新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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地球連邦とOZによる合同軍事演習がニューエドワーズ基地に於いて催される。

合同軍事演習は報道陣も招き入れ、地球圏各地に中継されていた。

その最中で、メテオ・ブレイクス・ヘルの7機のガンダム達が、ニューエドワーズ基地に強襲を開始した。

対し、迎え撃つMS部隊は500余りの数であった。

圧倒的に不利な状況にも動じないGマイスター達は、その身を戦場へ飛び込ませていく。

ガンダム達は圧倒的な力を見せつけ、幾多のMSとの激闘を繰り広げた。

だが、その最中、ディセット特佐により「オペレーション・イカロス」が発動。

徐々にガンダム達は戦略的に不利な道筋を歩み始めた。

オペレーション・イカロスが発動される中で、好敵手を持つ双方の戦士達は互いの刃を交え、プライドをかけて激突を開始する。

ニューエドワーズ基地に拡がるその戦士達の闘いを前にし、トレーズは手をかざしながら戦場に想いを馳せるのであった……。




エピソード12「奮起と敗北の流動」

オペレーション・イカロスが発動し、メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムへ長時間に渡る攻撃が開始された。

 

終わらぬ攻撃の中、空中ではウィングガンダムとトールギスが断続的にエネルギーのスパークを散らし、力強く互いのビームサーベルで斬撃をぶつけ合う。

 

ヒイロとゼクスは斬撃を互いに捌き合い、叫びながら気迫と気迫をぶつけ合う。

 

「おおおおおおおお!!!」

 

「づあああああっっ!!!」

 

振りかぶった両者のビームサーベルが唸り、激しく激突した。

 

ヒイロの表情とゼクスの仮面越しの表情を目映くスパークが照らし、スパーク音がコックピット内に響き渡る。

 

「鹵獲前に決着を着ける……騎士道と不粋さが混じった命令だ……!!!願わくば純粋な決闘を望みたいものだな……」

 

ゼクスはオペレーション・イカロスの内容に不服を感じていた。

 

騎士道精神を重んじるが故に。

 

対してヒイロは、以前よりも増してゼクスがトールギスを使いこなしている事を実感していた。

 

「ゼクス・マーキス……以前よりも遥かにトールギスを使いこなしている……!!!」

 

そして両者は、再び幾度も斬撃の打ち合いをすると、瞬発的に離脱。

 

空中を流星のごとく、高速でアーチ状の軌道を描き、スパークを散らしながら激突していった。

 

その一方で、ガンダムジェミナス01とユニコーンがビームサーベルを交わせて、もつれ合いながら地上へ激突する。

 

アスファルトが激しく砕かれ、粉塵を巻き上げながらガンダムジェミナス01がめり込んだ。

 

その上から押し込むようにユニコーンがビームサーベルを押し当てて襲いかかる。

振るえながら拮抗する両者のビームの刃。

 

「ちっ……くしょうっっ!!!この角野郎!!!」

 

「俺が優勢を執った!!!これならいける!!!このチャンスは逃さない!!!!」

 

優勢に立った事により、リディの戦意が膨らむ。

 

だが、アディンはモニターのユニコーンを睨みながら、咄嗟にシールドをユニコーンの胸部に

激突させて衝撃を与えた。

 

「くっ~……ちょーしに…―――乗んなよっっ!!!」

 

「がぁぁっっ!??」

 

怯んだ隙にガンダムジェミナス01はユニコーンのビームサーベルを捌き離脱。

 

再び地上へ着地し、ガンダムジェミナス01とユニコーンはビームサーベルをかざし、加速する。

 

2機はその勢いのまま突っ込み、ビームソードとビームサーベルとを激突させ、スパークを散らした。

 

もう一方でオデルは機動性と火力が格段に上昇されたリゼルカスタムの攻撃に翻弄され続ける。

 

時折受ける攻撃が、ガンダムジェミナス02の姿勢を崩される。

 

同時にシールドや装甲へのダメージも重なり、僅かながら凹みが生じていく。

 

「やはり速い!!!この俺が翻弄されるとは……!!!」

 

リゼルカスタムの火力や機動性は、最早ガンダムクラスのものであった。

 

ホマレ機、ガロム機を筆頭に駆け巡るかのような一撃離脱戦闘が続く。

 

「ここで、同胞達の仇をとらせてもらう!!!」

 

「このリゼルカスタムならば……墜とせるはずだ!!!」

 

防戦へと追い込まれたガンダムジェミナス02は、知らず知らずの内に地上へと向かって行く。

 

攻撃の反動や、回避によるものだった。

 

「このままでは……地上へ追いやられ、あの集中砲火を浴びるな……くっっ……執拗にビームが来る。相当嫌われているようだ……ま、当然だかな!!!」

 

地上ではメタルミサイルの雨が、ガンダムデスサイズ、ガンダムヘビーアームズ、ガンダムサンドロックへと撃ち注がれ、ビームや弾薬とは違う連続的な物理的なダメージに、防戦を余儀無くされる。

 

更にオーバーエアリーズの部隊が一撃離脱でメタルミサイルを撃ち込み、旋回しながらビームライフルで狙い撃っていく。

 

元々がトールギス用のビームライフルであり、高出力の威力を誇る。

 

ビームが外れる事なく、ガンダムの装甲に集中して撃ち込まれていく。

 

「やれやれ……これじゃタコ殴りもイイトコだぜぇ!!!」

 

「タイミングを見計らってチャンスを待ちましょう!!弾丸である以上、必ず弾切れの時が来るはずです!!」

 

「おいおい……しばらくこのままってーのか!??勘弁してくれよぉ……即行で暴れたいぜ~…」

 

「今は耐え続ける事が先決だ。俺達のガンダムは元々このような状況下に置かれる事も想定されている。問題はない……もっとも、デュオのように辛抱弱ければ意味がないがな」

 

「なぁにぃ!??」

 

トロワのダメ出しを受けて反応するデュオ。

 

その直後、新兵器のビームバズーカによるリーオー部隊の砲撃と、スタークジェガンによるミサイルとバズーカの砲撃が開始される。

 

更なるダメージと衝撃が3機のガンダムを襲い始める。

 

「うぉおおっっ!??コイツら、バカじゃねーか!!?畜生!!!図太いビームまで出てきたぞ!??」

 

「更に攻撃が増したか……」

 

「っくぅ……!!!とにかく、今は耐えるんです!!!」

 

カトル達は防御を持続させて耐え凌ぎ続けた。

 

その一方で、基地の敷地外で戦闘を続ける五飛とディエスは、斬撃の打ち合いを繰り返し続けていた。

 

「流石だな……メテオ……ブレイクス……ヘル!!!」

 

ディエスは斬撃を放っては捌き、放っては捌く。

 

「ふん!!!なめるな!!!はぁあああっっ!!!」

 

五飛の気迫と共に、ビームグレイブによる高速の連続突きが繰り出された。

 

「くっ!!!」

 

間一髪で後退しながら躱すバイアランカスタム。

 

機体をふらつかせながら後退し、再び体勢を立て直すと、ビームサーベルを振りかざしてシェンロンガンダムへと襲いかかった。

 

「ならば……!!!」

 

バイアランカスタムは、両腕を振りかざして斬りかかった。

 

「でやぁっっ!!!」

 

五飛も迷う事なく、シェンロンガンダムをバイアランカスタムへと突っ込ませた。

 

管制塔では、オペレーターの兵士達が常時報告の声が響き渡る。

 

「第二次総攻撃へ移行!!重装型リーオー部隊、前面に展開!!攻撃を開始しました!!」

 

「哨戒中の第8~第14ガルダ航空部隊へ増援を要請します!!」

 

「メタルミサイル補充の攻撃部隊、後退!!引き継ぎの攻撃部隊が攻撃へ移行しました!!」

 

「エアリーズ部隊、メタルミサイルを換装した機体群から攻撃へ移行します!!」

 

「基地外部では、バイアランカスタムが、ガンダムと交戦中!!」

 

「ロト部隊の攻撃準備完了!!第三次総攻撃時に攻撃を開始します!!」

 

様々な報告がなされる中、ディセットは腕を組ながら作戦を成功させる自信を露にしていた。

 

(オペレーション・イカロスは完璧だ。長時間に及ぶ総攻撃は次第にパイロット達の体力、集中力、判断力等を低下させる……彼らのガンダムを神話のイカロスに見立て、その翼を破壊するのだ……)

 

一点に集中して加えられていく総攻撃は、前代未聞の戦闘光景であった。

 

管制塔から見える光景に、ミスズは息を呑んだ。

 

(壮絶な光景だ……たった7機のガンダムを相手にこれ程までの大部隊を出さなければならないとは……!!!だが、そうでもしなければメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムを斃す事はできないということか……

!!!)

