新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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ニューエドワーズ基地での戦闘は、かつてない激戦を巻き起こした。

7対約500+増援の戦い。

怒涛の勢いで攻めていたガンダム達は、特定の遊撃と集中砲火をあてられ、次第に身動きが取れなくなっていく。

ヒイロとアディンがそれぞれの因縁めいた敵、ゼクスとリディにその刃を交え激突し続ける最中、五飛はディエスのバイアランカスタムを見事に制した。

だが、後にトレーズと決闘を開始するも、敗北という結果に終わってしまう。

その後も闘い続けるメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダム達だったが、ディセットが仕組んだ情報工作を施した自作自演のテロによって更に追い詰められる事となった。

情勢的な攻撃を受けたメテオ・ブレイクス・ヘルは、
事実上、任務失敗の敗北を余儀無くされるのであった……。





エピソード13 「ダカール進攻」

緊急離脱して後、Gマイスター達は一旦散々になり、各地へ散開していた。

 

その中で、ヒイロは自動操縦に切り替えたウィングガンダムのコックピット内で、今回の任務失敗に対し途方に暮れていた。

 

(俺は……俺達は任務を失敗に終わらせた……本来であれば自爆だ……惨めな敗走だ……!!!くっっ!!!)

 

ヒイロは手のひらを反して見つめ続け、アディン・ロウからの教訓を思い出し、言い聞かせる。

 

『ヒトの正しい姿勢……もとい、生き方は感情のままに行動し、後悔を残さない事が正しい生き方なんだ。特に戦いの場合なんかな……お前も感情のままに行動し、その行動で示せ……』

 

亡きアディン・ロウの声を自分の中で、再生させると、ヒイロをある感情が突き動かした。

 

ヒイロは、咄嗟にマリーダのクシャトリヤへの通信回線を開いた。

 

 

 

BGM ♪ 「A LETTER」

 

 

 

彼女に会いたいという気持ちであった。

 

しばらく間を置いた後、マリーダが通信に出る。

 

「っ……!!マリーダ……!!」

 

映し出されたマリーダは、普段のノーマルスーツ姿ではなく、黒いタンクトップのシャツに短パンの姿で、コックピットに座っていた。

 

タンクトップから見えるブラのラインがセクシーさを出している。

 

ヒイロは普段とは違うマリーダの姿に釘付けになり、言葉が止まる。

 

対し、マリーダはいつになく感情を出して身を乗り出すかのようにモニターに近づいた。

 

「ヒイロ!!お前から連絡をくれるとはな!!無事なんだな!!」

 

「あ、あぁ……」

 

「シャワーを終えた後にニュースを見てな……今連絡入れようとしていた所だった!まさかヒイロ達が敗走だなんてな……だが、無事で何よりだ!!よかった……!!」

 

マリーダの表情にはヒイロの無事を心底から喜ぶ安堵の笑みが浮かんでいた。

 

だが、ヒイロは影を落としたままだ。

 

「俺は……任務を失敗に終わらせた……惨めなものだ……」

 

マリーダから見たヒイロは、いつになくマイナスなモノを感じていた。

 

初めて味わう任務の失敗と敗走に、ヒイロの鋼のようなプライドも損傷を受けていた。

 

更にその傷を癒す為にマリーダを求めていた事も。

 

マリーダはモニター越しにもそれを感じ、直ぐにヒイロの心境を理解して、モニターのヒイロに諭す。

 

「解る……ヒイロが今傷ついているコト。確かにヒイロはすごい。明らかにエースの部類の戦士だ。だが、それでも……ヒイロはマシンじゃない。人間だ。失敗や敗走だって味わってしまう事もある。だから任務の失敗を気に病むことはない……」

 

「マリーダ……!!俺は……俺は……!!」

 

「ヒイロ……思い悩む必要はない……連邦もOZも姑息な偽りの戦略を仕掛けてきた……世界はそれを真に受け、ヒイロ達を敵視し始めた。けど、ヒイロ達ならばいつか必ずそれを覆せるときが来る……だから、今はゆっくり休んでいいんだ……」

 

マリーダは決して歳上目線ではなく、真っ直ぐにヒイロの傷ついた心を癒したいという感情から接していた。

 

「マリーダっ!!俺はぁっっ……くっ!!!」

 

ヒイロも決してメテオ・ブレイクス・ヘルでは見せる事はない弱味をマリーダにさらけ出す。

 

短期間の内に二人は互いに心を開いていた。

 

戦士として戦う為、そしてその運命と闘う為の人生を歩む事になった二人だからこそなのだろう。

 

マリーダはそっとモニターのヒイロの頬に指先を当てた。

 

「今、傍に居れば触れながらヒイロを癒せるのにな……この気持ちは切ないようなこそばゆさを感じる……」

 

「マリーダ……俺は普段、仲間といる時でさえ、このような気持ちを見せる事はない……何故だ?」

 

それの答えは、互いに想いを寄せているに他ならなかった。

 

ヒイロもモニター越しに手の甲を軽く当てた。

 

「ふふっ……敢えてその答えは言わないし、聞かない……それは直接聞きたいものだからな」

 

「マリーダ、俺はマリーダに直接会いたい……」

 

最早、戦士としてのヒイロはマリーダの前に居なかった。

 

ナイフのような戦士のヒイロを強くイメージしている者からしてみれば、情けなさは全開と言ってもいいだろう。

 

見方を変えてしまう者もいるだろう。

 

だが、マリーダは決してそうは捉えなかった。

 

戦士故の苦悩も知っているが故に。

 

「私も同じだ……話してる内にもどかしくなってきた……直接今のヒイロを抱きしめて癒してあげたいと切に願っている私がいる……」

 

「あぁ……俺もだ……」

 

ウィングガンダムとクシャトリヤのコックピットで二人しか知らない時間が流れていく。

 

この時間はヒイロのみならず、潜伏続きだったマリーダの気持ちも癒した。

 

「お互い……オペレーションの任務が終わったら会うぞ……」

 

「あぁ……」

 

 

 

激戦後のニューエドワーズ基地において、事後処理任務が進められていた。

 

連邦、OZの兵士達が各場所で各々に任務をこなす。

 

その中でゼクスとリディは部下達の死を知り、ニューエドワーズ基地に向かいながらミスズと共に、MS-TOPGUNのメンバーとして敬礼と黙祷をささげていた。

 

ゼクスはゆっくりと敬礼を解きながらミスズに問い質す。

 

「……我々は、有能かつ掛け替えのない部下達を失ってしまった……ミスズ……何故早急にこの事を伝えなかったのだ?」

 

対してミスズは、風でなびく髪をかき分けながらゼクスに答えた。

 

「無論、お前の闘いに水をさすまいと思ったからだ。オットー達の想いも同じだったはず……私とて悔しい想いで張りつめている……!!!彼らはその死と引き換えにガンダムとの戦闘データを残してくれたが、代償としては、余りにも重い!!」

 

「あぁ……ミスズの言う通りだ。不幸中の幸い、トラントは一命をとりとめたものの、受けた代償は重く大きすぎた……」

 

その言葉にリディは、悔しさと怒りを堪えて答える。

 

「はいっっ!!自分の場合ではありますがっ、ホマレ中尉、ガロム中尉は、新米時代の上官でもありました……俺はっ……彼らに対し、まだ恩を貫き通せていません!!」

 

「いや、リディ少佐は恩義に尽くしているはずだ。私もそうだが、あのガンダムと対等に渡り合い、かつ生き延びている……新米時代の貴君を知らないが、少なくとも当時を思えば目まぐるしく成長しているはずだ」

 

「ゼクス特佐……!!」

 

「生き延びさせてもらったからには、我々が出来る闘いを貫くのだ。リディ少佐、連邦とOZの違いはあれど、今後とも私と共にガンダムを斃す道を歩んで欲しい……」

 

リディは、ビッと改めた気を付けをし、引き締めた表情で敬礼した。

 

