新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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エピソード18「ガランシェール、合流」

両肩のウィングバインダーを展開させたキュベレイMkーⅡは、妖艶たる両眼を青空へ目指すように飛翔した。

 

迫り来る海賊のMSを眼下にし、プルもキュベレイMk-Ⅱと共に標的を見定める。

 

「あたしがアディン達を守るんだから……!!!」

 

キュベレイMk-Ⅱの尾にあたるファンネルコンテナが持ち上がり、幾多の小型のビーム攻撃機が射出された。

 

キュベレイMk-Ⅱの周囲を プルの意識を乗せたファンネルが飛び交う。

 

プルは静かに目を閉じて、眼下にいる海賊のMS達をイメージし、意識を集中させる。

 

そして、彼らのハイゴックやズゴックE、ジュアッグ、ザクマリナーが水面上に姿を見せると同時に、かっと瞳を見開いて叫んだ。

 

「いけっ!!!ファンネルッッ!!!」

 

プルの意識を乗せた幾多のファンネルが、俊敏に動いてターゲットを目指す。

 

敵機に向かうファンネルは、無造作なまでにビームを撃ち鳴らし、突き進む。

 

そのビームは、瞬く間にターゲットの機体を叩き砕くかのように撃破していく。

 

ビームに叩き貫かれたターゲットは、瞬時に爆砕して海面に巨大な水しぶきを発生させる。

 

装甲の厚いズゴックEやハイゴッククラスの水中MSも、いとも簡単に装甲を爆砕させてみせ、ファンネルのビームの破壊力を伺わせた。

 

「……次も来る!!!いくよ、キュベレイ!!!」

 

ニュータイプのフィールド感覚で増援を感じたプルは、 キュベレイMk-Ⅱを海面に向かって急降下させる。

 

その降下する海面に、ドムトローペンやマラサイ、ハイザック、ジムコマンドを水中用にカスタマイズした機体達が姿を見せる。

 

更に楠んだ蒼のカラーのズゴックE、ハイゴック、が

6機体が浮上した。

 

各機は浮上したと共に射撃を慣行し、キュベレイMk-Ⅱへとビームやミサイルランチャー、ガトリングを撃ち込みはじめる。

 

モニター上に迫る海と弾幕を見据えながら、プルは初めて乗るキュベレイMk-Ⅱを自らの手足のように操縦してみせ、ハンドランチャー部のビームサーベルを発動させる。

 

「中らないよ!!!」

 

キュベレイMk-Ⅱは機体を回転させて攻撃という攻撃を躱し、その間にマラサイマリナーとハイザックマリナーをファンネルのビームの雨で撃ち砕き潰す。

 

次の瞬時には急降下にのせたビームサーベルの斬撃をドムトローペンマリナーに食らわせて斬り裂き、レフトアームのハンドランチャーをジムコマンドマリナーに近距離から食らわせて撃破してみせた。

 

プルはきゅっと強い眼差しを向けながら、ズゴックEやハイゴックに機体を向け、モニターに映り込むターゲットを睨む。

 

「今、アディン達は目立って戦えない!!だから、あたしとキュベレイでアディン達を守るんだ!!!」

 

更に機体前面にファンネルを並べ、ハンドランチャーとファンネルの連続射撃をズゴックEとハイゴックに浴びせ、敵機体を砕き散らした。

 

爆発による巨大な海水の水柱が立つ中、キュベレイMk-Ⅱは両肩のウィングバインダーを展開させた。

 

プルは更なる敵影の存在を感じていた。

 

それはオルタンシアから約2㎞先の水面上に姿を浮上させていた。

 

海賊達の母艦であった。

 

「この先……まだ敵がいる……今倒したMS達のボスだ……っ!!!」

 

プルはこれを感じとり、一旦ファンネルを格納させ、キュベレイMk-Ⅱを向かわせる。

 

否、人機一体故に共に向かうといった方がいいだろう。

 

モニター上の海面が線路のレールのごとく駆け抜ける光景を見据えながら少女の視線が突く。

 

浮上した潜水艦は旧ジオンのユーコン級の潜水艦だった。

 

ユーコン級側は既にオルタンシアに標的を絞っており、ミサイルランチャーハッチから連続射撃を強行させた。

 

垂直に打ち上げられたミサイル群が、一定高度から角度を変えてやや斜め下真っ直ぐに向かい始めた。

 

このままオルタンシア直撃コースの弾道である。

 

プルはコントロールレバーを動かし、キュベレイMk-Ⅱを上昇させてミサイル軌道とランデブーする位置へと上昇させていく。

 

機体位置とミサイルの弾道がやがてリンクする位置に到達すると、プルは上空にキュベレイMk-Ⅱと共にミサイルを迎撃する。

 

「ミサイルなんかに……アディン達をやらせないよ!!!」

 

モニター上には向かい来るミサイルとの距離が表示されるが、プルには関係ない表示だった。

 

プルは迫るミサイル群との距離を感じとり、ファンネルを展開させる。

 

そして、ミサイル到達するタイミングとプルの感覚とがリンクした。

 

プルは目を見開いて、ファンネルへと意識を注ぎ込んだ。

 

「……―――っ!!!ここっっ!!!」

 

ファンネルのビームが一斉に向かい、ミサイル群を狂い無く撃ち砕いてみせた。

 

「今しかない!!いくよ、キュベレイ!!!」

 

次の弾頭が装填されるまでに時間がない。

 

一気に加速したキュベレイMk-Ⅱは、機体が出せる最高の飛行速度を叩き出して飛ぶ。

 

風、空気を切り裂いて突き進むキュベレイMk-Ⅱ。

 

プルはアディンを、その仲間を守りたい一心でキュベレイMk-Ⅱと共に突き進む。

 

そして、装填される段階が終了する間際に、キュベレイMk-Ⅱはユーコン級に到達しようとしていた。

 

プルの意識を注ぎ込んだファンネルが、一斉にユーコン級の上空に集結する。

 

次の瞬間、ミサイル発射と同時タイミングでファンネルのビームの雨が注ぎ込まれた。

 

ユーコン級は凄まじく各部を爆砕させて一気に轟沈した。

 

巨大な水柱が立つ中、プルはホッとコックピットで胸を撫で下ろす。

 

プルはコントロールレバーを撫でながらキュベレイMk-Ⅱへとに語りかけた。

 

「ふぅ……ありがとう、キュベレイ!!やったね!!ふふっ♪」

 

プルはモニター表示方向をオルタンシアの方向へと向けると、その方向を見ながら安堵の言葉をこぼす。

 

「ホントによかった……みんなを守れて……」

 

戦闘の光景を見ていたアディンとオデルは、彼女の戦闘センスに唖然を食らっていた。

 

「プルは……初めて乗ったんだよな……!??」

 

「あ、ああ……」

 

すると、アディン達の隣で戦闘を見ていたハワードが、アディンとオデルに諭すように溢した。

 

「守りたい一心での行動……そんだけ想われてるのさ……特にアディン、お前さんはな……その行動するコトがこの結果に繋がった。もちろんそれだけじゃないだろうがな。きっとかつてのネオジオンや今のオーガスタで訓練受けていたんだろ……」

 

「確かにあれほどのMSの操縦は、すんなりできるものではない。きっと特殊な訓練が必要だ。やはり先の戦争は、ニュータイプを戦争の道具として幼い少女までも巻き込んでいたというのか……!!!」

 

オデルはかつての戦争の非人道さに憤りを覚えさえもしていた。

 

だが、アディンはそんな過去の囚われよりも、彼女の行動に対して感謝と、彼女に守る行動をさせてしまう現状の歯がゆさを打破せんとする気持ちがうずめく。

 

「……プル……サンキューな……っ!!!やっぱりいつまでもコソコソしてらんねーよ!!!兄さん!!」

 

「アディン……」

 

「この半年以上の間……それまでと正反対な状況で闘ってきたけどさ、今の状況は逃げ隠れ以外の何者でもねーよ!!今こそ行こうぜ!!!宇宙へ!!!」

 

その状況を、ラルフはタバコを加えて聞いていた。

 

