新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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オペレーション・イカロスによる大規模な情報工作により、メテオ・ブレイクス・ヘルは地球圏を敵に回すことになり、コロニー側からも敵視されてしまう。

ヒイロ達は敗北を味わいながらも、闘う姿勢を止めずに任務を遂行し続ける。

一方、オペレーション・ファントムを遂行中のネオジオンはダカール近郊に集結し、いよいよダカールへの進攻を開始する。

マリーダ達ネオジオンサイドは、ダカールの地球連邦軍沿岸基地から強襲をかける。

対する連邦側は、およそ400機のMSを街中に配置し迎撃する。

遂にダカールが戦火に包まれる中、1機の新なガンダムの蔭が迫っていた……。



エピソード14 「狂気を宿したガンダム」

地上において連邦、OZ、ネオジオン、ジオン残存軍、そしてメテオ・ブレイクス・ヘルの様々な勢力が動き始める一方、宇宙では連邦軍とOZ宇宙軍が連携をとって反抗勢力掃討活動の動きを強めつつあった。

 

現時点では作戦としてではなく、各管轄エリアの部隊に掃討行動を一任していた。

 

連邦サイドが思いきった作戦を展開できないのは、メテオ・ブレイクス・ヘルのテロ活動が影響をおよぼしていた。

 

とある資源衛生にクラップ級1隻が迫り、MS部隊を発進させていく。

 

ジェガン、リゼル、リーオー宇宙仕様の小隊が既にビームライフルを構えながら臨戦態勢に移っていた。

 

連邦とOZの混合部隊のMSである。

 

隊長機のリゼルから指示が伝達される。

 

「ここはネオジオン残党の拠点の一つだ。活発化される前に叩く!!」

 

ジェガンのパイロットの一人が民間施設もあるということを器具し、軽く意見具申した。

 

「しかし、民間施設もあると聞きます!!よろしいのですか!?」

 

「かまわん!!やがて驚異となる!!徹底して破壊してやれ!!」

 

「は、は!!」

 

「了解した……我々のリーオー小隊も徹底してやらせてもらう!!」

 

ジェガン、リゼル、リーオーの各3機編成の小隊は、加速して資源衛生に攻め混む。

 

そしてカメラアイが高速で点滅し、各機が敵影を確認した。

 

出撃したギラドーガやガザCを捕捉した直後にビームライフルのビームがはしり、3機のガザCを撃墜させた。

 

先制攻撃を受けたネオジオン側も、ビームマシンガンやナックルバスターのビーム射撃を刊行し、反撃に出る。

 

宇宙空間の中で飛び交うビームの銃撃戦。

 

連射されるギラドーガのビームマシンガンが、1機のジェガンを撃墜させ、僚機のジェガンが放つビームライフルが、そのギラドーガを射貫いて撃破する。

 

フォーメーションをとるリゼル小隊は、ビームライフルとビームサーベルを駆使しながらギラドーガ1機に対し、3機係りで徹底して攻撃をかけ、ガザCにも個々にビームサーベルで斬撃して撃破してみせた。

 

リーオー小隊は、増援のドラッツェやガ・ゾウムの部隊に攻撃を絞り、回り込むようにビームライフルを撃ち込んで撃破する。

 

1機に対し、3機係りで伐つ卑怯な戦法は当たり前の事の日常茶飯であった。

 

OZの宇宙軍には騎士道概念はなく、排除すべき勢力には容赦なく攻撃をかけていた。

 

とあるコロニーの外ではOZ宇宙軍のリーオー部隊がギラズール1機に対し、3機係りでビームライフルを撃ち込んで完膚なきまでに破壊していた。

 

更には撤退を始めるギラドーガ数機を追撃し、ビームバズーカで破砕する。

 

無論、ネオジオンやジオン残存勢のみにそれは止まらなかった。

 

メテオ・ブレイクス・ヘルが各コロニーに潜伏する中で、地球連邦軍・宇宙軍所属特殊部隊・ECHOESが制圧に乗り出していた。

 

彼らは、地球連邦宇宙軍の対テロ・ゲリラ専門の特殊部隊であり、隠密行動や内面的な制圧を得意とする部隊であった。

 

メテオ・ブレイクス・ヘルのアジトの内部で激しい銃撃戦が展開する。

 

ECHOESの隊員達は独自のサインのみで合図して行動していた。

 

無情な銃撃がメテオ・ブレイクス・ヘルのメンバーを襲う。

 

「がぁあっ!!」

 

「あがぁっ……!!」

 

頭と胸部に銃弾を浴びて床に倒れる二人のメンバーは血を流しながら息絶える。

 

マシンガンの銃撃戦に対し、メテオ・ブレイクス・ヘル側もマシンガンやハンドガンで対抗する。

 

「ちっきしょうっっ……なんだってここが割れたんだ!??」

 

「知るか!!今はここから脱出……がはぅ!!?」

 

「おい―――うぎっ!??」

 

次々と銃弾で倒れていくメンバー。

 

ECHOESは抵抗者を瞬く間に殺傷すると、素早く部屋という部屋に銃を構えて突入した。

 

時おり鉢合わせるメテオ・ブレイクス・ヘルのメンバーやエージェントに容赦なく発砲し殺傷させる。

 

一人の女性メンバーは、近づく銃声と悲鳴に精神的にも追い詰められていく。

 

彼女は怯えながら部屋の片隅の机にうずくまっていた。

 

「お、お願いっ……こ、こないで、こないで、こないで……!!!」

 

怯える彼女に非情なECHOESのメンバーが迫り、次々とメテオ・ブレイクス・ヘルのメンバーが殺されていく。

 

響き渡るマシンガンの銃撃声とメンバーの断末魔が次第に近づいていく。

 

「いや………死ぬのはいやっ!!」

 

恐怖に怯える彼女の部屋にECHOESが突入する。

 

「!!!!」

 

彼女は息を殺して、目の前の恐怖に今にも叫びそうな自分を押さえる。

 

部屋を払拭するECHOESのメンバーは、データベースを発見し、素早い動作で専用ツールを取り出してデータベースの検証を始めた。

 

その時、検証を始めた隊員が、隠れ切れていない彼女の片足を確認し、即座に足と机を銃撃した。

 

「きゃあぁぁあああっ!!!」

 

机越しに銃弾を浴びて彼女は悲痛な叫びを上げる。

 

非情なECHOES隊員は、即座に机の下にいた彼女に至近距離でマシンガンを銃撃した。

 

「ぅぇあっ―――」

 

表情を一切変える事なく、その隊員はマシンガンをしまい、データベースの検証を継続した。

 

「L3・D1258コロニーにおいて、メテオ・ブレイクス・ヘルのアジトの制圧に成功……ここの反乱分子は完全に排除した……引き続きデータベースの検証を行う……検証後は次の座標の取得をする……」

 

アジトを制圧したECHOESの面々は、ある種の人道上を踏み外していた。

 

まさに連邦の歯車であり、感情は無情かつ非情であった。

 

部屋のコロニーにおいても、ECHOESがメテオ・ブレイクス・ヘルの制圧に乗り出し、コロニーの港内において、戦闘が起こっていた。

 

港の搬入口で銃撃戦が展開する中で、メテオ・ブレイクス・ヘルのメンバー達は何とか輸送艦に乗り込み、コロニーの脱出に成功した。

 

「何とか逃げ出せたな!!」

 

「あぁ……けど、ここの所、俺達に対しても本格的になってきてやがる……まさか、内通者でもいやがるのか!??」

 

「わかんねーけどよ……可能性はあるかもな……ん!??って、ちっきしょうっっ!!!!」

 

脱出するメテオ・ブレイクス・ヘルのメンバーを乗せた輸送艦の目の前に、ECHOES仕様のジェガン2機が現れた。

 

構えたバズーカの弾丸が輸送艦の操縦部に直撃し、連続で砕け散るように輸送艦は轟沈した。

 

コックピットのモニターで輸送艦の撃墜と任務の完了を確認する。

 