「喜んで!!!」

 

「私もな……ゼクス」

 

ミスズも厳しい中の柔らかな表情でゼクスに敬礼を交わした。

 

一方で、ディエスは中破した愛機・バイアランカスタムの機体を見上げていた。

 

バイアランカスタムの両肩は見事に突き砕かれ、あちこちにビームグレイブによる焼灼痕が残る。

 

(……こんなにやられちまったか……やはりとんでもない機体だったな、龍のガンダム……こいつは完全に俺の負けだ……)

 

自軍は形状の勝利を得ていたが、ディエスとしては紛れもない負けであった。

 

ディエスは、バイアランカスタムに歩み寄り、その装甲に手を触れる。

 

「ま……お互い生きてるだけでもメッケモノだな……俺達は次なる再戦に備えるか……麒麟のプライドにかけてな……!!」

 

生き残ったエース達がニューエドワース基地の施設でそれぞれの想いを胸にする中、管制塔でトレーズとディセットが今回のオペレーションについて向き合っていた。

 

「大衆は……今回のオペレーションで確実にメテオ・ブレイクス・ヘルを敵と認識し始めました。鹵獲こそはできませんでしたが、心理戦も兼ねたコロニーと主要都市への大規模偽装テロによりメテオ・ブレイクス・ヘルは今や孤立化……実際にコロニー市民も非難側へ掌握できているようです。よってリザルトで我々の勝利と言えるでしょう!!」

 

ディセットは誇らしげにオペレーションの勝利の核心を報告する。

 

だが、トレーズはそれに置ける遺憾をいくつか並べてディセットへ返した。

 

「だが、その偽装テロの為に多くの市民を犠牲にした。そして、偽装テロの件を直接私に報告していなかった……これは如何なることか?」

 

「はっ!!前者は犠牲の規模、心理的衝撃が多い程、メテオ・ブレイクス・ヘルに対し大衆は怒りを示す。そしてこの先の時代の為にまだ多くの犠牲を必要としていると考慮した為です。そして後者はこの偽装テロがエレガントではないと核心しつつも、中止を恐れ、勝利の為に押し通す為に敢えて報告致しませんでした……誠に申し訳ありませんでした!!ですがっ!!私はトレーズ閣下の勝利の為に考慮していたと言うことだけは、主張させてください!!!」

 

ディセットの言い分を聞いたトレーズは、管制塔から見えるトールギスⅢに目を向けて歩き出す。

 

「ディセット……貴君の想いは解った。だが、勘違いをしてはいけない……私が望む多くの犠牲とは、我々を含めた戦いに身を投じている者達の事だ。大衆までを犠牲に巻き込んではならない……それではかつての悲しい歴史を真似るに過ぎなくなってしまう……」

 

「はっ……!!!申し訳ありませんでした!!!」

 

トレーズは、しばらく愛機と定めたトールギスⅢを見つめた後に、ディセットに振り向いて今後のことを指示した。

 

「今後は大衆を犠牲にする作戦を禁ずる……メテオ・ブレイクス・ヘルに関しては彼らだけを狙うようにせよ……では下がりたまえ……」

 

「はっ!!」

 

トレーズはトールギスⅢを見つめながら五飛との対決を振り返り、闘いに対する想いに浸る。

 

(しかし……私と刃を交えたあのガンダムのパイロットは、理想的な戦士の姿勢を貫いていた。また手合わせをしてみたいものだ…)

 

その頃の五飛は、ひたすら海中を突き進んでいた。

 

トレーズとの対決が敗北の形になったことに対し、酷く己れを追い込み続ける。

 

「俺はトレーズに負けた……Gマイスターたる俺が!!!ナタク……今の俺には戦う資格がないっっ!!!」

 

五飛は悔しみの限りに、力強くコントロールグリップを握り続け、歯ぎしりをしながらゆっくりと顔を伏せていった。

 

 

 

オペレーション・イカロスの作戦は、386機のMSと兵士が失われ、鹵獲は失敗に終わった。

 

だが、ディセットいわく、リザルトで見ればOZと連邦の勝利であった。

 

メテオ・ブレイクス・ヘルによるテロと見せかけたOZの工作は、一気に地球市民はおろか、守るはずのコロニー市民までもが非難する要因となった。

 

コロニー市民は、デモを行いながらメテオ・ブレイクス・ヘルの排除を訴える。

 

「メテオ・ブレイクス・ヘルはコロニーの危険因子だ!!!連邦よりも危険だ!!!早急に排除せよぉ!!!」

 

「やつらのガンダムも排除せよぉ!!!コロニーは奴等のテロに屈しない!!!」

 

「コロニーが生んでしまった悪魔は世界の邪魔だぁ!!!」

 

また、巷でも日を追うごとに非難する考えが相次ぐ。

 

「メテオ何とかって結局、ワケわからん過激なテロ集団だったのか……一気に失望した……主要都市狙うって怖すぎる……」

 

「あいつらの目的、最初は反連邦運動しておいて、実は世界世界征服なのかも……衛生ミサイルはやりすぎだ。恐ろしいよ……」

 

「またコロニーが攻撃に遭ったのか!?メテオ何とか!!コロニーの見方と期待していたが、所詮はテロリストに過ぎん奴等だ!!!」

 

「いつコロニーが攻撃されるかわからない日々……早く壊滅してほしいわ……」

 

また一方でメディアのコメンテーター達は、言葉を並べて批判を重ねていた。

 

「彼らは非常に危険な因子です。合同軍事演習が催された一件ありますよね?通常のMSならばあんな蹂躙行為はできません!!恐らく彼らのガンダムは、地球圏を制圧できる程の力を有しているものと思われます……他の言い方をすれば、我々の脅威としての顔が動き出したと言えます……」

 

「ガンダムのテロだけに飽きたらず、地球その物に対してもテロを開始した……それは確かですね。衛生ミサイルがメインであり、ガンダムの攻撃はカモフラージュ……今後はガンダムと衛生ミサイルでの同時テロが主流になると思われます……」

 

「主要都市を狙う……これはとんでもない事です!!!今や攻撃を受けた国の機能は麻痺状態です。これはかなりの悪影響を与えている!!特に東京への攻撃は衝撃でしたよ……彼らは一刻も早く壊滅してもらいたいものです……」

 

世界の殆どが、メテオ・ブレイクス・ヘルが地球とコロニーの脅威と認識し始めていく。

 

コロニーの各場所で、メテオ・ブレイクス・ヘルのアジトと疑われる箇所が相継いで爆破され、この日もコロニーの一角が爆破された。

 

爆発の跡から全身に傷を負ったメテオ・ブレイクス・ヘルのメンバーの一人が、瀕死状態で地面を匍匐前進するように出てくる。

 

大量の出血した傷の具合からしてもう長くはなかった。

 

「くっ……OZ……め……!!!これが貴様らのやり方か!!!がはっ……っくっ……俺は死ぬな……」

 

メンバーの男はペンダントを手に取り、悔しげに手を震わせながら言った。

 

「俺の恋人を奪った憎き……OZめ……!!!コロニーは……コロニーの未来は託すぞっ……Gマイスター……!!!」

 

息絶えるメテオ・ブレイクス・ヘルの男を尻目にするかのごとく、任務を実行したOZの工作員達をのせた装甲車がその爆破地点より走り去っていく。

 

車内では工作員達が、成果を誇るようなテンションで会話をかわす。

 

「ふふふっ!!これでまた一つ奴等のアジトと疑われる場所が消えたな!!」

 

「あぁ!!疑われる因子は徹底して排除する!!今回の爆破工作も全て奴等の仕業とするさ……」

 

「そうすることで、スペースノイドもこちら側へ掌握出来るわけだ。じわじわとな!!」

 

「向こうが地球で散々やらかしてくれた分、俺達が宇宙で奴等のアジトを破壊……その構図が今できつつある」

 