タバコを消しながら溜め息を吐くとアディンとオデルへ提案を飛ばした。

 

「じゃ……そろそろ宇宙への切符でも手に入れるか?」

 

「ラルフ!!」

 

「切符の有効時間が少ない。それこそ行動するなら今からだ!!ジオン残存軍の情報屋とコンタクトがとれた。今がチャンスだ!!!」

 

 

 

アフリカエリア上空

 

 

 

成層圏近くを飛行する一隻の貨物挺。

 

ジンネマンがキャプテンを務めるガランシェールだ。

 

青空を突き進むブリッジ内では、頬杖をついたジンネマン、時折体をストレッチさせながら前方を見据えるフラスト、操舵に集中するギルボアの姿があった。

 

「地球に来て早半年……今だマリーダの手掛かりは掴めんか……」

 

「地球に潜伏している同胞達の情報網ではクシャトリヤは連邦の連中が回収していった……に止まってます。どこに収容されているかは未だわかりません……可能性は絞れてますが……この船の戦力で行くにはとても無謀です」

 

クシャトリヤとマリーダが捕らわれている可能性の収容場所は、アフリカエリアの連邦軍基地かニュータイプ研究所であるが、乗り込むには戦力が余りにも不足していた。

 

故に今は同胞からの戦力収集の為の情報を待つしかなかった。

 

フラストがデータベースを立ち上げながら、次の新な動きを伝えた。

 

「それでなんですが、実はついさっき連絡をとっていた残存軍の情報屋がとんでもない繋がりを得まして……マリーダ以外にメテオ・ブレイクス・ヘルとの繋がりができましたよ」

 

「本当か!??」

 

「はい。近日中に交渉をこちらに繋げてくれるとの事です……っ!!キャプテン!!話してる傍から通信が入りました!!回線開きます!!」

 

「ああ!!」

 

ブリッジのモニターに通信を入れたと思われる人物が表示された。

 

「どーも、ミスター・ジンネマン、ガランシェールのみなさん。初めまして。メテオ・ブレイクス・ヘルのラルフ・カートです。話は仲介の残存軍情報屋から聞いています。単刀直入ですが、お宅の貨物挺でうちの二人の『騎士』を宇宙へ上げてもらいたい。その替わりに可能な限り希望に答えます。そちらの欲しい利はありますか?」

 

正に利害が一致する瞬間であった。

 

ガンダムという力が加勢してくれる程ありがたい事はない。

 

他にもオペレーション・ファントム発動時の頃にマリーダが彼らの世話になっている。

 

ラルフもまた最小限のリスクでアディン達を宇宙へ上げる術を欲していた。

 

ジンネマンはマリーダが世話になった一件も考慮し、直ぐ様承諾に移行する……訳にはいかなかった。

 

ジンネマンは焦る想いを抑え、慎重に対応する。

 

「その前にまず、あなた方が本当にメテオ・ブレイクス・ヘルなのかという証拠をみせてもらいたい。こちらもあいにく慎重なんでな。例えば……今あるやり取りの情報を手にした第三者が偽りのコンタクトを取ってきている……とかな」

 

「さすがは慎重ですね。もっともこちらも身が身なので可能な限りはお見せします……」

 

ラルフは映像のアングルをずらし、眠るように格納されたガンダムジェミナス01、02を映す。

 

「確かにガンダムだ……だが、本当かどうかの……ん!?」

 

「どうされました?」

 

ジンネマンは一時止まり、確実に彼らを信用できる事柄の証明要素を思い出した。

 

「そうだ……以前、うちのMSが修理の世話になったときいた。その際、私の義理娘……マリーダの姉妹がそちらにいたともきいた。その子を一目見たい」

 

ラルフもその事にはっとなり、早速応じた。

 

「わかりました。しばらくお待ちをって……あ!!」

 

「む!?」

 

「ラルフー、誰と話してるの?」

 

突然、プルがジンネマンとのやり取りをしているカメラを覗き込む。

 

ジンネマンは直感で「この子だ」と判った。

 

「このおじさん、誰?」

 

「プル!!今、アディン達の為に大切なやり取りをしているんだっ……あぁ、ミスター・ジンネマン!!この子です!!この子がお会いしたいっていう……!!」

 

「そうか……この子がマリーダの……!!!」

 

ジンネマンは過酷な幼少人生を送っていたマリーダにいた姉妹を初めて目にし、「マリーダは決して天涯孤独ではない」ということを改めて確信し、彼女を見るや否や目頭が熱くなる。

 

「あ……!!おじさん……あたし、わかった!!マリーダの大切な人だ!!あたしも、マリーダ知ってるし、大切な存在だよ!!」

 

「そ、そうか……!!うんうん……!!っ……名を改めて聞きたいっ……!!」

 

「名前?あたし、エルピー・プル!!こう見えてもマリーダのお姉さんなんだよ!!おじさんは……マリーダのお父さんの感じがするけど……?」

 

「あ、あぁ……そのようなものだ……!!名をスベロア・ジンネマンと言う。よし……!!プル、俺の船にこないか!?否や……帰ろう!!」

 

ジンネマンは父性を先立たせ、用件うんぬんよりもプルを迎え入れる姿勢を示した。

 

だが、プルは戸惑う様子をみせる。

 

「どうしよ……だって、マリーダが戻るまでここで、オルタンシアで待ってるって約束したから……」

 

ジンネマンは思った。

 

なんて純真かつ健気なコなのだと。

 

ならばとジンネマンもやむ得ず引き下がる。

 

「そうか……!!なら無理には……」

 

「でも……今は待ってても、あたしから迎えに行かなきゃ会えない感じもしてる……それに、今のあたしは大切な人達も守りたい……助けになりたい……やっぱりあたし、行く!!」

 

「おぉ……!!そうかっ、ならば交渉は成立だな!!」

 

ガランシェールのブリッジ内はちょっとした安堵に包まれ、フラストはジンネマンに対していい意味であきれ果てる。

 

「っ~、キャプテン!!肝心の戦力交渉を忘れんでくださいよ!!気持ちはわかりますけど!!」

 

「や、やかましい!!わかっとるわ!!」

 

「やれやれ……キャプテンもホントに親バカな方だ」

 

そう言うフラストへ、ギルボアがなだめるように言う。

 

彼もまた子持ちの身であった。

 

「フラスト、子を持てば解るもんだ。親心っていうやつさ。只でさえ今はマリーダが行方不明なんだ。さっしてやれー」

 

「へいへい……またガランシェールに仲間が増えそうだ……キャプテンの悪い癖だ」

 

フラストはストレッチをしながらニヤっと笑う。

 

ジンネマンはもう一人の家族と再会できたに等しい気持ちとなっていた。

 

混迷の中に起こったささやかな幸福を、ジンネマンは強く噛み締めた。

 

「では、そうと決まれば座標値を教えて欲しい。こちらからそちらへアクセスする!!」

 

フラストは、データベース操作をしながら、ラルフに座標値を求める。

 

「了解、こちらの座標をまた送らさせていただく。ではっ、また後程!」

 

「あぁ!!よろしく頼む!!」

 

 

 

ラルフとジンネマンの交渉成立から翌日、オルタンシアにネオジオンの船が初めて停泊した。

 

オルタンシアに隣接するガランシェールにガンダムジェミナス01、02とキュベレイMk-Ⅱ、ジェミナスの強化Gユニットパーツが搬入されていく中、荷造りした専属メカニック達もガランシェールの中へと入船していく。

 

その最中、ハワードとラルフ、ジンネマンとフラストで双方の挨拶をしていた。

 

「この船の責任者のハワードだ。この度はよろしく頼む」

 

「改めまして。今回の話の交渉をしたラルフです」

 

「ガランシェールのキャプテン、ジンネマンだ。こちらこそ」

 

「航海士のフラスト。よろしくどうぞ」

 

双方共々に握手を交わし、今回の一件に関する話し合いを進める。

 

それは互いに光栄の思い入れの交わし合いでもあった。

 

