新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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読者の皆様、長らくお待たせ致しました。今後も諸事事情により連載に波があるかも知れませんが、御了承ください。

それではエピソード17、スタートです!!


エピソード17 「星屑の赤い彗星」

 

 

北米 オーガスタ研究所

 

 

 

爆発音が鳴り響く中、叩き伏せるかのようにガンダムサンドロックがヒートショーテルを振りかざし、ガンダムデスサイズがビームサイズを振り回してジェガンやジムⅢを斬り飛ばす。

 

そしてガンダムヘビーアームズが機体を踏み締めながらビームガトリングとブレストガトリングをぶっぱなし続け、迫ったジェガン、ジムⅢ部隊を砕き散らす。

 

その光景はオペレーションメテオ発動時の光景を再現させたかのように見える。

 

だが、今は支援施設が乏しく実際には組織が壊滅していた。

 

メテオ・ブレイクス・ヘルが長期間の劣勢に陥っているにも関わらずカトル達は敵基地へ強襲をかける。

 

目的は二つ。

 

一つはHLVを奪取して宇宙へ帰還する。

 

二つはマリーダとロニの救出。

 

だが、後者は叶わぬ運びに進みつつあった。

 

ロニは新たなガンダムに乗り込み、瞳を閉じながら攻めいるカトル達を感じていた。

 

「来ている……忌々しい存在……ガンダム!!!!」

 

過ぎた強化処置の末にロニは闘争に駆られ、眼光は鋭いものに変わり、コントロールグリップを握る手にも力が入る。

 

ロニを収めたガンダムを見つめ、キルヴァはΞガンダムのコックピットで独特の笑いを交えながらそのモニター越しのガンダムの名を溢す。

 

「キヒヒ!!ペーネロペー……お手並み拝見だなぁ……!!!!ロニ!!!いこーぜぇ……!!!!」

 

「あぁ!!!!ガンダムを……メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムを……駆逐する!!!!」

 

「その後は……キヒヒ!!!“また”ベットで俺の相手頼むぜ~……キヒヒ!!!!」

 

淫らな発言をするキルヴァに対し、ロニは気丈にあしらう。

 

「こんなときに馬鹿な発言はするな、キルヴァ!!!!」

 

「ヘイヘイ……キヒヒ!!」

 

「ふん……だがまぁ、お前の仕事ぶりで褒美として考えてやる……ふふっ!!」

 

「じゃあ……決まりだなぁ」

 

あろうことかロニの記憶はキルヴァをパートナーとして捉えてしまっていた。

 

全てはベントナとキルヴァによるものであった。

 

そうとは知らないカトルは、ガンダムサンドロックと共にロニの救出を信じてオーガスタ基地を突き進む。

 

「うおぉおおおっっ!!!」

 

連撃されるヒートショーテルがジェガン、ジムⅢを切断させていく。

 

ビームやミサイルの直撃を浴びながらもそれは止まらない。

 

「そらぁ!!!そらそらそらそらぁああああ!!!!」

 

ガンダムデスサイズのビームサイズが縦横無尽に振りかざされ、ジムⅢ達をバラバラに破壊し、振り切りながらジェガン3機を斬り飛ばす。

 

「戦力は削ぎ落とす!!!残存部隊が居ればHLVの発進妨げになる」

 

アーミーナイフでジェガンに襲いかかり、連続でジェガン部隊を斬って駆けるガンダムヘビーアームズ。

 

着地地点でビームガトリングを突き出し、ジェガンやジムⅢの部隊へぶちまけるかのごとく射撃し、破砕させる。

 

基地に鳴り響く轟音の中、デュオは敵機を斬り飛ばしながら突っ込みすぎるカトルを気遣う。

 

「おいおい!!!いくらなんでも無茶すんなよな、カトル!!!もしかしたらあん時のガンダムも出てくるかも知れねーんだからな!!!」

 

「わかってます!!!けど、この向こうにロニが居ると思うと……!!!」

カトルのそんな気持ちも考えたデュオは、攻めの角度に切り替えて気遣った。

 

「ヘイヘイ……ぞっこん……か……よっしゃっ!!やってみろ!!!!」

 

「もちろん!!!!」

 

カトルの気迫と共にガンダムサンドロックの力強いクロススラッシュがジェガン2機を斬り砕く。

 

その時だった。

 

3機のガンダムのコックピットに新たな機影を警戒するアラートが響いた。

 

「新手―――!?!」

 

「おいでなすったかい……!!!」

 

「やはり……そう来るか……!!!」

 

半分は見据えていた。

 

だが、もう半分は見据えていなかった。

 

オーガスタ基地の地下ゲートが開き、Ξガンダムとそれと同じクラスのガンダムであるペーネロペーが浮上する。

 

そのモンスター然としたシルエットに三人は唖然を食らわざるを得なかった。

 

3機のガンダムをモニター越しに見下ろすロニは鋭い眼光で睨み付けた。

 

「ガンダム……!!!!忌々しい敵!!!!」

 

素早い作動速度でカトル達のガンダムをロック・オンしたロニは一気に思念をファンネルミサイルにのせて撃ち放った。

 

ペーネロペーから放たれたファンネルミサイルは、無尽蔵に雨嵐のごとく注がれ、衝撃と爆発が絶え間無く連続で襲いかかる。

 

ガンダムサンドロック、ガンダムデスサイズ、ガンダムヘビーアームズの装甲では容易には破壊できないが、鋭利な先端の形状と高速激突が内部危機に影響を与えていく。

 

「くぅっ……!!!」

 

「適格な攻撃法だ……!!!」

 

「おいおい……デカぶつガンダムが2機もかい!??」

 

エラーアラームが鳴る中で、カトル達は衝撃を耐えしのぐ。

 

だが、ペーネロペーは休む間を与えることなく握りしめたビームバスターを放った。

 

「絶対に叩く!!!」

 

ガンダムサンドロックは、ヒートショーテルをクロスさせながら防戦を強いられる。

 

叩きつけられていく高出力ビームが、ガンダムサンドロックとカトルを疲弊させていく。

 

「くっ……!!!このガンダムは……!!!」

 

カトルは思考では説明し難い何かを感じ、ペーネロペーに対し攻撃を避けていた。

 

カトルはその感覚にまさかと感じ、通信を繋げようと通信操作をしようとした。

 

だが、ロニは阻むようにして更なるファンネルミサイルの雨を仕向ける。

 

ペーネロペーから放たれた幾多の鋭利な弾頭が、突き刺さるようにガンダムサンドロック、更にはΞガンダムと交戦に踏み切ろうとするガンダムデスサイズ、ガンダムヘビーアームズにも直撃していった。

 

「がぁああああっ!??」

 

「くっ……!!!」

 

2機はバランスを崩し、直撃を受けた反対方向に機体を飛ばされる。

 

素早いブースト操作で機体を立て直したガンダムデスサイズとガンダムヘビーアームズは、反撃に撃って出た。

 

「やってくれんじゃねーか、デカぶつガンダムさんよぉ……死神様はご立腹だぜぇ!!!!」

 

ビームサイズを降り構えてガンダムデスサイズを突っ込ませるデュオ。

 

トロワのガンダムヘビーアームズはビームガトリングを唸らせながら、Ξガンダム、ペーネロペー双方のファンネルミサイルを連続撃破させていく。

 

「キヒヒー!!!なかなかの射撃テクだぁ……なっ!!!!」

 

キルヴァはトロワの射撃テクニックに気を向けながらガンダムデスサイズのビームサイズを受け止めてみせる。

 

「こんちきしょーがっっ!!!!」

 

「キヒヒ!!!少しチューンしたΞガンダム……見せてやるぜぇ!!!!」

 