彼らの工作の中には、予測や見当が外れ、メテオ・ブレイクス・ヘルのアジトではない一般の施設も存在していたが、それらのテロも、メテオ・ブレイクス・ヘルのモノとされて報道されるのだ。

 

誤った解釈をした大衆の声がメディアを通して報道される。

 

「彼らのテロで恋人を失ってしまった……還してくれ……還せよメテオ何とか!!」

 

「我々が何をした!!?コロニーの見方じゃなかったのか!??ええ!!?」

 

「奴等はコロニー市民の敵だ!!結局、破壊目的の集団だったんだ!!!メテオ何とかめ!!早く滅びてくれ!!!」

 

これ等の情報は、直ぐにドクターJ達へ入ることとなる。

 

L1コロニー群のA1358コロニーのとある廃ビルの地下。

 

ここにあるメテオ・ブレイクス・ヘルのアジトにドクターペルゲやプロフェッサーG達の怒りの声が響き渡った。

 

「奴等めっっ!!!またやりよったわ!!!またしてもやられたっっ!!!」

 

「我々のみならず、必ず市民を巻き込むように仕組んでおる!!!そして更にその罪をすり替える……くっっ!!!卑怯者めがっっ!!!」

 

ドクターペルゲはデータベースのパネルを叩き割る勢いで手を叩きつけ、プロフェッサーGはコーヒーカップを叩き割ってみせる。

 

仲間を失わされていき、挙げ句には守るべきコロニー市民が自分達の為に巻き添えの犠牲になる。

 

OZの卑劣な手口に憤りを止められない。

 

口数が少なすぎる他のドクターに代わり、ドクターJが見かねてなだめに入った。

 

「お前さんら!!怒っても解決はせんぞ!!ワシらにはワシらのできることをするしかないじゃろ!!なに……やられたらやり返すまでじゃ……」

 

そう言いながら、ドクターJは次なる任務を送信した。

 

ドクターJの言葉の後にプロフェッサーGが反論する。

 

「無論だが、この状態で何が出来るのだ!??下手に動けば奴等の思う壷だぞ!!!」

 

「口実にされる可能性を潰す……それ以外は暇潰しに手を付ける……だが、しかし!!だが、しかしじゃ!!!ラルフから入った情報が、確かなら地球連邦本部がダカールからアデレードへ移りつつある!!!」

 

「いずれにせよ……それならば、ガンダムの編成を二分にする必要があるな」

 

「あぁ……まだまだこれからじゃ。ワシらのガンダムの闘いは終わらせん……!!!」

 

 

 

メテオ・ブレイクス・ヘルによる大規模なテロというOZのすり替えに、Gマイスター達は急激なまでに不利な状況に追い込まれた。

 

だが、追撃を振り切った五飛以外のGマイスター達は、世界情勢の非難する風当たりに屈する事なく行動していった。

 

 

 

大西洋 バージニアビーチ近海

 

 

 

地球連邦軍の潜水艦・ボーンフィッシュが海中を航行していた。

 

その悠々たる巨大な船舶に黒い人影が忍び寄る。

 

ほの暗い海中に眼光が輝く。

 

ガンダムデスサイズであった。

 

ボーンフィッシュに取り付くと、直ぐ様ビームサイズを発動させ、海中に光輝くビームの鎌を形成する。

 

デュオはモニターに映るボーンフィッシュに向かうように言葉を走らせる。

 

あたかも、八つ当たりをくらわすかのように。

 

「過ぎた自作自演であそこまでやってくれるなんてな……だが、俺達は引き下がる気なんざ、一切ないぜ!!!ダカール行くついでだ!!斬り刻んでって……やんよっっ!!!」

 

 

 

ジュズガァアアアアアアアッッ!!!

 

 

 

振るわれたビームサイズが、ボーンフィッシュの装甲を横一線に斬り刻んだ。

 

焼灼され、切断された動力炉部分が爆発を起こし、規模の大きな気泡を巻き上げる。

 

潜水艦がこうなっては最早手の施しようがない。

 

母艦の危機に、搭載機のアクアジムが8機出撃し、魚雷銃をガンダムデスサイズに向かい、撃ち放つ。

 

ガンダムデスサイズは、ごり押しに魚雷を受け止めて斬りかかった。

 

水中で光るビームサイズのエネルギー鎌が振りかざされ、一振りの斬撃が振るわれる。

 

瞬発的な焼灼音と共に3機のアクアジムが胸部を裂断されて爆発を巻き起こした。

 

アクアジムの1機が、零距離から魚雷をガンダムデスサイズへと撃ち込む。

 

無論ながら悪あがきに過ぎなかった。

 

眼光を光らせたガンダムデスサイズは、バスターシールドをアクアジムのコックピット部に突き刺してみせる。

 

近接するアクアジムは、破裂するかのように破砕して砕け散った。

 

背後から来る幾多の魚雷弾がガンダムデスサイズのバックパックやショルダーに着弾する。

 

ガンダムデスサイズは後方へ振り向くと、飛び出すようにして加速。

 

ビームサイズを振りかぶって襲い掛かる。

 

強力なビームサイズの一振りが、アクアジムを寸断させ、近距離にいた1機にバスターシールドを突き刺した。

 

その爆発から更に飛び出し、残りのアクアジムを横一線に振るう死の鎌で葬り去る。

 

その後、ボーンフィッシュは幾度か爆発を起こし、船体を崩壊させて海中へその巨体を虚しく沈ませていった。

 

その光景を死神が不気味に見届けていた。

 

デュオはガンダムデスサイズの死神の形相とは対照的なテンションで自らのガンダムに話しかける。

 

「……さて、相棒!!ダカール目指して行きますか!!っっと……航路は注意しよーぜ。間違ってもバミューダ海域は通らないようにしねーとっ!!ワケわからんまま消えるのはゴメンだかんな!!」

 

魔のバミューダトライアングルを視野に入れながら、サイドモニターにダカールへの進路を表示させるデュオ。

 

その口許をニヤつかせる表情は、先の敗北を感じさせない。

 

デュオは通信を繋げる操作を始め、カトルへ連絡をとる。

 

「こちらデュオ!!只今っから連邦のごちそう求めてダカールへ向かうぜ!!」

 

「了解しました。僕は一足先に駐屯施設で待機していますので、また合流間際でもいいんで連絡をください……」

 

「了解♪って……カトル、なんか表情が深刻だな。仕方がね~って!!過ぎちまったことよか、今できる戦いを……」

 

モニター越しからも判る程、カトルの表情は重いモノを感じさせていた。

 

デュオは先の敗北を引きずっているように捉え、はげまそうとする。

 

だが、デュオの捉え方は少し違っていた。

 

「あぁ、違うんです!!確かに初めの悔しさは大きなものでしたが、僕達の敗北に関してはもうデュオのように前向きに考えています!!僕が今気にかけているのはロニの事です」

 

カトルはニューエドワースの一件の後に、彼女から直接戦う決意の事を聞いていた。

 

それに対し、いつにない憂いを感じさせられていたのだ。

 

デュオは少しでも和やかな空気にしようとしてみせる。

 

「あぁ、カトルのフィアンセさんか!!確か、戦いに行くって言ってオルタンシアから出たんだよな?」

 

「フィアンセって……ふふっ!否定はしないかも知れませんね……彼女はジオンの人達と合流する為に、戦う為にオルタンシアを出ました。その戦う場所が今回のダカールになりそうなんです……」

 

「そうなのか!?ならいいじゃねーか!!一緒に戦えるかもしれねーぜ!!」

 

デュオとのやりとりで普段の明るさを見せるカトルだったが、再び表情に影を見せた。

 

「そうなんだろうけど……なんだか、こう……胸騒ぎが……嫌な予感がするんだ……それに……ロニ自身が暴走しているようにも思えたんだ」

 

「嫌な予感に暴走??カトル~いくらなんでも考えすぎだろ~!?それに、彼女に危険が及んだ時こそ、カトルの見せ場ってもんだろ!?らしくいこーぜ!!」

 

デュオの励ましを受け、カトルは一呼吸つくとしばらく考え続け、会話が止まった。

 

(かぁ~!!カトルのやつ、相当ロニに気をかけてるんだな!!ま、しょうがねーか……半ばマジなフィアンセみたいだしな……っと!)