 

ミスズは視線上の遠方で闘うトールギスを見守る。

 

(ゼクス……死ぬなよ)

 

管制塔の前に雄々しく立つトールギスⅢ。

 

そのコックピット内のトレーズは、闘いを見つめ続け、自身の思想を重ねる。

 

(戦士達が集い闘う。人の闘う姿は美しい。その中のガンダムの姿勢もまた例外ではない。反逆の戦士達が我々に僅かな力で我々に挑んでいるのだ……宇宙世紀の歴史を彼らは動かしつつある……ならば我々もそれを動かそう……反逆のイカロス達の翼を溶かす太陽に……)

 

トレーズはモニターに映る戦闘の光景を、掌に乗せるかのような仕草をしてみせた。

 

戦闘を人の美学と捉えるトレーズの感性は独自の世界観を持つ。

 

故に彼の感性を理解できるものは少ない。

 

しかし、トレーズにはもう一つのカリスマ性という武器を持っていた。

 

ディセットを筆頭に彼を支持するOZの兵士達は決して少なくない。

 

OZの総帥としてのトレーズの器は、充分過ぎるものがあった。

 

「まだ彼らの中で、私に挑む者はいないようだ。だが、私は待っている。刃を交え、その翼を斬らなければならないのだ……」

 

トレーズの感性の中へガンダムが付加し、彼に影響を与える。

 

トレーズ自らがトールギスⅢで布陣し、決闘を望むこともそれに影響していた。

 

その中で、五飛がトレーズのトールギスⅢを強く意識する。

 

五飛は、ディエスと渡り合いながらも、その次に斃すべき敵を認識していた。

 

バイアランカスタムと拮抗しながらサイドモニターに視線を僅かにずらす。

 

(トレーズ…!!!この闘いでOZの総帥たる貴様を斃す!!!それがOZにとって不動の大打撃になるだろう……無論、その前にこいつとの決着を着けるがな!!!)

 

拮抗し合う中、五飛はシェンロンガンダムに加速をかけた。

 

GNDドライヴのパワーを活かした加速が、バイアランカスタムを徐々に押し始める。

 

「くっ……なんというパワーだ!!?まだこれ程のパワーを隠していたのか!??ふっ……本当に不足が無さすぎる相手だ!!!」

 

 

 

その頃、オルタンシアではロニが闘いの道を選ぶに伴い、ハワードにオルタンシアからの移動手段の話を持ちかけていた。

 

「そうか……カトルは何と言ったんだ?」

 

「いえ、彼にはまだ何も……それに、今は伝えれません。カトルは闘いの真っ只中だから……」

 

「確かにな……ま、焦らずともまず、皆で中継を見ようじゃないか……あいつらの闘いをな」

 

「ですが、もう私は……!!」

 

「闘いの行動をとる前にガンダムの闘いを目に焼き付けてからでも遅くはない。客観的に闘いを見てみるのもいい……さぁ、休憩所へいくぞ。おい!!お前さん達も、仕事一端切り上げてGマイスターの闘いを見るぞ!!」

 

ハワードには意図があった。

 

ロニに闘いを客観的に見させ、これからする自分の行動を考えさせる為である。

 

ハワードは、仕事中の作業員も呼び出して休憩所へ向かった。

 

休憩所では、プルが先乗りしてテレビ中継を見ていた。

 

彼女の行動はアディンに憂いを抱いていた為だ。

 

その手にはガンダムジェミナス01のマスコットが握られていた。

 

「この中でアディンが闘ってる……あっ!!アディン!!」

 

中継画面中央にユニコーンと刃を交えるガンダムジェミナス01の姿を確認する。

 

思わずテレビに近づいてしばらく見入ってしまうプル。

 

「そんな近くで見たら目が悪くなるぞ」

 

「あ!!ハワードお爺ちゃん……ロニお姉ちゃんも!!」

 

プルが振り替えると、ハワードやロニ、オルタンシアクルー達がいた。

 

その後、プルはロニに寄り添いながらハワード達と戦闘の中継を見た。

 

ロニにもオペレーション・イカロスによる戦闘の凄まじさに息を呑んだ。

 

「……これじゃ……戦闘というより、一方的なリンチよ!!!こんな攻撃の中でカトル達は……!!!」

 

「アディンもさっき映ってた……角があるMSと闘ってたよ」

 

客観的に見れば見るほどガンダムの置かれた壮絶さが伝わる。

 

メタルミサイルやビームバズーカ、更には空中からのビーム斉射がガンダム達を襲う。

 

「……いずれはこのような状況下に晒されるとは予想していたが、思ったよりも早いタイミングでやってきよった……恐らく疲弊させて鹵獲する作戦とみた!!」

 

「鹵獲……!!」

 

「ろかくって?」

 

「敵に捕まっちゃうことよ……」

「捕まっちゃうって……嫌っ!!捕まらないでアディン!!」

 

「あれほどの兵器じゃ。奴らもそりゃ欲しがる。じゃが!!そう易々と鹵獲はされんさ……眉唾なガンダムではないからな……あいつらは過酷な……―――ん!??」

 

ハワードがロニへ諭しの言葉を入れたその時、ハワードは戦闘中のウィングガンダムとトールギスを見る。

 

かつてハワードはトールギスの開発に携わっていた過去を持っていた。

 

故にそれは見逃せないものであった。

 

(トールギス…―――!!!パイロットの人体を無視したあのじゃじゃ馬を乗りこなす者がいるとは……流石にウィングガンダムと戦えるだけあるようだな!!!)

 

ハワード達もまた戦闘に見入り始める。

 

かつての技術者の目はかつて開発していた機体の動きを追い、鋭く注視した。

 

実際の戦場では唸る斬撃と機動音の轟音が響き渡って両者が激突し続ける。

 

「おおおおおおっ!!!」

 

 

 

ヴィジュアッッッ―――!!!

 

 

 

「はぁあああっっ!!!」

 

 

 

ヴィヴンッッッ―――!!!

 

ギャジュァアアアアアアッッッ!!!

 

 

 

「くぅっ……!!!正に互角だ!!!お互いに一切の引けを感じさせない!!!となれば……あとは持久力か!??」

 

「持久戦は承知の上だ。俺は任務を遂行しきる……!!!」

 

ヒイロとゼクスの力量はゼクスいわく、正に互角だった。

 

ヒイロは決着と任務遂行の両方を見据え、ゼクスと激突し続ける。

 

五飛は巧みに斬撃を躱しながら、バイアランカスタムの斬撃をビームグレイブで弾き捌く。

 

「くぅっ!!!圧倒されるかっっ!??」

 

「はぁあああああっっ…―――!!!」

 

シェンロンガンダムは、ビームグレイブを振り回しながら、気迫と共にビームグレイブを一気に凪ぎ払った。

 

 

 

ブルルルルンッッッ……ギィギャガァアアアアアアッッッ!!!

 

 

 

「ぐおおお!!!」

 

その一振りは、バイアランカスタムのレフトアームを斬り飛ばした。

 

だが、まだライトアームは生きている。

 

ディエスは、信念と腕でバイアランカスタムを立て直し、シェンロンガンダムへ再び突っ込んでいく。

 

「くぅっ……!!!まだだぁぁっっ!!!」

 

「その姿勢……気に入った!!!正真正銘の強者であり戦士の姿勢だっっ!!!」

 

衝突する両者の斬撃。

 

だが、その瞬間の負荷がバイアランカスタムのライトアームを軋ませた。

 

コックピット内にエラーアラートが鳴り響く。

 

「っっ!!!バイアランカスタム!!!まだだ!!!まだ俺達はやれる!!!!そうだろう!??」

 

「ナタク……いくぞ…―――」

 

更にパワーを上昇させたシェンロンガンダムは、見事にバイアランカスタムのライトアームを押し切る。

 

圧倒されたバイアランカスタムは、ライトアームのビームサーベルを捌かれた。

 

バイアランカスタムは、それでもとビームサーベルをシェンロンガンダムへ見舞う。

 

だが、次の瞬間、シェンロンガンダムの両眼が光り、至近距離からの強烈な連続突きを放った。

 

 

ギンッ!! ギュフォフォフォアッッ――――

 

ザガガガガギャギャギャガガガガァァッッ!!!