Ξガンダムのビームサーベルを押し込むパワーが遂にガンダムデスサイズを上回る。

 

デュオとキルヴァに眩いスパークが照される中、拮抗が崩れ始める。

 

「おいおい……マジかよ!??相棒がパワー負けかよ!??」

 

「キヒヒ~……マジだよっ!!!!」

 

キルヴァはニンマリ笑うと、一気にビームサーベルを押し込んで圧倒し、ガンダムデスサイズをアスファルトに激突させた。

 

「ぐあぁああああっっ!??」

 

「デュオ!??奴らのガンダム……やるな……だが、まだ引くわけにはいかない!!!」

 

トロワはビームガトリングをΞガンダムとペーネロペーに向かい交互に射撃して被弾させる。

 

ロニはそれに構うことなくビームバスターをガンダムサンドロックへ叩き込み続け、キルヴァもビームバスターの銃口をガンダムヘビーアームズに向けて撃ち放つ。

 

ビームバスターのビームが、ガンダムヘビーアームズの胸部に直撃し、ガンダムヘビーアームズは大きく吹っ飛ぶ。

 

「くっ……!!!」

 

ガンダムヘビーアームズのコックピット内で幾つものエラーアラートが鳴る。

 

機体の衝撃が、他機構に影響を及ぼす。

 

一方のカトルは、遂にペーネロペーへの通信回線を開く。

 

カトルの第六感が、この向こうにロニの感じを感じて止まなかった。

 

「こちらGマイスター……もしかして、その禍々しいガンダムを操縦しているのは……ロニなのかい!??」

 

「馴れ馴れしく話しかけるな!!!ガンダム!!!!」

 

「ロニ!??」

 

ギンと両眼を発光させたペーネロペーは、押し迫るようにガンダムサンドロックに襲いかかった。

 

「死ねぇ!!!!」

 

ペーネロペーは、メガビームサーベルを取り出し、力強くガンダムサンドロックへと叩き付ける。

 

重い衝撃を、ヒートショーテルで受け止めるガンダムサンドロック。

 

散らされるスーパークから伝わるように変わり果てたロニの声がカトルに襲いかかる

 

だが、カトルは屈せずにロニに呼び掛ける。

 

「くっ……ロニ!!そんな感情はロニらしくないよ!!ロニは……僕の知っているロニはそんなんじゃ……!!」

 

「貴様など知らん!!私にはイカれてはいるが、パートナーがいる!!少々欲情が過ぎて躰が困るのが難だが……ふふっ……酷く濃厚だぞ……おかげで夕べも疲れた」

 

「そんっ……な――――!!?!」

 

「それに、お前のようなか弱そうな口調、態度、知ったかのようなふるまい……実に好かない……うざいから殺してやる!!!」

 

「……ロ……二―――!!!!」

 

カトルの純粋な心が崩壊した瞬間だった。

 

これまでに純粋にロニを想い続けていたカトルにとって、精神的な拷問だった。

 

否、それは拷問を越えた蹂躙に等しい。

 

現実的な汚れと精神的苦痛が、カトルの心を容赦なくひねり潰しにかかったのだ。

 

ペーネロペーは更に闘志を失ったカトルのガンダムサンドロックを圧倒し、ヒートショーテルを捌き飛ばしてメガビームサーベルをぶち当てる。

 

 

ザァガギャアアアアアアアアッッ!!!

 

吹っ飛ばされたガンダムサンドロックは無気力なまでに落下し、アスファルトへ叩きつけられた。

 

更には追い討ちを掛けるがごとく、ファンネルミサイルの集中放火を浴びる。

 

 

キュキュキュキュコカァアッッ―――ドッドドドドドッドドドドガガガガァア!!!

 

 

激しいコックピット内の振動の中、カトルは放心状態のまま、ただただシートに身を委ねる。

 

経験したことの無い絶望が、カトルを包んでいた。

 

強力な衝撃にガンダムサンドロックの内部機器は悲鳴を上げるようにエラーアラートを鳴り響かせる。

 

ペーネロペーはビームバスターを容赦なく重ね重ね直撃させていく。

 

 

 

ドォズドォ!! ドォズドォ!! ドォズドォ!! ドォズドォ!!

 

ディガオン!! ディガギャッ!! ズドォアッ!! ドォドォゴォッッ!!

 

 

 

「カッ、カトル!!がぁあああ!??」

 

「キヒヒ!!よそ見してんなぁ!!!」

カトルに気をかけたデュオだが、ガンダムデスサイズの胸部にΞガンダムのメガビームサーベルが突き上げられ、不覚をとってしまう。

 

だが、ダメージの反動から体勢を立て直し、ガンダムデスサイズはビームサイズを振りかざしてΞガンダムに突っ込む。

 

「こんちきしょうがっ!!!」

 

怒りに任せたビームサイズとメガビームサーベルがぶつかり合い、再びスパークが両者の間にはしる。

 

悪魔に楯突く死神のような構図で両者は拮抗し合ったが直ぐにガンダムデスサイズが押され始める。

 

「キヒヒヒヒヒャ!!か細い死神だぁ~……なさけねーなぁ!!!!」

 

キルヴァは、目映く暴れ輝くスパークを浴びながら嬉しそうに嘲笑い、それに対し、デュオは憤りをキルヴァに向かってぶちまける。

 

「んだとぉ!??誰がか細くて情けないってんだぁ!??こんくそ野郎!!!!」

 

デュオは怒り任せにPXシステムを発動させた。

 

メインモニターディスプレイに、PXーSYSTEM STANDBYの表記が浮かぶ。

 

瞬時にガンダムデスサイズは青白く発光し始め、一気にメガビームサーベルをはね除けて圧倒し、離脱した。

 

 

 

デギャズゥッッッッ!!!!

 

 

 

「何ぃ!?!」

 

「俺達のガンダムはこいつがあんだよ!!!!PXシステムがなぁ!!!!らぁあああああ!!!!」

 

ガンダムデスサイズは縦横無尽に飛び交い、瞬く間に斬撃をΞガンダムへ浴びせていく。

 

 

 

ギュグゴォオオオオッッ……ガギン、ディギャガッッ、ザガギャッッ、ギャシャンッッ、ディッッギャガァアアアアン!!!!

 

 

 

「がっ……ぐぅっ……ちぃっ……うぜぇっ……!!!!」

 

Ξガンダムはガンダリウムγ合金の装甲で致命的な破壊は免れていたが、食らう斬撃の反動方向へ何度も機体を弾かれていく。

 

だが、ロニはやられるキルヴァにかまうことなくガンダムサンドロックを一方的に攻撃し続けていた。

 

浴びるように集中するビームバスターの高速かつ高出力のビーム。

 

そしてファンネルミサイル群。

 

無抵抗なガンダムサンドロックはマリオネットのように攻撃を受け続けていた。

 

「ロニ……ロニ……ロニ……」

 

放心状態でカトルはひたすらにロニの名を呟きながら涙を流す。

 

「カトル……一体どうしたんだ!??くっ……俺も使わせてもらう!!!」

 

この状況を脱する為に、トロワはガンダムヘビーアームズのPXシステムを起動させた。

 

青白く輝いたガンダムヘビーアームズは、倒れ込むガンダムサンドロック目掛けて高速で加速し、ペーネロペーにビームガトリングを牽制射撃する。

 

「うるさい!!!」

 

ガンダムヘビーアームズは、攻撃に反撃したペーネロペーのビームバスターを高速で躱し、倒れたガンダムサンドロックの腕を掴んで一気に離脱した。

 

「逃がすか!!!」

 

ロニは憎悪を燃やしながら飛び去るガンダムヘビーアームズを狙い撃つ。

 

だが、PXの亜光速的なスピードを前に直撃は不可能だった。

 

「くぅ!!おのれガンダム……!!!!」

 

この期を逃さまいと、トロワはΞガンダムに攻撃し続けるデュオに呼び掛けた。

 

「デュオ!!離脱するぞ!!」

 

「ああ!??何でだ!??」

 

「離脱するチャンスは今を逃す他無い!!今俺達は圧倒的に不利だ!!PXには稼動リミットがあり、それを過ぎればGNDドライヴの機能は著しく低下する!!!」

 

「ちぃっ……そーくるかっ……なら、最後に一発!!!!!」

 

デュオは渾身の怒りを任せて、Ξガンダムの頭部にビームサイズの斬撃を叩き下ろす。

 

 

 

ザァダガギャアアアアアア!!!