「うちの騎士二人と姫君のお嬢さんを頼む。低いリスクで宇宙へ上げる事を可能にしてくれるまたとないチャンスをくれたんだ。感謝している」

 

「我々としても願っても見なかったあなた方のガンダムの力を借りる事ができ、非常に嬉しい限りだ。連邦の連中に拉致された娘の救出にはそれなりの力が欲しかった」

 

「娘?」

 

「ええ……大事な娘です。いつぞやはマリーダ……マリーダ・クルスが世話になったと聞いている……」

 

「あぁ、あのコか!!確かにうちでも面倒見させてもらったな。あんた達の話には聞いとるよ。だが、名前がジンネマンとクルスで違うが……あ、失礼だったか!?」

 

ジンネマンがちらっと横を向き、乗船しようとしていたプルに視線を向ける。

 

「ははっ、現状彼女は養子なんですがまだ戸籍は正規ではないんです……あの向こうにいる彼女はもしや……プルですか?」

 

「ああ、そうじゃ。俺達オルタンシアクルーの良きムードメーカーであり、皆のなごみ役さ。知っとるだろうが、ああ見えてマリーダの姉なんだ」

 

「この話も聞いているかもしれんが……できれば……彼女も引き取りたい。これからの一件でマリーダを見つけ助けた後、俺達の家・資源衛生パラオに連れて帰りたい……姉妹共々同じ屋根の下で生活させてあげたいんです」

 

それは切なるジンネマンの要望だった。

 

姉妹同じ屋根の下で暮らす……至極自然な事が彼女達はできていない。

 

それすらも許されない環境下が当然だったのだ。

 

「先の一年戦争の翌年に私は妻と娘を連邦に殺されました……生きていれば彼女達のように……成長した姿を見れていました……」

 

ハワードはジンネマンの彼女達に対する想いを受け取り、ムードメーカーがいなくなる寂しさの惜しみ心を押さえた。

 

「そうか……お前さんもこの時代に苦労かけられてきたのだなぁ……まぁ、さみしくはなるがそれが自然のあり方だ。プルを頼む。できうる限り戦いは避けてやってくれい」

 

「無論です。かつていたもう一人の彼女の二の舞には絶対にさせません……いえ、させたくはない!」

 

染々とハワードとジンネマンが想いを共感させる向こうで、プルは自分の部屋の私物を抱えながら、アディンと共に荷造り支度をしていた。

 

アディンと並びながらこれからの旅路に想いを馳せる。

 

「あたし達、これからマリーダを探しながら宇宙へ行くんでしょ?そしたらあたし、マリーダと宇宙で暮らせるんだ♪今から楽しみ♪」

 

「あぁ。それが一番自然でイイコトだよな。俺達はカトルんとこのウィナー財団ラボで今の体勢建て直して、宇宙での拠点を決める……で、俺達を追い詰めた連邦特殊部隊・ECHOESを叩く!!プル、無理して戦闘に出るなよ?」

 

アディンはかつていたもう一人のプルの一件を知ってからプルの身を以前よりも案じるようになっていた。

 

プル自身もアディンの感情の波長からそれをわかっていた。

 

「大丈夫だよ。わかってるから安心して☆あたしだってアディンと悲しく離ればなれにはなりたくないもん!あたしはあたしなりに闘うって決めたけど、それもアディン達の為になるからで……」

 

「プル……」

 

「キュベレイでみんなの役に、アディンの立ちたい……それにあたし、アディンが好きだから!!」

 

健気でどこか大人びたプルの雰囲気と唐突な告白に、アディンはドキッと固まる。

 

「っー…!??」

 

「ふふふ♪言っちゃった!!」

 

「ぷ、プル!!こんなときにいきなり何言い出すんだ!??お、俺はだなー……!!」

 

「ふふ~、気にしてくれてる……!!あたし、嬉しい!!アディンのキュンキュンが伝わってくるよ!!」

 

「かー!!調子が脱線すっぜ、おいっ!?」

 

更にプルは吹く風に髪をなびかせながらじっとアディンを見つめる。

 

「ねぇ、アディン。あたし、ガランシェールの部屋はアディンと一緒がいい。そしたら二人っきりにもなれる……」

 

「だぁあぁ!!まだ、俺はプルとそういう仲になるにはまだ段階って……って何言ってんだ!?俺は!?」

 

「照れちゃって~…って、あ!!」

 

ふとジンネマン達の方を見たプルは、ジンネマンに視線を合わせ、言葉では言い表せない感覚を覚える。

 

「………あの時のパパの感覚の人だ……!!」

 

「パパ!?」

 

アディンもまたプルの視線方向に目を向けた。

 

「あれはガランシェールの……!」

 

ジンネマンはこちらに気づいたことを察すると、自然と目や胸が熱くなるのを感じた。

 

「っ……!!」

 

離れた位置からではあったが、二人には離れていた親子が再会したかのような感情が過っていた。

 

プルはその時、ジンネマンが娘的な存在に対して感情移入する根幹を瞬時に知った。

 

「っく……うぅ……!!!悲し過ぎるよ……!!!」

 

「プル!??」

 

「っく……っく……あの人、心の内側に凄い悲しみを背負ってる……!!!酷すぎるよ!!!うぅっ……!!!」

 

「おいおい……って……ふぅ~、しょーがねーな」

 

ニュータイプの感覚にジンネマンが持っている過去の悲しみが伝わり、初めてそれに触れたプルは涙を押さえ切れずに泣き出してしまう。

 

アディンはそんなプルに対し、頭を撫でて宥める。

 

不器用ながら今のプルにアディンがしてやれることだった。

 

一方、連邦の手中に墜ちてしまったプルトゥエルブことマリーダは、ジオン残存軍殺戮の行動に身を投じていた。

 

オーガスタ三大ガンダムはそれぞれに散り、各地で激化する連邦とジオン残存軍の抗争に介入する。

 

 

 

アフガニスタン・北部

 

 

ハイザック4機、マラサイ3機、ドライセン2機、ガルスK2機、ゲルググ4機、ドワッジ3機が連邦のジェガン部隊やジムⅢ部隊と交戦し続ける。

 

どの機体も、死の商人からのカスタムパーツで、現連邦量産部隊とも張り合えるようになっていた。

 

それぞれにビームライフルやビームバズーカ、ビームキャノン、ビームサーベルで、応戦する。

 

各機は威信をのせて連邦サイドのMSへ撃ち込み、斬り込む。

 

その戦闘が行われる上空に、1機の黒い機影が巨鳥・ガルダから姿を見せる。

 

大気を切り裂きながら下降するそれは、ガンダムバンシィだった。

 

コックピット内では近付く大地を見据えるマリーダもといプルトゥエルブ。

 

冷徹なまでの視線で呟く。

 

「ジオンは敵……駆逐するに値する雑兵……!!!システムを戦闘モードへ移行する……!!!」

 

プルトゥエルブは戦闘モードを機動。

 

任意でNT-Dが発動し、ガンダムバンシィの各部が変形し、金色のサイコフレームを覗かせる。

 

「駆逐……開始する!!!」

 

プルトゥエルブの殺気に乗せるように、ガンダムバンシィは戦闘領域へ降下していった。

 

ビームバズーカを放ってジムⅢを仕止めるドワッジのモノアイが、連続で点滅する。

 

新な敵影を感知したのだ。

 

その方向へとビームバズーカを向ける。

 

だが、次の瞬間、凄まじいビーム渦流が上空より突き刺さった。

 

 

 

ギュダゴォオオオオオォォ…ヴォガバァアアアアア!!!

 

 

ドワッジは一瞬で潰されるようにかき消され、周囲の大地にハイザック2機ゲルググ2機とドワッジ1機を捲き込んで爆砕する。

 

アームド・バスターキャノンの威力は、ビームマグナムを上回り、バスターライフルの域の兵器に等しい。

 

一気に下降したガンダムバンシィは、レフトアームのアームド・ファングに強烈な勢いを付加させてガルスKに掴みかかった。

 

 

ガグシャアアアアアアアアア!!!