 

その時、デュオは五飛を思い出し、話を一時変えることにした。

 

「あぁ!!話変えて悪いけどよぉ、五飛はどうしたんだ!?任務以降連絡とれねーんだ……何か聞いてるか?」

 

「……彼からは何もありません。ですが、こちらからの通信に『俺はトレーズに負けた。戦う資格はない……』その少ない言葉だけを残して通信を切りました」

 

「トレーズに!!?あいつ、トレーズと殺り合ってたのか!??どこまで行動派なんだか……で、それ以降音沙汰無しと……あいつのことだかんなー……きっと上手く身を隠してる頃だとは思うが……」

 

デュオいわく五飛は、中国のどこかの山岳地帯に身を潜めていた。

 

シェンロンガンダムのコックピット内で只々落ち込むような格好で瞑想していた。

 

否、敢えて言うならば迷走ともとれる。

 

「くそっ……くっっそぉおおおっっ……!!!ナタク、俺を叱ってくれっっ!!!」

 

五飛は不甲斐ない己と向き合い、シェンロンガンダムに悔しみをコックピットに吐き散らした。

 

その時だった。

 

起動電源を落としたシェンロンガンダムに近づく陸戦型ジムの姿があった。

 

先頭の陸戦型ジムのパイロットはシェンロンガンダムに気付き、背後の2機を停止させた。

 

「止まれ……前方にMSを確認し……ん!?あれは……ガンダムか?!?」

 

その声は女性のものであった。

 

彼女は赤外線モニターに映るシェンロンガンダムをじっくりと注視した。

 

「間違いない……ガンダムだ……でも何故こんなところに!??」

 

 

 

大西洋・地球連邦軍空母

 

 

 

大西洋を航行中の地球連邦軍の空母艦が強襲を受けて爆発炎上していた。

 

その火付け役はガンダムヘビーアームズであった。

 

 

 

ドドドゥルルルルルルルルルルルルゥゥゥ―――!!!

 

ディギャギャギャドドドドガガガガガガァァン!!!

 

 

 

突き出したビームガトリングから連射されるビーム弾が、空母のブリッジを連射爆発音を響かせながら、瞬く間に砕き散らす。

 

ブリッジを破壊すると、直ぐ様空母に配備されていたリゼルに向かい銃身を構え、ビームガトリングを連射した。

 

連続する破壊音を響かせながらリゼル部隊が砕き散らされ、次々と爆発していく。

 

同配備されていたスタークジェガンもこの事態に次々と起動し、ミサイルランチャーとビームバズーカを構えてガンダムヘビーアームズへと撃ち込む。

 

だが、ガンダムヘビーアームズは軽快な上昇でこれを躱し、斜め上からビームガトリングを連射し、次々とビーム連射を浴びせて機体群を破壊し続ける。

 

「ダカール基地所属の空母の破壊……ダカール強襲に先駆けたウォーミングアップに過ぎないが……」

 

トロワは、ビームガトリングである程度の戦力を破壊すると、アーミーナイフを展開させた後に、軽快にガンダムヘビーアームズをコントロールし、回り込むようにしてスタークジェガンの胸部を3機連続で斬り刻み、4機目にアーミーナイフを突き刺した。

 

その後方で順に斬り刻まれたスタークジェガンが爆発を起こし、アーミーナイフを突き刺されたスタークジェガンもガンダムヘビーアームズの至近距離で爆発を起こした。

 

その爆煙の中から飛び出したガンダムヘビーアームズは、再び低空からのガトリング射撃を待機中のリゼルに浴びせた。

 

「この空母の戦力は確実に破壊させてもらう……ガンダムを見たものを生かしては帰さない……」

 

冷淡としたトロワは、自然な流れを運ぶようにトリガーを引き続けた。

 

 

 

一方、バーネット兄弟達はダカールからアデレードへと向かうラルフと合流を果たしていた。

 

合流場所はグアダルーペ島近海を航行するサルベージ船・イスタンダル。

 

オルタンシア同様、メテオ・ブレイクス・ヘルの偽装サルベージ船であった。

 

ガンダムジェミナス01のコックピットで、アディンはプルと通信しあっていた。

 

ニューエドワーズの一件を思えば、アディンとって心理的にも休める一時である。

 

「じゃー…しばらく帰ってこれないの?アディン?ロニお姉ちゃんも出て行っちゃったし、寂しいヨ~」

 

「そんなに寂しがるなって~!別に死んだ訳じゃねーしさ!サクッと決めて帰って来るぜ!!」

 

励ますようにサムズアップして笑うアディン。

 

だが、プルはそれでも心配そうな顔をした。

 

「……この前の任務はスゴく心配したんだよ?スゴく沢山のMSの中で戦ってて……」

 

「そうか……あの時は報道陣とか来てたもんな……確かにあの時は今までで最大の勢力だった。ま、後の殆どは角MSと一騎討ちだったけどな……心配かけちまって悪いな、プル。任務だから仕方ねーんだけど……ま、戻ったらどっか連れてってやるぜ!!いつまでもオルタンシアの中に居たらマンネリ化するだろうし!!」

 

アディンのふとした気遣いと思いきった発言に、プルはいつもの明るさをみせて喜んだ。

 

「ホントに!?やった!!初デートだね!!あたしとアディンの!!」

 

「いい!?で、デート!?デートって~……」

 

アディンは何の気なしに言ってみせたが、プルは明らかに両想いデートと捉えて喜んでいた。

 

故にプルは、しどろもどろなアディンに疑問符的な一言をなげかけた。

 

「違うの?」

 

「い、いや……もち、デートだ!!」

 

推定4歳差と思われる引っ掛かりを感じつつも、アディンはプルの訴える視線にデート承諾してしまう。

 

するとプルは嬉しげにあるものを取り出した。

 

「ふふふ♪約束ダヨ♪じゃー……これも受け取ってね!じゃーん!」

 

「お!?」

 

プルが見せたのは、可愛らしいガンダムジェミナスのマスコットだった。

 

「ひょっとして、ガンダムジェミナスか!?」

 

「可愛いでしょ?アディンの為に作ったんだから!ロニお姉ちゃんにも教えてもらいながら頑張って作ったんだよ?」

 

余りにもの想われように、アディンは照れ臭くすらなってしまう。

 

「そっか……サンキューな、プル!」

 

「えへへ♪そう言われるとスッゴく嬉しい♡」

 

アディンとプルが会話通信する一方で、収容したガンダムジェミナス01、02を眺めながらオデルとラルフが今回の一件を話し合っていた。

 

「地球連邦本部が移りつつあるか……確かな情報なのか?ラルフ?」

 

「あぁ。これを見てみろ。アデレード入りしたエージェントが送信してくれた画像のやつだ。アデレードの議事堂に入って行く現在の地球連邦の最高幹部の面々……因みにこれまで連邦関係の連中は殆ど出入りはしていなかった」

 

ラルフから手渡されたデータベースボードを受け取り、オデルはアデレード関連の画像を閲覧する。

 

「ん?!これは?見覚えのある幹部が映っている!」

 

オデルが気にかけた画像は、地球連邦幹部や政府議長達が出入りする画像であった。

 

ラルフは煙草を吸いながらその画像の説明をする。

 

「確かにそうだろうな。世界情勢のニュースで必ず出てくる幹部連中だからな。因みにそれはごく最近の画像だ。つい三日前のな。そのクラスのお偉いさんがここへ来て急な出入りにいそしんでいる決定的な証拠だ」

 