 

 

 

「がぁ!??」

 

急下降の直後に機体を舞い上がらせて離脱するガンダムデスサイズ。

 

ガンダムヘビーアームズもまたガンダムサンドロックを抱えて離脱していく。

 

キルヴァは眼を血走らせながらガンダムデスサイズを追撃しようとした。

 

「野郎……!!!」

 

「キルヴァ!!無駄だ……追い付けはしない。向こうのシステムが違い過ぎる。それにこれはこっちの勝利だ。攻撃を最後に貰ったが奴等は逃げざるを得なかった。そこまで追い詰めたのだ……」

 

だが、急遽ロニが追おうとするキルヴァを制止し、分はこちらにあることを諭した。

 

「けっ!!釈然としねぇが……ロニがそー言うならしゃーねーや……けどよ~さっきまで殺る気満々だったのにどーしちまった!?」

 

キルヴァはつい先程まで敵意むき出しだったロニの急な感情変化に疑問を抱いた。

 

だが、当のロニ自身も解らないでいた。

 

「解らん……何故か急に冷静になった……としか言えん」

 

ロニは、攻撃の手を緩めた自分自身の手を見つめ、感覚の裏にある違和感に問う。

 

だが、理解できないことに変わりはなかった。

 

「そう……何故か……な……だが、何故なんだ?」

 

攻撃体勢を解除したペーネロペーとΞガンダムは、遥か彼方へ飛び去っていく3機のガンダムを見続けていた。

 

脅威の力を持ったメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムに連邦のガンダムが勝った瞬間でもあった。

 

それは本家のガンダムが威厳を取り戻したかのようにも見えていた。

 

その一方、旧ジオンの鉱山基地・キンバライド基地跡周辺においてもガンダムの脅威がジオンに襲いかかる。

 

ガルスKや、マラサイ、ゾック、ドム・トローペン、デザートザク等のMSが連邦のジェガンやOZのリーオーの部隊との戦闘を展開する最中、突如として上空よりサイコフレームから金色の粒子を散らすガンダムが舞い降りた。

 

ユニコーンガンダム2号機「バンシィ」。

 

黒いボディーに、真っ赤な両眼、威圧する角、ライトアームにはアームド・バスターキャノン、レフトアームにはアームド・ファングという禍々しい容姿のガンダムだった。

 

ガンダムバンシィは、滑空しながらアームド・ファングでデザートザクを一撃で砕き散らすと、アームド・バスターキャノンを側面側にかざす。

 

チャージされたエネルギーが開放され、バスターライフルさながらのビーム渦流が撃ち放たれた。

 

一挙にドム・トローペンやガルスK、ゾックを一瞬で破砕させて吹き飛ばしてみせる。

 

残りのデザートザクやドム・トローペン、マラサイが持てる武器で攻め立てるが、アームド・バスターキャノンのビーム渦流に撃ち抉られ、無惨に残った部位を爆発させる。

 

残ったもう1機のマラサイが、ビームサーベルを降り上げて特攻するも、アームド・ファングに掴み潰される。

 

そして、腕部のビームサーベルが発動し、マラサイの胸部をビームサーベルが零距離で刺突して貫いた。

 

爆砕するマラサイの向こうより、眼を紅く、かつ不気味に光らせるバンシィが姿を見せる。

 

更にガンダムバンシィは、別箇所で戦闘しているジオン残存軍に向かって飛び立つと、アームド・バスターキャノンをかざして上空より連続して撃ち飛ばす。

 

 

 

ヴィギュゥヴァアアアアアッッ!!! ヴィギュドォアアアアアッッ!!! ヴィギュゥヴァダァアアアアアアアア!!!

 

ヴィギュリリリリリ……ヴヴァダァアアアアアア!!!

 

ドジュダァッッ、ゴヴァガアアアアアッッ、ズドシュアアアガッッ、ヴァズゥアアアアアアア!!!!

 

 

 

ジオン残存軍のドム・トローペンやガルスJ、ズサ、デザートザク、グフカスタム、ドワッジがビーム渦流の前に成す統べなく砕き散らされた。

 

ドダイに搭乗上昇しながら果敢にヒートソードで斬りかかるイフリートの斬撃すらも、腕ごとアームド・ファングで掴み砕き、ビームサーベルを突き刺して破砕させた。

 

コックピット内には、息を荒くする黒い専用ノーマルスーツを着用したマリーダがいた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……私はプルトゥエルブ……私の敵はジオンとガンダム!!!ジオンは敵っっ!!!」

 

マリーダの感情に比例するかのように、眼下の残っていたザク改にバンシィがアームド・ファングをかざして襲いかかる。

 

えげつないまでの衝撃と共にザク改を襲い、地面へと押し潰され砕き潰される。

 

「あぁああああああ!!!敵ぃいいいいい!!!」

 

マリーダの高ぶる感情と共にザク改を砕き潰して爆破。

 

ガンダムバンシィの脅威の姿が燃え上がる炎の向こうに佇む。

 

正に死を知らせる存在ともとれる、恐怖の威圧を醸し出していた。

 

「敵はジオン……そして、ガンダム……!!!」

 

 

 

数日後―――オーストラリア上空・衛生軌道エリア

 

 

 

大気圏よりも手前を以て、クラップ級の地球連邦軍艦隊が防衛ラインを張りながら砲撃に砲撃を重ねる。

 

その方角には、ムサカ級、エンドラ級、そして旗艦レウルーラのネオジオン艦隊が同じく砲撃に砲撃を重ねていた。

 

宇宙(そら)に生まれては消える無数の爆発光の中へ出撃していくジェガンやリゼル、ジムⅢの部隊。

 

ネオジオンサイドからはギラズール、ギラドーガ、バウ、ドライセン、ガザCの部隊が攻め混んでいく。

 

ビールライフルがはしり、ギラズール達を貫き、ビームマシンガンが唸り、ジェガン達を砕き散らす。

 

はたまた可変したリゼルがバウへ銃撃。

 

撃たれて爆発するバウが苦し紛れにビームライフルを放ちリゼルを破壊。

 

別のバウが一撃離脱でリゼルをビームサーベルで斬りモノアイを発光させる。

 

ギラドーガが放つビームマシンガンの嵐にジムⅢが蜂の巣にされ爆発。

 

そこへスタークジェガンのビームバズーカの砲撃が食い込みギラドーガは敢えなく爆破。

 

ドライセンが放つビームマシンガンに腕を破壊されたジェガンがシールドミサイルを撃つ。

 

この直撃を受けながらもドライセンは平然とビームトマホークでジェガンを連続で斬り裂く。

 

そこへリゼルのビームライフルが幾つも食い込み、ドライセンは爆破。

 

そのリゼルも、ギラズールのビームマシンガンに撃たれて爆発した。

 

複雑に飛び交う攻防の中の向こうに、巨大な円筒形の物体があった。

 

廃棄スペースコロニーA1752コロニーだ。

 

この戦闘におけるネオジオンのねらいたる象徴であった。

 

その前を進むレウルーラから紅い彗星と紫の薔薇が飛び出す。

 

フロンタルとアンジェロだ。

 

アンジェロは新な機体・ローゼンズールを駆り、シナンジュの守り手として就いていた。

 

早くも彼らに攻撃をかけるジェガンやリゼルの部隊が突っ込む。

 

シナンジュはかざしたビームライフルを放ち、連続で3機のジェガンを仕留める。

 

ジェガンは直撃部を円形に熔解され連続で爆破。

 

そして駆け抜けながらレフトアームに握るビームトマホークの長い刃でリゼル3機を破斬する。

 

そこから対空砲火の中へと飛び込み、各艦を防衛するリゼルやジェガン、ジムⅢをロックする。

 

「我々のオペレーション・ファントム……止めて見せるがいい!!!」

 

 

 

ビィギュイィイイイッ!!! ビィギュィイイッ、ビィギュィッッ、ビィギュィイイ、ビィギュィイイッッ!!!

