!!!だからここから離れる!!!」

 

「リディ……」

 

「ミヒロ……」

 

リディはミヒロを抱き寄せた。

 

「……ここから先は連邦の時代が終わる……そうなれば俺達は必ず淘汰されるだろう。無論、親父も……今後の俺達の為にも……行こう、ミヒロ!!」

 

ミヒロを抱き締める力がリディの想いをミヒロに伝える。

 

「……リディ……」

 

ミヒロはリディのその想いにようやく向き合い、抱き返した。

 

一方、ジオンへの蹂躙は日々過剰になっていく。

 

野戦キャンプ地にΞガンダムが襲来し、ビームバスターをデザートザクやデザートゲルググ、ドム・トローペンへと上空から射抜く。

 

「キヒヒ!!!てめーらみてーな虫けらは容赦しねー!!!キヒヒー!!!」

 

キルヴァの非情たる射撃はこれだけでは収まらない。

 

キャンプテントが並ぶエリアにもビームバスターを撃ち放つ。

 

起動前のザクキャノンやザクタンク、ギガンにもビームバスターを直撃させて爆破させる。

 

もはや民間同然の彼らとてキルヴァにとっては獲物に他ならない。

 

業を煮やしたドム・トローペンが、バズーカを撃ちながら、Ξガンダムに迫る。

 

Ξガンダムは攻撃をものともせずに、バズーカを射抜いて腕を破壊。

 

胸部にビームバスターを直撃させた。

 

「あーひゃひゃ!!あーひゃひゃ!!脆いな~脆い!!!」

 

爆破するドム・トローペンを嘲笑したキルヴァは、更にザクキャノン、ドムキャノン、ザクスナイパー、ゲルググを射抜き続け、彼らの補給物資が纏められた箇所にも射撃が注がれる。

 

「キヒヒ!!まんま食えなくなっちまいな……!!!しゃあ!!!」

 

追い討ちをかけるように野戦キャンプ全域にファンネルミサイルを放ち、無情非情の雨を降らせた。

 

廃墟と化した野戦キャンプには、無惨な末路を辿った兵士や支援していた民間人の姿があった。

 

「キヒヒ……!!!虫けらぁ……ひゃひゃひゃぁ!!!」

 

 

 

そこから程なく近いエリアでドム・トローペンやザクキャノン達がホバー走行をしながら対空射撃を慣行する。

 

その対空射撃の相手は、非情になってしまったロニが駆るペーネロペーだった。

 

「ジオン風情が!!!ペーネロペーに楯突くか!!!」

 

ペーネロペーはビームバスターを突き刺すように撃ち放ち、その一発一発を確実に直撃させて爆破を連鎖させる。

 

決して被弾レベルでは済ませていなかった。

 

ロニはモニター上に映るジオン勢のMSをロックすると、ペーネロペーをデストロイドブレイク・モードへと可変させる。

 

「ファンネルミサイルでは勿体無い……これで一気に蹴散らす!!!」

 

爆破的な加速をしたペーネロペーは、鋭利な先端部をドム・トローペンに激突させながら言葉通り一気に蹴散らす。

 

更にウィング部でも両端の機体を破砕。

 

大きく飛び立ちながら加速すると、旋回しながら再びドム・トローペンやデザートゲルググへと激突させる。

 

更に加速されたデストロイドブレイクは、ジオンの機体群をバラバラに破砕させた。

 

そして、最後の1機、デザートゲルググがペーネロペーに最後のビーム射撃を放って抵抗する。

 

「っ……悪あがきに過ぎん……っ!??っく、死ねぇ!!!」

 

狂気的に目を見開いたロニは、更なる加速をさせてデザートゲルググを粉砕した。

 

「はぁ……はぁ……っ!!!なんだ!??一瞬あのMSからした感覚は?!!」

 

ロニはデザートゲルググから一瞬妙な感覚を覚えていた。

 

それは彼女の本来の潜在意識が抵抗した現れであった。

 

彼女は元は反連邦活動の一環でゲルググにも乗っていた。

 

その経験が彼女を刺激したのだ。

 

だが、直ぐに切り換え、次なる任務に意識をやった。

 

 

 

Ξガンダムとペーネロペーが2機がかりでジオン残存軍が占拠する基地へと強襲をかける。

 

上空から2機のビームバスターの射撃が降り注ぎ、ザクⅠやザクⅡ、グフカスタム、ドム、ザクスナイパーの機体群に対し、蹂躙の限りを尽くす。

 