 

 

鋭利なクローに砕き潰されながら地面に叩きつけられるガルスK。

 

さらにアームド・ファングのセンターに当たるビームサーベルが発動し、至近距離からボディーを貫いて破砕させた。

 

更に振り返りながらアームド・バスターキャノンをかざし、ビーム渦流を撃ち飛ばす。

 

ゲルググ2機、マラサイ、ハイザック2機がビーム渦流に吹き飛ばされ、機体群を爆砕させる。

 

そこから急加速し、マラサイをアームド・ファングで砕き潰し、連続でゲルググをアームド・ファングで掴み砕き、穿った。

 

もう1機のガルスKがビームキャノンを撃ち放つが、ガンダムバンシィはこれを躱しながら急接。

 

アームド・ファングのビームサーベルで薙ぎ斬り、ドワッジに襲い掛かり、ビームサーベルを突き刺しながら握り潰した。

 

ドワッジの亡骸を握り潰したまま、アームド・バスターキャノンをかざす。

 

「一つ目共が……目障りなんだ!!!」

 

プルトゥエルブの憎悪を乗せてチャージされたアームド・バスターキャノンが解放される。

 

発射された唸るビーム渦流が、1機のドライセンを残して残存する敵MSを消しとばした。

 

追い詰められたドライセンは、ビームトマホークを振り回しながらガンダムバンシィに斬りかかる。

 

ガンダムバンシィはそれに自ら突っ込み、レフトアームに握り掴んだドワッジを豪快にドライセンへ叩きつけた。

 

体勢を砕きくずされ、ドライセンは転倒。

 

そこへ容赦なくドワッジのボディーが襲いかかる。

 

ガンダムバンシィは何度もドワッジをドライセンへ叩きつけ、厚い装甲にダメージを与え続ける。

 

次第にドワッジの機体はズタボロに砕かれ崩壊した。

 

ガンダムバンシィは、ドワッジを投げ捨て、ドライセンめがけアームド・ファングをぶち当てた。

 

アームド・ファングの鋭利な爪が、クローの四肢ごとドライセンに食い込む。

 

ガンダムバンシィの凄まじいパワーは、ドライセンの装甲をも容易く掴み砕いてみせた。

 

そして掴み潰しながらビームサーベルを発動させ、メインジェネレーターを貫き爆砕させた。

 

破壊の旋風の後に残るはジオンの躯(むくろ)だけであった。

 

金色のサイコフレームから出る粒子状の輝きを纏うガンダムバンシィであるが、その姿はまさしく破壊神に相応しかった。

 

「はぁ……はぁ……ジオンは、砕き葬る!!!ジオンは敵!!!ジオンは敵だぁあっ……!!!」

 

プルトゥエルブは、洗脳された偽りの記憶に支配され、同胞である筈のジオン残存軍に対し、駆逐の限りを実行していた。

 

その行為は悲劇以外の何者でもなかった。

 

 

マリアナ諸島・パガン

 

 

 

ドムトローペン4機やゲルググキャノン3機、ザク8機、重装型グフ3機、更には降下したギラズール3機、ギラドーガ3機の部隊が展開し、駆逐せんとする連邦サイドに対し戦闘を行っていた。

 

連邦サイドは、ネモ部隊やジムⅡ部隊のみを多数投下し、1機につき多勢無勢で攻め落としていた。

 

低コストでいかにジオンサイドを駆逐するかという現れであるが、いくら敵を撃破するためとはいえ、確実に卑怯に映る。

 

島内のジャングル地帯において、木々を倒しながら斬撃音や銃撃が響き渡る。

 

ホバーを駆使しながらドムトローペンがヒートサーベルでネモを撃破するが、四方向から襲いかかったネモ部隊のビームサーベルの串刺しを受けて爆砕される。

 

そこへギラズールとギラドーガの部隊が加勢しネモ部隊を撃破する。

 

更にジムⅡ部隊のゲリラ攻撃にも対しビームトマホークで応戦し、撃破して見せる。

 

更にはゲルググキャノンの援護射撃も加わり、状況は劣勢から拮抗に移しつつあった。

 

だが、絶望的たる存在がその上空に現れた。

 

「キヒヒ……何雑魚に苦戦してんだ~?イライラすんな~……キヒヒ、今から俺が大々的に駆逐してやんよ!!!ファンネルミサイルゥッ、エクスターミネートォ!!!!」

 

Ξガンダムから大量に放たれた狂気のファンネルミサイルが、キルヴァの闘争本能のままにジオンサイドへ襲いかかる。

 

彼らの周囲を飛び交い、1機、1機に回転する鋭利なミサイルがドリルのごとく襲いかかる。

 

殺戮の意思そのものと言っても過言ではない。

 

ファンネルミサイルはジオンサイドの機体の装甲を容易く貫通してみせる。

 

ファンネルミサイルを攻撃しようとするギラドーガに完膚なきまでに突き刺さり爆砕。

 

ゲルググキャノンや重装型グフ達も応戦しきれずに次々に蹂躙され破壊されていく。

 

群れるハチのごとく飛び交うファンネルミサイル群は、ジオンサイドはおろか友軍機である筈のネモやジムⅡの部隊までも標的に捲き込んで破壊してしまう。

 

「キヒヒー!!雑魚が雑魚に混じってたからついでに殺戮してやんよ!!!うぜーし!!!」

 

Ξガンダムは、飛び交うファンネルミサイルを野放しにしたまま降下し、眼下のジャングル地帯に潜むザクを目掛けビームバスターの銃口を向けた。

 

「シューティングゲームさせてくれ♪キヒヒャア!!!」

 

狂気の笑みを浮かべなから、キルヴァはビームバスターでザクを撃つ。

 

ビームバスターに抉られたザクは容易く爆砕。

 

キルヴァは機械制御的な精密射撃を慣行。

 

Ξガンダムが連続射撃で撃つビームバスターは1機、1機のザクを確実に撃破させていく。

 

旧型機に注がれるえげつない最新鋭の高出力ビームは、瞬く間にザクを玩具同然に破壊し尽くした。

 

そしてザクを破壊し尽くすと、ギラズールとギラドーガの部隊へ射撃を開始する。

 

既にファンネルミサイルにより、1機のギラズールと2機のギラドーガは破壊し尽されていた。

 

ビームマシンガンの対空射撃も空しく躱され、上空から放たれたビームバスターの連続にギラドーガ2機は射抜かれ爆砕。

 

ギラズール2機は、ビームトマホークを手に上空へ舞い上がる。

 

「ゴクロウサン……!!!」

 

非情なビームバスターの射撃と6基のファンネルミサイルの刺突攻撃が同時に2機のギラズールを襲う。

 

「あー……雑魚狩り……た~のしっ!!キヒヒャア!!!」

 

キルヴァの狂喜の直後、2機は爆炎を巻き起こして空に砕け散った。

 

嘲笑うかのごとく、Ξガンダムはその爆発を見下ろしながら両眼を光らせた。

 

 

 

北米・ ニューヨークシティー

 

最初の戦後(一年戦争)以降、旧ジオン残存軍がテリトリーのようにしてきたエリアにおいて戦闘が激化していた。

 

様々なカスタム仕様の多数のザクやグフ、ゲルググ、ドムトローペン、宇宙より降下増援したギラズール部隊やギラドーガ部隊が攻め入ろうとするジムⅢやジムⅡ、ネモ部隊と交戦していた。

 

双方の銃撃戦闘が繰り広げられ、実弾やビームの弾丸が飛び交う。

 

新鋭機のギラズールが戦闘を押し進める分、戦闘はネオジオンサイドが有利だ。

 

だが、形勢は禍々しい姿のモンスターにより一新された。

 

ペーネロペーだった。

 

コックピット内のロニは、ジオン残存軍とネオジオンのMS群を見下しながら見る。

 

「悪あがきする下劣な一つ目集団が……私は目障りなんだよ!!!」

 

バスタービームを上空から放ち、ドムトローペンやゲルググの機体群を撃ち仕留め、爆砕させていく。

 

彼らはペーネロペーに対し、対空射撃で対抗するが、その禍々しい装甲に阻まれ全く通用しなかった。

 