「反乱分子の制圧を完了させた。次の座標の送信を乞う……」

 

ECHOESパイロットがそう言い放った後に座標データが送られ、ディスプレイモニターに表示された。

 

「次のアジトが判明……我々はこれより取得座標のコロニーに向かう……ふぅ……わざわざ我々ECHOESに情報を与える者とは……一体どんな人物なのだ?少なくとも簡単に仲間を裏切る素行からしてまともではないな……」

 

すると、もう1機のECHOES仕様のジェガンのパイロットがモニター通信で皮肉を言ってみせた。

 

「まともではないな……か。歯車として無情に人を殺す我々もまともではあるまい」

 

「ふん……」

 

何処かのコロニーの一室で、その情報を送信していた者がデータベースを操作していた。

 

データベースの画面には、ECHOESに送信していた座標と送信履歴がはっきりと表示されている。

 

データベースを動かす男の手は更なるデータを送信し続けた。

 

 

 

ダカール市街地の上空に対空射撃がはしる。

 

そのビームや弾丸が飛び交う中をブースターを唸り響かせながら、シナンジュが駆け抜ける。

 

それを操るフロンタルは巧みに射撃を躱し、眼下に飛び込む機体群を次々とロックして、ビームライフルでそれらのターゲットへ高速射撃した。

 

「まずは出来る限りの掃除を行う。赤い彗星の再来というモノを彼らに思い知らせるのだ……」

 

高速の流星のようにシナンジュが放つビームが降り注がれる。

 

対空射撃をしていたネモやジムⅢが次々とビームを貫かれ、撃破された。

 

「そして……その再来する彗星からは逃れぬということも……」

 

更に滑空しながらレフトアームに装備していたビームトマホークを発動させ、豪快にジェガンを斬り捌いてみせた。

 

その高速の流れを維持したまま、シナンジュは斬撃と射撃を交互に組み合わせながら攻撃をかけていく。

 

振るい唸るビームトマホーク。

 

撃ち貫くビームライフル。

 

その高速の攻撃は伊達ではなく、ジェガン部隊を縦横無尽に叩き伏せる。

 

シナンジュに狙いを定められた1機のジェガンは、ビームライフルを連発してシナンジュへ攻撃をかけるが、当たるはずがなかった。

 

そのジェガンを見逃すことなく、シナンジュはビームトマホークをかざす。

 

メインカメラに写り混むシナンジュがレフトアームを振るった刹那に、激しく斬撃された。

 

叩き斬られたジェガンは爆破。

 

その先にいたジェガン部隊も次々とシナンジュの餌食となり、瞬く間にMSから残骸へと変貌させられていった。

 

「思い知らせていく……!!!無論、地下に身を伏せる高官達にもな……!!!」

 

地球連邦ダカール本部の地下シェルター内には、多くの高官達が避難していた。

 

脱出の有余があったにもかかわらず、尚も止まっていたのは避難の有余を深読みしていた為だ。

 

そこには地球連邦の高官達に対するフロンタルの密かな思惑が孕んでいた。

 

それは、必ず彼らを仕止める事にあり、心理的な意図を愉しむという彼の私情を挟んでいたのだ。

 

逃がす有余を与えたと見せかけ、避難した所をスマートに仕止めるパターンと、それを警戒して留まった所をじわじわと攻めて仕止めるパターンをフロンタルは考慮していた。

 

高官達は閉鎖された空間の中で、状況は後者に流れる。

 

「結局は本当に脱出できていたではないか!!!地下に身を伏せる指示をした者を呼べ!!!」

 

「そもそも、あんたが脱出有余と見せかけた炙り出しかもしれんと言ったじゃないか!!!判断ミスの根本をあおったのはあんただ!!!」

 

「何だと!??」

 

「我々をこんなところで死なせるのか!??ふざけるな!!!一刻も早くジオンの愚か者をだな……!!!」

 

シェルターに衝撃がはしり、高官達の誰もがあわてふためく。

 

シナンジュが放つビームライフルの意図的な流れ弾が、連邦軍本部のビルを破壊し始めていた。

 

その驚異的な機動力で、シナンジュは対空砲火を躱しながら多軍勢の頭上を一気に駆け抜ける。

 

フロンタルはシナンジュに減速をかけさせながら、連邦軍本部を守るジェガン部隊へビームライフルを放ち続ける。

 

迎撃するジェガン部隊は、シナンジュへ攻撃を当てることもなく、次々と撃ち斃された。

 

そして背後からくる射撃を躱すように上昇し、上空より警備部隊を狙撃した。

 

上空より来るビームが、ジェガン達の胸部ユニットを見事に焼き飛ばす。

 

無論、ジェガン達はなす統べなく爆発していった。

 

その流れのままフロンタルは、一撃離脱攻撃を本格的に地球連邦本部のビルへと慣行し始めた。

 

ビームはじわり、じわりと地球連邦本部のビルを削ぎ落とすかのように当てられていく。

 

「さぁ……どう出るかな?連邦の高官達は……たが、いずれにせよここで我々の意思を宣言させてもらう!!」

 

ダカールの街は銃撃戦の一色と化し、大規模な弾幕が形成されていた。

 

それはダカールの市内へ入り込む程厚いものになっていく。

 

ジオンの残存軍は意地を見せつけるかのように連邦勢に攻め混む。

 

攻撃の影響で、ビル群は瞬く間に粉塵を巻き上げながら崩壊していく。

 

最早戦争以外の何物でもなかった。

ドムトローペンがホバー走行を駆使しながら、マシンガンやバズーカーの銃撃を市街地に展開するジムⅢやネモの部隊へ浴びせていく。

 

胸部直撃を受けたジムⅢが轟音をたてながら破砕し、ネモがマシンガンの銃撃で撃ち斃される。

 

更にヒートサーベルで駆け抜けるように斬り捌いてみせた。

 

だが、3機が市街地の角をスピーディーに曲がった瞬間にジムⅢやネモ部隊のビームや弾丸が襲いかかる。

 

ネモ部隊が放っていたジムライフルの連射撃の弾丸が、1機のドムトローペンの胸部装甲を撃ち砕いた。

 

モノアイが消え、撃たれたドムトローペンは倒れながら胸部を爆破させた。

 

2機はビルの影に隠れ、射撃を躱す。

 

だが、その背後からビームサーベルを握りしめたジムⅢが襲いかかる。

 

ビームサーベルがドム・トローペンの装甲に斬り込まれ、激しく焼灼された。

 

だが、次はそのジムⅢが上空からのビームで破壊された。

 

ビームは幾度も撃ち注ぎ、ジムⅢやネモが破壊された。

 

それを放って射たのは、カークスが乗るザクスナイパーの狙撃であった。

 

ファットアンクルに身を潜めての高高度精密射撃である。

 

カークスは狙いを市街地の奥面に移動させ、待機するロトの部隊に集中させた。

 

「放っておけば、砲撃が脅威になるからな……ここで徹底して破壊させてもらう!!」

 

ロト部隊を狙って、ザクスナイパーは連続狙撃を仕掛けた。

 

その狙いは確実にロトの胸部を針で貫くかのように射抜いて破壊していった。

 

市街地の他の箇所に展開するジムⅢやネモの部隊も一斉に射撃を続けており、ジオン勢の進撃を阻んでいた。

 

ザクⅢ、ヤクトドーガが、ビーム射撃で攻め混み、シュツルムガルスが敵機を殴り飛ばして進む。

 

だが、次から次へとMS部隊が現れ、弾幕を張られてしまう。

 

各機の被弾は免れない。

 

バトがビームライフルと収束メガ粒子ブラスターを撃ちながら、ビランチャやゼクストに呼びかけた。

 

「斃しても、斃しても次々と出てきやがる!!!流石に不利だぜ!!」

 

「解っていますよ。ですが、向こうはそうはさせてくれません。じっくり撃破しながら行きしましょう!!」

 

ゼクストのヤクトドーガは、ビームマシンガンとファンネルを駆使し、有言通りに対応する。

 