 

 

 

唸るビームグレイブの鋭利な連続突きは、瞬く間にバイアランカスタムの右腕をズタズタに破砕させて吹っ飛ばした。

 

「ぐおおおあああ!!!」

 

決着の瞬間であった。

 

バイアランカスタムは吹っ飛ばされた勢いで、土煙を巻き起こしながら大地を転がる。

 

シェンロンガンダムは、ビームグレイブの突きを出したまま静止していた。

 

その状態のまま、五飛は勝ち誇る様子もなく淡々と放った。

 

「……勝負は着いた……だが、貴様は殺さん。殺すには惜しい強者だ。貴様にその気があれば受けて立ってやる……」

 

そう言い残すと、シェンロンガンダムは上昇を開始し、トレーズのいるポイントへと基地の敷地外から向かって行った。

 

仰向けになったバイアランカスタムの中で、ディエスは頭を抱えて笑ってみせた。

 

「…………っっ…―――はははははは!!こいつはやられたな!!!だが、上等だ!!!また挑んでやるさ!!!無論、バイアランカスタムでな……俺はこの機体で答えるさ!!!」

 

ディエスのその捉え方は、互いに戦士と認め合う者同士故であった。

 

 

アディンもまたリディと激突し続けていた。

 

ガンダムジェミナス01とユニコーンは基地の滑走路を割りながら踏みしめ、振りかざしたビームソードとビームサーベルを激突させる。

 

 

 

ギャギィァアアアアアアッッッ―――!!!

 

 

「っちぃぃ……!!!しぶといぜ!!!」

 

「連邦のプライドはここで取り戻す!!!俺達、MS-TOPGUNがな!!!」

 

一方的な展開でビーム砲火に翻弄されるガンダムジェミナス02は、遂に地上へと降り、いよいよ防戦一方となっていた。

 

「参ったな……こうも翻弄され続けるとは……!!!っくぅ!!!」

 

駆け巡るリゼルカスタム達が容赦なく集中砲火を浴びせていく。

 

ガンダムデスサイズ、ガンダムヘビーアームズ、ガンダムサンドロックへ撃ち注がれ続ける砲火も終わることはない。

 

その最中、砲火の弾道が3機のガンダムの上半身に集中し始める。

 

どの機体群も狙いを正確に集中させてくる。

 

空中からは、オーバーエアリーズの精鋭、エアリーズ部隊、リゼル部隊、アンクシャ部隊が各々のビーム兵装を撃ち込み、地上では重装型リーオーとスタークジェガンの重火力射撃が襲う。

 

「ちぃぃ…―――!!!」

 

「……実に合理的だ。卑怯なまでにな」

 

「っくぅ……!!!今は……耐えるんだ!!!」

 

その最中、ロトの部隊が一斉にガンダムに向かって走行し、懐へ突っ込んでいく。

 

「あ!!?チビタンク野郎共が…―――」

 

ロト部隊は至近距離から砲撃を開始し、ガンダム達へキャノン砲と高速で撃たれるメタルミサイルを撃ち込む。

 

「うぉおっっ…―――!!!」

 

「くっ…―――!!!」

 

「うぅっっ!!!…―――!!!ロニっ!!!」

 

カトルはロニから貰ったアクセサリーを握って彼女の事を想った。

 

 

 

過酷さを増す戦場を見たロニは、プルと寄り添いながらこれからの行動を考え続けていた。

 

プルはロニの気持ちが沢山なまでに伝わっていた。

 

故に離れるのが寂しくなり、寄り添うロニの腕を一層抱き締める。

 

その時、ハワードが視線を向けロニに問う。

 

「これが今のカトル達の戦場じゃ。どうかね?どう感じた?」

 

「私は……一層連邦と闘う気持ちになりました!カトル達が連邦やOZと闘う為に過酷な状況下に立ってる。私も元々闘っていました……それが悲劇を生んだけれど、あれだけの大切なモノを奪われては何もせずにはいられない!!カトルだって闘い続けている…―――だから!!私は闘う道を選びます!!」

 

「そうか……ならばせめてカトルの帰りを待ってはくれんか?」

 

「ごめんなさい……仲間との合流までの時間が少ないんです。カトルの戦闘が終わったら、私が自分で伝えます……」

 

毅然としたロニの姿勢に迷いはなかった。

 

「ロニお姉ちゃん……」

 

プルは寂しそうにロニへ頭を摩り寄せてくる。

 

「プルちゃん、ごめんね。でもまた戻るから安心して!!それに、御礼も言わなきゃ!貴方のおかげでここまで立ち直れたのもあるのよ……私にとってプルは心を癒してくれる可愛い妹だわ!ありがとう……」

 

「ロニお姉ちゃん……」

 

ロニはプルの頭を撫で、口許に柔らかな笑みを浮かべて抱き寄せた。

 

そして、オルタンシアの甲板デッキには、かつてハワード達が設計し開発した戦闘機・ワイバーンが用意された。

 

ロニはパイロットスーツに着替え、ワイバーンへと乗り込む。

 

ジェット音が響く中で、ハワードが大声で軽いレクチャーをした。

 

「そいつならきっと間に合うだろう!!基本はMS乗れれば大丈夫じゃ!!ただし!!ブーストは使うなよ!!並みの人間なら死ぬ程の加速Gがかかる!!」

 

「了解!!では……今までお世話になりました!!行ってきます!!プルちゃん、恋路はお互い頑張ろ!!」

 

「恋路って……ふふふっ♪うん!!」

 

ロニは手を振ると、ワイバーンを加速させて離陸していった。

 

だが、プルの笑みの裏には人知れない憂いがあった。

 

(ロニお姉ちゃん……もう、会えないかもしれない感じがするのに……止められなかった……)

 

ニュータイプの勘が、プルに善からぬ暗示を与えていたのだ。

 

しかし、ロニの毅然とした気持ちに押され言い出せなかった。

 

プルは振り返りながら少しばかり涙を浮かべた。

 

 

 

クシャトリヤのコックピット内。

 

マリーダもまた、戦闘の熾烈化する状況を共通チャンネルモニターで見ていた。

 

マリーダも幾多の戦闘状況を経験して来てはいるが、このような戦闘状況下を見るのは始めてであった。

 

OZや連邦の作戦に憤りを感じて止まない。

 

だが、中継モニター越しには何もできない。

 

その歯痒さが苛立ちに拍車をかける。

 

「このような戦闘、戦闘と呼べるものか!!!一方的にも程があるっ!!!だが、それでもヒイロは、ヒイロ達は……闘い続けている……!!!」

 

集中砲火の中で抗い続けるガンダム達の姿勢に、マリーダは胸が熱くなる感覚も覚えた。

 

右手をそっとモニターに添えてみせる。

 

「ヒイロ……お前達は凄い……ネオジオンさえこのような潔い闘いはできないだろう。ダカールを攻めたとき、もしこのような状況下にみまわれたら……私も無事では済まないだろうな」

 

今、メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダム達が置かれている凄まじい攻撃の海にネオジオンが介入したことを想像すれば、言うまでもなく結果が見える。

 

流石のマリーダも少しばかり恐れを覚え、気が失せそうにさえなる。

 

改めてヒイロ達の凄まじさを知り、同時に頼もしくも感じていた。

 

「……だが、この無謀さには勇気付けられるモノを感じる。きっとヒイロ達のガンダムだからでき……っ!!っくぅ……!!!」

 

またガンダムのキーワードに、彼女の中にあるマインドコントロールが抵抗を示した。

 

マリーダは頭を抑えて苦痛にみまわれる。

 

「ガンダムは……敵っ……っ!!違う……ヒイロは、ウィングガンダムは、彼らのガンダムは味方だっっ!!!」

 

過去の柵に抗うマリーダもまた、苦痛を伴う中で、過去と闘う。

 

「感情だ……感情で動く事がっ…―――この柵を断ち切れるかもしれない……そうだ……今は、マスター達がいて、姉さんがいて、ヒイロ達がいて……」

 

解り合える存在がいる。

 

解り合える人がいれば、闘う事ができる。

 

ふとその概念がマリーダに過る。

 

そしてコントロールグリップに手を添えてマリーダは、瞳を閉じて深呼吸をした。

 

「ふぅ…―――そうだ。私は一人ではない。だから自分の過去を恐れる必要もない……そして、これから私達が地球連邦軍のダカール総本部を陥落させる!!!そうすればこのオペレーションの第一段階が終わる……」

 

そう言い聞かせたマリーダは、しばらくコックピットの中で瞑想を続けた。

 

 

セネガル 首都ダカール

 

 

 

ダカールの街の雑踏の中で、サングラスをかけたラルフが携帯型データベースを手に歩く。

 

データベースには現在のニューエドワーズ基地の状況が映し出されていた。

 

ラルフはガンダム達の状況下に眉をひそめる。

 

(おいおい……騎士ごっこに防戦一方かよ……連邦とOZの連中、いよいよ反撃に出てきやがったか!!)