 

ドォゴヴァンッッ、バガギャアアッ、ゴヴォガアア!!!

 

ゴォガォアアッ、ドッディガァアア!!!

 

 

ジムⅢ3機、リゼルとスタークジェガンが1機づつ撃ち仕留められ、リゼル3機、ジェガン3機へ取り付くようにシナンジュは襲いかかる。

 

 

 

ザァギャアッ、ザズバァアアンッッ、ザシュダンッッ、ザヴァガァッッ、ザザガガシュバァアアアアンッッ!!!!

 

シナンジュに取り付かれた各機が斬り捨てられ、ジェガン2機が連続斬りで斬り裂かれ爆砕された。

 

「愚物共に鉄槌を!!!」

 

 

 

ザァガドォシュッッ!!! ガザァドッッ!!!

 

ドォガゴゴォアアアアアン!!!

 

ヒュコシュッ―――ヴィギュリュドドォアアアアア!!!

 

ドォヴァジュガァアアア……ゴゴゴゴヴァガアアアアアアア!!!

 

 

 

共に駆けるローゼンズールは、ジェガン2機を両腕のアームクローで突き捨てると、アームメガ粒子砲を放ちながらリゼル2機ジムⅢ2機を瞬時に爆砕。

 

更にレフトアーム側のアームを伸ばし、スタークジェガンに突き刺して刺突部を握り潰し、ビームを零距離射撃して見せた。

 

 

 

ディッガキィイインッッ……ギギギギィ……ヴィギュゥヴァジュガアアアッッ!!!

 

ゴドヴァガアアアアアア!!!!

 

 

 

「大佐に楯突く者は、このローゼンズールで葬ってくれる!!」

 

「アンジェロ……真のオペレーション・ファントム第一の段階をここで成功させる。かつて同胞・デラーズフリートが成し得なかったコロニー落としによる連邦軍本部の破壊だ。現本部のアデレートに落とす」

 

「はい!!このアンジェロ、尽くさせていただきます!!!歴史的に価値ある瞬間に立ち合える悦び……感無量です!!!」

 

並大抵ではない2機の攻撃に連邦サイドは押され始めた。

 

ビームが飛び交う衛生軌道上の海原を駆け抜ける2機はビームと斬撃を巧みに繰り出して防衛ライン上のジェガンを排除していく。

 

有線式ワイヤーを携えたローゼンズールは、アームメガ粒子砲を敵の予測範囲外から射撃し、リゼル3機、ジェガン2機を仕留め、ビームサーベルで突きを繰り出して来たスタークジェガンの胸部をクローで突き貫く。

 

対空射撃のレーザー機銃の弾幕も躱し、シナンジュは1隻のクラップ級とすれ違いながらブリッジと機関部をビームライフルで直撃させ、轟沈させる。

 

更にその先のクラップ級艦の防衛を務めていたジェガン4機を狙い撃ち、それらの機体が爆発している隙にブリッジをビームトマホークで斬り裂いて見せた。

 

両者のモノアイがその力を畏怖させるかのように光った。

 

「たった2機……だが、されど2機……赤い彗星の再来だ!!!もう1機もただ者ではない!!!くっ……!!!上は一体何を考えているんだ!!?かつてのデラーズ紛争時の防衛戦力規模の半分の戦力でどうしろというのだ!??」

 

連邦サイドの司令官は、この戦闘状況に酷く憤りを示す。

 

否、自軍の上層部への不服、不満、怒りと言った所か。

 

「ルナ2へ通達しろ!!!!もっと戦力をよこせとな!!!!この戦力ではコロニー落としを防げん!!!!第一、何故OZすらも加勢せんのだ!?!?どうなっている!!!?まだデラーズ紛争の時の方がまともだったぞ!?!?」

 

連邦の司令士官は怒りを当てるようにオペレーターに問いただす。

 

「か、確認致します!!!」

 

オペレーターが慌てながら至急確認を取る手筈を取る一方で、レウルーラのブリッジではライル中佐がこの戦闘情景を目にして指揮を執っていた。

 

ライルはかつてのサザビーの出撃していく様や、戦闘を思い浮かべる。

 

(あの時の総帥も……自ら最前線に赴いて戦っておられた……思い出すな……)

 

「シナンジュ、ローゼンズール、既に2隻のクラップ級を轟沈!!更に進撃します!!」

 

「他の戦闘部隊は拮抗中!!廃棄コロニーへの進撃は食い止められています!!」

 

「廃棄コロニー経路に変化はありません!!」

 

「親衛隊ギラズール部隊、発艦します!!」

 

「連邦側のMS部隊に増援!!」

 

重なる状況報告の中、ライルは出撃していく親衛隊ギラズールを見ながら手をかざして次なる指示を下す。

 

「展開中の全艦は弾幕も張りつつ、一斉射撃を継続!!後方のMS隊はコロニーの守りを強化し、前面のMS部隊は攻めを強化せよ!!」

 

廃棄コロニー側にいた艦隊が更に一斉射撃のラグを縮めての一斉射撃に移行し、ズサやドーベンウルフ、重装ギラドーガのMS部隊が遠距離砲撃を強化、ギラズール、ギラドーガ、バウ、ドライセン、ガザDの部隊が攻めに突き進む。

 

連邦側も、コロニー落とし阻止の為に砲撃を強化し、MS部隊を進撃させていく。

 

衛生軌道上の海原は更なる戦火を炎上させていった。

 

だが、防衛する連邦軍の戦力はデラーズ紛争時の半分であった。

 

その背景には、ネオジオン側の狙いが浸透した結果があった。

 

ライルは別動部隊の状況の確認を取る。

 

「ルナ2とグリプス2の別動隊の状況はどうなのだ?」

 

「はっ!!現在、双方共に拮抗状況であります!!余談は許せません!!!」

 

「狙いはあくまでコロニー落としの成功であり、その為の戦力分散だ。今現在、それ以外にも各地で戦ってくれている同胞達もいるのだ。無理強いはするなと伝えろ!!」

 

「はっ!!」

 

地球連邦宇宙軍の要の一つである、小惑星要塞ルナ2への進攻攻撃と、コロニーレーザー・グリプス2の強奪を兼ねた進攻が重なっていた事にあった。

 

どちらも陥落しては連邦にとって痛手となるポイントであり、この戦闘の影響で戦力を削ぐ訳にはいかない状況となっていた。

 

特にグリプス2に至っては、地球圏に多大なる悪影響を孕んでいる。

 

今現在、ウィングガンダムのシャイアン基地テロ攻撃で遠隔制御が停止されたグリプス2は、施設での直接操作でしか制御できない状況下にあった。

 