ビームマシンガンに蜂の巣にされたネモ2機を爆破し、ファンネルでジムⅢを撃破するタイミングでビランチャからの通信が入る。

 

ビランチャがあっけらかんと言って笑った。

 

「やつらのペースにハマりかけてんだ!!おちおちしてっとーハマっちまう!!!ハマっちまっていいのは女だけだ!!」

 

シュツルムガルスは、愉しむかのような動きで躍動する。

 

ナックルシールドを打ち込んでネモやジムⅢを殴り飛ばしていく。

「何言ってんすか!!!ビランチャ中尉!!!」

 

バトはビランチャの言動に突っ込みながら飛びかかるネモにビームライフルを撃ち込んだ。

 

だが、次々と来る攻撃がザクⅢのシールドやレフトアームに被弾する。

 

「ちぃっ!!ナメるな!!!」

 

強気で敵機を睨みながらビームライフルをかざすザクⅢ。

 

その時だった。

 

突如として敵機を吹き飛ばすビームが注いだ。

 

「何!??って……アンジェロ大尉!??」

 

バトがビームが放たれた方角を見ると、ランケブルーノランチャーを構えたギラズールカスタムがいた。

 

「ふん!!大佐の足手まといだな……攻撃はこうするものだ!!!」

 

アンジェロは、上空から友軍機達を見下げた視点で 吐き捨てると、ランケブルーノランチャーを展開する敵部隊に撃ち放った。

 

撃ち出されたライトグリーンのビームは、市街地の道路に沿うように一気にジムⅢやネモ部隊を吹き飛ばす。

 

たが、約350機余りのMS軍勢は容易く全滅はしない。

 

向かい来るビームやミサイル群が、ギラズールカスタムの肩や脚部に被弾する。

 

「私に当てたな……!!!」

 

アンジェロは被弾したことに憤りを示し、更に見境なく攻撃をかけた。

 

ランケブルーノランチャーがビルごとMS部隊を吹き飛ばしていき、被害を拡大させていく。

 

その時、別の方角からメガ粒子ブラスターの砲撃がはしった。

 

持続性の高いメガ粒子ビームは、一直線に街を総なめにしながら叩き付けるようにしてMS部隊を破砕させていった。

 

シャンブロのメガ粒子ブラスターだった。

 

更にクシャトリヤもメガ粒子ブラスターを放って、進行方向で展開するジムⅢやネモ部隊を一掃した。

 

進撃するシャンブロとクシャトリヤは息を合わせて連携をとる。

 

マリーダとロニのコックピットモニターに、ダカールの広大な市街地が広がる。

 

その至る場所で立ち上る黒煙や粉塵が戦場である事の事実を突き付ける。

 

「マリーダ、私が突破口を作りながら周囲の敵機を叩くから、その間に進撃をして!!」

 

「あぁ、了解した!!任せるぞ、ロニ!!」

 

「でも、あのビルだけは狙い撃たせて……私の人生を、社員の人生を狂わせた鉄槌を……!!!!」

 

マリーダはそのロニの言葉を聞き入れると、伝わるロニの気持ちを察し、言葉で頷いた。

 

「あぁ……解った。その募る不の想いはここで吐き捨てていくと良い。最も私に許可権はないんだが……それは気にしないでくれ」

 

「マリーダ……」

 

ホバー走行するシャンブロの傍らからクシャトリヤが飛び出す。

 

メガ粒子の危険を警戒していたジムⅢ部隊が、側面から飛び出し、迫るクシャトリヤとシャンブロへミサイルとビームを放った。

 

だが、ビームはIフィールドで相殺され、ミサイルもウィングバインダーの装甲面で虚しく爆発していく。

 

マリーダはコックピットモニターに映る敵機をロック・オンし、コントロールグリップを入れ込ませてクシャトリヤを加速させる。

 

「攻める!!!」

 

ダッシュしながらファンネルを射出させ、射撃するジムⅢ部隊に襲いかかる。

 

クシャトリヤはビームサーベルを手にし、十字の斬撃をジムⅢに食らわせ、ビームサーベルで襲いかかるネモを斬り飛ばしてみせた。

 

光るクシャトリヤのモノアイ。

 

そして前面上で攻撃するジムⅢとネモの部隊へ、ファンネルとメガ粒子ブラスターを組み合わせたブラストアタックを撃ち放った。

 

四連メガ粒子と24基のファンネルの火線が、一気にジムⅢとネモを複数機吹き飛ばされていく。

 

その情景を瞳に焼き付けながら、マリーダは戦いの中でヒイロとプルを想った。

 

(ヒイロ……この戦いの後にもう一度会いに行く……私が宇宙へ戻る前に……そして、姉さんとパラオへ帰る!!その為にもこの戦いを制す!!!)

 

 

 

激戦が展開される映像が、ダカールプレスタワーから生中継され、地球圏各地に配信される。

 

ヒイロはアデレードへ向かう中、ウィングガンダムのコックピット内でその中継を見ていた。

 

しばらく中継映像を見続けた後に、メインモニターに視線を送る。

 

(始まったか……)

 

いよいよ開始されたダカールへの攻撃。

 

かつてのシャアが行ったチベット・旧ラサ地球連邦本部攻撃の際は、既に避難が完了していた為に、直接連邦高官が被害に遭うことはなかった。

 

だが、今回は取り残された上に直接被害を受ける状況下にあった。

 

更に言えば取り残された高官達の中には、現在の時代における連邦政府の重役もいた。

 

ネオジオンが先手を打ったが、いずれにせよメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムに強襲される運命にあり、どちらが先手を打とうと、歴史に衝撃が発生するのは誰の目にも明らかであった。

 

(この一手とこれからの俺達の一手が連邦への決定打撃になる……そしてその後日に……OZの総本部のルクセンブルクを叩く!!)

 

ヒイロは今一度モニターで任務の確認をする。

 

任務内容はアデレードの地球連邦新本部の破壊及び高官達の排除である。

 

表示される任務情報を見るヒイロの眼差しには、任務遂行の静かなる闘志がたぎり続けていた。

 

 

 

太平洋・日本近海の洋上。

 

プルは潮風に綺麗な髪をなびかせながら、オルタンシアから見える広大な青空と海を眺めていた。

 

「あたし、最近ここから見る景色好きなんだよね~!すっごく綺麗なんだもん……地球っていうの感じちゃう!!」

 

見渡す限りの青と青のグラデーションは、見る者の感覚を豊かにする。

 

プルはニュータイプ故に尚更だ。

 

「あぁ……何か地球(ほし)の鼓動が聴こえて来そう……地球ってこんなに綺麗なのに……」

 

地球の広大な空と海の自然を感じるプルに、その中で戦争をする人類がいることにふと空しさが過った。

 

地球という個の惑星の次元感覚に触れた時、人類の起こす問題が小さく感じる事もあり、疑問符もみえてくる。

 

普段余り考えさせられる事がないが、ふと地球を相手に向き合えばそれを考えさせられる。

 

プルは目の前の青のグラデーションと対話するかのように呟く。

 

「何で哀しみがあるんだろ……何で仲良くできないんだろ……この空が続く先でも、戦いを終われない人達や巻き込まれてる人達がいる。その中でマリーダ達は戦ってるんだよね……戦うのは誰にも色々な想いがあるから戦うんだよね……マリーダも、アディンも……」

プルが想い見つめる視線先の遥か彼方でアディンはひたすらシュミレーション・トレーニングをし続けていた。

 

かなりの時間を費やしていたためか、アディンは汗に浸されていた。

 

「……角ヤロウ……次こそは決着を着けてやる!!!その為に今できる闘いをする!!!」

 

アディンは何度もシュミレーションを繰り返しトレーニングを続けようとするが、オデルからの通信が待ったをかけた。

 

当然ながらアディンは嫌気を抱く。

 

「アディン!!」

 

「っ……なんだよ、兄さん!!邪魔すんなよ!!俺はトレーニング中だ!!!」

 