「効かないな……そんな脆弱たる攻撃など!!!」

 

更にビームバスターの射撃でドムトローペン部隊を仕留め続け、高出力ビームの餌食にしていく。

 

バスタービームの銃口を上に構え向けたペーネロペーはしばらく静止する。

 

ロニはモニターから視界に捉える全てのザク、グフ、ゲルググ、ドムトローペンをロック・オンした。

 

後は己の思考に乗せて駆逐するだけだ。

 

「まずうるさい雑魚を破砕させてやる……ファンネルミサイル!!!」

 

ペーネロペーから飛び出した大量のファンネルミサイルが、ザクやグフの機体群に襲いかかる。

 

縦横無尽に飛び交うそれは、瞬く間にザクやグフを破壊し尽くす。

 

機体群を連続で爆発爆砕させながらザクやグフ、ドムトローペン、ゲルググ達を駆逐させた。

 

このペーネロペーの攻撃により、ニューヨークシティーのジオン残存軍は壊滅に追い込まれた。

 

強化人間に変貌してしまったロニの非情な攻撃は続く。

 

「雑兵共が……貴様達は野蛮な獣同然だ!!!」

 

そして、ロニは視界に入っていなかったまだ残存するザクやグフ、ドムトローペンを凝視し、延長軸線上の機体群をロック・オン。

 

ペーネロペーは機体の一部を可変させ、特徴的なドラゴンのごとき鋭利なパーツが機体前面に出る。

 

ロニはブースト操作をし、ペーネロペーのブースターにエネルギーをチャージさせ、巨大な機体をフル加速させた。

 

荒れ狂うドラゴンのごとく爆発的な加速をしたペーネロペーは、その轟々たる体当たりでザクやグフ、ドムトローペンを一挙にかつ豪快に破砕させた。

 

更に折り返しながら仕留め損ねたゲルググやグフに襲いかかり、鉄屑のガラクタへと変貌させる。

 

「ペーネロペーの力……存分に味わえ!!!!」

 

ペーネロペーはビームバスターの射撃も追加してギラズール部隊へ襲いかかる。

 

1機、2機が射撃され、3機がペーネロペーのデストロイドブレイクにより、破砕させられた。

 

その後、至るところから上がる炎の向こうにゆっくりと降下しながら、舞い降りたペーネロペーは、両腕シールドに内蔵されたメガビームサーベルのレフトアーム側を発動。

 

形成させた長く巨大なビームサーベルを振るいながら

残存する2機のギラズールに襲いかかった。

 

ギラズールのビームマシンガンの抵抗も空しく、一瞬でその機体を薙ぎ斬り払われ、斬り上げられ爆発した。

 

「ニューヨークシティーの抵抗勢力を壊滅……任務完了……次の戦地へ行く」

 

ジオンサイドのMS群を総滅させたペーネロペーは、メガビームサーベルを解除しながら浮上し、戦闘領域を後にした。

 

各機はオーガスタ研究所から派遣されたガルダ3機を拠点に活動していた。

 

それらからの報告を、オーガスタ研究所のベントナへと集約される。

 

「Ξ、ペーネロペー、バンシィ各機は、所定のエリアのジオン勢力を壊滅させまた次の戦闘エリアへ向かいました。極めて短時間で戦闘を終結させ、順調にジオン勢力を駆逐させています」

 

ベントナは、卑屈に笑いながらその功績に満足していた。

 

「くっくくく!!我らの人体実験の成果は如実に現れ始めているな!!当面はこの方式で転戦させておけ!!短期的にジオンサイドは壊滅する……だが、我々がそれを成すよりも早くそれは起こるがな」

 

「ベントナ所長、例の件は本当に移行するんですか?我々の所属先は今後……!!!」

 

部下のやや焦り気味の表情でベントナに質問を問う。

 

するとベントナはより卑屈に笑いながら返す。

 

「くくひひひっ!!臆する必要などない!!我々はむしろ栄光の道を歩み出すのだよ!!彼等と共になぁ……!!!」

 

その表情はまさにマッドサイエンティストたる狂喜に満ちていた。

 

ベントナはその表情のままマリーダことプルトゥエルブへ通信を繋いだ。

 

「プルトゥエルブ!!聴こえるか!?応答しろ!!」

 

「はい、マスター。次の任務場所でしょうか?」

 

虚ろな目付きかつ無表情なプルトゥエルブは、ロボットのごとくベントナに次の命令を乞う。

 

「そうだ!!中東の反連邦勢力のゲリラ達とジオン残党の駆逐だぁ!!!どうやら野戦キャンプ施設まで設けているようだ!!場所は後程送る!!!バンシィで駆逐してこい!!!所で躰はどうだぁ!?躰はぁ……躰ぁ!??くきひひ!!!」

 

気色が悪いまでに舐め回すようにプルトゥエルブに質問するベントナだが、プルトゥエルブは全く嫌悪感を示すことはない。

 

「はい、異常はありません」

 

「そうかぁ!!!だがなぁ……お前には余りにもの薬物を投与したからなぁ!!!今指定した任務が終了したら定期メンテナンスしに帰投しろ!!!」

 

「はい、マスター」

 

プルトゥエルブの躰には実際に身体的に無理なまでの薬物が投与されていた。

 

いつ副作用に見回れてもおかしくない躰にされてしまっていたのだ。

 

だが、ベントナは決して身を案じてはいない。

 

研究的にも肉体的にも己の欲望を満たす道具としか捉えていなかった。

 

「イイ娘だぁ……ついでに私の躰への奉仕も忘れるなぁ!!!私への躰の奉仕だぞぉ!!!くきひひひゅう!!!」

 

ベントナはそそられるような唾液を拭う。

 

女性視点で見れば明らかにドン引く程の表情を重ねるベントナだが、一切プルトゥエルブは顔色を変えずに返答した。

 

「はい、マスター。ご奉仕させていただきますっ……!??がぁっ!??うぐぅっっ……!!!あああ!??ああああああ!!!」

 

通信中、突如としてマリーダが頭を抱えながら激しく苦しみ出す。

 

今しがたベントナが言っていた過剰強化の副作用だった。

 

更に「躰の奉仕」というワードのイメージからマリーダの潜在意識が拒絶していた。

 

「嫌ぁああああ!!!ぁああああ……ぁああああ!!!」

 

激しく声を上げながらもがき苦しむプルトゥエルブに対し、ベントナは平然とニヤケながら帰投命令をした。

 

「ようし……早速副作用がきたか!!戻ってこい、プルトゥエルブ。使い物にならん!!!ロニにやらせよう!!!ふふっ、戦闘が出来ればそれでいい……そして躰をいじらせてもらえればな……!!!」

 

 

 

ルクセンブルク・OZ総本部

 

 

 

OZ総本部の会議室では、幹部クラスの将校が集い、来る要の日に備えた会議を進めていた。

 

OZ地球圏台頭プロジェクトの為である。

 

その中には一部の地球連邦関係者も招かれていた。

 

「現在、地球圏各地において地球連邦軍とネオジオン残党軍の抗争が展開されているが、この期に決起すると言うことは更なる混乱を招く。今日は改めてオペレーションのタイミングを検討したい」

 

「最悪、三勢力による大戦になりかねない。いくら我々が用意している戦力が有利とはいえ、無駄な戦闘は避けるべきだ!!」

 

「いや、この時だからこそ我々の力を証明する機会ではないか!?新たな兵器、MDの力を見せしめるべきだ!!!」

 

「両者の疲弊を待ち、機会を窺いながらオペレーションを発動させるべきだ。ECHOESも傘下になっていることもある。特にコロニー群は徹底的に支配すべきだ!!」

 

様々な意見がその後も飛び交い、論議も相応のものとなる中、トレーズと同席していたディセットがその意見を放つ。

 

「今一度ここは様子を見るべきだと私は考えを改めます。現在の情勢はまさに第三次ネオ・ジオン抗争。ならば自ずと彼らは行く行く疲弊を重ねていく……意義あるゆえ、我々の決起はスマートに行える機会に行を動かすべきです。今の我々はいわば歴史の傍観者……今後を見据えた偉大なる歴史の舵をとる為に歴史を観察してみてはいかがでしょうか?」