だが、この基地には多くの戦力が集中しているようで、次々とザクⅡのカスタム機が射撃してくる。

 

「雑魚がうぜーな!!!やばいぜ……ってなぁんてな!!んなわけねぇだろぉ……射撃訓練になるぜぇ、おい!!!」

 

Ξガンダムの怒濤たるビームバスターの射撃がザクⅡやグフカスタムを射抜き続ける。

 

キルヴァにとっては最早射撃遊びの絶好の的であった。

 

直撃を喰らい続けるザクⅡ達は破裂するように爆破されていく。

 

一方のロニは、ビームバスターの射撃をしながら、キルヴァ同様にザクⅡやドムを破砕し続ける。

 

だが、いかんせん数が多い為に合理性にかけると判断すると共に苛立ちも感じていた。

 

「ふん……こういう場面こそ、ファンネルミサイルだ!!行くがいい!!!ファンネルミサイル!!!」

 

ペーネロペーからファンネルミサイルが射出され、多数のファンネルミサイル群が、えげつないまでの攻撃をかける。

MS達の装甲や基地の地表、基地自体を無造作なまでに破壊する。

 

突き刺さるファンネルミサイル群は、次なる獲物を求めるようにして飛び交い、MSたるMSを襲っていく。

 

「しゃあーねー、ファンネルミサイル、エクスターミネート!!!!」

 

キルヴァもこれに便乗するようにファンネルミサイルを放ち、ビームバスターを撃ちながらの攻撃をかける。

 

ロニ以上に殺戮意識が高いキルヴァの意識は、ザクⅡやドム、グフを滅多突きにして縦横無尽に破砕たる破砕を尽くす。

 

ジオンの機体群が玩具同然に粉砕され、虚しく破砕されていく。

 

ロニもジオンへの憎悪を刷り込まされ、ジオンのMSたるMSを狙い定め、破砕させていく。

 

「ジオンは敵……私から全てを奪った敵……!!!」

 

破壊に破壊を重ね、ファンネルミサイルを飛び交わせながら、Ξガンダムとペーネロペーはビームバスターの射撃も合わせて行う。

 

場を変えたジオン残存勢力エリアにおいても同様の破壊を尽くす。

 

Ξガンダムとペーネロペーのタッグは正に悪魔な組み合わせであった。

 

上空へ射撃するジオン残存軍のMS達であるが、機体の歴然な差から為す術はない。

 

ビームバスターとファンネルミサイルにより、どの機体もある意味平等と言っていい程に破壊されていった。

 

Ξガンダムとペーネロペーの狂気たるビームバスターとファンネルミサイルの蹂躙は、完全に壊滅するまで行われた。

 

日夜残存軍に物資を提供していたジオン残存軍の輸送機・ファットアンクルの補給隊にΞガンダムとペーネロペーの刃が襲う。

 

「面倒くせー連中は排除するんだってよ!!!」

 

「補給など……させてなるものか……」

 

4機のファットアンクルにΞガンダムとペーネロペーから放たれたファンネルミサイルが襲う。

 

更に追い討ちを重ねに重ね、Ξガンダムとペーネロペーは二手に別れ、メガビームサーベルで斬り刻みまくる。

 

機体は全周をズタズタにされたあげく、機関部や翼、機種部をメガビームサーベルで熔断されていった。

 

ファンネルミサイルとメガビームサーベルの刃が瞬く間に4機のファットアンクルを撃墜させた。

 

「キヒヒ……楽勝な任務だぁ!!!」

 

「次なる任務もある……行くぞ!!!」

 

「キヒヒ~……了解ぃ!!!」

 

 

 

敗戦したジオン残存軍の拠り所たる基地に、任務の場所を移したΞガンダムとペーネロペーが蹂躙たる蹂躙をしかける。

 

どの機体も戦闘がやっとという常態であり、多くの傷病兵を抱えていた。

 

だが、全く躊躇なくΞガンダムとペーネロペーは攻撃を加える。

 

ビームバスターとファンネルミサイルの脅威が兵の弱者達に襲いかかり、ビームバスターの連続直撃は、弱った機体や傷病兵達を容赦なく破壊し、死へ誘う。

 

「こーいうの……好きだなぁ、おい!!!」

 

意識を向けた地帯へファンネルミサイルの蹂躙攻撃を加えるキルヴァ。

 

豪快なまでにザクやズゴック、ゴッグ、アッガイ、グフがズタズタに破砕させていく。

 

ロニも意識を向けながら巻き上げるようにしてファンネルミサイルを展開。

 

