新機動闘争記ガンダムW LIBERTY   作:さじたりうす

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ガンダム―――連邦軍が開発した高性能MSであり、いわば連邦軍の象徴、あるいは英雄たる象徴であった。

だが、宇宙世紀0095……連邦とは全く別の存在の7機のガンダムが地球連邦軍、並びに同内部の秘密結社OZに対して武力介入のテロを開始した。

そしてガンダムの度重なるテロ攻撃により、ガンダムの存在はいつしか「反逆の象徴」という全く別の存在となっていく。

その反逆のガンダムを駆るGマイスター達は、大部隊が展開する北米・ニューエドワーズ基地の大規模演習への介入任務を決行する。

かつてなき反逆に、 宇宙世紀の歴史は更に震撼していくのだった……。


エピソード11「激震のニューエドワーズ」

 

ニューエドワーズ基地を目指すガンダムジェミナス02のコックピット内。

 

モニター上で、ラルフが最終的なニューエドワーズ基地のデータをオデルに提示する。

 

「こいつがニューエドワーズ基地の演習データか……」

 

「あぁ。ざっと520……ちょっとしたカーニバルだな」

 

「カーニバルか……あちらさんもそのつもりでいればありがたいが…」

 

モニター越しのラルフは、タバコを取り出してイップクすると、すぐにそれを否定した。

 

「残念ながらないな……俺達が動いているにもかかわらず、大々的に大規模演習を公表してやがる」

 

「手の込んだ罠か……それとも牽制や畏怖させるためのプロパガンダか……いずれにしても、持久戦になるな。だが、これにあえて突っ込んで衝撃を与えるのがGマイスターの姿勢だ!!」

 

「あぁ。キツい任務になるかもしれんが、武運を祈るぜ。じゃ、俺は次の任務の情報調査に出る。任務にキリが着いたらまた酒でも飲むぞ!!」

 

「オーライ!!じゃあな」

 

「あぁ、グッドラック!!」

 

通信を終えたオデルは早速データを機体にバックアップする作業を開始した。

 

「データ、有り難く頂戴するぞ……ラルフ」

 

 

 

メテオ・ブレイクス・ヘルの本部があるコロニーに、ガンダムを開発した博士達が集結していた。

 

地下施設武装組織故に、エレベーターによってコロニーの下層部へ移動する。

 

ドクトルS、H教授、老師O、が寡黙に佇む中で、ドクターJとプロフェッサーG、ドクターペルゲがニヤニヤと笑いながら会話する。

 

「今回の任務は、世界にワシらの技術の驚異を知らしめる事になるじゃろ……連邦軍のMSが無双される風景が浮かぶわい!!!かかかか!!」

 

「連邦軍とOZに衝撃を与え続けなければならんからな!!ワシの芸術品も公に晒せる時が来た!!たまらんわ!!!」

 

「奴等はこれまでに幾度もなく戦争の火種の要因となってきた……今回もじゃがな。宇宙世紀の歴史に衝撃を与える日になるのは間違いない!!!」

 

マッドサイエンティスト達の独特の空気が立ち込める中、ドクターJが、メガネを義手でくいっと動かしながらペルゲに問いかける。

 

「そうなれば……お前さんの開発したあのシステムの解放は今回解放させるべきかな……?」

 

「いやいや……事にもよるがまだ早い段階じゃろうて……」

 

「いずれにせよ……この次からのでかい任務で解放させるかもしれんぞい。なにせ、ダカールとルクセンブルクが控えとる!!あそこは本部故に戦力はかなりのものと予想される……!!!」

 

エレベーターが開き、管制モニター室にドクター達が入室する。

 

エージェント達もそれを迎ながら報告する。

 

「!!ドクター!!お疲れ様です!!」

 

「うむ、御苦労じゃ……」

 

「現在、ガンダムは各々にニューエドワーズ基地へとへ向かっております!!間もなく任務が開始されます!!」

 

「くくかかかっ!!この任務で宇宙世紀の歴史に克つを入れるぞい……」

 

 

 

北米 地球連邦軍・OZニューエドワーズ基地

 

 

 

整列を成して行進する幾多のリーオー達。

 

銃を構えて整列したまま静止しているジムⅢや、射撃演習を開始するジェガンの大部隊。

 

強化型ビームバズーカや簡易型ドーバーガンの射撃を開始するリーオー大部隊。

 

走行中に虚空の空の方面へ砲撃するロト部隊。

 

並列飛行を成してからのアクロバットな飛行をするエアリーズ部隊。

 

リゼルやアンクシャの部隊がこれに続き、可変フォーメーションをとる。

 

これらの光景は大規模かつ盛大な催しには代わりはなかった。

 