 

ディセットの意見が流れた後、幹部達はざわめきを見せ続ける。

 

トレーズは微かに笑みを浮かべて瞳を閉じていた。

 

(その通りだ……ディセット。歴史の流れは常に変わる。決起を少し見送る流れに変わった。我々は変わる直前の地球圏の歴史の戦いを見つめねばならない。変わる歴史がいかにして変わるかを把握するがゆえに……しかし魂なきMDの歴史には遺憾を抱いてならないが……それもまたいか程の愚かな歴史か……見極めさせていただこう……)

 

トレーズは隣で発言を続けるディセットを窺いながらニヤリと口許を動かした。

 

 

 

とあるL3のコロニー群のエリアにおいて、コロニーが隣接する空間での戦闘が起きていた。

 

ビームの斉射撃群が飛び交い、爆発光が消えては生まれ、消えては生まれる。

 

その火中の中では、リゼルとジェガンの部隊とギラズールとギラドーガの部隊とが生死を駆けた射撃が入り乱れていた。

 

リゼルが放つ三発のビームキャノンのビームが、飛び込むようにして宇宙空間に放たれる。

 

そのビーム弾は、ギラドーガを仕止めて爆発光へと変貌させる。

 

だが、直後にはしった無数のビーム連射がそのリゼルを破砕させた。

 

ギラズールが放つビームマシンガンが、リゼル、ジェガンを撃ち仕止めて爆発を連続誘発させていく。

 

ジェガンやリゼル達も更なる反撃のビーム射撃で撃ち貫く。

 

撃ち貫かれ、爆発したギラドーガの一部の上半身が吹き飛び、ジェガンに衝突。

 

誘爆を巻き起こして両者が吹き飛んだ。

 

その最中、1機のジェガンはビームサーベルを振り払いながら唐竹の斬撃を打ち込み、ギラズールのビームトマホークと重ね合わせ、スパークを散らさせる。

 

力を拮抗させる両者の刃が弾け、一瞬の隙を突いてジェガンの斬撃の斬り払いがギラズールを斬り飛ばした。

 

だが、一矢報いるシュツルムファウストがギラズールのシールドから放たれ、ジェガンは直撃を受けて爆破する。

 

その後方では、ビーム射撃の撃ち合いが展開し、その最中をドライセンやリゲルグ、ドーベンウルフが駆け抜け、敵機たるジェガンやリゼル、ジムⅢを圧倒的な火力と武装で破砕させる。

 

対し、リゼルやスタークジェガンの機体達が機動力を活かしたビーム射撃やバズーカ、ミサイル砲撃を展開した。

 

この戦闘のすぐ近くを航行する羽目になってしまった民間船に、1機のリゼルの流れビームを受け破砕させられてしまう。

 

更には被弾したギラドーガとジェガンとが縺れ合いながらコロニーのスペースポートに突っ込み、両者の機体の爆発が誘爆を発生させ、犠牲の輪を拡大させる。

 

第三次ネオジオン抗争は、コロニー落としや資源衛生落としを筆頭に第一次同様の民間を巻き込む戦闘を拡大させており、コロニー周辺においても例外ではなかった。

 

その事により、次第にコロニー市民からの支持は薄れ、更にはパラオをはじめとするジオン系民間資源衛生からも懸念され、水面下において二分しようとしていた。

 

ネオジオンの拠点であるパラオ周辺において、ネオジオン同士の戦闘が展開する。

 

ドライセン、ギラドーガ、バウ、ガザD、ギラズールの機体達が入り乱れて戦闘を繰り広げる。

 

ビームマシンガン、ビームマシンキャノン、ビームライフルのビーム火線が幾つもはしり、爆発が発生。

 

ギラズールが連射させたビームマシンガンのビームが、ガザDを仕止め爆破させ、ドライセンの振るうビームトマホークがギラドーガを斬り裂き、バウの放つビームライフルがギラズールを射抜く。

 

まさに文字通りの同士討ちたる状況。

 

それはかつての第一次ネオジオン抗争末期の内戦のようであった。

 

「っ……!!裏切りの輩め!!我々の大儀に何の不満がある!??」

 

「スペースノイドに恥じるあるまじき行動など……誰も望みはしない!!!」

 

両者の互い違いの理念や正義が錯綜し、混迷を拡げていく。

 

時代は確実に流転し、日々たる変化を刻んでいく。

 

第三次ネオジオン抗争は確実に歴史をかき乱し、地球圏に波紋を拡げていた。

 

その最中、フロンタルとアンジェロはとある地球連邦宇宙軍の管制下のエリアに進攻していた。

 

数多くのジェガンやリゼル、ジムⅢ達が警戒にあたっていた中へ、素早く軌道を描きながらはしる二つの機影があった。

 

シナンジュとローゼンズールだ。

 

ビーム射撃群の中を駆け抜ける2機は、高速ビーム射撃と高火力のシールドメガ粒子砲を放ち、ジェガンやジムⅢ部隊を消し飛ばす。

 

矢じり突風のごとく放たれたそれは容易く装甲を射抜き、メガ粒子砲に関しては装甲を消し砕くに等しい。

 

駆け抜け続けるシナンジュとローゼンズールは、華麗に宇宙(そら)を舞いながらビームトマホークとアームクローの斬撃も見舞っていく。

 

ビームトマホークのビームの刀身が、鉢合わせるジェガン2機、ジムⅢ2機、リゼルを1機の装甲を容易く焼灼・破断させる。

 

アームクローの斬撃がジムⅢ3機をズタズタに波斬。

 

ジェガン2機をアームメガ粒子砲で破砕し、更なる刺突が2機のリゼルの胸部を穿つ。

 

零距離から放たれるアームメガ粒子ビームが、リゼルを豪快に破砕・爆破させた。

 

更にギロリと側面に眼光を移動させたローゼンズールは、その方向にいたジェガン3機とジムⅢ3機へと標的を絞る。

 

だが、先に連邦サイドのビームライフルとミサイルが複数発放たれ、ローゼンズールへと襲いかかった。

 

ローゼンズールはこれ等に対し、眼光を一瞬放ちながらシールドメガ粒子砲を放ち、圧倒的な火力でビームを相殺させてMS群をかき消す。

 

撃破を逃れたジェガン2機、ジムⅢ1機が接近して迫った。

 

だが次の瞬間、ジェガンとジムⅢの頭上からアームクローの爪が叩き貫くように穿つ。

 

破砕の爆破が2機を砕き散らし、その中をローゼンズールは突き抜ける。

 

そして、爆発の中からジェガンの胸部を貫いて、クラップ級戦艦の壁面に押し当てた。

 

そこで起きたジェガンの爆発が更なる誘爆を招き、機関部の爆破に導いた。

 

一方のシナンジュは、ビームライフルの高速射撃を継続し、高機動なリゼルを次々に撃ち貫き、すれ違い際にビームトマホークの瞬間的な斬撃を見舞って斬り裂く。

 

機体の体勢を変更しながらビームライフルを連発。

 

スタークジェガン3機が一気に爆破され、順にジェガン、ジムⅢの機体達が仕止められ、一瞬にして鉢合わせた三つの小隊を壊滅させる。

 

更に駆け抜けながらビームトマホークでジェガン、リゼル、ジムⅢを斬り捨て飛ばし、横一線にクラップ級を斬り裂き続け、轟沈させてみせた。

 

たった2機が織り成す破壊の芸術を見つめながら、フロンタルはアンジェロに今回の意図を話す。

 

「アンジェロ、この作戦はオペレーションの完遂の為の布石だ。連邦に管理された偉大なる岩はここで我々が奪還しなければならない!!」

 

「はい!!大佐!!!」

 

「この座標にまで我々が及ぶとは奴等も予想外だっただろう……ライル中佐!!頃合いだ。『偉大なる岩は我々を待っていた』全艦一斉射撃を仕掛ける!!!」

 