反発するアディンに、オデルは兄ならではの弟を想う意見を叩きつけた。

 

「バカ野郎!!事にメリハリをつけろ!!ハワードの爺さんも言っていたが、休めるときに休むのもパイロット……もとい、Gマイスターの仕事だ!!気合を入れるのもいいが、今のままなら確実に疲労を任務に持ち込むぞ!!!シュミレーションは終われ!!!」

 

オデルの最もな意見に、アディンはぐうの音も出なかった。

 

「……ちぇっ……解ったよ!!休むよ!!」

 

「追い込みすぎても身を滅ぼすぞ!!頭冷やせ!!」

 

「わかってる!!わかってるからさ!!」

 

アディンはガンダムジェミナス01を後にし、休憩室で水分を取りながら天井を見上げていた。

 

「連邦の新本部をぶっ潰す任務……ようやくって感じだな……んぐっ……ふぅ……次こそはキメてやるぜ。ニューエドワーズの二の舞はしねぇ……」

 

そう自分へ言い聞かせながら、アディンは汗を拭いながら水を飲み続ける。

 

「見ててくれ……ロガのおっちゃん、トリシアさん、そして父さん、母さん……ルシエ……俺達はやるぜ!!!」

 

世話になった人、オデルのフィアンセ、両親、そして幼馴染み……亡きMO-5の人々を想いながら、アディンはアデレードへの攻撃を改めて決意し、そして今を共に闘うヒイロ達、自分の存在を想い続けてくれているプルを想い返しながら、拳を握りしめた。

 

 

 

その頃のアデレード基地では、ジェガンや新型機・ジェスタが警戒警備の為にサブフライトシステムに搭乗して出撃する。

 

そして、警備には遂にロンドベル隊が配備される事になり、ラーカイラムに替わる同クラスの旗艦・エイジャックスとミノフスキークラフト仕様のクラップ級戦艦が3隻編成でアデレードの空を周回していた。

 

艦内のブリッジでは、連邦の名艦長であるブライト・ノアが着座し、アデレードの空と街を見据えていた。

 

ため息をついたブライトは、副艦長に自らの本音をふった。

 

「ダカールが攻撃を受けていると言うのに……いよいよ我々にお鉢が回ってきたか。まだ現れるかどうかは不確定要素に過ぎんが……正直、私は複雑だよ。敵がガンダムなのだからな。あの機体には特別な感情を抱いてしまう」

 

「無理もありません。これまでにも、数々のガンダムと関わって来たのですから……」

 

「……私だけに限らず、連邦の兵士達の大半が複雑なはずだ。あの機体に憧れる者も少なくない。特に部下の一人のエンデはその手のパイロットだからな。だからといって手は抜けん。何せ先代のラーカイラムを単機で破壊する戦闘力を持っているのだからな……」

ブライトはこれまでの被害データを取りだし閲覧する。

 

目を通せば通す程、メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムの驚異的な戦闘力が解る。

 

歴代のガンダムに最も携わってきたブライト故に、メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダム達は余りにも異質に感じれた。

 

「……最早、私の知っているガンダムではないな。彼らは……ガンダムの皮を被ったモンスターなのかもな」

 

「モンスター……確かにそうかもしれません。索敵も撃破も不可能とされています……遭遇して生き残れたパイロットは、オペレーション・イカロスで辛うじて生き延びたパイロットと、ごく一部のエースパイロットだけのようです……」

 

「エースパイロット……」

 

その時、そのごく一部のエースパイロットからの通信が入り、オペレーターがブライトに報告した。

 

「艦長!OZのゼクス・マーキス特佐から通信が入っています!!」

 

「OZの……?そうか、繋げ!!」

 

ブライトの指示でゼクスと通信を繋げる。

 

ブリッジのモニターに敬礼するゼクスが映し出された。

 

それを見たブライトは、一瞬シャアと誤認してしまう。

 

「ん!??シャア?!?い、いや、失敬……ゼクス特佐」

 

ゼクスは慣れていることなので、軽くあしらった。

 

「ふっふふふ……よく言われるものだ……構わない。OZと連邦の合同部隊の我々に着艦許可を頂きたい。我々の総帥からラーカイラム……いや、エイジャックスと合同で護衛任務に就くよう命令されたのでな……」

 

「無論、構わない。着艦を許可する」

 

その後、エイジャックスにトールギスとユニコーン、オーバーエアリーズが着艦した。

 

ブライトは自らMSデッキに赴き、ゼクス達を迎える。

 

その時、ブライトの目にはトールギスとユニコーンがガンダムと重なって見えた。

 

(っ……!??……気のせいか。何故かガンダムに見えた……)

 

コックピットから出てくるゼクスとリディ、ミスズがブライト達に敬礼を送った。

 

 

一方、ダカールでの戦闘は更に激しさを増す。

 

シャンブロが放つメガ粒子ブラスターが連邦陣営のMS部隊を破砕させながらビル群ごと一掃させ、更に上空に展開させたリフレクターユニット群に拡散メガ粒子ブラスターを解き放った。

 

収束メガ粒子と化したビーム火線が雨のように降り注ぎ、周囲のジムⅢ部隊やネモ部隊を一瞬で壊滅させる。

 

直撃を受けた部位は綺麗なまでに焼灼され、装甲が焼けただれていた。

 

クシャトリヤのファンネルとメガ粒子ブラスターが猛威を振るう。

 

ギラズールカスタムが放つランケブルーノランチャーもビーム渦流を突き進ませる。

 

ザクⅢとヤクトドーガのビームライフル、ビームマシンガン、ファンネルのビーム射撃がMS群の壁を削り、シュツルムガルスとゼーズールによる殴打と斬撃の格闘攻撃がジムⅢやネモのMSの装甲を破壊していった。

 

対し、連邦陣営はジムⅢの全部隊によるミサイルランチャーの一斉射撃を敢行し、大多数のミサイル群の雨をネオジオン勢に見舞った。

 

「!!!!」

 

フロンタル以外のネオジオン勢の誰もがこの光景に息を飲んだ。

降り注ぐミサイル群が、縦横無尽に着弾していき、ジュアッグやアッグガイは回避する術なく被弾し、即撃破されてしまう。

 

狂ったようなミサイルの雨は、ビルや道路を押し潰すかのように破壊しながら、ドムトローペンやデザートゲルグにも降り注ぎ、瞬く間に機体を爆発させた。

 

ザクⅢ、ヤクトドーガはホバーを駆使しながら後退させる。

 

急激な猛攻にバトが憤りを露にさせる。

 

「連邦の奴ら一気に攻めてきやがった!!!ちっきしょうが!!!がぁっ!!?」

 

ミサイルがザクⅢにダメージを与え、シールドや機体の一部を破壊させてしまう。

 

ゼクストは静かに歯を食い縛りながら、機体を後退させ、ファンネルを駆使してミサイルを迎撃する。

 

「これでは……躱し切れない!!!ぐぅ!!?」

 

降り注ぎ続けるミサイルにファンネルを格納するショルダーユニットが破壊された。

 

その中で、シュツルムガルスとゼーズールはビルの影に機体を移して、直撃の事なきを得る。

 

だが、いつビルが崩壊しても不思議ではない状況下であった。

 

アヴリルとビランチャの二人は際どい状況下を耐え凌ぐ他なかった。

 

「ここへ来て急激な物量攻撃だと!??くぅ……卑劣な!!!」

 

「ほほぅ……敵さんも必死だな~……んん~!?……雨風凌げると思ったが……」

 

ビランチャは陽気な口調ながら崩壊することを察知し、アヴリルに危険を促した。

 

「どーやらビルの奴、限界だな……直ぐに崩壊しちまう!!!行くぞ!!!」

 

「やむを得んか……!!!」

 

ゼーズールとシュツルムガルスは、その場を離脱する。

 

まさに、その直後にミサイル群によってビルは崩壊。

 

同時にミサイルが駆けめぐり、シュツルムガルスとゼーズールに被弾した。

 