「なるほどな。だが、現時点ではダカールが正式な本部でもある……だから二分して任務を遂行する必要があるわけだ。たが、ニューエドワーズの一件以降下手に動けんからな……下手に動けば口実にされる」

 

「そう思ってるのは案外、オデルだけかもな!ヒイロ達はお構いなしに破壊任務をやらせてもらってるぜ」

 

ラルフは何の気なしに言ってみせ、それを聞いたオデルは、益々危惧してしまう。

 

「おいおい!!いいのかそれで!?余計に連邦・OZの思うツボになりはしないのか!??現にコロニー側では、俺達のアジトがテロを装った攻撃を受けているんだろう!??」

 

「確かにその情報もある。あげくにコロニー側が騙されて俺達を敵視し始めている……けど、だからこそ闘い続ける姿勢が大事なんじゃないか?そういう姿勢こそ、Gマイスターのあるべき姿勢じゃないか?俺はそう思うがな……」

 

「ラルフ……」

 

 

 

地球連邦軍・シャイアン基地

 

 

 

一方でヒイロは、シャイアン基地の中枢への破壊任務にあたる。

 

マリーダの癒しもあり、敗走当初のヒイロはもう存在していなかった。

 

 

 

ヴゥゥッ……ヴヴァドゥダァァアアアアアアアァ!!!

 

 

 

バスターライフルのビーム渦流が撃ち注ぎ、標高の大地が瞬く間に破砕され、凄まじき爆発を噴き上げる。

 

バスターライフルの銃口をかざしたまま、上空でホバリングし続けるウィングガンダム。

 

モニターに表示される情報を注視し続けるヒイロ。

 

直撃を受けた山岳の勾配部は物の見事に目くれ上がり、爆発の炎を立ち上らせていた。

 

「……この基地には、コロニーレーザー・グリプス2の管制室がある。俺達の名を口実に利用される前に破壊する……!!!」

 

ヒイロは敗北の直後に味わった辛酸を静かなる闘争心に変換し、任務を遂行する。

 

山岳部の偽装ハッチが開き、基地警備に配備されていたゼータプラスや新型テスト配備されたジェスタが迎撃に向かう。

 

各機は散会し、ビームライフルをスタンバイしながら銃口をウィングガンダムへと向け、一斉にビームを撃ち込んだ。

 

撃ち注がれるビームが、ウィングガンダムを直撃していく。

 

そして幾つもの着弾面で爆発を巻き起こした。

 

だが、その爆煙の奥からはバスターライフルをかざしたままのウィングガンダムが姿を見せた。

 

ゼータプラス、ジェスタの機体群はあわてふためくように一斉にビームを幾度も撃ち込み続ける。

 

ウィングガンダムのモニター画面に浮かぶ、ロック・オンマーカーがそれらをロックした。

 

それを見据えるヒイロは容赦なくトリガーを引く。

 

唸りながら撃ち飛ばされたビーム渦流が、ゼータプラス3機を吹き飛ばすように撃墜させた。

 

続けて、ジェスタへとバスターライフルを放ち、小隊編成で射撃していた3機を地表ごと砕き散らす。

 

更に側面から迫るウェイブライダー形態のゼータプラス3機へバスターライフルをかざして撃ち放った。

 

放たれるビーム渦流が、1機のゼータプラスを吹き飛ばし、2機がプラズマ渦流の高エネルギーにより誘爆を巻き起こして爆発した。

 

ベースジャバーに乗ったジェスタ6機が旋回しながら距離を取ってウィングガンダムを攻撃する。

 

ヒイロはモニターに捉えた機体を視線で追いながら、通常よりも低い出力にしてバスターライフルを放つ。

 

単発で放たれるビームの突風がジェスタを個々に吹き飛ばして撃墜させていく。

 

低出力とは言え、威力はビームマグナムと同等の威力を持ち、確実な破壊力を有していた。

 

同じ射撃軸線に入った残りの2機を捕捉すると、通常出力のビーム渦流で撃砕させた。

 

そして地上にいたジェスタ3機へとバスターライフルを放ち、地表をえぐり飛ばしながら破砕させる。

 

ヒイロは、見下ろしながら中枢地点をスキャンする操作をした。

 

モニター画面にスキャンさせた中枢ポイントが表示される。

 

「シャイアン基地の中枢部を確認……破壊する」

 

ヒイロはウィングガンダムを中枢地の真上に位置する地点に着地させ、バスターライフルの銃口を地表へと突き刺した。

 

チャージされていくバスターライフル。

 

数秒後、バスターライフルの銃口から凄まじきエネルギーが解放され、シャイアン基地の中枢内部は圧縮されたビーム渦流に潰されるようにして、管制施設諸共基地施設が消し飛ぶ。

 

シャイアン基地から破裂するような爆発が噴き上がり、ウィングガンダムを巻き込むようにして地表を破砕させた。

 

炎の海と化したシャイアン基地の上には、エネルギー爆発の巻き込みを受けながらも、悠然とウィングガンダムは存在し続けていた。

 

「シャイアン基地の中枢を破壊。任務完了……これより、オーストラリア・アデレートへと向かう……情報が確かなら、そこに連邦の本部がある」

 

サイドモニター画面で次の任務内容を確認しながらルートを設定するヒイロ。

 

いよいよ地球連邦本部攻撃の時間が迫りつつあった。

 

その時、ウィングガンダムのコックピットに通信アラームが鳴る。

 

サイドモニターにはクシャトリヤからの回線コードが表示されており、ヒイロは、はっとなりながら通信回線を開く。

 

彼女を意識しての行動であった。

 

「通信……!マリーダか!!」

 

通信回線を開くと同時にマリーダの姿が表示された。

 

いつも通り、クシャトリヤのコックピット内からだ。

 

「ヒイロ……あれから立ち直れたか?」

 

「あぁ……マリーダのおかげでな。今、北米の連邦軍基地を破壊していた」

 

それを聞いたマリーダは、安心した感じで笑みを溢した。

 

「そうか……ふふっ、なら心配は無用だな。で、今日は私からだ。単刀直入に言おう。明日、ダカールへ進攻する!!いよいよ私達の方の大きな任務が動く!!これだけは伝えておきたかった!!」

 

「そうか……そっちにはカトル達三人が行く!!俺はいないが無事に任務を遂行してくれ、マリーダ!!」

 

「無論だ。ヒイロは別の任務か?」

 

「あぁ。俺はオーストラリアのアデレードを目指す。新にそこへ連邦軍本部が移りつつある。俺達はそこを叩く!!」

 

「アデレード!?聞いていない情報だ!!」

 

「俺達のエージェントが捜査した結果判明したことだ。だが、まだダカールに本部があるのも確かだ。アデレードは俺達に任せてダカールに専念してくれ」

 

淡々と言って見せるヒイロはいつもの戦士のヒイロだった。

 

ヒイロの姿勢を見たマリーダは改めて安堵した。

 

「ヒイロ……解った。ならばそちらは任せる。互いに武運を祈ろう」

 

「了解した……」

 

 

 

 

ダカール周辺のとある島にて、ネオジオンの勢力が集結していた。

 

先程のマリーダは、この場所から通信をしていたのだ。

 

シュツルムガルス、ザクⅢ、ヤクトドーガ、ゼーズール、そしてギラズールカスタム、シナンジュ、クシャトリヤが立ち並ぶ。

 

島内の海中に満たされた施設には、巨大モビルアーマー(以下MA)とユーコン級潜水艇が待機していた。

 

MS群と同じく、ネオジオンの名優達も顔を揃えていた。

 

「こいつぁ、揃い踏みがすげーな!!にんまりがとまんねー!!」

 

気さくに振る舞う豪快かつ、どこか粋な雰囲気を持つ髭を生やした中年の男、ビランチャ中尉。

 

シュツルムガルスを愛機とするネオジオンのベテランパイロットだ。

 

「ネオジオンの勇姿揃い踏みってカンジっすね~。こういう光景、嫌いじゃないっすよ」

 