 

ラルフは、街中の人目のつかない路地裏に場所を移し、コロニーのメテオ・ブレイクス・ヘルの本部と連絡を繋げた。

 

「ドクターJ!!ラルフだ。ヒイロ達が騎士ごっことタコ殴りに付き合わされている……例のシステムの起動リミッター、解除を薦めたいがどうだ?」

 

「ラルフか……あのシステムを起動させるにはまだじゃ。まだ早い!!こちらからも状況は解っておる。急かさなくてもいいわい!!」

 

ドクターJは、義手を動かしながらラルフの意見を押し返すが、ラルフは私見を主張する。

 

「そうかい……だが、このままだと鹵獲されかねないぜ。いくらGマイスターって言っても生身の人間だからな。疲弊しちまうが落ちだ……」

 

「あのシステムは、下手に使えばGマイスターとガンダムに影響を及ぼす。起動させるのはあくまでわしらの判断じゃ。心配する気持ちもわからんでもないが、待つんじゃ。あいつらもタイミングを伺っているはずじゃ……反撃のな」

 

「……そうかい……ま、確かに一理あるからな。本当にガチでヤバくなったらお願いしますよ」

 

「無論じゃ」

 

「とまぁ……そんな私見があったから連絡させて貰った。引き続きダカールの視察任務を続行する」

 

ラルフは通信を切ると、溜め息をついた後にヒイロ達に気をかけながら別のエージェントとの通信を始めた。

 

「ふぅ…―――……捕まんじゃねーぞ……Gマイスターズ……さて………―――……俺だ。今回の任務は際どい……だが、次の任務は予定通りに続行する。ダカール入りしたばかりだが…………ああ…………何!?それはガセじゃないのか!??………ああ!!……ああ!!了解した!!また連絡をくれ!!」

 

ラルフはただならぬ情報を入手した様子で先程以上に眉をひそめた。

 

「次の任務は……大きく二手に別れる必要が出てくるかもな…―――!!!」

 

 

 

一騎討ちと集中砲火に大きく二分されたメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダム達。

 

終わることなき斬撃の打ち合い、連続する高火力射撃が、Gマイスターとガンダムを疲弊させていく。

 

ウィングガンダムとトールギスが斬撃の軌道をクロスさせてすれ違い、ガンダムジェミナス01がユニコーンの乱撃をビームソードで打ち合いながら捌く。

 

ガンダムジェミナス02、ガンダムデスサイズ、ガンダムヘビーアームズ、ガンダムサンドロックは防戦一方のままを維持し続ける。

 

その状況下の中、五飛のシェンロンガンダムが真っ直ぐに攻撃部隊へ直進する。

 

これに気づいた重装リーオー、スタークジェガン部隊が攻撃をかけるが、五飛は砲火を浴びて体勢を崩されても完全にお構い無しに突き進む。

 

「はぁああああっっ!!!」

 

 

 

ズジュドッッ―――ドドドドガガァオオンッッ!!!

 

 

 

突っ込んだシェンロンガンダムは、ビームグレイブでスタークジェガンを串刺しにし、惰性でMS部隊を吹っ飛ばした。

 

串刺しにされたスタークジェガンは、突き刺されたまま他の機体に押し付けられ、リーオーと共に爆砕した。

 

シェンロンガンダムはビームグレイブを頭上で振り回すと、その武器特性のリーチを活かした斬撃を放って周囲の機体群を一気に凪ぎ払って斬り飛ばした。

 

 

 

ブルルルルルルゥゥゥゥゥッッ―――ヴィギャイイイイイイイィッッ!!!

 

 

 

更に強烈な突きを眼前の重装リーオーに見舞い、再び突き刺したまま加速して、MS群を吹っ飛ばしていく。

 

連続で機体群を爆砕させ、MS群の中で荒ぶる龍が無双する。

 

突き刺したまま重装リーオーをアスファルトに磨り潰すように破壊して、その周囲の機体群を連続で乱撃して斬り潰してみせた。

 

爆砕させていく機体を見ながら、五飛は自らのその行動で仲間を鼓舞するように促した。

 

「情けないな、お前達!!!俺達はGマイスターだろう!??Gマイスターが防戦一方の闘いをするな!!!攻めこそが最大の防御だっ!!!」

 

それを聞いたデュオは、防戦しながら五飛の言葉をカンにあてられる。

 

「んだとぉ…―――!??言ってくれるじゃねーか!!!五飛っっ!!!」

 

「苛立つ余裕があるならば、闘争に替えろ!!!死神が死ぬぞ」

 

「このヤロウ、斬り刻むぞ!!!!」

 

「ふっ……その活きだ!!!」

 

苛立つデュオに対し、トロワとオデルは冷静に受け止めた。

 

「確かにな。五飛の言う通りだ。守る側に重点を置けば身動きがとれなくなる」

 

「あぁ……俺が正にその通りになっていた!!」

 

シェンロンガンダムの奇襲により、一部の攻撃陣形が崩壊した。

 

これにより、一部の方角からの攻撃が止む。

 

しかもそれはガンダムサンドロックの正面上であった。

 

この期が反撃の切り口のチャンスであることは、火を見るよりも明らかだ。

 

「ふふっ……五飛の言う通りかもしれません……彼は直撃を受けても、体勢を崩されても攻め続けて今の状況を作ってくれました!!では、再び攻めましょう!!!」

 

「っしゃあっ!!!五飛にああも言われて落ち着いていられっか!!!いっくぜこのヤロウ!!!」

 

「無論だ」

 

カトル達は近距離にいたロト部隊を蹴散らす行動に移す。

 

ガンダムデスサイズがビームサイズを振るい、鮮やかにロト部隊を斬り飛ばし、ガンダムヘビーアームズがビームガトリングの銃口を突き出して、ロト部隊を次々と破砕させていく。

 

そしてガンダムサンドロックはヒートショーテルを叩きつけるように両端のロトを破断した。

 

足許に拡がる爆発を越え、ガンダムデスサイズとガンダムサンドロックが加速して、攻撃の手を緩めた部隊群へ突っ込む。

 

 

 

ザァギャガガガァアアアアッッ!!!

 

ゴッッッ―――ディッガガキィィィンッッ!!!

 

ドゴゴババガァアアアアア!!!

 

 

 

ビームサイズの一振りがスタークジェガン3機を斬り裂き、ヒートショーテル斬撃が両端の重装型リーオーを斬り潰してみせる。

 

爆発を巻き起こしながら、ガンダムデスサイズは豪快な斬り飛ばしを振るい、更に斬撃を繰り出して破壊を振り撒く。

 

ガンダムサンドロックも、ヒートショーテルを叩き込み、連続の斬撃を乱舞させて1機、1機を確実に斬り砕だいていった。

 

ガンダムヘビーアームズも、ごり押しで銃撃しながら強攻突入する。

 

それに比例し、重装リーオーやスタークジェガンが次々と撃ち斃され破壊されていく。

 

ビームガトリングを振り回すように銃撃した後、正面上の部隊にブレストガトリングとビームガトリングを組み合わせてぶっ放した。

 

 

ヴィドゥルルルルルルルルルゥゥゥ…―――!!!

 

ディガガガガガァドドドドガガァンッッ!!!

 

ジャギンッッ!! ヴォヴァルゥルルルルルルルルルルゥゥゥッッ!!!

 

バギャララララガガドドドドガガァゴォオオン!!!

 

 

 

そして、ガンダムジェミナス02も防戦を解き、接近中のリゼルカスタムに向け、アクセラレートライフルの銃口を向ける。

 

銃口とリゼルカスタムがリンクする刹那、オデルは引き金を引いた。

 

「―――……ここだ!!!」

 

ビームと機体がぶつかるタイミングが見事に一致し、瞬発的に放たれたビームが、1機のリゼルカスタムを破壊した。

 

 

 

ヴァダウゥウウッッ―――!!!

 

バァギャラァアァッッ……!!!