一方、上空のギラズールカスタムは、ランケブルーノランチャーを撃ち放って大量のミサイルを破砕させてみせる。

 

だが、破壊しきれなかったミサイル群が両肩のエネルギータンクへ被弾し、地上への着地を余儀なくされた。

 

「がぁっ!!!っ……くっっ!!!おのれぇえええええ!!!」

 

被弾を多く受け、アンジェロの憤りが一気に爆発した。

 

だが、ランケブルーノランチャーのエネルギータンクが破壊された為に、反撃不能に陥ってしまう。

 

その状況を表示するアラートを見たアンジェロは怒りの捌け口を失い、怒りの拳をコントロールグリップへ思いっきり叩きつけた。

 

「くっ……そぉおおおおおおお!!!!」

 

怒りの叫びを上げながら、アンジェロは機体を戦域を離脱させた。

 

クシャトリヤは連続でファンネルのビームを連発させながら、ミサイル群に対抗する。

 

「くっ……撃ち墜としてみせる……!!!」

 

高速で撃ち出されていくファンネルのビームは、次々とミサイル群を撃ち墜としていく。

 

だが、撃墜しきれないミサイルが次々とクシャトリヤに降り注ぎ、装甲面で爆発していく。

 

「くっぅ……!!!躱し切れない……かっ……!!!!」

 

大量の爆発と衝撃がコックピットにビリビリと伝わる。

シャンブロも拡散メガ粒子ブラスターによる対空砲火でミサイル群を破壊してみせるが、撃ち漏らしたミサイルが襲いかかる。

 

「こんな物量攻撃なんて……!!!」

 

ロニはミサイルに構う事なくシャンブロを進撃させ、量側面にいるジムⅢ部隊とネモ部隊を集中してロックオンする。

 

「シャンブロには通じない!!!」

 

ロニの感情に呼応するようにシャンブロは拡散メガ粒子ブラスターを、空中で展開するリフレクターユニットへと放ち、それに反射したメガ粒子がプラズマ火線となり、暴れるように大量に降り注いだ。

 

この攻撃の直後に防戦体制であった連邦陣営が攻めいるように動き出した。

 

ビームライフルのビームや、ジムライフルの弾丸がネオジオン勢のMS達へ襲いかかり、進撃を困難にさせていく。

 

バトはビル影に退避しながら不満を吐き散らす。

 

「ちっきしょー!!!前に進めねー!!!」

 

シナンジュに対してもジェガン部隊やジムⅢ部隊が射撃を開始する。

 

「あくまで抵抗するか……当然の姿勢だ。アンジェロも離脱したようだな。では……本題に入るとしよう」

 

フロンタルは、ビームやミサイルの攻撃群を躱しながらビームライフルを放ってジェガン部隊を1機、2機と撃墜させる。

 

その流れに乗せるようにフロンタルは地球連邦本部のビルを射撃し始めた。

 

ビームはビルを削り取るように破壊してみせる。

 

フロンタルはある程度連邦本部ビルにダメージを与えた後にシナンジュを屋上に着地させ、ビームライフルの銃口をかざした。

 

こうなればいくら地下シェルターに避難してると言えど、MS部隊はそこへ銃撃はできなくなる。

 

自軍の政府高官がいる建造物を撃つことは重罪に相当する。

 

誰もがシナンジュへ攻撃できなくなった。

 

そして、フロンタルは地球圏共通回線を開き、全地球圏にその声を発信させた。

 

「地球連邦軍、地球連邦秘密結社OZ、地球圏のすべての人々に伝える。我々はネオジオン!!そして現ネオジオンを統率するフル・フロンタルである!!我々は今、ダカールの地球連邦本部ビルを押さえている。これ以上同胞に攻撃した場合、地下シェルターにいる高官達諸とも破壊する!!」

 

この宣言を聞いた連邦軍の攻撃指揮官は直ちに攻撃を停止させた。

 

「全機、撃ち方止め!!!撃ち方止めぇえええっ!!!ネオジオンに地球連邦本部諸とも高官の方々が人質にされた!!!撃ち方止め!!!」

 

攻撃が止むのを見届けたフロンタルは、不敵な薄ら笑いを浮かべながら宣言を続けた。

 

「懸命な対応に感謝する……では、我々の本題を宣言させてもらう。我々の要求はスペースノイド、すなわち、コロニー市民の自治権確立である!!地球連邦は現在に至るまで、スペースノイドへの圧制を強いており、かつてのティターンズとなんだ変わらない!!人類の革新と言われるニュータイプへの迫害も事実として把握している!!!これは不幸だ!!それを変革させるためにも、スペースノイドの自治権確立は必須なのである!!!私の真下にいる連邦の高官達に有余を三分与える……自治権の譲渡を要求する!!受け入れられない場合は、それ相応の答えを下す!!!!貴君らの懸命な対応を期待する……」

 

フロンタルのこの宣言により、ダカール一帯を越え、地球圏全域に緊迫がはしった。

 

トレーズは総帥室で瞳を閉じながら、瞑想するようにフロンタルの宣言を聞き、ゼクス達は第三次ネオジオン抗争の予感を感じながらアデレードへの道のりの最中に見ていた。

 

ヒイロは同じスペースノイドであるはずのフロンタルから異質なモノを感じてならなかった。

 

「フル・フロンタル……マリーダの同胞……だが、何か異質なモノを感じてならない……」

 

文字通りの停戦状態になった戦場で、マリーダは非常に嫌な感覚が迫るのを感じていた。

 

マリーダに頭痛や吐き気に似た感覚が強くはしる。

 

「ううっ……!!!何だ!??凄く嫌な感覚が近づいてくる!!!」

 

その感覚は、シャンブロの胸部周りに組み込まれているサイコフレームにより、ニュータイプ感覚が上がったロニも感じていた。

 

「くぅっ……!!?何だ!??この感じは!??不快過ぎる!!!」

 

コロニー間を航行するガランシェールの中で、ジンネマンがいよいよ始まる激震の前兆に眼差しを話す事なくモニター画面を注視していた。

 

「地球連邦政府が易々と自治権確立を認めるはずがない……認めれば宇宙と地球の主従が逆転するからな……これは最早開戦のカウントダウンだ……!!」

 

ジンネマンの危惧は当たっていた。

 

いずれにせよフロンタルは鼻から連邦本部ごと高官を殺す気でいた。

 

そして宣戦布告も意図していた。

 

事の流れはフロンタルの画く道へ行きつつあった。

 

ジンネマンがフロンタルに危惧していたモノはその性質であった。

 

「フル・フロンタル……元よりそれが目的なのか!??第三次ネオジオン抗争が……!!?」

 

その一方で、地下シェルターでは高官達が情けない議論を投げかけ合っていた。

 

「自治権確立など認めるわけにはいかん!!認めるということは連邦政府の終わりを意味する!!!」

 

「しかし、認めなければ我々はきっと殺される!!!認めるしか……」

 

「ならん!!スペースノイドなど、極端な話、地球の為の奴隷でいいのだ!!」

 

「要求に代わるモノの提供を……」

 

「ダメだダメだ!!!!断固として自治権は与えてはならん!!!」

 

ゴタゴタとした議論が地下シェルターに響く中、シナンジュのコックピット内のモニターに熱源センサーを捉えた。

 

「何!??熱源……!!!」

 

その直後、シナンジュに高出力のビームが掠めた。

 

ビームは、シナンジュを掠めただけで装甲の一部を溶かした。

 

「くっ……そう出るか……!!!」

 

モニターに表示する識別は連邦のモノであった。

 

そしてビームを放ったMSを捉える。

 

「これは……新たな……ガンダム!!?」

 

シナンジュのコックピットに映ったMS。

 

それは異様なガンダムらしきMSであった。

 

故に、メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムと錯覚してしまう。

 

だが、識別は連邦の識別信号である。

 

そう……真の連邦性のガンダムが姿を見せたのだ。

 

フロンタルは、相応の答えを宣言した。

 