「了解しました……フロンタル大佐から通達!!『偉大なる岩は我々を待っていた』全艦一斉射撃……撃てぇ!!!」

 

通達されたフロンタルの命令で、ライル中佐はレウルーラ、ムサカ級8隻、エンドラ級7隻、ムサイ改級3隻による一斉射撃を仕掛ける。

 

連邦サイドのクラップ級艦隊の側面上から夥しいまでのメガ粒子群のビームが射撃された。

 

不意討ちに近い形でクラップ級艦隊は次々に直撃を受けて轟沈していく。

 

それを合図にギラズール、ギラドーガ、バウ、リゲルグ、ドライセンの部隊が次々に発艦。

 

幾多のビームマシンガン、ビームライフル、ビームトマホークの攻撃が繰り出され、ジェガンやリゼル、ジムⅢのMS部隊がその攻撃を浴びて破壊されていく。

 

戦況はネオジオン優勢の運びが持続し、シナンジュとローゼンズールを筆頭に連邦サイドの戦力を削っていく。

 

宇宙に咲き乱れる爆発光が拡がり、宙域を埋め尽くしていくその光景は歴史の激動を示唆するかのようだ。

 

各地で連邦とネオジオンの戦闘が巻き起こる一方、宇宙において更なる動きが起きていた。

 

 

 

L3コロニーエリア・資源衛生ルスタ

 

 

 

パラオ同様のネオジオン残存軍系列の民間資源衛生・ルスタの宙域にギラドーガやバウ、ガザDが三小隊編成で哨戒している。

 

その周囲には民間シャトルや輸送船が行き交い、日常の光景が宙域に広がる。

 

そこへ突如ダークブラウンカラーのジェスタやジェガン、ロトの小隊が姿を見せ、紅いカメラアイを発光させながら接近する。

 

「なんだ!?連邦の……MS!?」

 

「連邦…?!!ここはネオジオン残存軍系列の資源衛生だぞ!!」

 

「連邦がここへ!??遂にこの辺にも抗争の火蓋が!??」

 

「わー……ママ~!もびるすーつだ!!かっこいい!!」

 

「MS……!!あんなものがあるから……!!誰も争いをのぞんでるわけじゃ……!!!」

 

シャトルの乗客達は突如現れた連邦のMSに対し、それぞれの想いを懐く。

 

その時だった。

 

ダークブラウンのMS部隊がシャトルや哨戒中のネオジオンのMSに向かいビーム射撃を開始したのだ。

 

ECHOESのジェスタ部隊のビームライフルやジェガン部隊のビームバズーカ、ロト部隊のビームキャノンの放つオレンジのビームがシャトルやネオジオンMS部隊に集中。

 

無惨にかつ無慈悲に射撃対象を爆破させた。

 

カメラアイを発光させたそのMS部隊は、サインを出し合いながらルスタの周辺に展開。

 

ビームトマホークをかざしたギラドーガが1機のECHOESジェスタに襲いかかるが、ECHOESジェスタはオレンジに光るビームサーベルを振り払い、ギラドーガを斬り裂いた。

 

爆発するギラドーガを越え、2機のガザDを一瞬で斬り捨てて爆破させてみせる。

 

更にルスタ内部でもテロ同然の攻撃が展開し、彼らのMS同様の色のノーマルスーツに身を包んだ男達が、民間施設に無差別の発砲行為を仕掛け続ける。

 

老若男女問わず射殺され続け、ECHOESロト部隊の砲撃が市街地のショッピングモールや歩行者天国へと向けられた。

 

悲鳴と爆破音が入り交じった音がこだまする。

 

ECHOESジェガン部隊も、一般車両を踏み潰しながらビームライフルとビームバズーカを発砲。

 

更なる容赦のない破壊が民間人を殺戮していった。

 

その内部の一方で、本命であるネオジオンのアジトにもえげつない程の集中砲火が行われ、圧倒的な火力を誇示。

 

ギラドーガ、ガ・ゾウム、ガザD、バウの部隊は無惨に破壊し尽くされる。

 

そのビーム群の火力は連邦のMSとしても異色の威力を持っていた。

 

やがて破壊し尽くした後に彼らは、荒廃し切ったルスタ内部で通信を取り合う。

 

「ネオジオン系資源衛生・ルスタの一掃・壊滅任務完了。これより帰投する」

 

「了解。こちらルスタ周辺掃討部隊。我々も周辺の戦力と船舶を駆逐した。これより帰投する」

 

無慈悲かつ機械的なまでの感情の兵士達は、ルスタを後にして離脱していく。

 

そしてこのタイミングで、工作員達がルスタの各部に取り付けた起爆装置を作動させ、ルスタに連続爆発を発生させた。

 

瞬く間にルスタは爆炎に包まれ、まだ生き残っていた市民を巻き添えにして砕け散った。

 

 

 

混迷の流れが本格的に開始した宇宙で、OZと連邦のエース機が駆け抜ける。

 

トールギスとデストロイモードのユニコーンガンダムだ。

 

帰還中に遭遇したネオジオンの艦隊と交戦していた。

 

ドーバーガンから放たれた八発の高速ビーム弾が、バウ2機、ギラドーガ3機、ギラズール2機、ドライセンを一瞬にして砕き散らし、レフトアームに装備された新兵装・バスターランスがリゲルグを一撃で突き砕く。

 

更に突き抜ける先にいたギラズールとギラドーガ3機を突き砕き飛ばした。

 

ゼクスはモニター上に捉えている次なる敵機群を見据えながらトールギスをたくみに操り、機体を突っ込ませていく。

 

「貴君らに恨みはないが、出会してしまったからには立場上逃す理由もない……許せ!!!」

 

トールギスのバーニア出力が更に上昇し、機体を白き閃光のごとく加速させる。

 

それに連動し、バスターランスの威力も上昇。

 

大型の切っ先を、ドーベンウルフの胸部に直撃させ、激しく破砕。

 

砕け散るドーベンウルフの爆破を突き抜けながら、更にガザD3機、ギラズール2機、ドラッツェ4機、ギラドーガ3機を多角的な軌道を描いて連続で撃破させてみせた。

 

白き閃光が駆け抜けた軌跡には爆発の華が咲き乱れる。

 

「トールギスよ……やはりガンダムとの決闘が我々には望ましい戦いだな」

 

一方、デストロイモードのユニコーンガンダムが、サイコドーガ3機のビットユニットをビームマグナムで破砕させ、次の瞬間には本体3機を二発のビームマグナムで破砕させた。

 

瞬間的に反転すると、後方から接近していたギラズール3機とギラドーガ3機目掛けビームマグナムを機数分放って壊滅させた。

 

そこへギラズールの派生機・クラーケズールがシールドメガ粒子砲を放って迫るが、Iフィールドシールドでこれを相殺。

 

ビームが相殺しきると、ユニコーンガンダムはシールドを振り払うようにビームマグナムを引き替えて構え、カウンターショットでクラーケズールの胸部装甲を抉り飛ばして破砕させた。

 

その直後、ユニコーンガンダムはギンとカメラアイを光らせ、僅かな残像を残して狂ったように加速。

 

一発、一発を高速かつ的確にビームマグナムをギラズールやギラドーガ、ドライセンを撃ち抉り破壊する。

 

「ネオジオン風情め……!!!出会したからには確実に駆逐する!!!おおおおおおおおお!!!」

 

ギラズールを破砕させた後に、ビームガトリングでリゲルグや、ドラッツェ、ガルスJを瞬間的に破砕させた。

 

更に次の瞬間にはギラドーガに取り付き、ビームサーベルで強烈な連撃を浴びせ、瞬殺。

 

鬼神のごときユニコーンガンダムは、紅き残像を描きながらの高速移動で次々と敵機MSを斬り刻み、爆破させる。

 

カスタマイズされたギラズールやバウ、リゲルグ、はたまたザクⅢさえも刻み斃して爆砕させていった。

 

戦闘が繰り広げられる一方で、ネェルアーガマ艦内のミヒロは一人部屋に入り、膝を抱えながら葛藤の中にいた。

 