 

 

 

「何ぃ!??」

 

「1機やられた!!!」

 

ガロムやホマレが動揺する中、ガンダムジェミナス02は上昇を開始。

 

次の接近するリゼルカスタムに狙いを選定し、向かい来るビームを躱しながらロック・オンした。

 

モニターのロック・オンマーカーは確実にリゼルカスタムを捉えていた。

 

数発撃ち込むオデルだったが、リゼルカスタムのその機動性に躱される。

 

「やはりか……ならば!!!」

 

オデルは高速で迫るリゼルカスタムとの零距離射撃が可能なタイミングを見計らう。

 

時間にして数秒以内。

 

ビームランチャーを放つリゼルカスタムとの距離感を研ぎ澄ませ、オデルはすれ違う瞬間に零距離射撃を撃ち込んだ。

 

 

 

ドゥヴァダウッッ―――!!!

 

ドゥバガァアアアアアッッッッ!!!

 

 

 

ガンダムジェミナス02の放ったアクセラレートライフルの一撃は、瞬発的に爆砕させた。

 

「攻めのタイミングは掴んだ!!後は叩くのみだ!!!」

 

撃墜の流れを掴んだオデルは、もう1機のリゼルカスタムを撃墜させてみせた。

 

そして更にもう1機のリゼルカスタムへとシールドをかざす。

 

躱しきれなかったリゼルカスタムは、ガンダムジェミナス02のシールドに自ら突っ込み、激しく破砕され空中分解した。

 

奮起したことを確認した五飛は口許に僅かな笑みを浮かべ、シェンロンガンダムをトレーズのトールギスⅢへ向かわせた。

 

 

 

管制塔内において、ざわめく兵士達の声が敷き詰める中、状況報告が放たれる。

 

「膠着していた4機のガンダム、再び攻撃を開始!!!攻撃部隊の真っ只中に突入したため、こちらからの射撃ができません!!!」

 

「ガンダムの1機、肉眼で視認!!!!真っ直ぐにこちらへ接近中!!!!」

 

「な!??狙いはトレーズ閣下か!??各機、トレーズ閣下を守れ!!!!」

 

「ガンダムがここへ!??ゼクス…―――私が先に死ぬかもな……!!!」

 

ミスズは、迫るシェンロンガンダムの姿に、死を覚悟した。

 

ガンダムと遭遇して生き残れる者はゼクス達以外はいなかったからだ。

 

コックピット内のトレーズは、接近する敵影アラートの後に、ゆっくりと瞳を開けて接近するシェンロンガンダムに視線を向ける。

 

トレーズは微かな笑みを浮かべた。

 

「……ようやく現れたか……ディセット、その命令は解除せよ。彼は私と闘いたいのだ。無論、この私も。これは決闘である……」

 

「は、はっ!!!命令撤回!!!他のガンダムへの攻撃を継続せよ!!!」

 

トレーズは、ディセットに護衛任務を解除させてシェンロンガンダムとの戦闘に挑んだ。

 

トレーズとトールギスⅢの眼前にシェンロンガンダムが降り立ち、ビームグレイブをかざす。

 

そして五飛は迷うことなく外部スピーカーをONにして叫び飛ばした。

 

「俺の名は張 五飛!!!逃げも隠れもしない!!!トレーズ・クシュリナーダ……正々堂々と貴様を斃す!!!!」

 

「承知した………では参るぞ……張 五飛!!!」

 

トールギスⅢが、ビームサーベルグリップを手にする。

 

だが、形成されたビームエネルギーは、ガンダムジェミナスのビームソードと同じビームであった。

 

トールギスⅢは、ビームソードをゆっくりとかざし、ビームグレイブのビーム刃へ近づけた。

 

そして、ビームのスパークを合図に決闘が始まる。

 

「はぁああああああっっ!!!」

 

一瞬でビームソードを弾き、即行でビームグレイブの突きを繰り出すシェンロンガンダム。

 

だが、難なく突きは躱される。

 

トールギスⅢは躱した動きからビームグレイブの捌きに繋げた。

 

ビームソードの一振りがビームグレイブを弾き飛ばす。

 

「っっ……でやぁあああああっっっ!!!」

 

五飛は、気迫をビームグレイブの乱撃に乗せて攻撃を繰り出す。

 

唸るビームグレイブの斬乱撃。

 

だが、トレーズは余裕を見せるかのごとくトールギスⅢを華麗にコントロールして、シェンロンガンダムの乱撃を躱し、時にビームソードで捌き返す。

 

歯を食いしばって攻撃する五飛に対し、トレーズは僅かに笑いながら来る攻撃へスムーズに対応していく。

 

両者のビームグレイブとビームソードの斬撃が衝突する度にスパークが奔り散らす。

 

先程のディエスの闘い方とは一線を画していた。

 

シェンロンガンダムが繰り出す激しい斬撃の流れに合わせるかのように、トールギスⅢはビームソードを巧みに使いこなして捌いてみせる。

 

「っくぅ……であっっ!!!」

 

再び繰り出された突き。

 

だが、トールギスⅢはビームソードを当てがってビームグレイブを導くかのように捌く。

 

「覇ぁああああっっ!!!」

 

突きからの凪ぎ払いに転ずるシェンロンガンダムであったが、これも瞬時のビームソード捌きに押し止められた。

 

「流石、反乱分子……メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムと言っておこう……なかなかの攻め方だ。だが、まだ甘い……」

 

トレーズは、冷静な眼差しでモニターのシェンロンガンダムを見ながら囁く。

 

次の瞬間、トールギスⅢは素早い連続突きを繰りだし、シェンロンガンダムへと攻撃の一手を放った。

 

「ちぃっ!!!」

 

シェンロンガンダムは素早くシールドをかざし、迫る連続突きを防御した。

 

シールドから衝撃が伝わり、コックピットへ激しい振動を与える。

 

「流石だな……トレーズ・クシュリナーダっっっ!!!」

 

五飛は気迫の代わりにトレーズの名を言いながらビームグレイブで打ち払う。

 

そして繰り返し、連突きを見舞った。

 

だが、その突きは再度ビームソードで受け止められ続け、一撃もトールギスⅢに中る事はない。

 

「はぁああああああっ……!!!」

 

シェンロンガンダムは、再び乱撃の斬撃を繰り出してトールギスⅢへ斬りかかる。

 

トレーズは冷静にシェンロンガンダムの斬撃を見据え続け、襲い来る攻撃を捌き続けた。

 

その表情には明らかな余裕がみられる。

 

「流石……反逆のガンダムのパイロット。よい気迫が我がトールギスⅢにもよく伝わる……」

 

余裕を表すトレーズに対し、五飛には苛立ちと焦りの表情が重なっていく。

 

ディエスとの戦闘とは明らかに違っていた。

 

「トレーズ!!!貴様はこの俺が斃す!!!!此処で貴様を斃せば、OZの士気に打撃を与えられるからな!!!!だが、それ以前に俺は一人の戦士として挑んでいる!!!!」

 

「同感だ。私も総帥としてではなく、一人の兵士として君と闘っている。そして、私が死ねばOZに大きな影響があるだろう。だが、君には無理だ。私を斃すことは……できはしない…―――!!!!」

 

トールギスⅢは一気に突きを捌き躱すと、一瞬でシェンロンガンダムへと一太刀を入れた。

 

胸部の装甲に斬撃を浴びるシェンロンガンダム。

 

次の瞬間にはビームソードの連続突きがシェンロンガンダムに放たれ、五飛は初めて敵に圧倒された。

 

ビームソードの切っ先が幾度もなく突き当たり、衝撃とダメージを与える。

 

「くそぉおおおっっ!!!」

 

「はっ!!!」

 

トレーズの気迫と共に、回転斬りとそれに繋ぐ突きがシェンロンガンダムを突き飛ばした。

 

「がぁああああ!!!」

突き飛ばされたシェンロンガンダムは、体勢を狂わされ、アスファルトに打ち付けられた。

 

そして倒れたシェンロンガンダムの上にトールギスⅢが降り立ち、胸部を踏みつけながら、ビームソードの切っ先をシェンロンガンダムの首下にかざす。

 

その切っ先は、メインカメラの配線パイプを指していた。

 

ここをやられた場合、メインカメラをやられた状態になり、有視界以外の戦闘は基本的に出来なくなる。

 

「私の勝ちだ…―――ここを少しでも突けば、君の視覚を奪える」

 

「殺せ……!!!!」

 

「それはできない……君のように挑んできた戦士は初めてだ。また手合わせを願いたい…―――」

 

「………――――――っっ!!!!」

 

この瞬間、五飛のこれまでの戦歴で培った戦士としてのプライドと自信が崩壊した。

 

つい先程に五飛がディエスに表した姿勢が、五飛へ返ってきたかのようであった。

 

「良い戦いだった……だが、まだ甘い要素もある……精進したまえ……」

 