「貴君らの答えは解った……貴君らが行った攻撃により、我々は地球連邦政府に対し、宣戦布告をする!!!地球圏にいる全同胞達よ……我々新生ネオジオンに続け!!!」

 

遂に言い放たれた宣戦布告と共に、シナンジュはビームライフルで地球連邦本部ビルを破壊し続け、半分を崩壊させた。

 

その直後、ロニの主張が響いた。

 

「フロンタル大佐!!!!止めは私に!!!!早くそこから離脱を!!!!!」

 

「ロニ嬢!??ふっ……いいだろう、ロニ嬢……撃つがいい!!」

 

「了解した……!!!」

 

シナンジュが離脱すると共に、シャンブロのメガ粒子ブラスターの口が開口し、最大出力のメガ粒子がチャージされた。

 

その時、地球連邦本部ビルから離脱するシナンジュに再びビームが襲う。

 

「くっ!!!やはり敵となるか!!!ガンダム!!!」

 

フロンタルは、新たなガンダムに敵意を抱きながらもシナンジュを高速で離脱させた。

 

同時にシャンブロのメガ粒子ブラスターが最大出力で撃ち出された。

 

「私の恨み……憎しみ……受け取るがいい!!!」

 

直進しながら突き進むメガ粒子が一気に地球連邦本部ビルに直撃した。

 

撃ち注がれるビーム渦流は、ビルを一瞬で消し飛ばして地下シェルターに角度が変えられた。

 

地下シェルター内に、破裂するようなエネルキーが押し潰すかのように拡がり、規模の大きな爆発を巻き起こした。

 

それは容易く連邦政府の高官達を殺傷……もとい、殺消した。

 

その爆発を尻目に、フロンタルはアンジェロと通信を取り合い、次の段階へ移る手筈をとる。

 

「アンジェロ、オペレーション・ファントムは次の段階へ移る!!予定通り待機中のコムサイに合流する!!ダカールを離脱せよ!!!」

 

「はっ!!」

 

「イレギュラーなガンダムが現れたが、ここまで来て無駄な戦闘は避けたい……!!!」

 

「ならば、大佐の為にこのアンジェロ、恐縮ながら意見具申します!!マリーダ中尉達を囮にしましょう!!オペレーション・ファントムの第一段階が終えた今、実際問題は重荷にすぎないはずです!!」

 

「ふふ……アンジェロ……お前は私の思考を見透かしているかのようなことを言うな。元よりそのつもりだ。彼女らは今後のネオジオンの為の礎になってもらう……!!!」

 

フロンタルは非情な一面を見せると、シナンジュを更に加速させた。

 

アンジェロ以外の部下達へ離脱命令を出す事なく。

 

突如現れたガンダムのパイロットは、ダカール市街地の映像を拡大図させた。

 

そして再び巻き起こり始めた戦闘を見下すように上空から見続けた。

 

「キヒヒ!!多勢に無勢……多勢に無勢の殺し合い……いいもんだなぁ、Ξガンダム!!!」

 

 

 

≪RX-105 Ξガンダム≫

 

 

 

Ξガンダムパイロット、キルヴァ・ザレア。

 

狂気に満ちた固まりであり、オーガスタで造られた強化人間である。

 

だが、乗機のΞガンダムと共に異質な強化人間であった。

 

かつてないまでの戦闘狂。

 

与えられた異質かつ正規な連邦性の強化ガンダム。

 

そして、パイロットとしての優遇。

 

その優遇の背景には、造ってしまった狂気の反抗を恐れた研究所側の配慮にあった。

 

「キヒヒ……!!キヒヒヒヒヒ!!見つけたぁ……!!!」

 

キルヴァは真っ先に同じ感覚を放つマリーダに興味を示した。

 

狂った笑みを浮かべながらΞガンダムを加速させた。

再び巻き起こる地上戦にネオジオン勢は追い詰められていく。

 

ザクⅢのビームライフルやフロントスカート部が破壊され、ヤクトドーガのビームマシンガンがエネルギー切れを起こす。

 

「くっそ!!!ビームサーベルしかなくなっちまった!!」

 

「同じく!!これ以上の闘いは不利っ……くあっ!!」

 

ビームライフル、ジムライフルの銃撃が注がれ、ガンダリウムの装甲を削っていく。

 

撃たれ続けた結果、シュツルムガルスのナックルシールドも半壊状態にあり、ゼーズールのアイアンネイルも、ライトアームのみとなる。

 

「いや、こりゃまいっちまったな~!!戦いづらくなっちまったぜ!!!」

 

「呑気な事言っている場合か!!!ビランチャ中尉!!!このままでは……うぁあっ!!」

 

ジムⅢやネモの更なる銃撃が、ゼーズールとシュツルムガルスに更なるダメージを蓄積させていく。

 

クシャトリヤとシャンブロだけが辛うじて善戦するが、彼女達はΞガンダムからくる不の感覚で戦闘に集中できずに被弾していく。

 

「近づいてくる……この嫌な感覚がっ……っく!!っっっぅぁああっ……!!!」

 

「キヒヒ!!!しゃああああ!!!」

 

轟音を切り裂きながらΞガンダムが、クシャトリヤに突っ込んでビームサーベルを突き出した。

 

高出力のビームサーベルがクシャトリヤのビームサーベルと激突した。

 

目映く激しいスパークが光輝く。

 

ビームサーベルを捌き合い、両機はスレ違うように交差した。

 

その瞬間、キルヴァの狂気がマリーダの感覚に食い込んだ。

 

「あぅぅっ……くっっ!!!が、ガンダム!!!?それに……精神に突き刺ささるかのような感情は何だ??!」

 

マリーダはキルヴァから感じる狂気に、戦慄すら覚えた。

 

これまでにない危険な領域の感覚であった。

 

それは、マリーダが克服しつつあったあの感覚を呼び起こす事となる。

 

「ガンダム……!!!!ガンダムは……敵だぁああああ!!!」

 

クシャトリヤはフルブーストをかけて加速し、マリーダの敵意を体現したかのようにファンネルを飛ばして襲いかかる。

 

対し、キルヴァは嗤いながらΞガンダムを反転させ、シナンジュを狙撃したビームバスターを再び装備し、狂気と共に撃ち放つ。

 

「ファンネル~ファンネル~……ぶっ潰してやるぜ!!!!」

 

ビームマグナムと同等出力のレモンイエローのビームが撃ち放たれ、クシャトリヤのファンネルを一気に破壊し始めた。

 

襲いかかるファンネルビームにΞガンダムは敢えて突っ込んで直撃をくらう。

 

だが、Ξガンダムはほぼ無傷で爆発から飛び出す。

 

それはまるでメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムのようであった。

 

Ξガンダムの装甲は、ガンダリウムγ合金であり、ガンダニュウム(GND)合金に引けを取らない強度を持ち合わせていた。

 

「何っっ!!?ちぃいいい!!!」

 

Ξガンダムは憤るマリーダの意思をのせたファンネルさえもビームサーベルで更に破壊し、クシャトリヤに斬りかかる。

 

Ξガンダムとクシャトリヤはビームサーベルを激突させたままスパークを散らして拮抗する。

 

「キヒヒヒャハハハハハ~!!!!感じるぜぇ!!!!ニュータイプの感じがっ!!!!」

 

「貴様は消す!!!!」

 

マリーダの怒りの乱撃が叩きつけるように振るわれ、その斬撃を愉しむかのようにキルヴァもビームサーベルを叩きつける。

 

相対する斬撃は、気持ちの悪い意味合いで互いの感覚を共有させた。

 

「キヒヒ……キヒヒ……気に入った!!!!ぐはひゃ!!!!女かぁ~……いいなぁ~…可愛いなぁ~!!!!キヒヒヒャハハハハハ!!!!付き合えよ!!!?」

 

狂った笑みを爆発させ、更に発言も爆発させるキルヴァに対し、マリーダは全力で否定した。

 

ヒイロから感じるものとは全く正反対であるが故に。

 