基地の会場には、各メディア関係者も訪れており、地球圏全域で生放送されていた。

 

事実上、現連邦軍・OZの戦力を見せつけるプロパガンダに他ならなかった。

 

地上部隊の砲撃が一旦終了すると、ディエスが駆るバイアランカスタムが飛び立ち、空をホバリングした後に華麗に回転しながら空を自在に飛ぶ。

 

ガンダムに匹敵する力を持った異形のMSは、地下から立ち上がって接地されたターゲットへと向かう。

 

そのターゲットは鹵獲された無人のガルスKやドムトローペン、ドワッジ等のジオン残存軍のMSであった。

 

ターゲットを破壊する演習を聞かされていたディエスであったが、このような形をとる連邦軍のやり方に嫌らしさを感じてなら無かった。

 

「おいおい……破壊させてはもらうが、何て悪趣味なプロパガンダだ!??」

 

バイアランカスタムは拡散ビームマシンガンを撃ち放ってこれらの機体群を撃破し、止めにビームサーベルで斬り裂いて破壊。

 

華麗に着地して見せるバイアランカスタム。

 

ディエスは自らの遺憾を漏らしながら呟いた。

 

「……ジオンの連中さんにはヘドが出る光景だろうな……俺自身も気が進まん……人としてな」

 

その後に、先程のリーオー部隊達がビームバズーカの射撃を再び開始する。

 

次はドムトローペンやズサ、ザクマリナー、デザートザク等をターゲットとした演習だった。

 

次々に高出力ビームで虚しく破砕されていく、ジオンのMS達。

 

同時にビームバズーカの威力も十二分に披露されていった。

 

それに続くようにゼクスの部隊、反乱ガンダム調査隊が離陸していく。

 

尚、部隊名は今演習より「 MS-TOPGUN」へと改名された。

 

トールギスを筆頭にオーバーエアリーズが続くゼクスの部隊とユニコーンを筆頭にリゼルカスタムが続くリディ部隊に分かれながらV字飛行を展開し、そこから更に軌道を左右に分かつ。

 

各機がアクロバット飛行を始め、華麗な飛行を披露する間に、地上では幾多のジオン残存軍のMSが用意された。

 

ゼクス達はターゲットの準備が整った事を確認すると、部隊をターゲットへと向かわせた。

 

トールギスのドーバーガンが、イフリートを破砕。

 

オーバーエアリーズ達が放つメタルミサイル群が連続でザクやグフ、ゲルググを砕き散らしていく。

 

続けてユニコーンのビームマグナムがガルスJを破砕し、リゼルカスタム達が、メガビームランチャーでハイゴックやズゴックE、ザメルを破壊させた。

 

ゼクスもディエス同様、やり過ぎなプロパガンダに違和感を示していた。

 

「……これは少々やり過ぎだ。彼等が見ているのであれば屈辱は免れない……より不平不満、反抗の意思を与えるのではないだろうか……?悪趣味なものだ……」

 

対し、リディは何の違和感も示していなかった。

 

「これは連邦軍の力を見せつけるには持ってこいのプロパガンダだ!!俺は気に入った!!!この中継を見ているジオンの連中により力を見せつける事ができるな!!!」

 

基地の北側の中央で聳え立つトールギスⅢ内で、トレーズはこの演習に遺憾を感じていた。

 

トレーズはディセットへ通信回線を開く。

 

「ディセット……今回の演習は君に一任していたが、これはいかなる演習なのか?」

 

「トレーズ閣下……!!はい!!地球連邦軍と共に、我々の力を反抗勢力に示す事が主な狙いであります!!オペレーション・イカロスとは別件であることは無論ではありますが……」

 

「力を示すまではいい……だが、ジオンのMSを晒すに至っては、私としても遺憾である。彼らにも戦士の価値観や誇りは当然ある。これはやり過ぎな行為だ。

言ったはずだ……事はエレガントに運べと……」

 

トレーズは無論の事ながらジオンを淘汰する立ち位置にいる。

 

だが、彼はそれでも反抗の意思を持って闘い続ける彼らの姿勢に一目置いていた。

 

そのジオンを公開処刑するかのように演習項目を組んだディセットのやり方に遺憾を示さざるをえなかったのだ。

 

ディセットは、尊敬してやまないトレーズの思考に答えられない自分を悔やむ。

 

「はっ!!申し訳ありませんでした(っ……トレーズ閣下のお心に答えられないとはっ………くぅっっ……!!!)!!!」

 

「ディセット……今以上にOZを学びたまえ。ターゲットの事は一度出てしまった以上もうどうにもなるまい。オペレーション・イカロスに期待する……」

 

「はっ!!」

 

ディセットの硬い敬礼で通信を終えた後に、再び演習の風景に気持ちを移すトレーズ。

 