「くっっ…―――くぅっっ……!!!くそぉおおおおおぉっっ!!!」

五飛の敗北の叫びが、シェンロンガンダムのコックピットに響き渡った。

 

五飛は悔しみを叫びながらシェンロンガンダムを加速させ、機体をスライドさせるように任務エリアから離脱していった。

 

管制塔のディセットも、離脱するシェンロンガンダムを目視していた。

 

ディセットは直ぐに追撃命令を下す。

 

「!!撤退するガンダムを追撃せよ!!!」

 

「待て……」

 

だが、その命令をトレーズは自らの意思で止めた。

 

「トレーズ閣下!??」

 

「彼はいずれまた闘う……追う必要はない……」

 

「で、ですが!!」

 

「再度言おう。エレガントに事を運べ……ディセット」

 

「はっ!!申し訳ありません!!」

 

ディセットとの通信を切ると、トレーズは去り行くシェンロンガンダムを見つめ続けた。

 

その一方、ウィングガンダムとトールギスの斬り合いは終わりを見せることなく続いていた。

 

斬り払いの斬撃を衝突させながら振りかぶり、ビームサーベルをクロスさせて拮抗する。

 

スパークが照らす中、ヒイロは決闘の終わりを促した。

 

「ゼクス・マーキス……貴様との決闘が任務ではない。そろそろ任務を再開させてもらう!!!」

 

「何!??っっ……!!私は納得できん!!!」

 

ウィングガンダムはビームサーベルを弾き、その場から飛び立つ。

 

突然の決闘解除に納得てきないゼクスは、迷うことなくウィングガンダムを追撃した。

 

そして、ヒイロは空中で展開しているMS部隊をターゲットに選定し、バスターライフルをロック・オンする。

 

レフトアーム側に装備したバスターライフルの銃口からビーム渦流を撃ち飛ばし、再び射撃しながら銃身を振り回した。

 

エアリーズ、リゼル、アンクシャの部隊群が次々と撃墜していく。

 

ビームが終息すると地上へと銃口を向けた。

 

だが、トールギスの斬撃が射撃を阻む。

 

ウィングガンダムは、上から来る斬撃をシールドで受け止めた。

 

「っっ!!!邪魔をするな!!!」

 

「私とて任務だ!!!貴様との決着を着けるまで闘う!!!」

 

「スピリット・キャバルリ……――――騎士道精神とは面倒な概念だな!!!」

 

再び空中での激戦を展開させ始めたウィングガンダムとトールギス。

 

ビームサーベル同士が重なりスパークを放つ。

 

奇しくもその真下の地上で、ガンダムジェミナス01とユニコーンがビームソードとビームサーベルを拮抗させながら激突していた。

 

「さっきから激突しっぱなしだ……タフなヤツだぜっっ!!!」

 

「反逆のガンダムっっ!!!いい加減シブトイんだよぉ!!!」

 

アディンは呆れるような薄い笑みを浮かべながらレバーを押し込み続け、リディは歯を食い縛りながらモニターのガンダムジェミナス01を睨む。

 

終わらない斬撃の打ち合いが二人を疲弊させていくが、一歩も引かない。

 

その一方でゼクスとリディの部下達もガンダムとの戦闘に踏み込み続けていく。

 

リゼルカスタムのメガビームランチャーの射撃が、ガンダムジェミナス02へと撃ち込まれていく。

 

既にリゼルカスタムの機体はホマレとガロムだけになった。

 

仲間を墜とされた怨みを賭して、ガロムはメガビームランチャーを放ち続けた。

 

「貴様ぁああああああっっっ!!!絶対に墜とすっっ!!!」

 

ガンダムジェミナス02は防御しながら接近するリゼルカスタムを待つ。

 

「その手には乗らん……斬り刻むぞ!!!」

 

ガンダムジェミナス02がアクセラレートライフルを構えた刹那、2機のリゼルカスタムは、挟み撃ちするかのように接近して変形。

 

「変型したっ!!?ちぃっ……!!!」

 

2機のリゼルカスタムは、ビームサーベルを取り出し、ガンダムジェミナス02へと斬りつけた。

 

ガンダムジェミナス02は、ホマレ機の唸る斬撃をシールドで受け止める。

 

そしてもう一方のガロム機が斬りつけた刹那、ガンダムジェミナス02はガロム機側にアクセラレートライフルの銃口を突き出した。

 

その銃口に、ガロム機のリゼルカスタムが突っ込む。

 

慣性力が付加され、激しく胸部へと突き刺さった。

 

「ホマレっっ…―――リディ……!!!」

 

ガロムの下半身はアクセラレートライフルの銃口に押し潰されていた。

 

ガロムが、かつて部下であったリディの名を口にした直後、零距離からのアクセラレートライフルの一撃が放たれた。

 

その瞬間のオデルは、鋭い眼差しでモニター越しにリゼルカスタムを睨み付けていた。

 

零距離のビーム渦流が、リゼルカスタムを蒸発させる勢いで吹き飛ばす。

 

ガロム機のリゼルカスタムは、えげつないまでに破砕され爆砕した。

 

「が、ガロムっっ…―――!!!貴様ぁあああぁあっっ!!!!」

 

目の前で戦友を失ったホマレは我を忘れ、怒り任せにビームサーベルを押し付ける。

 

スパークが無造作に奔る中、ガンダムジェミナス02はホマレ機のリゼルカスタムへとアクセラレートライフルの銃口を突き刺した。

 

 

 

ディガオンッッ!!!

 

 

 

「――――――!??」

 

「チェックメイトだ……エースさん!!!」

 

銃口はコックピットの中心部を突き刺していた。

 

再びアクセラレートライフルが唸り、リゼルカスタムを吹き飛ばす。

 

 

 

ヴァズダァアアアアアアアッッッ!!!

 

バギャシャアアアアァァァァ…―――ッ!!!

 

 

 

「咄嗟に閃いたが、こういう射撃方もあったんだな……リゼルのカスタム機撃破!!!引き続き戦力MSを破壊する!!!」

 

オデルは、アクセラレートライフルを構え直し 、向かい来るエアリーズ、リゼル部隊へと機体を向かわせた。

 

管制塔でもリゼルカスタム部隊の壊滅が報告される。

 

「リゼルカスタム部隊、熱源消滅…―――壊滅しました……!!!」

 

「何!??馬鹿な!!!彼らは連邦軍のエキスパートから編制された部隊だぞ!??」

 

「ですが、間違いありません!!!それに…―――先程のガンダムの反撃から陣形が崩されつつあります!!!」

 

ディセットはその報告を聞き、口惜しさに歯を食い縛りながら拳を強く握り締めた。

 

一方で、オーバーエアリーズ部隊が旋回しながらカトル達のガンダムへと攻撃をかけ続けていた。

 

その中で、ビームサーベルを手にした2機のオーバーエアリーズが、ガンダムヘビーアームズへ翻弄させる勢いで斬りつける。

 

「っ……!!!」

 

シールドでビームサーベルをガードするが、もう一方のビームサーベルがグレネードランチャーの銃身を破壊してみせた。

 

「厄介な重装武器は破壊した!!!このまま叩く!!!」

 

ガンダムヘビーアームズは、更に零距離からのビームライフルの直撃を食らい続ける。

 

「戦法は正しい……だが、火力が不足だ」

 

が、トロワは動揺すらせずに、淡々とライトアームのアーミーナイフを展開させた。

 

両眼を光らせたガンダムヘビーアームズは、アーミーナイフを唸らせながらライトアームを振り上げる。

 

 

 

グフィアァァッッ―――ギィギャガァアアアアッッ!!!

 

アーミーナイフの斬撃が近接状態だったオーバーエアリーズを破断させた。

 

更に振り向き様に、もう1機のオーバーエアリーズを斬り込む側面から斬撃。

 

破断された2機は、アスファルトに打ち付けられ爆発した。

 

この光景を目の前にしたオットー機が旋回した後に、ガンダムヘビーアームズへと突っ込む。

 

「ふっ……恐らくこの戦いで我々は全滅される……!!!ならば、ゼクス特佐の為に少しでも貢献を……おおおおおおっっ!!!!」

 

事態を見据えた捨て身の選択肢だった。

 

オットーはオーバーエアリーズの加速をフルに引き出して機体を特攻させる。

 

その最中、自らが録ったガンダムとの戦闘データを基地の管制塔へと送信した。

 

「特攻か。だが、無意味だ……」

 

トロワは、オットー機の軌道を見定めながら、避けることなく身構え、オーバーエアリーズが突っ込むのと同時に、僅かに軌道をかわす。

 

そして、アーミーナイフを振るいかざした。

 

その瞬間、オットーは目を見開き、忠誠するゼクスの名を叫んだ。

 

「こいつらのデータは送信したっっ!!!ゼクス特佐、万歳っっ―――!!!!」

 

 

 

バッッギャラガァアアアアアアアッッ!!!