「ふざけるな!!!!貴様のようなイカれた気持ちの悪い存在は全力で否定する!!!!消えてしまえ!!!!」

 

「キヒヒ~!!!!ふられた!!!!俺、ふられた!!!!ならばぁ~……ハライセだぁ……キヒヒ………!!!!ファンネルミサイル、エクスターミネートォ!!!!」

 

キルヴァの狂気と共に、Ξガンダムの背部からファンネルミサイルが撃ち放たれた。

 

ファンネルの文字通り、搭乗者の意思で操られているミサイルだ。

 

狙われたら最後。

 

逃れることは不可能だ。

 

狂気の意思で飛び交うファンネルミサイルが、一気にクシャトリヤに集中し、ウィングバインダー、胸部周りの装甲、脚部を狙う。

 

とてつもない轟音と爆発がクシャトリヤを包んだ。

 

「くあああぁぁああっっ!!!!」

 

ウィングバインダーやコックピット周りの装甲面、両脚部が半壊状態となり、メガ粒子ブラスターは完全に撃てなくなった。

 

Ξガンダムはダメージを受けたクシャトリヤを更にビームバスターで銃撃を食らわせ、地上へと墜落させた。

 

「フラれたハライセは……恐いぜ……??!!キヒヒャまー、オーガスタへ持ち帰るからよ……俺がたっぷり味わってやる!!!!たのしみだぁ……!!!!その前に……!!!!」

 

ロニはこの悲惨な光景に思わず声を上げる。

 

「マリーダっっ!!!マリーダぁっっ……!!!!」

 

するとキルヴァは、にひっと嗤いながらΞガンダムを着地させ、クシャトリヤのコックピット目掛け、幾度もΞガンダムの拳を叩き込んだ。

 

激しい衝撃とマリーダの悲鳴がクシャトリヤのコックピットに響く。

「はああぁっっ……!!!ぐぅぅっ……!!!あくぅあっ……!!!!あうぅっ……!!!」

 

「キヒヒ!!!!キヒヒ!!!!いい声きかしてくれるなぁ!!!!もっと聞かせ……ろ!!!」

 

激しい一撃の衝撃波がクシャトリヤのコックピットに直撃した。

 

「くぅあぁあああぁぁぁっっ、ぐぅっ―――!!!」

 

その衝撃で、マリーダのノーマルスーツのヘルメットのバイザーが割れ、マリーダ自身も気絶してしまった。

 

「マリーダっっっ!!!今、助ける!!!」

 

その時、マリーダの危機に駆けつけたロニのシャンブロが、クローでΞガンダムに襲いかかった。

 

だが、Ξガンダムは軽くクローの斬撃を躱し、ビームバスターでクローを破壊する。

 

「っとぉ…………キヒヒ、お前も女か……悲鳴をきかせてくれよ!!!!」

 

キルヴァの狂気がビームバスターにのせられ、何発も高出力のビームをシャンブロに撃ち込む。

 

射抜かれた装甲の部分が爆発を起こす。

 

「きゃあああああああ!!?」

 

激しい衝撃にロニは悲鳴を上げ、それを聞いたキルヴァは狂った笑みを浮かべて喜んだ。

 

「いいね♪敢えて殺さないから怖がってくれよ……!!!!」

 

カークスの通信に感じたことのない恐怖と戦慄をロニは感じた。

 

だがその時、一つの狙撃ビームがΞガンダムを撃った。

 

カークスのザクスナイパーが放ったビームであった。

 

だが、全くダメージになっていなかったのは火を見るよりも明らかだ。

 

「あんだぁ?!!死にてーみてーだな……」

 

Ξガンダムはゆっくりと上昇し始め、ある程度上昇した所で一気に加速をした。

 

ゆっくりと瞳をあけながらこれを見たロニは、悲痛な予感に駆られた。

 

「まさか……だめ!!!カークス、逃げて!!!!」

 

ロニの予感通り、Ξガンダムはファットアンクルに向かいながら加速した。

 

ビームバスターを放ち、ファットアンクルを撃墜させた後に、落下するザクスナイパーにファンネルミサイルをえげつなく放った。

 

「ロニお嬢様……貴方だけは生きて下さい!!!!」

 

カークスは渾身の想いでΞガンダムへ射撃し続けた。

 

その攻撃も虚しく、カークスのザクスナイパーは瞬く間にファンネルミサイルに粉砕された。

 

「カークス……ああっ……!!!許せない!!!!」

 

ロニの復讐の念を感じたキルヴァは、ギンと眼光とプレッシャーをシャンブロへ飛ばした。

 

キルヴァの強大なプレッシャーに負け、ロニは怒りから一気に恐怖の感情に後退し、怖じ気づいてしまう。

 

「うっ……な、何!!?これ……こ、恐い……!!!」

 

「キヒっ!!ファンネルミサイル…………エクスターミネートォォォォォッ!!!!」

 

キルヴァは容赦なくΞガンダムを急降下させ、シャンブロへと襲いかかる。

 

Ξガンダムから更なるファンネルミサイルが放たれ、狂気の意思を引っ提げて襲いかかる。

 

それは次々と突き刺さるかのようにシャンブロへと降り注いだ。

 

通常のミサイルではありえない軌道で、様々な箇所に直撃させられ、シャンブロは幾多の爆発に包まれた。

 

その衝撃はコックピット内に激しく響いた。

 

「いやぁああああああ!!?」

 

ロニの悲痛な叫びがシャンブロのコックピットに響くが、キルヴァはお構いなしにじわじわと攻撃を繰り返した。

 

「そーそー……楽しませろ!!!」

 

ビームバスターのビームが、シャンブロのメガ粒子ブラスターのビーム砲身に直撃し、シャンブロの頭部が破裂するかのように爆発した。

 

「くあぅっ!!!うっ……このままじゃ……みんながこのガンダムに……!!!」

 

ロニはビリビリと伝わる狂気に耐えながら禍々しいΞガンダムの形相に絶えず戦慄を感じていた。

 

更に加えられる攻撃はゆっくり確実にシャンブロとロニを蝕む。

 

じり貧のバト達に、ジムⅢ、ネモの部隊が銃口をかざして容赦なく迫り、更に追い詰めていく。

 

「ちっきしょうが……!!!ここで終わりかよ!??」

 

ビームライフルのビームとジムライフルの弾丸が、ザクⅢとヤクトドーガへ撃たれ始めたその時、突如と斬撃の連撃が響き渡った。

 

 

 

ディッギャインッ、ディッギャン、ディッギャイィィンッッ!!!

 

シャインッッ、ディッディギャァィィィインッッ!!!

 

 

 

斬撃されたジムⅢとネモがスパークを散らしながら崩れ落ち連続で爆発を巻き起こす。

 

ガンダムサンドロックのヒートショーテルの斬撃であった。

 

「ネオジオンのみなさん!!今の状況ではかなり不利です。ここは僕達に任せて撤退してください!!」

 

クロススラッシュで斬り伏せたジムⅢを爆発させた後、カトルはいつにない熱さを賭してガンダムサンドロックにブースト加速をかけた。

 

バトとゼクストは、突然の救世主の背中をしばらく見続けた。

 

ビームや弾丸を浴び続けながらも、平然とジムⅢやネモを斬り伏せていく様は英雄以外の何者でもなかった。

 

「すげぇ……あんなにビームや弾丸を浴び続けても平気でいやがる……!!!」

 

「あれが、メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダム………!!!バト、撤退しましょう!!ビランチャ中尉達にも呼び掛けを!!」

 

「ああ!!だけどよ……ゼクスト」

 

「なんです?」

 

バトは、認めざるを得ない現実をゼクストに確認した。

 

「フロンタル大佐……俺達に命令せずに撤退したのか?」

 

「……バト……そんなことはないはずだ……そんなことは……!!!」

 

ゼクストもその現実を意識しつつも認めたくなかった。

 

元より自分達は彼の親衛隊であるのだ。

 