ザクⅠやデザートザク、ゴッグ、ハイゴック、ザクⅡが無惨に粉砕されていく。

 

更に見下すようにしてビームバスターを放ちまくる。

 

多くの悲鳴が響く中で1機の勇者が駆けつけた。

 

「あ!??身の程知らずか……!!!」

 

敵機を捉えた方に意識を向けたキルヴァに、1機のイフリート、イフリート・シュナイドの姿が飛び込んだ。

 

「けっ……たった1機で何ができんだぁ!!?あぁ!??」

 

真っ直ぐに突き刺すがごとくファンネルミサイルを飛ばすキルヴァ。

 

だが、ファンネルミサイルはあろうことかヒートサーベルの素早い剣捌きにより吹っ飛ばされた。

 

「はぁ!??んだそりゃ!??」

 

キルヴァがまさかの事態に唖然を食らう内にイフリート・シュナイドは一気に迫り、クナイ状の武装を投げつけながら一太刀をΞガンダムへ見舞った。

 

 

 

ギャザァアアアアアア!!!

 

 

 

「覇ぁああああああ!!!」

 

 

 

ズガガガガギャキャキキキガァアアアア!!!

 

 

 

イフリート・シュナイドのパイロットは気合十分にしてΞガンダムを滅多斬りに斬り捌いた。

 

だが、斬る事はできず、殆どは打撃常態であった。

 

しかし、それに構うことなく、更にイフリート・シュナイドは鉄槌を食らわせて離脱する。

 

突如とした不意討ちにロニも唖然を隠せなかった。

 

「なんだ!??あの機体は!??一体……?!!」

 

イフリート・シュナイドのパイロットはスピーカーを全域に響かせて言った。

 

「今のうちに避難しろ!!!俺が時間を稼ぐ!!!」

 

その声を聞くや否や、生き残っていた人々に希望が湧いた。

 

誰もが彼の声に後押しされ、行動に移っていく。

 

キルヴァは何が起こったのか把握できずにしばらく固まり続ける。

 

「は!?は!?は!?意味わかんね……ガンダムならいざ知らず……あんな雑魚に?!!」

 

「おい!!キルヴァ!!任務に集中しろ!!!」

 

「ああぁ!!?わかってんよ……絶対に殺す!!!」

 

ロニの叱咤に反応したキルヴァはイフリート・シュナイドに狙い定め飛び立つ。

 

追撃に出るキルヴァの射撃が、怒り任せ故に中らない。

 

更にロニの眼下に映る必死なジオン残存兵達の姿が、かつての自分が支援していたジオン残存兵の記憶を揺さぶる。

 

「っ……!!?また!??私は……なぜ拒絶する!!?なぜ?!!」

 

洗脳された脳と本来の彼女の記憶が去来し、頭を抱えながらロニは苦しみ始めた。

 

「この地は俺の心の故郷。連邦の悪魔の好きにはさせん!!!」

 

渾身の想いで、イフリート・シュナイドはターンしてΞガンダムに斬りかかる。

 

その時、ビームバスターの射撃がショルダーユニットを破砕させた。

 

「構うことはない!!!覇!!!!」

 

再び斬撃を浴びせるイフリート・シュナイド。

 

だが、次なる斬撃はキルヴァの怒りを頂点に立たせる。

 

「調子にのんじゃねーぞっっ!!!ジオン野郎!!!!」

 

後方至近距離からのビームバスターが、イフリート・シュナイドのライトアームを丸ごと吹っ飛ばす。

 

だが、撃つよりも斬って斬り返したい一心でメガビームサーベルを取り出し、イフリート・シュナイドへ突き立てた。

 

だが、闘牛士のごとくイフリート・シュナイドはこれを躱し、レフトアームのヒートサーベルの斬撃を浴びせ、カウンター斬りを見舞う。

 

「守りたいもんがあるとな……無茶したくなるのさ……わかるかぁ!??」

 

再び連続斬撃がΞガンダムを襲う。

 

格下に斬撃を食らい続ける屈辱。

 

格下に斬撃を食らい続ける怒り。

 

そして、焦りがキルヴァに支配される。

 

男の信念と気合が機体の性能差をカバーしていた。

 

「ちぃ……!!!」

 

「お前は……何の為に戦っている!??連邦への忠誠か!??」

 

「キヒヒ……忠誠か……違うなぁ……欲望の為に決まってんだろ!!!殺したいから殺す!!殺戮したいから殺戮すんのさ!!!!特に貴様みてーなうざい奴をな!!!!」

 