 

 

 

アーミーナイフの切っ先へ突っ込んだオットー機は、瞬時に機体を砕き散らされ、木っ端微塵になってアスファルトに散らばった。

 

「オットー特尉!!!っっガンダムッッ―――っ!??」

 

オットーの最期を見てしまったワーカーは、上官の死に怒りを覚える。

 

だがその直後、彼の目の前にガンダムサンドロックが舞い上がった。

 

「ごめんっ!!!手加減の余裕はないんだっっ――――――!!!」

 

「ガンダム――――――っっ自分も続きます!!後の兵士の為に!!!」

 

ヒートショーテルの刃が振り下ろされる刹那、ワーカーもオットー同様にこれまでの戦闘データを送信した。

 

 

 

ディッッガガァカァアアアアアンッッ!!!

 

ヴァズガァアアアアアアッッ!!!

 

 

 

ヒートショーテルの素早い二連斬撃が、ワーカーのオーバーエアリーズを斬り刻んだ。

 

斬り刻まれたワーカー機は空港で爆砕し、ニューエドワーズの空に散った。

 

「らぁあああああっっ!!!」

 

デュオは、ビームサーベルで斬りかかるオーバーエアリーズに向かい、半ば怒り任せにバスターシールドを突き刺して破砕する。

 

そこへトラント機が串刺しにするかのような勢いで、ビームサーベルを突き出して突っ込んでいく。

 

トラントは狂喜とも執られる笑い声を上げて、モニター上のガンダムデスサイズへと身を乗り出す。

 

「ははははっっ!!!ガンダム!!!過ぎた悪しき力よっっ!!!!」

 

「うざったいんだよっっ!!!」

 

ガンダムデスサイズが振るうビームサイズと、オーバーエアリーズのビームサーベルとが衝突し合った。

 

だが、明らかに違うパワーがぶつかり、オーバーエアリーズのショルダーユニットごともぎ取るように斬り飛ばされる。

 

 

ザァギャギィイイイイィィッッ!!!

 

 

 

再度トラント機は中破した状態で墜落し、アスファルトに転がった。

 

ガンダムの反撃と、一部の布陣状況の崩壊で、事態は再びメテオ・ブレイクス・ヘルに軍配が上がった。

 

ガンダムがOZ、連邦軍のMS部隊が密集する中へ突入したが故に、集中砲火は不可能。

 

その最中で、ウィングガンダムとトールギス、ガンダムジェミナス01とユニコーンが終わることなき激突を続けている。

 

更にはそのエース二人を残し、MS-TOPGUNが事実上壊滅した。

 

計画上の部隊布陣状況の崩壊を重く見たディセットは、その状況を逆手にとった。

 

「ガンダムが展開部隊の真っ只中にいては集中砲火もできん……ならば、ガンダムへの近接戦闘を重視せよ!!!!ビームサーベルはもちろん、あらゆる近接戦闘でガンダムを臨機応変に攻撃!!!!射撃方も零距離で行う!!!!ゼクス特佐とリディ少佐が決闘している間に徹底して疲弊させる!!!鹵獲はその後だ!!!」

 

「はっ!!!」

 

その命令が下されるやいなや、各ガンダムと隣接する機体群が一斉に接近戦を開始した。

 

その最中で、ミスズは歯を食い芝って、部下の死を悔やんだ。

 

(オットー……ワーカー……トラント……ワンダー、ツバイト、サード……私の部下達までもが、ガンダムにっっ!!!だが、まだゼクスには報告できない……あいつは闘っている!!!気持ちを動揺させるわけにはいかない!!!)

 

その向こうでウィングガンダムと闘い続けるゼクスを想い、ミスズは敢えてゼクスに彼らの戦死を伝えなかった。

 

基地の滑走路上で、リーオーやジェガンの部隊、これ等の重装型である重装型リーオー、スタークジェガンの部隊、ジムⅢ部隊が一斉に4機のガンダムへ襲い掛かる。

 

ガンダムデスサイズの斬撃が密集するMS部隊を斬り飛ばす中、その背後からビームバズーカが零距離で撃ち込まれた。

 

重装兵器特有の衝撃が、ガンダムデスサイズを吹っ飛ばす。

 

「がぁああっっ!!!」

 

倒れたガンダムデスサイズに、次々と零距離射撃が襲う。

 

「ちっっきしょうがっっ!!!またタコ殴りかぁ!!?」

 

ガンダムヘビーアームズにも四方からビームバズーカやバズーカが撃ち込まれていく。

 

「また戦闘法が変わったな……っっ!!!」

 

その時、スタークジェガンのバズーカが、ガンダムヘビーアームズの胸部に押し当てられた。

 

ガンダムヘビーアームズの急所とも呼べる部位だ。

 

トロワは即ブレストガトリングをぶっ放してスタークジェガンを破砕させる。

 

だが、直後に重装射撃が至近距離から放たれ、衝撃を与えた。

 

「っっ……やるな!!!」

 

ガンダムサンドロックへは、大量の斬撃が打ち付けられた。

 

1機、1機切断させていくが、次々と来る攻撃に疲弊の色を見せ始めた。

 

「っっ……流石にキツいかな!!?ぐっ!??」

 

ガンダムサンドロックに襲う衝撃。

 

四つの斬撃が打ち付けられ、それを期に更なる乱撃がガンダムサンドロックを襲う。

 

この状況の中、ガンダムジェミナス02は先程の零距離射撃を応用し、善戦していた。

 

アクセラレートライフルを使いこなし、至近距離から敵機を破砕させてみせる。

 

「うるさいが、存分に零距離射撃のコツを試させてもらう!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、戦闘開始から五時間余りが経過。

 

デュオ、トロワ、カトル、オデルの四人は、敵機の度重なる無理な攻撃の影響で確実に疲弊していた。

 

それぞれの表情に焦りや疲れが表れているのは確実であった。

 

アディンとリディも、息切れさせながら決着の着かない闘いを続ける。

 

そして、ヒイロは機体を着地させて、トールギスと睨み合いながら互いに牽制して佇んでいた。

 

ヒイロとゼクスの両者は最早疲労困憊であった。

 

それらの戦況を見つめながらディセットは更なる手に踏み切る。

 

イヤー通信機を使い、OZ宇宙軍の工作部隊への指示を仰いだ。

 

(私だ……「イカロスの羽根に炎を当てろ」……指定したコロニーでそれらを実行に移れ……)

 

「……?!」

 

ミスズは突如、聞こえない程の小声で命令を出すディセットの仕草に、女性ならではの直感を働かせた。

 

(ディセット……こそこそと何を指示した!??まさか、裏で別の作戦をしているのか!??)

 

ガンダム達の激戦がニューエドワーズで繰り広げられている頃、L1コロニー群の一つで大規模なテロが発生した。

 

そのコロニー内では激しい轟音と共に、外壁に穴が開く程の爆発が発生する。

 

その穴はコロニー内のあらゆるモノを無差別に放り出し、老若男女問わずコロニー市民を容赦なく呑み込む。

 

更に別のL3コロニー群のコロニーでは、また容赦ない攻撃が行われた。

 

そこは、変哲も無いビル街であった。

 

しかし……。

 

「我々はメテオ・ブレイクス・ヘル。このエリアは、連邦の新規の拠点地と断定。連邦に荷担する者をこれより排除する!!!」

 

半ば滅茶苦茶な理由でメテオ・ブレイクス・ヘルを名乗り、ジェガンやリーオー部隊による攻撃で、瞬く間にビル街を破壊してみせた。

 

それは多くの市民を巻き込みながら爆発を次々と巻き起こす。

 

それらの部隊は、更に市街地へ向かい破壊行為を続行し、この攻撃によるビームの直撃を食らって吹き飛ぶ市民達が相次いだ。

 

無論、OZの工作兵が乗るリーオーである。

 

更に別のコロニーでは、大量破壊兵器クラスの大規模な爆発が幾度も起こり、その悪影響によりコロニーそのものが自壊・崩壊する。

 

それらの場所は、何れもメテオ・ブレイクス・ヘルの拠点がある場所であった。

 

この状況が直ぐにドクターJ達の所へとエージェントから通達される。

 

「なんじゃと!??コロニーが攻撃されただと!??」

 