この状況でネオジオンがグリプス2を掌握すれば、宇宙の地球連邦軍施設全ての命運がネオジオンの手の中に入るのだ。

 

同時に現時点におけるコロニー落とし阻止の最終兵器でもあった。

 

しかし、使用すれば間違いなく多くのコロニーを破壊する軌道に位置しており、実際問題使用は難しかった。

 

ルナ2宙域にビームの一斉射撃が飛び交い、幾多のMSが敵味方に爆発して散っていく光景が広がる。

 

ジェガン、リゼルの部隊が散開し、攻め入るギラズールやギラドーガ、バウの攻撃に対応して射撃する。

 

撃たれ爆破する機体もあれば、反撃で破壊する機体もいる。

 

ビームとビームマシンガンの飛び交いの中に戦士達の命のやり取りが煌めき、散っていく。

 

はたまたクラップ級の対空射撃に撃たれて爆発四散するギラドーガ。

 

刺し違えになり、クラップ級のブリッジに激突し、艦共々に爆砕していくリゼルとギラズール。

 

第三次ネオジオン抗争は誰の目からも否定できない事実として、歴史にくいこんでいく。

 

特に一番の重点を置かれたグリプス2に置いては、連邦とOZ宇宙軍が共同で攻防の中に投じ、より激化した戦闘が続く。

 

グリプス2では既に直接操作されており、いつでも発射準備は整っていた。

 

言わば戦闘状況の抑止力に近かりし存在である。

 

リーオー部隊が一斉にビームライフルを放ち、ネオジオン側のMS群を撃ち抜いて破壊する。

 

だが、ドライセンやドーベンウルフの攻めにリーオー部隊は撃破されていく。

 

スタークジェガンのビームバズーカやミサイルがはしり、ドライセンの装甲を半壊させながら止めのビームサーベルで串刺しにされた。

 

そこへ零距離射撃のビームマシンガンが放たれ、両者は爆砕。

 

ドーベンウルフには3機のリーオーがビームバズーカで攻め込み、爆砕四散させる。

 

ネオジオン側も負けじとドーベンウルフや重装ギラドーガの砲撃が唸り、ギラズールやギラドーガのビームマシンガンの一斉射撃がはしる。

 

ジェガンやリーオー、ジムⅢの部隊はこれ等に撃破されては反撃した機体が相手を仕留める。

 

攻防に攻防が重なる中、連邦やOZもルナ2やグリプス2において切り札たる戦力の象徴を投入する。

 

グリプス2の戦域で一際目立つ戦艦がいた。

 

ペガサス級戦艦ネェルアーガマ。

 

かつてガンダムの母艦としてきたペガサス級戦艦を系譜する連邦軍屈指の戦艦だ。

 

艦長を務めるのは、アデレートにも顔を見せていたケネス・スレッグだった。

 

「先行するMS隊は周囲の部隊を支援しつつ攻撃に転じろ!!本艦は砲撃を強化!!場合によればハイパーメガ粒子砲の発射もあり得る!!そちらもスタンバイしておけ!!」

 

「はっ!!」

 

「こちらも切り札たる象徴を……ユニコーンガンダムを出せ!!」

 

「ユニコーンガンダム、カタパルトデッキへ!!」

 

(ユニコーンガンダム……私も非常に興味がある……その力を是非とも見てみたい!!)

 

ケネスは個人的にもガンダムの力というモノに深い興味があった。

 

この艦もロンドベル所属の戦艦であり、今日においてもガンダムの母艦を継承している。

 

ケネス自身も配属の巡り合わせに悦びを感じてならないでいた。

 

そしてまた、ユニコーンガンダムと共にリディもこの艦に身を投じていた。

 

「俺も晴れてこの艦の所属か……しかし急な配備だったな。俺自身まだ整理がついていない……それにユニコーンガンダム……お前の力が、NT-Dが未知過ぎる!!ニュータイプを駆逐するガンダムがお前なのか!??」

 

カタパルトでスタンバイするユニコーンガンダムのコックピットでリディは機体に問いかけていた。

 

そこへオペレーターからの通信が入る。

 

「リディ、独り言?またMSと会話してんの?」

 

「ミヒロ!?あ、うん……このガンダムのシステムが気になって仕方なかっただけさ!!」

 

オペレーターのミヒロ・オイワッケンはリディの同僚であり、恋人でもあった。

 

「相変わらずMSと会話するの好きね。でもま……改めてお帰りなさい、リディ」

 

「あぁ。ただいま……そうだ!!今度一緒に映画でもどう!?久々にデートしたくてならない!!」

 

「リディ少佐……今は任務中よ?私も最低限の私語で話してるんだから!!その話は後でね!!」

 

「あ、すまない!!ははっ……よし、リディ・マーセナス、ユニコーンガンダム……発艦する!!」

 

ネェル・アーガマの中央のカタパルトより、ユニコーンガンダムが飛び出す。

 

リディは久々に交わしたミヒロとの会話を賭しながら、モニターに広がる戦域の海原へ身を投じる感覚で戦域へ突っ込んでいく。

 

ビームマグナムとビームガトリングを装備したユニコーンガンダムは、手始めに出会す敵機をロック・オンし、射撃する。

 

ビームマグナムの高出力ビームが抉るようにギラドーガを貫き、同時に後方にいたギラドーガとバウ、ガザDも高出力エネルギーの貫通を受けて爆砕する。

 

クリアーグリーンのビーム弾を放つビームガトリングのビーム弾がギラドーガ、ギラズールを撃ち抜いて破壊する。

 

「グリプス2がそんなに欲しいか!??それとも……」

 

ビームマシンガンの射撃をIフィールドシールドで相殺し、ギラズールをビームガトリングで撃ち砕き、ガザD3機をビームマグナムで一気に撃ち貫く。

 

「コロニーを落としたいのか……」

 

ビームガトリングを断続的に撃ち、ガザC4機を連続で撃ち墜とし……。

 

「ハッキリさせろよな!!?」

 

チャージさせたビームマグナムを放ち、ムサカ級の機関部を撃ち抜き、爆砕・轟沈させた。

 

ユニコーンガンダムは更に奥面まで切り込み、ビームガトリングで敵機を撃ち墜とし続ける。

 

その最中、サイコ・ドーガの機体群5機を捉える。

 

「サイコ・ドーガ……ニュータイプか……っく!?!」

 

その瞬間、ユニコーンガンダムのNT-Dが即座に反応し、コックピットシートを変形させる。

 

「き、きた……!!!NT-Dっ……ぐくっ!!!!」

 

パイロットに直接的な負担を強いるNT-Dは、非常に危険なシステムだ。

 

パイロットであるリディの体に一気にGが襲いかかる。

 

加速しながらユニコーンガンダムは各部を変形させ、ガンダムへと変形していく。

 

各部のサイコフレームが紅く鮮やかに発光し、両眼を発光させたユニコーンガンダムは、凄まじき速度で宇宙(そら)を舞いだす。

 

半残像が残る程の速さで、サイコ・ドーガの背後を捕り、ビームマグナムを速連発。

 

3機のサイコ・ドーガがビームマグナムのエネルギーに機体を抉られ爆砕する。

 

残る2機のサイコ・ドーガはビットユニットのビームマシンガンで攻撃をかけるが、瞬く間に攻撃を躱され、一瞬にして上面からビームマグナムを見舞われ爆砕された。

 

だが、ユニコーンガンダムは止まることなく飛躍し、ネオジオンのMS群へ襲いかかる。

 

ビームマグナムを何発も放ち、その脅威のビームエネルギーで幾多のMS達を破壊する。

 

ギラズール、ギラドーガ、ドライセン、ガザD、バウ、ズサ、ドーベンウルフといったネオジオン屈指のMS群が、縦横無尽に舞うユニコーンガンダムが放つビームマグナムで仕留められていく。