「OZが近々連邦を乗っ取る……か……笑えない冗談ね。もし、OZに乗っ取られるのだとしたら……ネェルアーガマもきっと……」

 

ミヒロは密かにOZの台頭の話をリディから知らされていた。

 

彼女自身もそれなりの想いで連邦に身を置いていた。

 

しかし、水面下でその連邦が乗っ取られる道を歩んでいる。

 

互いの身を案じたリディは恋人のミヒロにもOZに来るよう説得していた。

 

「OZか……また時代が変わるの?また……」

 

ミヒロの呟きに答えるようにしてトレーズが総帥室で言葉を放つ。

 

「……古い時代は変わる。この今の時代にこそ、古き歴史の繰り返しに終止符を打つべきなのだ。OZはその歯車となろう……」

 

トレーズが操作するデータベースには、オペレーション・プレアデスと表記された作戦の計画一覧表が映し出されていた。

 

「オペレーション・プレアデスの実行はディセットに一任してある。だが、実行に移るにはまだもう一段階の歴史の動きを監視する必要がある……」

 

その時、ディセットからの通信が入った。

 

「失礼致します。トレーズ閣下、先程連邦が所有していたアクシズの片割れがネオジオン勢の手に堕ちたとの報告がありました。激化が始まればそれ故に我々のオペレーションも動くべきかと」

 

「あぁ……新たな時代へ向けての実行だ……彼らはアクシズを必ず落とす行為に出るだろう。しかし、あれは落としてはならない。限りある地球という資源は守らねばならない。OZ宇宙軍への働きかけも頼むぞ、ディセット」

 

「はっ!!」

 

「だが、まだ大事の前だ。状況次第の判断に任せる」

 

「了解致しました!!では!!」

 

通信を終えたトレーズは、ふうと息をつきながらこの時代に身を投じている戦士達を想う。

 

彼の脳裏にはガンダムのパイロット、すなわちGマイスター達の存在が過っていた。

 

「メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムのパイロット達は混迷の中に晒されているだろう……龍のガンダムのパイロット……名を張 五飛と言ったか。特に彼は私と刃を交えた戦士……再戦を望んでならない。是非ともこれからの激動の歴史の時代を生き延びてもらいたいな……」

 

 

 

トレーズの再戦を望む想いの向こうでは、五飛が地球連邦軍が管理する香港のスペースポートへと殴り込むように攻め入っていた。

 

叩き下ろされるシェンロンガンダムのビームグレイブの刃が、ジェガンを叩き潰して爆破させる。

 

更にビームグレイブを振り回しながら斬り払い、ジェガンを3機をまとめて破壊・爆破させた。

 

「俺は宇宙の悪を叩き潰す!!!共に行くぞ那托!!!」

 

両眼を光らせたシェンロンガンダムはブーストダッシュしながらスタークジェガンを叩き斬り、ロトを頭上から串刺しにしてビームグレイブを突き刺した。

 

更に足許で爆破するロトから飛び上がり、空中にいるリゼル3機を薙ぎ払って斬り飛ばす。

 

そこには以前のシェンロンガンダムの気迫と力強さが舞い戻っていた。

 

その最中、シェンロンガンダムに向かって異形の巨体が上空より迫る。

 

降り注ぐメガ粒子ビームを機体のセンサーよりも早く察知した五飛はシェンロンガンダムの機体を巧みに躱させる。

 

下方でメガ粒子の直撃の爆発が巻き起こる中、シェンロンガンダムと五飛はそのメガ粒子ビームの主を見据えた。

 

「やつか……無論乗っているのも奴なんだろうな!!!」

 

その主とは改修されたバイアランカスタム。

 

即ちディエス・ロビンだった。

 

久々の好敵手との再会に両者は不敵に笑う。

 

「龍のガンダム……あの時の再戦をしようじゃないか……次こそは勝つ……!!!」

 

迫るバイアランカスタムのカメラアイが光る。

 

両者は自らのビームの刃を振るう。

 

そして闘志を籠めた刃を激突させた。

 

その一方で、同基地に到達したデュオ、トロワ、カトル達も攻撃を仕掛けていた。

 

ガンダムデスサイズのビームサイズの大振りがリゼル3機を一気に破断し、更なる振りで3機のスタークジェガンを斬りとばした。

 

ロト部隊が、ガンダムヘビーアームズのビームガトリングに蜂の巣にされ次々に破砕・爆発。

 

そしてガンダムサンドロックのヒートショーテルの斬り技にジェガン、ジムⅢ部隊が斬り倒され爆発の連続を巻き起こす。

 

「やっと五飛と合流できたみたいだな!!このスペースポートで、宇宙へ戻らさせてもらうぜぇ!!!景気よく斬って斬って斬りまくるぅ!!!」

 

デュオの気迫にのせてガンダムデスサイズの死の舞いが駆け抜ける。

 

「このチャンスは逃さない。必ず俺達は宇宙へ戻らさせてもらう。まずは徹底的に障害を駆逐する……!!!」

 

ビームガトリング、ブレストガトリングの砲火がジェガン、スタークジェガン、リゼル、ロトの機種を無作為なまでに砕き散らしていく。

 

そして、ガンダムサンドロックの怒濤の斬撃がジェガン、ジムⅢ、リゼル部隊にピンボールの軌跡のごとく攻め入る。

 

ガンダムサンドロックの機体は青白く輝き、PXシステムが発動していた。

 

「僕たちは宇宙に帰るよ……ロニを僕から奪った世界を、ガンダムを壊す為にね……!!!!」

 

だが、コックピット内のカトルの表情はいつになく静かなる狂喜を出していた。

 

その先を見据えたかのように薄ら笑い、ターゲットを斬り刻む。

 

一方、アディン、プル、オデル達は旅立った矢先に海賊ならぬ、空賊のMS部隊に遭遇し、ガランシェールからの発進を余儀なくされていた。

 

「アディン、恐らくはかつてのティターンズ系のMS達だ。問題はないだろうが油断するなよ!!特にお前はお転婆かつ天真爛漫なお姫さまのナイトだからな!!」

 

「えへへ♪ありがとう、オデルお兄ちゃん!!というわけでアディン、あたしとキュベレイ守ってね♪でもあたしもがんばるよ!!皆のために!!」

 

「兄さん……ったく、相変わらずからかいやがって~……あぁ、わかったよ!!!任せとけっ!!!ガンダムジェミナス・バーニアン01でキメルぜぇ!!!」

 

ガランシェールからガンダムジェミナス・バーニアン01、02、キュベレイMk-Ⅱが飛び立つ。

 

それをジンネマンはプルの身を案じつつも、ガンダムの手並み拝見にのぞんだ。

 

「例のガンダムの手並み拝見させてもらおう。いずれにせよ俺達の戦力では厄介な戦力だ……プル……無事に帰ってくれよ……!!!」

 

それぞれのGマイスター達が戦う中、マリーダと再会した時の事をアディンやプルに考慮されたヒイロは、ガランシェールの一室に身を移し、未だ眠る意識の中で眠り続ける。

 

再び戦場に身を向ける日まで……。

 

 

 

To Be Next Episode




宇宙へ再び戻ろうとするガンダム達に、連邦の大部隊が立ちはだかる。

五飛は再びディエスのバイアランと対決し、デュオ、トロワはそれぞれ抗い、カトルは変貌した狂気を抱えたまま宇宙を目指す。

マリーダ捜索中のアディン達もまた、ガランシェールに襲いかかる空賊のMS群を迎撃し、プルも自らの意思で守るべき者の為に戦う。

一方、宇宙ではネオジオンが分裂し、アクシズを掌握したフロンタル派と、フロンタルを危惧する反フロンタル派の内戦が勃発し、歴史に新たな歪みが起こる。

更にまた一方ではキルヴァとロニが蹂躙を重ね続け、ジオンに対し無慈悲な現実と殺戮を押し付ける。

その時、無謀なまでに果敢と立ち向かう戦士が現れた。

次回、新機動闘争記 ガンダムW LIBERTY

エピソード 19 「抗いの戦士達」

任務……了解!!!


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