ビランチャに共感し、不敵な眼差しでネオジオンのMS達を見上げるのは親衛隊よりオペレーション・ファントムに抜擢されたバト少尉。

 

ザクⅢのパイロットを任されている軽い雰囲気の青年だ。

 

「いよいよダカールへの強襲が始まるんですね……あのガンダムは現れるでしょうか?」

 

メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムの介入を気にかけるのはヤクトドーガのパイロット、ゼクスト少尉。

 

彼はセルジ少尉の同期であり、同じく親衛隊より抜擢されたパイロット。

 

彼にはニュータイプとしての能力も有り、それ故にヤクトドーガのパイロットとして抜擢されていた。

 

ゼクストの言葉に同期のバトが答える。

 

「さぁな……あのガンダムが現れずとも、俺達ネオジオンだけで充分……いや、そうでなくちゃいけねー!!それが誇りってもんだろ?」

 

「ふふふっ、無論です。ただふと気になっただけですよ」

 

「がはははは!!ガンダムが来ようがなんだろうが関係ねーさ!!迫る連邦の奴らを殴り飛ばしてやるまでよ!!」

 

三人が話す向こう側で、ゼーズールから降りてきたパイロットの姿があった。

 

ゼーズールパイロット、アヴリル中尉。

 

真面目気質に、強気なトゲが生えたような感性の持ち主だ。

 

だが、その表情は静かに険しかった。

 

何故ならアヴリルはここへ至る間に、同胞のゼーズールのパイロット二人を失って来ていた為だ。

 

(くっ……自分がいながら同胞を戦死させてしまうとは……!!!何故こうも不甲斐ない!??)

 

アヴリルは自分を攻め続けていた。

 

ネオジオンの新鋭機とばかりに油断してはいなかったと言えば嘘になる己の意識に悔しさが募る一方だった。

 

「っ!この声は……」

 

そんなアヴリルの心の声が聞こえたマリーダは、アヴリルに歩み寄り、彼を諭すよう試みた。

 

「アヴリル中尉……部下を亡くしたのか?」

 

「っ!!マリーダ中尉!!そうか、マリーダ中尉はニュータイプだからな……自分の声が聞こえたか?」

 

「あぁ……だが、私のニュータイプは作り物だ。アヴリル中尉……余り自責の念に囚われるな。一度戦闘となれば、誰であれパイロットとという戦闘単位になる。気に病むことはない」

 

「何だと!?あいつらがどうでもいいとでも言うのか!??」

 

責任感を感じて止まないアヴリルは、マリーダのその言葉を上手く受け入れなかった。

 

マリーダは彼の心境を理解しているがゆえに直ぐに言葉を返す。

 

「誤解するな!私が言おうとしているのは、囚われをこのまま引きずってダカールへ挑めば確実に危険だということだ。ネガティブな囚われを持ったまま戦場に出れば、様々な不の思考を生み、死を招く!!無論その様なことは部下達も望んではいない!!」

 

「……っ!!!」

 

言い切るマリーダの言葉は説得力を離さない。

 

アヴリルはぐうの音もでなかった。

 

傍らで先程の三人がそのやり取りを見てコメントを漏らす。

 

「ほほ~……マリーダの姉ちゃん、言うこと言うな~!!あのとんがり坊やが黙っちまったぜ!!」

 

「流石、マリーダ中尉。憧れちまうぜ」

 

「……マリーダ中尉、好きなんですか?バト少尉?」

 

ゼクストの突っ込みにムキになって否定した。

 

「ああ!??ち、違うぞ!??そう言う意味じゃねー!!!」

 

ビランチャも立て続けにバトをからかう。

 

「がはははは!!青春だな!!!告白しちまえ!!!」

 

「話に尾びれ付けすぎっすよ!!!勘弁してください!!!」

 

「ムキになってしまうからダメなんですよ」

三人のやり取りをよそに、マリーダとアヴリルが固い空気に包まれる。

 

そこへ一人の女性の言葉が飛び込んだ。

 

「ふふふ……確かにそうよ。自責の囚われは良くない」

 

その言葉を放ったのは合流を果たしたロニだった。

 

ロニはガーベイエンタープライズの元専務・カークスと共にそのまま歩み寄った。

 

「初めまして。ジオン残存軍を支援していた今無きガーベイエンタープライズの令嬢、ロニ・ガーベイです。我々は以前よりジオン残存軍を支援してきましたが、ふとした不遇に見舞われ、連邦とOZに会社を潰されました。ですが、今回の期に皆さんと共に決起させていただく事になりました。よろしく……」

 

「私からもよろしく……同じく元ガーベイエンタープライズ専務のヨンム・カークスです。共々ダカール戦の成功に尽力しましょう!!」

 

ロニとカークスはマリーダとアヴリルに手をかざし、握手をする。

 

「私はネオジオンのマリーダ・クルス中尉。よろしく……!!?」

 

マリーダはロニと握手した瞬間、ロニがメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムと関わっていることをニュータイプ的な閃きでそれを知る。

 

(このコ……ヒイロ達のガンダムを知っている!!!)

 

ロニは、アヴリルと握手する際に、自身の経験も踏まえて、彼にアドバイスを諭す。

 

「アヴリル・ゼック中尉だ。よろしく」

 

「よろしく。話途中からで、詳しくは解らないけど、自責な囚われはいつまでも引きずらず、前に進んだ方がいい。私は連邦とOZに掛け替えが無かった多くを奪われた……でも、大切に想えるモノを持てば、あるいは思い出せばきっと囚われは晴れる……」

 

「大切に想えるモノを?それならある!!ネオジオンの誇りだ!!」

 

「そう……なら大丈夫……それを糧に進めばいいわ」

 

そう言い残し、ロニとカークスは他のネオジオンやジオン残存軍のメンバーに挨拶して回った。

 

その後の一息の合間で、マリーダはロニを呼び止めた。

 

無論、先程の感覚の真意を聞くためだった。

 

マリーダは念を持って、周囲に気を配りながら話を切り出した。

 

「ロニさん」

 

「はい?あ、マリーダ中尉……」

 

「マリーダでいい。ちょっと話がしたい」

 

「話?えぇ、いいわ。私もロニで良いわよ」

 

二人は島アジトの人気の無い海が一望できる岩場に来ていた。

 

潮風が二人の髪をなびかせる中、マリーダはメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムについて聞いた。

 

「私はある種の感覚が鋭くなってる関係で、ロニが、あのガンダムと関係があることを直感した。実は私も彼らに関わった身だ。一部の人にしか伝えてないが……」

 

ロニは直ぐに察しがつき、マリーダの話に飛び付いた。

 

「え!?あなたも知っていたの!?」

 

「あぁ。最初の任務の際に色々あって彼らに世話になった……特に羽根つきのガンダムのパイロットにな……ふふっ」

 

マリーダはヒイロを浮かべると自然に笑みを嬉しげに溢してしまう。

 

笑うマリーダに一瞬疑問に思ったロニであったが、直ぐに理解した。

 

「?……あ!!ひょっとして、好きになっちゃったの!?そのパイロットのコを!!」

 

「っ……!!!そ、そうなのかもな……境遇が似ててな。互いの機体の通信チャンネルも交換してて、時折連絡している……ついこの前もな。そしたら今まで見せなかった彼の一面を知った」

 

同性故な為か素直に本音を溢すマリーダは、いつになく顔を赤くしていた。

 

辺境の地の一角でガールズトークに火がつき始めた。

 

「それって……かなりいいカンジじゃない!!」

 

「そ、そうか?ま……これまでの人生の中で、こんな気持ちになるのは初めてでなんとも言えんが……」

 

「羽根つきか……あ、もしかしてヒイロ君でしょ!?」

 

「うっ!!流石……正解だ……で、ロニは誰が好きなんだ?」

 

「二つ下の幼馴染みのコ。言ってみれば砂漠の王子さま!!」

 

「砂漠の……王子さま!?」

 