 

既にリディはNT-Dシステムの攻撃デバイスと化し、無情なまでにネオジオンのMSをロックしては破壊する。

 

更にビームガトリングを捨てながらビームサーベルを取り出し、駆け抜けながらギラズール、ギラドーガ、バウ、ガザC達を神がかりな速度で斬り刻み爆砕させる。

 

暴れるような破壊の乱舞は、伝承のユニコーンの狂暴さを表しているかのようだった。

ネオジオン側の攻撃を受けてもIフィールドでその全てを相殺。

 

最早ネオジオンサイドにユニコーンガンダムを止める事ができる者はいなかった。

 

ネェルアーガマのブリッジ内で、この凄まじい戦果をケネスは目の当たりにし、ユニコーンガンダムの狂暴たる性能に驚きを隠せずにいた。

 

「な……5分も経たない間に軽く10機以上のMSを……!!!!想像を越えさせるMSだ……!!!!」

 

ケネスはこの戦闘の勝利を確信し、更に暗黙のセオリーを無視した命令を下した。

 

「グリプス2オペレーターに通達!!今戦闘で発射はせずに通常戦闘配置!!繰り返す!!今戦闘で発射はするな!!!」

 

「ケネス中佐!?!」

 

「この状況……ユニコーンガンダム1機で全てが動く!!!無闇にコロニーレーザーもハイパーメガ粒子砲も使う必要はない!!!」

 

「でも、リディ一人にそんな負担……!!!!」

 

「戦闘状況に私情は挟むなミヒロ少尉……全てはこの戦闘を勝利することが先決だ……!!!!それに実際にコロニーレーザーを撃てば、この軌道では幾つかのコロニーを捲き込む……そうなれば言うまでもあるまい」

 

「確かに……そうです……」

 

ケネスはミヒロにそう言い聞かせ、再び戦闘状況に視線をやった。

 

ユニコーンガンダムはケネスの洞察通りに、たった1機で脅威の戦果を上げていく。

 

鉢合わせるMS全てを確実に斬り裂き、あるいは撃ち抉って破壊する。

 

この映像をビスト財団の二人も見ていた。

 

サイアムとカーディアスだ。

 

サイアムは暴れ狂うユニコーンガンダムの映像を見てカーディアスに問いかける。

 

「ユニコーンの力が……今、正に示されている……ネオジオンのMS達をあたかも玩ぶように破壊している……この狂暴たる様はユニコーンそのものだ。カーディアス……お前はどう感じる?」

 

「はい……私はUC計画の序章の情景と感じてなりません……ニュータイプを、ジオンを殺戮するマシン……あの機体を手懐ける事ができるのは真のニュータイプのみ……そしてラプラスの箱へ導くカギもそれにしかり……」

 

「ラプラスの箱へ導くカギたるは真のニュータイプ……その存在が現れるまで……半永久にユニコーンガンダムは暴れ続けるだろう……」

 

「少なくとも今のパイロットは真のニュータイプではありませんな……真のニュータイプと判断するはユニコーンガンダム自身か……!!!」

 

その一方で、ルナ2ではOZ側からも援軍としてMS部隊が展開する。

 

リーオー部隊がビームライフルやビームバズーカを放つその中を白い閃光が高速で飛び交い、一方的な射撃を連発させていく。

 

ゼクスのトールギスだ。

 

更にレフトアームには新兵装のバスターランスが新たに装備されていた。

 

「戦場の部隊は宇宙へ移り……私の復讐のタイミングがまた合わなくなっていく……」

 

ドーバーガンをロックした敵機へ七発連続で放ち、全弾を命中させ破砕。

 

更にチャージショットを三発を続けて撃ち放ち、出会すネオジオンのMS部隊を一気に壊滅させた。

 

だが、ゼクスのその迷いないような攻めにも、ある種の迷いを抱えていた。

 

「私は……悔やみ切れない悔しさを引きずっている……自爆したガンダムのパイロット……ヒイロ・ユイ……奴との今一度の決着を着けたくてならない」

 

ゼクスは迷いを抱えながらムサカ級に三発のドーバーガンの射撃を見舞い、直撃部を破壊。

 

遠ざかるトールギスの背にムサカは爆発を繰り返して轟沈する。

 

「何故だ!?ゼクス……何故こうまで決着を着けたい!??考えれば考える程宇宙に来た事を後悔してしまうではないか!!!」

 

ゼクスは悔やみ切れないヒイロとの決闘の後味を振り払うかのようにドーバーガンを放った。

 

後方からは一際目立つ機動力と火力を強化した黒いリゼルが、メガビームランチャーを放ってネオジオンのMS群に射撃を仕掛け、ギラズールやギラドーガのMS達を一網打尽に撃ち飛ばす。

 

メインカメラの色もクリアーイエローに変更され、通常機とは違う印象を受ける。

 

これを操っていたのはミスズだった。

 

「リゼルやエアリーズとは比べ物にならん火力と機動力だ……OZとアナハイムで共同開発したという……リゼル・トーラス……確かな機体だ!!!」

 

ドライセンのビームバズーカを躱し、メガビームランチャーを放って2機のドライセンを纏めて砕き飛ばす。

 

「半月後には地球圏のOZ宇宙軍に量産配備される……ふっ、この機体は私の好みだ!!気に入った!!」

 

ミスズはほくそ笑みながら次なるターゲットを狙い定め、トールギスの前方より迫るバウへ向かい、メガビームランチャーを撃ち飛ばした。

 

トールギスは援護射撃により破砕されたバウの爆発を突き抜けながら、機体を翻して新兵装のバスターランスを突き出しながら迫る敵機に突っ込む。

 

リゲルグ、ガザC2機、ドライセン、バウを、バスターランスの強烈な突きで連続破砕させてみせる。

 

「しかし……半年前のミスズの怪我が大した事なく済んでなによりだ。私にとっては充分な報酬といえる」

 

ゼクスはミスズのリゼル・トーラスの様子を窺いながらトールギスの武装をビームサーベルへ変更させた。

 

トールギスはバーニアの凄まじき加速力でエンドラ級へ突っ込み、バスターランスをブリッジ目掛け突き刺す。

 

エンドラのブリッジは無惨なまでに粉砕し、突き抜けるトールギスと共に砕け飛んでいった。

 

「ミスズ!!機体の加減はどうだ!?」

 

ゼクスはその戦闘の中で、ミスズを気遣う余裕を見せた。

 

ミスズもロックしたギラズールを撃ち墜としながら平然かつ嬉し気にゼクスに答える。

 

「いい機体だ!!!どうせなら私好みのカラーにして自機にしてしまいたい!!!」

 

「ミスズ自身もすこぶる快調のようだな。正直安心する。半年前、ガンダムに撃墜されたと聞いた時は焦った」

 

「私はか弱い女ではない!!!みくびってくれては心外だ……だが、ゼクスに想って貰えるのは……う、嬉しくある」

 

ミスズはほんの少し女性らしく恥じらいながら発言した。

 

「私とて、ミスズが居てくれるから心強い」

 

「トールギス……ではないのか?」

 

「トールギスは戦う剣(つるぎ)……ミスズはパートナーだ」

 

「ふふふっ……またまた嬉しい事を……」

 

ミスズは笑みを浮かべた後、再び戦闘意識に移り、敵機を鋭い視線で見据えた。

 

この各所の戦闘状況は、地球圏全土に生中継で放送されていた。

 

人々は改めて色濃い第三次ネオジオン抗争の世界情勢に突入したことを刻まざるを得なかった。

 

この情勢を一人の男が一室のテレビモニターで確認していた。

 