彼の中で今の思惑が流れる。

(ジオンの戦士達を侮辱してしまったことは彼らにお詫びしたいものだ。しかし、その侮辱による遺憾で、戦火が始まるかもしれん。だがそうなればその歴史に道を進めばよい……まだ人々は戦い、闘い続けねばならないのだ)

 

戦い続けることが今の人類が維持していくべき姿勢とトレーズは考えていた。

 

人類の闘う姿勢の先にあるものを見据えての考えでもあった。

 

更にその闘う姿勢の代表格たるメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダム達を重ねた。

 

(これまでに反抗勢力のガンダム達には先手を打たれ続けてきた。だが、オペレーション・イカロスで形勢を替える事ができるであろう……)

 

連邦軍やOZのMS群が演習を展開する最中、ミスズは管制塔より演習の光景を見ていた。

 

有事の際の作戦指揮をゼクスより任されていた為、オーバーエアリーズに搭乗していなかった。

 

更に言えば、ガンダムとの戦闘で彼女を失う可能性を少しでも下げたいと想うゼクスの配慮でもあった。

 

「……ふふっ、ゼクスも心配性だ。わざわざパイロットの私をこの位置に配備してくれるとはな……」

 

「はぁ……?」

 

部下はミスズの言葉に不明瞭な反応を示す。

 

それに対し、ミスズは恥ずかしげにすることなく、堂々と言って見せる。

 

「ん!?解らんか?想われているということだ!!」

 

ミスズはそういいながら望遠レンズを手に取り、半ば笑みを浮かべた。

 

望遠レンズにはユニコーンと並列飛行するトールギスの姿が映っていた。

 

 

 

世界に、地球圏各地に放送される合同軍事演習の模様が各家庭や、企業、軍事関係に至るまで放送される。

 

コロニー間を航行するガランシェール隊のジンネマン達もこの放送を目にしていた。

 

ジンネマンはMS乗りではなかった為か、然程の違和感を示してはいない様子だ。

 

だが、それでも決して気持ちの良いものではなかった。

 

「連中め……ジオンのMSを晒し者にしやがったな……見て良いもんじゃねぇ。特にMS乗りやうちのメカニックのシンコ達が見りゃ怒りが沸騰物だ」

 

フラストがポツリと言い始めた。

 

「あいつら……どこまでジオンを侮辱するんですかね……!!」

 

フラストの呟く言葉に答えるようにギルボアは言った。

 

「それは連邦のヤツらに聞いてみなきゃわからんさ……連邦軍は結局変わりゃしない……今も昔も……」

 

ジンネマン達の脳裏にかつて、連邦軍の大量虐殺の事件が過る。

 

連邦軍がとあるジオン関係者が住むコロニー内で無差別攻撃をし、女性や子供、老人関係無く殺戮をした事件である。

 

反乱分子のコロニーの鎮圧という名目上で行われ、真実は連邦軍により、完全に情報工作されてしまったのだ。

 

「昔も今もか……確かにな……だが、今は俺達を含むコロニーの為に立ち上がった馬鹿共がいる」

 

ジンネマンは、頬杖をしながらギルボアの言葉に答えた。

 

確実にかつてとは違う状況の一つを。

 

「馬鹿共って……あの例のガンダムですか?」

 

「あぁ……今や反抗の象徴になりつつある馬鹿共だ。ふふふ……仕掛けるMSがガンダムって所がしっかり皮肉を加味させてくれている」

 

メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダムを支持する発言をしたジンネマンにフラストが意見を挟んだ。

 

「自分も馬鹿共を支持したいのですが、最近はその影響でコロニーの方も危うくなってきてます。実際にコロニーの連邦軍の軍備増強やジオン残存勢力やその他反抗勢力への攻撃も強くなって来てるんです。昔と同じことが起こる可能性が高くなってきているのでは!?」

 

確かにフラストの言うことも最もであった。

 

だが、それでもジンネマンはメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダム達を支持する発言をした。

 

「確かにそうかも知れん。だが、今までああも打って出る奴等はいなかった。あいつらのやっている行為は歴史に残る誰もやらなかった凄まじい行為だ。それに……」

 

ジンネマンは頬杖をやめ、キャプテン座席に設置されたドリンクホルダーのコーヒーを手に取った。

 

コーヒーをすすると、ジンネマンは言葉の続きを語る。

 

「マリーダが実際に彼らに世話になっている……少なくとも我々の味方側の勢力であることは間違いない……ふぅ……コーヒー追加してくれ。誰でもいい」

 

「じゃあ、自分が」

 

「すまん、フラスト」

 

フラストはコーヒーを追加しながらジンネマンの意見を確認した。

 