「小柄で昔から可愛いいんだけど、今は男の子としても頼れる所もあってね……」

 

マリーダとロニのガールズトークは、恋話を核にいつまでも続いた。

 

その会話の中でプルの事を聞かされ、話が脱線しまた話が続く。

 

「―――そうか!ロニは姉さんとも関わり合いがあったのか!!」

 

「そうなの!でもなんか変ね!私がプルちゃんを妹みたいに思ってて、マリーダからしたらお姉さんだなんて!」

 

「ふふっ、まぁな……無論、実際は私が姉な感じだが、複雑な理由で見れば姉さんなんだ。数少ない大切な実の家族だな」

 

「家族かぁ……」

 

「あ、すまない……ロニは家族を無くして……」

 

「ううん、いいの!気にしないで!じゃ、プルちゃんは私達の心の家族ね!!」

 

「ロニ……あぁ!そうだな!」

 

二人はすっかり意気投合し、まるで昔からの友人であるかのように語り合う。

 

数少ない同性との関わり合いに安心感を感じたためか、二人の精神はすっかり癒されていた。

 

そこには、パイロットの肩書きを取り外した本来の女子としてのマリーダとロニの姿があった。

 

戦いがなければそれが常にある光景であっただろう。

 

だが、今は戦いが日常の日々が現実であった。

 

フロンタルの仮設部屋では、フロンタルがアンジェロと共にオペレーション・ファントムの全貌を語り合っていた。

 

この内容はネオジオンの上層部にしか知り得ていない話であった。

 

「アンジェロ……オペレーション・ファントムの真意は解っているな?」

 

「はい!!勿論です、大佐!!当初は残存軍の支援とダカール本部の陥落と同時に自治権確立の要求し、いずれは完全平和を促すものでした……が、真意は!!!かつての地球打撃作戦を再現し、第三次ネオジオン抗争を勃発させる。そして、コロニー共栄圏を実現化することです!!」

 

「左様だ、アンジェロ。これからのダカール本部攻撃が成功すれば自治権確率要求と共に宣戦布告をする。その後の手筈も……」

 

「はい!!既に郊外でコムサイを待機させてあります。宇宙の艦隊と合流できるようにしています」

 

フロンタルは、手を組んだまま不敵な笑いをして見せる。

 

「フ……明日は存分に連邦のMSを破壊し、連邦本部を陥落させるぞ……地球圏の全同士を決起させ、願わくば正規なネオジオンを立ち上げたいものだ……!!!」

 

静かに、不気味に、確実にネオジオンの動向に変化が起きようとしていた。

 

 

 

翌朝、ネオジオン、ジオン残存軍の兵士達が招集し、フロンタルが主になり、オペレーション・ファントムの第一段階の最終作戦がいよいよ発動する。

 

ダカールの街全域に、ネオジオンの電波ジャックによる放送が流れる。

 

その放送は、フロンタル自らが演説さながらに行い、民間を巻き込まないよう意図している印象を与える為のものであった。

 

奇しくもその声質の声は、宇宙世紀0085にもキャスバルの演説としてダカールに響いていた。

 

だが、その質が全く異なるのは明らかだ。

 

「ダカール市民の皆さん、急な放送の無礼を御了承頂きたい。我々はネオジオン。日々、宇宙移民者の自治権確立の為に闘っています。本日、我々はその一貫として、ダカールの地球連邦本部を制圧致します。その際の戦闘に市民の皆様を巻き込まぬよう、避難勧告をここに宣言致します。制限時間は一時間。車両での避難はご遠慮頂きたい。制限時間以降は戦火になるものと思ってください……繰り返します。我々は……」

 

だが、この放送を受け止める者と受け止めぬ者に別れ、案の定街は混乱を招いた。

 

一連の流れから本気とみた連邦側は、直ぐ様対応に出る。

 

だが、それは市民の安全を二の次にした対応であり、地球連邦側は街中で、MS部隊を展開させ始めた。

 

ジェガン、ジムⅢ、ネモ、ロトが大多数で湾岸基地を出撃し、ダカールの街へ次々と持ち場に配備されていく。

 

最早、街や市民よりも連邦本部を守るという思考が、火を見るより明らかな程に出ていた。

 

その数はおよそ400機。

 

しかし、オペレーション・イカロスに比べ、数は迫りつつも、戦力が明らかに手抜きのようなものであった。

 

それはアデレードに地球連邦本部が移りつつある現れでもあった。

 

そして、それより一時間後……島より発進したネオジオンとジオンの残存軍のMS部隊が、ダカールの連邦軍ダカール湾岸基地に迫る。

 

無論、先導するMSは赤い彗星の再来であるフロンタルのシナンジュとその右腕、アンジェロのギラズールカスタムだ。

 

フロンタルは薄笑いを浮かべてシナンジュを飛ばし、アンジェロも不敵に笑ってシナンジュに就き従うがごとくギラズールカスタムを加速させる。

 

「さぁ……見せてもらおうか……ダカールの戦力とやらを!!!」

 

その方向より、クシャトリヤと一際目立つ赤い巨大MA・シャンブロが継続して進撃する。

 

このシャンブロこそ、ロニが乗る準サイコミュマシンであった。

 

彼女は、微かにニュータイプの素質があり、それを増幅させるヘッドユニットを装着し、迫るダカールを見据える。

 

マリーダも、鋭い眼差しでクシャトリヤを進撃させてモニターを見据え続けていた。

 

各機体のコックピットの眼下には、海面の絨毯が高速で吸い込まれ過ぎ去っていく光景がはしっていた。

 

後の部隊は水中で全速航行するユーコン吸に搭載されて進撃していく。

 

更に別の方角からは上空にはジオンの輸送機・ファットアンクルが4機現れ、ドムトローペンやデザートゲルググ、イフリート、アッグガイ、ジュアッグ等のジオンの残存軍のMSが降下を開始。

 

郊外からダカールへと攻め入る。

 

これらの情報が、待機していたカトル達三人にもラルフから知らされた。

 

「ネオジオンがダカールへ!??」

 

「あぁ!!こっちも頃合いだ!!できればアデレードと同時多発にいきたかったが、指加えて見てるわけにはいかんだろ?」

 

「もちろんです!!!では僕達も向かいます!!!」

 

カトルの返事にデュオとトロワも返事に戦闘意識を乗せて返す。

 

「あったりめーだ、ラルフ!!!ニューエドワーズの倍返しで暴れてやるぜ!!!」

 

「やはり、ここは俺達のガンダムが介入すべき所だ。介入は至極当然な流れだ……!!!」

 

ダカールに起こった緊急事態に、各メディアも負けじと報道を開始した。

 

その報道は、地球、コロニー、はたまた月面都市にも拡がって行った。

 

 

 

ダカールの地球連邦軍湾岸基地において、第一防衛ラインが敷かれ、ネモやジムⅢの部隊が一斉に迎撃体制を整えていた。

 

更に海上にはホバークラフトに搭乗したジムⅢ部隊が迎え撃つ。

 

「こちらダカール湾岸基地、第一防衛ライン!!敵機を複数捕捉した!!」

 

「了解!!直ちに迎撃を開始せよ!!」

 

「了解!!第一防衛ラインの全部隊に次ぐ!!直ちに迎撃をか……」

 

その時、第一防衛ラインの指揮を執っていたジェガンがビームに撃たれ、直撃部を円形に融解され爆発した。

 

その直後に連続でそのビームがはしり、ネモ5機、ジムⅢ3機が一斉に破壊され爆発した。

 

迎撃タイミングを狂わされたMS部隊の上空を赤い残像が駆け抜ける。

 

シナンジュである。

 

モノアイを光らせ、上空から防衛ラインを拡げる部隊をビームライフルで狙いを定め、ネモやジムⅢの部隊に反撃の余裕すら与えず、胸部面を直撃させるように高速で順に各個撃破。

 