「歴史に必要だった悲劇は……今起こさなければならない……その為にコロニーの一つが墜ちる事もまた必要だ」

 

一つの薔薇を手に持ちながら、トレーズは監視するかのような口調で笑う。

 

コロニー落とし阻止にOZの部隊を派遣しなかった意図はそこにあった。

 

「第三次ネオジオン抗争もその一つ……宇宙世紀の世界を革新させる為の土台……礎には悲劇が必要なマテリアルなのだ。歴史はどう刻まれるか……見させてもらおう。そして……」

 

トレーズは席を立ち、総帥室の窓を開けながら広がる青空を見上げる。

 

「この状況の中で我々は動く……ディセットよ……その手筈の先陣……任せたぞ……時は近い……」

 

トレーズは側近のディセットの働きに期待をかけていた。

 

月面にあるOZの宇宙軍本部内を歩くディセットは、部下と共に次なる行動に移りながら今回の衛生軌道上部隊派遣取り下げに対して口にしていた。

 

「トレーズ様は何故今回の衛生軌道上面に部隊派遣をされなかったのです!?!あの状況下では確実にコロニーは墜ちてしまいます……!!!」

 

「堕ちれば……確実にアデレート及び周辺エリアが壊滅被害が出る……連邦本部に直撃すれば壊滅……否、連邦・OZ共にコロニー落としを防げなかった事も問われかねん……と言いたいところだが、ふふふ……それでいい……」

 

「はい!?」

 

「それでいいと言った。変わる歴史の地盤に大きな犠牲が不可欠だ。そしてOZは今……大きく動こうとしているのだ。トレーズ様の意志に添うようにな。昨今、連邦からOZへ移籍する者が増えているのは知っているか?」

 

「まさか……!??」

 

「半月後、OZが変わる。それを持ってOZは完全に歴史の表舞台に立つのだ。故に忙しくなる。既に連邦の一部とアナハイムを掌握しているしな……明日は例のガンダム開発者に造らせた新型3機を戦場に送る!!!」

 

「はっ!!」

 

ディセットの言葉は、第三次ネオジオン抗争の裏で歴史が大きく動こうとしているのを示唆していた。

 

月面基地にはリゼル・トーラス部隊と共に3機の新型機が格納されていた。

 

それを見上げる老人の男がいた。

 

メテオ・ブレイクス・ヘルを裏切ったペルゲであった。

 

ペルゲは新型を見上げながら卑屈に独り言を放ち続ける。

 

「くっくくく……地球連邦のΞやペーネロペー、バンシィもいいが、ガンダムを越えたこのMS達は傑作じゃ……メリクリウス、ヴァイエイト、そしてアスクレプオス!!!!そろそろあやつらが宇宙へ来てもいい頃じゃ……仕留めてやるぞい……!!」

 

佇む新型MSを前に三人の男達がいた。

 

「やっぱ俺は赤い機体が好きだな……が、シャアは意図しちゃいない。俺は俺さ!!!レッド・ミューラーのあだ名が疼くぜ!!!なぁ、ブルーエンジェルのアレックス!?」

 

「あぁ……とことん連邦やネオジオンの連中を粛清してやるさ……殺戮が楽しみだ!!!そう思いません!?トラント特尉!??」

 

「無論だ……そして必ずや反逆のガンダムを、特に死神のガンダムを仕止め、栄光を掴んでやるさ……!!!」

 

 

 

オーストラリア 上空 衛生軌道上

 

 

 

A1786コロニーが速度を上げて地球に接近していく最中、各所にビームや爆発光が生まれては消え、生まれては消えていく。

 

その最中、クラップ艦隊は、装填したミサイルを一斉に放ち、A1786コロニーへとミサイル群を飛び込ませる。

 

スタークジェガンやジムⅢ部隊もミサイルを一斉射撃し、同じくA1786コロニーを撃つ。

 

コロニーの外壁に幾つもの爆発が重なり続ける側面をシナンジュとローゼンズールが駆け抜け、ジムⅢ部隊を目掛け一気に射撃を連続で与える。

 

ビームライフルとアームメガ粒子砲の高出力ビームが瞬く間にジムⅢ部隊を蹴散らした。

 

更にシナンジュは側面から迫るスタークジェガンとジェガンの部隊を睨み、ビームライフルで連続して撃ち抜き、爆発のアートを作り出す。

 

ローゼンズールも両腕のアームメガ粒子砲を伸ばし、有線ワイヤーにより自由自在にあらゆる方向へ高出力エネルギーを撃ち飛ばす。

 

一定しないビームの射撃軸線に翻弄され、ローゼンズールの周囲にいたジェガンやリゼル、ジムⅢ、スタークジェガンの各部隊が立て続けに撃破され、爆発四散されていった。

 

「アンジェロ!!後は後方の部隊に任せればいい!!!所詮MSでは廃棄コロニーは墜とせん!!!我々は艦隊を壊滅に追い込む!!!」

 

「はい!!!大佐!!!!」

 

激化する戦闘の中で、2機は陽炎の中へ走るように、青い成層圏の上を駆け抜ける。

 

幾多の一斉射撃を躱し、機動性を活かした動きで機体を翻す。

 

ストライクさせるように放たれるシナンジュのビームライフル。

 

レフトアームのシールドを展開させたローゼンズールが、シールドメガ粒子砲をクラップ級の艦体を吹き飛ばすように抉り飛ばして爆砕させる。

 

シナンジュとローゼンずーる狙いは全てブリッジもしくは機関部を直撃させていた。

 

故に、シナンジュとローゼンズールに狙われた艦の轟沈は免れなかった。

 

連邦のクラップ級戦艦は、一斉射撃以外は成す統べなく対応が崩壊されていく。

 

飛び交うメガ粒子ビームを掻い潜り、文字通りの彗星のようにシナンジュはビームを適格に撃ち込み、ローゼンズールのシールドメガ粒子砲が護衛のジェガンやリゼルを瞬く間に破砕。

 

対応策が崩壊していく連邦サイドを嘲笑うように刻々とコロニーは落下軌道を進む。

 

最早結果は明白になりつつあった。

 

他の宙域においても、資源衛生の攻防戦が起こり、ギラズールやギラドーガ、バウ、ドライセン、ドラッツェ、リゲルグが飛び交い、ジェガンやリゼル、ジムⅢ部隊との攻防戦を展開させる。

 

ビームが走り、ビームトマホークやビームサーベルの斬撃、マシンガンの弾丸がそれぞれの箇所で戦う相手の装甲を抉り砕く。

 

連邦とネオジオン両者の艦隊の砲撃も展開させるが、奇襲をかけたネオジオン側が有利となり、形勢は次第に傾く戦況を見せていく。

 

レウルーラにも、各箇所からの情報が寄せられ、ライルに通達される。

 

「各方面で展開中の同胞部隊から資源衛生の確保の情報が入りました!!これより核パルスエンジンの取り付け作業に入るとのことです!!」

 

「了解した!!この戦い……我々の勝ちだな。だが、妙だ……鮮やかすぎる……ここまで鮮やかに作戦が成功するとは……」

 

「ライル中佐?」

 

「何か……裏があるのかもしれん……我々の知らない裏がな……」

 

「ですが、ルナ2においてのみ、我がネオジオンの部隊が壊滅したとの事です……!!OZの介入とガンダムの介入があったようで……!!!」

 

ルナ2の宙域では、トールギスやユニコーンガンダム、リゼル・トーラス、リーオーやジェガン、その他の部隊が戦闘を終えていた。

 

「こちらルナ2管制室!!戦闘は終了した!!OZ、連邦両軍共に攻防戦の奮闘に感謝する!!」

 