「ああ!!今スゲーニュースになってやがる!!全てが俺達の拠点のあるコロニーだった!!!しかも、二件目は俺達の名を騙って破壊活動した後に、市街地の真ん中で自爆しやがった!!!三件目なんかはコロニーそのものを破壊した!!!奴等はいよいよ反撃に出る勢いだぜ!??」

 

「むぅ……!!!OZめ……!!!」

 

「卑怯しか脳のない連中だ!!!今更驚かん!!!」

 

プロフェッサーGは、早速ニュースの映像を管制室内のモニターで確認した。

 

そこには、OZの情報操作の風貌が表され、流れていた。

 

これら全てがディセットの指示した「イカロスの羽根に炎を当てろ」の暗号ワードの全容であり、狙いであった。

 

鹵獲とメディアを利用した二段構えの作戦であった。

 

「番組の途中ですが、緊急速報をお伝えします。つい先程、L1、L3コロニー群の三ヵ所のコロニーで、同時多発テロが発生したとの情報が入りました。地球連邦軍からの情報によりますと、何れもメテオ・ブレイクス・ヘルによるテロだと断定されたとのことです。メテオ・ブレイクス・ヘルはガンダムによる軍施設テロが主っだっていますが、ここへ来てコロニーでテロを行ったのはコロニー内部の連邦軍施設が狙いと見られ、ガンダムとは別の別動隊の可能性が……」

 

プロフェッサーGは、半ば呆れた顔でモニターを消した。

 

「聞いて呆れる!!案の定だな、奴等の手口は!!!実に悪趣味な情報工作だ!!!」

 

この破壊工作を指示したディセットは、更なる指示を仰ぐ。

 

(……そうか……情報工作は成功か。次で止めだ。「三人の賢者を地球(ほし)へ墜とせ」……戦意を奪った所で我々の方で鹵獲する……以上だ)

 

微かにそれを聞き取ったミスズは、更なる悪しき予感を感じさせた。

 

(嫌な気配がする指事だ……何を企んでいる!!?)

 

ミスズの予感は的中していた。

 

ディセットの指示の直後、衛生軌道上にある3機の衛生ミサイル装置が作動。

 

同時に3基の衛生ミサイルが放たれた。

 

それから数分後、ドクター達の下にエージェントから更なる情報が舞い込む。

 

無論、衛生ミサイルの事であった。

 

「ドクターJ!!!奴等、更にやらかしやがった!!!衛生ミサイルを発射しやがった!!!」

 

「衛生ミサイル!!?そんなものが地球に堕ちれば……被害は途方もなくなる!!!更にその仕業がワシらのモノとすり替えられれば……!!!!OZにしてやられたわい!!!」

 

ドクターJは、義手側にも力を入れて悔やみ、今の状況からして、ペルゲは撤退を発案し始めた。

 

最早、これ以上の戦闘続行は無意味と判断した上での事だった。

 

「これで地球とコロニーの大衆から我々は更に敵視されるな……況してやニューエドワーズ基地での状況に合間ってコロニーや主要都市が攻撃された……こいつは撤退を余儀なくされるかもしれんぞい……手遅れになる前に撤退じゃ!!!」

 

その判断は確かなものであった。

 

戦えば戦う程、地球側からの反発が強まり、コロニー側の危機に晒されていく。

 

前者は元々承知の上であったが、後者は気が引けるものがあった。

 

「既に手遅れかもしれんが……例のシステムもこの状況では悪あがきにしかならん……やむを得まい……ヒイロ達を撤退させる……!!!」

 

間もなくして、衛生ミサイルは三ヵ所の主要都市、ワシントン、モスクワ、そして東京に直撃し、歴史上、最悪の事態に見舞われた。

 

着弾地点より半径30㎞が一瞬で蒸発され、更なる衝撃波で、最終的な被害は半径50㎞に及んだ。

 

轟音と核爆発さながらの半球形の爆発が拡がり、あらゆるものを蒸発させて吹き飛ばしていく。

 

巻き起こる被害や惨状は計り知れないものとなっていた。

 

そして更に報道陣が集まっていた関係もあり、ニューエドワーズ基地に於いて緊急記者会見が開かれた。

 

無論、ディセットの画策によるモノであり、彼が主になり緊急記者会見に臨んだ。

 

「今回発生した大規模なテロは、連邦と我々の組織とで調査中です。が、少なくともコロニー側のテロ……即ち現在もこの基地に襲撃をかけている『メテオ・ブレイクス・ヘル』によるモノと見て間違いありません!!それは断言します!!我々は今後とも本性を見せた非道な彼らのテロに対し、闘っていく所存です……新な情報が入り次第、追って報告します」

 

トールギスⅢのコックピットでこれを見たトレーズは、静かに瞳を閉じて瞑想する。

 

トレーズは既にディセットの未報告の部分の作戦を把握していた。

 

(ディセット……民間を捲き込む策略は決してエレガントではない……私を理解しようとする姿勢はよいが、どこか迷走しているな。だが、視点を変えれば大衆を捲き込み、大衆をこちら側へと引き込める策略でもある。そして、これ程なまでの悲劇があることにより、後世に大いなる反省材料として残せるのだ……我々のカードは確かに有利になったのは確かだ……)

 

この策略の情報がドクターJを通して、戦闘中のヒイロ達に伝達される。

 

「―――と、言うようにご覧の通りの有り様じゃ……我々はOZにしてやられた!!!これ以上の戦闘は不利以外の何者でもない。今回の任務は撤退を命ずる!!!」

 

デュオ、トロワ、カトル、オデルは攻撃を受け続けながらこの理不尽なすり替えに失望した。

 

「嘘だろ……OZの連中、正気かよっっ!??それじゃ、コロニーからも嫌われるってのか!??冗談じゃないぜぇ!!!」

 

「遂に俺達も奴等の手口に嵌(は)められたか……」

 

「そんな……こんなことって……!!!」

 

「連邦……否、OZ!!!相手は俺達だけだろ!!?何故地球を捲き込んだ!??くっっ!!!」

 

4機のガンダムは、各々に敵機を吹き飛ばすように振りほどき、GNDドライブの出力を最大値にさせ、フルブーストで離脱していく。

 

アディンはリディと対峙中に撤退を受け、一気に悔しさに駆られ、怒り巻かせにガンダムジェミナス01をユニコーンから離脱させた。

 

「……マジかよっっ!??冗談じゃないっっ……俺達はっっ……俺達はっっ!!!ちきしょうっっ……!!!」

 

直後、リディは疲労を押し殺し、ユニコーンの機体を上昇させ、フルブーストをかけてガンダムジェミナス01を追いかける操作をした。

 

「おのれ……に、逃がさん!!!」

 

「待て!!!リディ少佐!!!互いに疲弊した一騎討ちとこの状況ではスマートな勝利は得られん!!!」

 

リディを止めたのは、ゼクスであった。

 

組織は別だが、尊敬するゼクスの指示にリディは正気を取り戻した。

 

「っっ……!!!ゼクス特佐!!!」

 

そして、ゼクスの眼前にはホバリングし続けるウィングガンダムがいた。

 

コックピット内のヒイロは、静かに歯を食い芝っていた。

 

これまでの戦闘があったが故に、ヒイロもまた悔しさに駆られていた。

 

ゼクスは、そのヒイロに向かい言い放った。

 

「今回のこれ以上の戦闘は無意味なモノと感じる……貴様をここで捕らえるには惜しすぎる!!早くこの領域から去れ!!!」

 

「敵に言われる間でもない……!!!」

 

トールギスの目の前でバードモードへと変型し、瞬発的な加速をかけて離脱していった。

 

それを見届けるトールギスにユニコーンが接近した。

 

「ゼクス特佐……何故、ガンダムを……逃がしたんです?」

 

「……どうやら、長く騎士道精神を持ち続けると、こうなってしまうようだ……もっとフェアなカタチで闘いたいとな……」

 

「フェアな……闘い……」

 

OZと連邦の二人の騎士は、敗者となった好敵手の背中を見届け続けた。

 

コックピットの中のヒイロは、コントロールグリップを握りしめ、悔しさの余りによる武者震いを起こしていた。

 

「っっ……!!!惨めな敗走だ……!!!くっっ……これは事実上の任務失敗だ!!!本来ならば自爆したいがっっ……!!!」

 

自爆スイッチを手に取るヒイロであったが、マリーダの面影を脳裏に浮かべ、再び自爆スイッチを納めた。

 

「……このままでは死ねない!!!」

 

ヒイロは、そう自らに言い聞かせると、再び虚空の空を見据えた。

 

 

 

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