「……!!!!この、外道め!!!!」

 

理不尽過ぎる理由に男の怒りも頂点に達し、怒りの一太刀をΞガンダムの脳天に浴びせた。

 

だが、同時にヒートサーベルも砕けてしまう。

 

それでも残った刀身で連続突きを繰り出すイフリート・シュナイド。

 

男の姿勢は正に旧世紀日本の伝説の侍集団・新撰組の「志道背くあるまじきこと」のようであった。

 

男は引くことを考えていなかった。

 

「やべぇ……やられる……!!!」

 

「うぉおおおっ!!!」

キルヴァは男のメンタルに圧倒されていた。

 

「うっ……うぁああ……怖いよー……助けてよぉ……!!!!」

 

見るも聞くも無惨に弱気になったキルヴァに対し、男は折れたヒートサーベルを止めた。

 

「………わかったか!??蹂躙される者の気持ちが?!!一方的な恐怖とは……こういうものなのだ……!!!」

 

「は、はいぃ~……って、んなわけねぇだろ、バーカ!!!!」

 

「?!!」

 

 

 

ディガガガガガズズズゥゥ!!!

 

 

 

「ぐふあああっ……何ぃ?!!」

 

イフリート・シュナイドにファンネルミサイルが幾つも突き刺さり、コックピットにも到達する。

 

完全にキルヴァの心理的な不意討ちに男はやられたのだ。

 

「キヒヒ……死ねぇ……!!!!」

 

 

 

ザヴァウンッ、ザヴァガァ!!!

 

 

Ξガンダムのメガビームサーベルの袈裟斬りと薙ぎの斬撃がイフリート・シュナイドを容易く破断させた。

 

「みな……すまん……!!!」

 

「しゃああああああ!!!!」

 

 

 

ザシャガ、ザザザザガガシャウッ、ズバババザシャアアアア!!!!

 

 

 

バズドォバガァアアアアアアアアッ!!!!

 

 

 

キルヴァの非情下劣極まりない斬撃は、イフリート・シュナイドと男の信念を無惨に斬り潰し上げ、爆散させた。

 

最早、外道もいいレベルと言うまでにキルヴァは非道下劣に撤していた。

 

「キーヒヒヒヒ!!!散々俺に斬撃浴びせやがった報いだ!!!!ざまみやがれ!!!!キーヒヒヒヒヒャヒャ!!!」

 

キルヴァは再び基地に眼光を向けると狂喜を浮かべて飛び立つ。

 

キルヴァは狂喜に狂気を混ぜ混むような感情でΞガンダムを突き動かした。

 

「残った連中……皆殺しだぁああ!!!」

 

キルヴァが戻ると同時に、基地がある地点に爆発と閃光がはしった。

 

 

 

北米・オーガスタ研究所

 

 

 

人体メンテナンス施設に置いて、マリーダは人体実験に近いまでの調整を受けていた。

 

マリーダは拘束椅子に座らされ、体の至る箇所に注射器を射し込まれ、得たいの知れない薬品が投与される。

 

「いや、いや、いやぁああああああああ!!!!あたし……あたしぃぃ……壊れるぅ~……あああああああああ!!!!」

 

「ひーひひひひ!!!!この、声を聞きたくてこの、人体調整が楽しみなんだなぁ!!!!」

 

「ベントナ所長!!プルトゥエルブの体は限界を越えています!!!これ以上は死に至りかねません!!!頻繁にこれでは……!!!」

 

「後少しだけだ!!気にするなぁ!!!」

 

数値的にもマリーダの人体には危険域を越えていた数値が示されていた。

 

彼女に投与させる安定剤は既に十分に満たされていた。

 

今の彼女に投与されていたのは完全に新薬で全く効果が不明なモノであった。

 

只わかるのは、危険かつ激痛を伴わせるものだということだ。

 

「あああああ!!!!あぐぅあああぁあぅぅうっ!!!!」

 

「ぐぅひーひひひひ!!」

 

ベントナは彼女の悲鳴が聞きたいという半ば趣味を踏まえながら実験に及んでいた。

 

狂気と狂喜の笑いをいつまでも浮かべる。

 

そして更にこの後、ベントナは更なる蛮行に移し、薄暗い一室で情事におよんだ。

 

ベントナは己の欲望のままに、マリーダの躰という躰を弄び続ける。

 

「ひーひひひひ!!いくらでも受けてくれるなあぁ……ぐぅひ!!」

 