だが、彼らの複雑な気持ちを他所に、フロンタルとアンジェロは郊外に降下していたコムサイを目指し機体を飛ばしていた。

 

「……彼らを礎にした選択は非情なようだが正しい。ここから忙しくなる……コロニー共栄圏の実現の道は険しい。アンジェロ、これからも頼むぞ」

 

「はい!!大佐!!」

 

カトルは前面から来る攻撃に構う事無くロック・オンしたターゲットに取り付き、斬撃を浴びせていく。

 

その優しく熱い眼差しには、ロニを想う気持ちがあった。

 

「任務目標は彼らに譲るけど、この状況は見過ごせない!!!それに、ロニもこの戦場にいるんだ!!!彼女をこれ以上危険に晒す訳にはいかない!!!」

 

ガンダムサンドロックは真っ向から来る攻撃をモノともせずに駆け抜け、ヒートショーテルの豪快かつ素早い斬り捌きで、ジムⅢとネモの二機種の機体群を連続斬りで墜としていく。

 

ダカールの市街地の道路から次々と湧き出るかのように進撃する連邦軍のMS部隊は、ヒートショーテルの両刃の特性を活かした躍動する斬撃で、次々と斬り砕かれていった。

 

斬撃と共にガンダムサンドロックを加速させるカトルの見据えるモニターの先に、Ξガンダムに一方的な攻撃を加えられるシャンブロが映った。

 

カトルのメンタルのボルテージが一気に上がる。

 

「ロニっ………?!!!データに無いガンダムにやられているのか!??絶対にやらせはしない!!!!」

 

カトルはネモ2機、ジムⅢ3機を連続で斬り伏せながらフルブーストをかける操作をする。

 

バックパックが持ち上がり、ガンダムサンドロックは遠方に映るΞガンダム目掛けて直進的な加速で飛び立った。

 

別の箇所にて、ネモが3機がまとめて胸部を斬り裂かれ、爆発を巻き起こす。

 

 

 

ザシュギャァァァァァァァァァァッッ!!!

 

ゴゴゴヴァガァァァアアアッッ!!!

 

 

 

ガンダムデスサイズのビームサイズが3機のネモを斬り飛ばした直後に機体を180°反転させ、更に3機のジムⅢを斬り飛ばした。

 

 

 

ジャザガァアアアアアアッッッッ!!!

 

 

 

「やれやれ、どいつもこいつも馬鹿ばっかだなぁ!!こんなに群れちまってよぉ!!!」

 

デュオは軽口を叩いてみせながら、迫り来る敵機の攻撃を許すことなく攻める。

 

ビームサーベルで斬りかかるネモをビームサイズで斬り払い、背後から迫るネモのメインカメラにビームサイズのロッド先端を突き刺さした。

 

メインカメラを破壊されたネモは、そのまま胸部を斬り飛ばされ爆発する。

 

更にビームサーベルを振り上げて襲いかかるジムⅢへバスターシールドを刺突させ、胸部を容易く貫いた。

 

ガンダムデスサイズは爆発するジムⅢを突き破り、ビームサイズを振りかざして加速する。

 

「づぁああああああああ!!!」

 

振りかぶったビームサイズを大きく斜め下に振り下ろし、ジムⅢ2機とネモ2機を一挙に斬り裂いて破壊。

 

更に側面上にいたネモ3機を横一線に斬り裂き、一気に吹っ飛ばす。

 

爆発が巻き起こる中、ガンダムデスサイズは群れながら攻め続けるジムⅢとネモ部隊へ加速し、突貫した。

 

ビームサイズの斬り上げ、斬り下ろし、斬り払いと次々に斬撃し、取り付いたネモとジムⅢを一瞬で斬り捌いて葬る。

 

爆発するMS部隊を尻目に、ビルの角を抜けたガンダムデスサイズは、ジムⅢ部隊の集中砲火を受けた。

 

「っと……!!!うぜーな、一気に掃除すっかぁ!??」

 

ガンダムデスサイズは、ビームとミサイルの集中砲火を浴びせてくるジムⅢ部隊にバスターシールドをかざし、バスターシールドを撃ち飛ばす。

 

高速で撃ち放たれたバスターシールドは、左右に展開したクローと先端のビーム刃で破砕しながら一気にジムⅢ部隊を吹っ飛ばしていった。

 

突如のガンダム襲撃に対応するため、ジェガン部隊が前線へ赴き、ダカールの街の道路を加速する。

 

その時、上空からのビーム弾丸が撃ち注ぎ、ジェガン3機が瞬く間に破壊された。

 

上空にはビームガトリングを突き出して射撃するガンダムヘビーアームズがいた。

 

高速で撃ち飛ばされていくビームガトリングが、次々とジェガンを破砕させて仕止める。

 

 

 

ドゥドドルルルルルルルルルルルルゥゥゥゥ……!!!

 

 

上空からビームガトリングを撃ち込みながらジェガン部隊を次々と撃ち砕いていくガンダムヘビーアームズ。

 

ジェガン部隊は無惨に頭部や胸部を砕き散らされ破壊されていった。

 

そこから更に滑空するガンダムヘビーアームズは、アーミーナイフを展開させ、ジェガン3機を個々に駆け抜けるように斬撃した。

 

斬り倒されたジェガンを尻目に、ビームガトリングを連射し続けたまま、ジムⅢとネモの部隊が展開するポイントに移動し、ネモ4機を撃ち砕きながら着地した。

 

機体を身構え、ブレストガトリングのハッチを展開させたガンダムヘビーアームズは、マシンキャノンと連動させながらビームガトリングと共に前面へ一気に連射させる。

 

 

 

ヴォヴァドゥルルルルルルルルルルゥゥゥゥ!!!

 

 

攻撃体勢でいたジムⅢやネモの部隊は、瞬く間に装甲を砕き散らされ、次々と破砕されていく。

 

トロワは反射する破壊の爆発に照らされながら冷淡と状況を分析する。

 

「残りのMS部隊は293機……この程度の戦力ならば、たかが知れているな……一気に殲滅させる」

 

ガンダムヘビーアームズが連射させるごり押しのガトリング射撃は、幾多のジムⅢやネモクラスのMSを一瞬で残骸へ変貌させていった。

前面の部隊を殲滅させたガンダムヘビーアームズは、再び加速し、出くわすMS部隊をビームガトリングとアーミーナイフを駆使させながら個々に破砕させて進撃する。

 

そして再びビームガトリングとブレストガトリングを撃ち飛ばし、ジムⅢとネモを部隊を蜂の巣に粉砕させた。

 

ガンダムの増援により、連邦サイドは一気に劣性と化した。

 

「こちらCエリア第23ジムⅢ小隊!!メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムが出現!!至急応援を乞う!!繰り返す!!至急応え……がぁぁあっ!!!」

 

キルヴァは、聞こえてきた友軍の通信に上から目線で見下しながら答えた。

 

「け!!情けねぇな……ま、直ぐに行くさ……あいつらが、メテオなんたらのガンダムなんだな……じゃ、止めだ……!!!」

 

キルヴァはシャンブロのコックピット部にビームサーベルのビーム発動口を押し当てた。

 

蹂躙されたシャンブロには最早反撃する術は残されていなかった。

 

ロニもまた、Ξガンダムに対して無力なことに絶望し、涙を流した。

 

今、自分が突きつけられたビームサーベルの発動口に焼かれてしまう事を受け止めたロニは、哀しく呟いた。

 

「カトル………悲しいね……」

 

「……キヒっ!!絶望が伝わる、伝わる!!!!死んじまえよっ!!!!キヒヒャハハハハハハ!!!!」

 

非情なキルヴァの嗤いと共に、ビームサーベルの発動口が光を灯らせた。

 

「ロニぃいいいいいっっ!!!!」

 

迫るガンダムサンドロック。

 

シャンブロを破壊する寸前のΞガンダム。

 

哀しみに染まるロニ。

 

哀しみを止めんとするカトルの叫びがダカールに響いた。

 

 

 

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