ルナ2からの感謝の意を表した通信がルナ2エリアにいるOZ・連邦の全部隊に行き届く中、ミズズがゼクスのトールギスに通信を入れる。

 

「両軍共にか……ゼクス……今の機会に例の件をリディ少佐に伝えるべきだ」

 

ミスズからの通信は、あることに纏わったリディを気遣っての通信だった。

 

「そうだな……時間は迫っているからな……」

 

ゼクスが通信コードを操作し始めたその一方で、リゼルが身を投じるユニコーンガンダムは、先程までの凶暴性を隠して静に漂う。

 

「はぁ……はぁ……ユニコーン……ガンダム……凄まじすぎる!!!!」

 

リディはNT-Dの過剰なまでの攻撃性能に自身の体を疲弊させていた。

 

そこへゼクスが2機間のみの通信コードで問いかける。

 

「リディ少佐……そのガンダム……実に苛烈な機体だな。戦いながら戦闘を見させてもらった」

 

「ゼクス……特佐」

 

「そのガンダムの力がOZにあれば実に心強い……リディ少佐……連邦の兵士としてのプライドがあることを承知で聞く。OZにこないか?是非ともその力量が欲しい……」

 

「な!?!ゼクス特佐!?!一体どういう……?!?」

 

「遺憾も承知だ!!」

 

ゼクスは迫るOZの台頭にリディの身を案じ、リディに対しての問いかけを実行した。

 

一方、レウルーラのブリッジでは、ライルは簡単過ぎる作戦成功状況に疑いの概念を浮かべる。

 

「フロンタル大佐も……無論気づいているはずだ。この簡易的な星の屑に……オペレーション・スターダストの違和感に……」

 

その視線の向こうでシナンジュとローゼンズールが最後のスパートをかけようとしていた。

 

ビームライフルのビーム火線が幾つも走り、アームメガ粒子砲が怒涛に撃ち進む。

 

たった2機の攻撃が艦隊を壊滅へと追いやっていく。

 

駆け抜ける機体の中で、フロンタルは不敵に笑いながら成功の確信を身に感じていた。

 

「ふふふ……オペレーション・スターダスト……成功だ!!!だが、アンジェロ……この成功の向こうには更なる何かがあることを忘れるな!!!成功するには簡易過ぎる……」

 

「はい!!!大佐!!!」

 

アンジェロは狂喜の笑みで返答し、クラップ級のブリッジをアームクローで破砕させた。

 

機体を翻しながら連邦の機体群を撃墜するシナンジュの向こうでコロニーA1786コロニーがゆっくりと降下していく。

 

それはやかて、大気圏の摩擦熱に表面を熱せられながら大気圏突入を開始する。

 

かつてのデラーズフリートが星の屑作戦で成し得なかった事がフロンタル達ネオジオンの手により成功を納める。

 

落下するA1786コロニーは、アデレートを目指して降下し、その巨物を連邦の新本部に叩き墜とす。

 

核による爆発と落下エネルギーにより、すべてが吹き飛び、眩いまでの爆発光を照らす。

 

起こってはならない禁断の悪夢が駆け巡った瞬間であった。

 

更にその翌日には各地の連邦主要都市に資源衛生が落下。

 

無論、予告は全く及んでいなかったが故に、多大なる市民の犠牲を被った。

 

フロンタル率いるネオジオンは凄まじき歴史的な罪を犯した。

 

それは瞬く間に地球圏の世論を駆け巡り、様々な論議を生んだ。

 

それらの情報がトレーズの下にも届き、彼に歴史のうねりを感じさせる。

 

日が差し込むOZ総帥室で、彼は想いを歴史のワルツに重ねていた。

 

「多大なる市民の尊い犠牲が出た……これに対し人々は一気に宇宙側への不審と憎悪を抱くだろう。連邦がこれまでにしてきたスペースノイド圧制に等しくな……彼らは連邦の終わりの前触れに相応しい一石を歴史に投じてくれた……」

 

トレーズは、ワイングラスに赤ワインを注ぎ、軽く振って優雅に飲み干す。

 

「OZの歴史の幕開けが始まる。だが、同時に私の意にそぐわない技術も内部に生まれつつある」

 

トレーズは、データベースを操作し、2機種のMSのデータを閲覧し始めた。

 

1機はリゼル・トーラス、もう1機はビスト財団の近衛MS、シルヴァ・バレトと瓜二つの黒いMSであった。

 

「無人MS、否モビルドール(以下MD)・シルヴァ・ビルゴ……兵士ではない無感情の戦士に私は感情を馳せることはできない。OZを広める手段とはいえど……これもロームフェラ財団もとい、イルミナントの傲慢か……ならばまだこちらの方がいい」

 

更に出したデータベース上に、ECHOES仕様のジェガンとロトが写し出された。

 

「OZに引き込む地球連邦宇宙軍特殊部隊・ECHOES……彼らのMSには簡易化したガンダムのジェネレーターがOZとしてのECHOES仕様になって運用される。これはよい変化を生むだろう」

 

トレーズはデータベースを閉じ、自らの目もつむった。

 

「ガンダムの戦士達は今、路頭にさ迷っているだろう。それもそれでいい。苦渋苦難を大いに浴びなければこの歴史への反逆はできないのだ……」

 

 

 

太平洋・フィリピン近海・オルタンシア甲板

 

 

 

ガンダムジェミナス01、02共に公の戦闘が出来ない中で、海賊のMS群の襲撃を余儀なくされていた。

 

ハワードは無線マイク越しに、オルタンシアに受ける攻撃の最中、退避指示を怒鳴るように叫ぶ。

 

「直ちに舵を切れぇ!!!全速全力で離脱しろぉ!!!奴等に知られたらたちまちガンダムの情報が漏洩しちまうぞぉ!!!」

 

「ハワード!!わかってるがよ~!!!これ以上は無理だぜ!!!」

 

「く!!!」

 

オルタンシアの航行スピードでは躱し切れず、攻撃を受け続ける。

 

アディンは響く警報音の中、出撃できない束縛感に苛立つ。

 

「くっそ!!!ジェミナスが堂々と出撃できりゃよ!!!」

 

「耐えろ!!!アディン!!!ここで俺達が出撃すれば、俺達の所在が掴まれ、今の状況よりも増してオルタンシアクルー全員に被害が及ぶ!!!」

 

オデルは、躍起になろうとするアディンを制止させて言い聞かす。

 

「くっ……!!!」

 

『あたしがみんなを守るよ!!!』

 

「!?!?」

 

突如響いたプルの声。

 

誰もが驚き、周囲を見舞わす。

 

すると甲板デッキ上にキュベレイMkーⅡが姿を見せていた。

 

「今、あたしが出来るコトをやるよ!!行くよ!!キュベレイ!!!アディン達を海賊から守るんだから!!!」

 

両肩のバインダーを展開させ、プルの意思を乗せたキュベレイMkーⅡがオルタンシアから飛び立った。

 

 

 

 

 

 

To Be Next Episode




遂にプルは自らの意思で戦いに身を投じる。

それは決して命を投げ出すものではなく、大切なアディン達の為の行動だった。

その流れの先にジンネマン達との出会い、そしてアディン達の再起に繋がる。

一方、第三次ネオジオン最中、地球では狂気の戦士キルヴァとベントナに洗脳されたロニ、そしてマリーダが蹂躙の限りを尽くして転戦。

宇宙ではフロンタル達が新たな行動に移り、ゼクス達もまた戦闘を続け、ECHOESが本腰で動き出す。

その混迷を重ねる世界の裏で少しずつOZは動いていく……

そして他の戦士達もまた、戦いに立ち上がる。



次回、新機動闘争記 ガンダムW LIBERTY

エピソード 18 「ガランシェール、合流」

任務、了解……!!!

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