「はいっ……マス、ター……」

 

「ひーひひひひ~……ひひひ~いい子だぁ、プルトゥエルブ~……まだまだつきあってもらうぞ~……ひーひひひひ!!」

 

ベントナの欲望の人形に成り果てされてしまったマリーダの目は完全に光りを失っていた。

 

「……私……っは、マスターの為に……」

 

「そうだぁ~……ひひひ……」

 

ベントナはマリーダにのし掛かりながら深い接吻を尽くすと、欲望の限りを尽くし始めた。

 

マリーダは全てを虚ろな瞳で、薄暗い天井を見つめたままプルトゥエルブとしてベントナの欲望を受け続けた。

 

 

 

ヒイロは意識が眠る中、マリーダの夢を見ていた。

 

今だ覚めないヒイロの意識の中で様々なシチュエーションのマリーダが去来する。

 

出会った直後の彼女とのやりとり、ウィングガンダムの修理を共にした時、オルタンシアでの日々のヒトコマ、ヒトコマ、コックピット内の通信やりとり……これまでの様々なシーンをヒイロは見ていた。

 

(マリーダ……)

 

ノーマルスーツのメットを外し、髪をかきあげるマリーダ。

 

(マリーダ……)

 

髪を靡かせながら振り向くマリーダ。

 

(マリーダっ……!!)

 

ヒイロに口許を微笑ませた笑みを向けるマリーダが去来したその時―――。

 

「マリーダっっ!!!」

 

ヒイロはマリーダの名を叫びながら目覚めた。

 

そこには合間を縫って看病していたプルがいた。

 

「わ!!!びっくりした!!!あたしはプルだよ♪」

 

「プル……?」

 

「お目覚めで寝ぼけちゃってるのかな?マリーダのお姉ちゃんだよ☆さっきからずっとマリーダ、マリーダって呟いてたんだよ!!ヒイロはマリーダのコト、本当に好きでいてくれてる……ありがとう☆じゃあ、早速アディン達を呼んでくる!!」

 

颯爽とプルはアディン達を呼びに駆け出しながら寝室を飛び出していった。

 

静に上体を起こしたヒイロは、手をかざして確かに生きている事を確認した。

 

「……生きている……か……」

 

死を完全に覚悟しての自爆だった。

 

だが、生きていた。

 

Gマイスターとしての覚悟では、ある意味任務は失敗していた。

 

だが、ヒイロの中で任務よりも先出た想いがあることに気づいていた。

 

「マリーダ……!!」

 

目覚める直前にもあったマリーダへの想いだ。

 

ヒイロはマリーダのイメージを想い浮かべながら、かざした手にはしる痛みを押しこらえながら強く握り締めた。

 

「任務は失敗したが……死ぬに死ねない!!!」

 

死と生の狭間から目覚めたヒイロに芽生えたのは、闘う意志とマリーダと再会したい想いだ。

 

ヒイロは射し込む陽射しに眼光を送り、改めて打ち立てた決意を認識した。

 

その視線の遥かなる向こうでは、ライバルたるゼクスが戦闘に身を投じていた。

 

「おぉおおお!!!」

 

レフトアームに装備したバスターランスを突き出し、ネオジオン勢のMS達を突き抜けるように連続破砕。

 

振り向きながら各方向にドーバーガンを幾度も撃ち放ち、各個連続撃破させて見せた。

 

そして、その銃口をシナンジュへと向けた。

 

対し、シナンジュはビームバズーカ・ランチャーをトールギスへと向ける。

 

二人の仮面の男は互いの銃口をかざしながら不敵な笑みを浮かべて対峙し合った。

 

 

 

 

 

To Be Next Episode




二人の仮面の戦士はアクシズで再び刃を交える。

ゼクスとフロンタルはその刃に異なる仮面の信念を賭して激突する。

その間にもネオジオン同士の互いの身を削ぎ合う内乱は、終わることなく続く。

一方、自爆の重体から及んだ長きに渡る眠りからヒイロが目覚め、また一つの事が動き始める。

更にプルも乗船し始めたことにより、マリーダ捜索にも兆しが見え始めた。

そんな中、ガランシェールはガルダーヤを通過する。

だが、そこは連邦の理不尽な輩達に占拠去れていた街だった。

そして、各地で震え続ける宇宙の動きの中、戦い続けるゼクスとフロンタルの決着の瞬間が迫る……。

次回、新機動闘争記 ガンダムW LIBERTY

エピソード 20 「仮面の対決、再び」


任務了解……!!!

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