攻撃に移ろうとシナンジュへ向きを変えようとするネモ部隊だが、その間に撃破されてしまう。

 

シナンジュはそのまま水先案内人のように高速で基地上空を駆け抜け、市街地へと到達する。

 

そして上空よりロック・オンしたロトを射撃。

 

射撃を受けたロトは激しく破砕して爆発した。

 

シナンジュはダカールの街の各地でその驚異的なスピードを活かした空襲を開始。

 

開始される対空射撃を物ともせずに高速で躱して射撃していく。

 

その射撃の殆どは、ロトに集中していた。

 

砲撃による自軍の被害を軽減する為だ。

 

そして湾岸基地の第一、第二防衛ライン部隊に向かい、ギラズールカスタムのランケブルーノランチャーとシャンブロの鎌首をもたげて発射されたメガ粒子ブラスターが同時に襲いかかる。

 

ランケブルーノランチャーによる横一線射撃による掃除のごとき破砕射撃で一気にネモやジムⅢ部隊が吹き飛ばされ、メガ粒子ブラスターの一直線のライトグリーンのビーム渦流が基地の管制塔諸ともMS部隊を吹き飛ばした。

 

ビームは街にまで到達し、ロトやジェガン部隊の一部を破砕させた。

 

上陸したシャンブロは、ホバー走行を維持しながら第二波のメガ粒子ブラスターを放つ。

 

第二波のメガ粒子ブラスターは、やや右半分の方角に放たれた。

 

その射撃軸線上のMS部隊や基地が破壊されていく。

 

ギラズールカスタムも連動するようにランケブルーノランチャーを連発させながら撃ち放ち、ネモやジムⅢ部隊と基地施設の破壊を慣行していく。

 

これらの攻撃は第一、第二防衛ラインの部隊の半数以上を壊滅させるに至った。

 

これにより一気に突破口が開かれ攻撃部隊の進入が容易となる。

 

更に海上のジムⅢ部隊にゼーズールが襲い掛かり、アイアンネイルで容易く斬り裂いて撃破させてみせる。

 

水中と水上では部がいいようで悪く、ゼーズールはジョーズのごとく次々とジムⅢへ襲い掛かり、撃破させていく。

 

そして残った第一、第二防衛ライン部隊にクシャトリヤを筆頭に攻撃部隊が攻撃を仕掛ける。

 

胸部のメガ粒子ブラスターで、前面の敵機を吹き飛ばした後に縦横無尽にファンネルを展開させ、更に複数機をきめ細かく狙い撃って破砕させていく。

 

そこからクシャトリヤは機体を敵機部隊へ突っ込み、ネモやジムⅢを吹っ飛ばしながら着地。

 

倒れたネモやジムⅢをファンネルで破砕させた直後に、周囲からのビームやジムライフルの射撃に耐えながらウィングバインダーのメガ粒子ブラスターを展開させる。

 

そこから全メガ粒子ブラスターを発射し、周囲の敵機を一気に吹っ飛ばした。

 

シュツルムガルス、ザクⅢ、ヤクトドーガの3機組もフォーメーションを執りながら攻撃を開始。

 

連邦側もようやくここから射撃による反撃に出る。

 

ビームライフルやジムライフル、バズーカの射撃が唸る。

 

だが、ホバー走行を駆使したザクⅢとヤクトドーガ、機動性を高めたシュツルムガルスの卓越した動きに攻撃を躱され、更なる反撃を食らう。

 

ヤクトドーガは、ビームマシンガンで射撃するジムⅢやネモを各個撃破させていくと同時に、6基に増設されたファンネルを展開させ、駆け抜けながら周囲の敵機を射抜き飛ばしていく。

 

更に突き進みながら、ヤクトドーガはビームマシンガンとファンネルで一方的な火力の銃撃戦で銃撃し続けていたネモ部隊を黙らせた。

ザクⅢも負けじとホバー走行で駆け抜けながらビームライフルで銃撃し、ジムⅢ部隊の反撃をねじ伏せるように撃破させていく。

 

口部から放つ集束メガ粒子ブラスターで、側面の敵機群を破壊すると、ジムライフルで一斉射撃を仕掛けるネモ部隊へと迫る。

 

そして、フロントスカート部の二連メガ粒子ブラスターを放ち、二線軸上のネモ部隊を破砕させた。

 

一方でシュツルムガルスは卓越した機動性で銃撃を躱し、懐に飛び込んでナックルシールドの連打を打ち込む。

 

変わり果て、ひしゃげたボディーになったジムⅢが倒れ混む。

 

そのままダッシュし、一撃でネモを吹っ飛ばし、ジムⅢへフックを打ち込む。

 

ジャンプしながらビームを躱し、斜め上上空からナックルシールドを叩き込み、ネモを地面へ叩き伏せた。

 

更にダッシュし、ネモを吹っ飛ばすと、第二防衛ラインの指揮官機のジェガンへと1・2パンチを叩き込み、一気にボディーブローを打ち込んで胸部を破砕させた。

ネオジオン勢が戦闘を開始する最中、カークス達が郊外からダカールへと攻め入る。

 

ファットアンクルに搭乗したザクスナイパーのビームが、ロトを狙撃したのを皮切りに、ザクスナイパーの狙撃がネモやジムⅢ部隊を次々と射抜く。

 

それに続けと言わんばかりに4機のドムトローペンが、ホバーダッシュしながらバズーカとマシンガンを撃ち込み、ジムⅢやネモを破砕させていく。

 

不意を突かれ、射撃体制をずらされたネモ部隊にデザートゲルググのビームライフルと駆け抜けるイフリートのヒートサーベルによる斬撃が襲いかかる。

 

ネモ部隊は瞬く間に射抜かれ、斬り裂かれ撃破された。

 

ジムライフルを連射させながら反撃するネモ小隊に、ジュアッグのフィンガーランチャーと四連ビームキャノンが襲い掛かり、蜂の巣にされながら破砕される。

 

更にビームライフルをジュアッグに放とうとしたジムⅢに、アッグガイのヒートサーベルが突き刺さった。

 

 

遂に始まったダカールへの進攻。

 

それは夜明け前の痛みか、あるいは更なる混沌を時代に落とすきっかけなのか。

 

歴史の監視者たるトレーズは、OZ本部の総帥室にてダカールの映像に目を配っていた。

 

「これこそが戦う戦士達の姿。尊い犠牲なのだ。この戦いの向こうにどのような歴史が顔を出すのか、興味を惹かれる。だが、この戦いには我々は敢えて介入はしない。我々はアデレード側へ移りつつある連邦本部へと力添えさせてもらう……ゼクス達にまた依頼させてもらった……きっと喜んでくれる筈だ彼も……」

 

トレーズはメディアを介して、アデレードに地球連邦最高幹部護衛の名目でゼクス達を派遣することを表明していた。

 

それには、彼らのMSまでもが公開されていた。

 

その真意は半ば連邦の存在を無視した非常にある意味での私情を挟んだものであった。

 

「さぁ……君達の決戦の手はずは整えておいた……きっと彼等も我々の招待に気づくであろう……」

 

ゼクスとリディの決戦の場をトレーズが配慮して設けたものであった。

 

騎士道精神の極みたるものだ。

 

奇しくも意識してではなかったが、任務でヒイロとアディンはアデレードの地へと向かっていた。

 

ゼクスとリディもまた、ミスズと共にアデレードへと向かっていた。

 

正統たる戦士達が戦場へ向かう中、招かれざる戦士がダカールを目指していた。

 

その戦士はガルダの腹の中に収まって眠る。

 

その巨大な角張ったシルエットとヘッドの眼光は正にガンダムであった。

 

それを見上げるパイロットと思われる少年が不敵な発言と共に嗤った。

 

「ひゃはははははっ!!!最高の時間が始まる!!!たまんねーなぁ!!!全て俺の手で蹂躙してやんぜぇ……なぁ……俺のガンダム!!!」

 

 

 

 

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