「じゃあ、キャプテンは支持するお考えで?」

 

「それ以外に何がある?マリーダも彼らの事を信頼している。何よりも姉妹であるマリーダの姉、エルピー・プルを彼らが保護してくれているんだ」

 

「あ、そう言えばそうでしたね!そうなると我々の方が彼らに借りを作っている感じになってきますか……」

 

「借りか……ははは!まぁな……」

 

そう言いながらジンネマンはコーヒーを飲み続けた。

 

 

 

オルタンシアのバスルームでは、プルとロニが入浴していた。

 

泡が溢れる程の泡風呂だ。

 

プルは泡を手に取り、ふっと息を吹きかけてロニへ向かって泡を飛ばして見せた。

 

「きゃ!?」

 

「ふふっ♪あわあわ~」

 

「もう、プルちゃんたら!お返し!」

 

ロニは息を長くして、手に取った泡をプルへ吹きかけた。

 

「きゃはははっ!えいえい!」

 

「きゃー!も~…そういうコには……こうしちゃう!」

 

ロニの泡を受けたプルは、更にはしゃいで泡をロニへかけた。

 

大量の泡がロニへとかかり、お返しにとロニはプルを直接くすぐってみせる。

 

「きゃー!ロニお姉ちゃんくすぐったーい!!きゃはははは!!」

 

ロニとプルがはしゃぐ声が、バスルームの外まで漏れ、通りのオルタンシアクルーもついちら見してしまう。

 

「あたしもロニお姉ちゃんくすぐる!!それ!!」

 

「あ、プルちゃん……きゃはははは!!もー!!」

 

ロニはプルのペースに持っていかれ、つい無邪気に帰ってしまう。

 

はしゃぎ疲れたロニは溜め息をしながらもたれ掛かった。

 

「ふぅ~……何年ぶりかしら、こんなにお風呂ではしゃぐの……」

 

ロニはふと幼少の頃、父親のマハディにお風呂へ入れさせてもらっていた時の記憶を思い出した。

 

「……お父様……」

 

ロニがポツリと呟いたその時、ロニの肩へプルがもたれ掛かるように寄り添った。

「ロニお姉ちゃ~ん」

 

「きゃ!」

 

「えへへ~……ロニお姉ちゃん、すべすべ~」

 

「ふふっ、プルちゃんたら……甘えん坊さん!」

 

ロニが甘えてくるプルを撫でると、プルはロニの腕に手を回して更に甘える仕草をした。

 

「プルプルプルぅ~……あ、ねぇ、聞いて!!あたしアディンのガンダムのぬいぐるみ作ったんだよ!!ぬいぐるみって言っても手のひらサイズだけど~……」

 

「あ、作ったんだぁ!?」

 

それを聞いたロニはまた一つ嬉しい気分になった。

 

何故ならば、簡単なぬいぐるみの作り方をプルに教えていたからだ。

 

「うん!ロニお姉ちゃんに教わったように作ってみたよ!今はあたしの部屋にあるんだけどね。アディンが帰ってきたら渡すんだぁ……」

 

恥ずかしげに言うプルが、またロニのプルに対する愛しさを増させる。

 

ロニはプルを撫でながら肩と頭を寄せてみせる。

 

「ふふ♪好きなんだね、アディン君が!」

 

「うん……好き♡ロニお姉ちゃんもカトルが好きなんでしょ?何かあげなよ~」

 

「あ、私はこの前、手作りのアクセサリーあげたのよ。いつも肌身離さず持ってくれてるわ」

 

「そうなんだ!あたしもはやくあげたいな~…」

 

バスルームでガールズトークが咲く中、プルの部屋には可愛いガンダムジェミナスの小さなぬいぐるみがころんと机に置かれていた。

 

二人は5、6歳の差はあれど、恋する気持ちは同じである。

 

ロニはプルをまた撫でて抱き寄せた。

 

だが、プルとの一時を終えたロニの表情にはどこか暗い陰を落として、ベットの上で横になっていた。

 

彼女の中で、とある想いを幾度もなくひしめきあわせる。

 

「連邦軍……OZ……」

 

以前にヒイロやデュオから聞かされたあの日のテロの真実が、ロニの行動を借り立たせようとしていた。

 

「テロを利用したテロ……偽装工作……摘発……企業崩壊……」

 

過る不快なワードを口にし、次第に想いが怒りの感情へと振れていく。

 

「お父様が築き上げたものを、企業を、生活を奪った……更には社員のみんなまで巻き込んで……!!」

 

そしてロニはバッと起き上がり、一点を見つめ続けた。

 

「カトル……プルちゃん……そしてお父様……私は……闘う道を選ぶわ……ごめんなさい……やっぱり、連邦軍が……OZが許せない!!!」

 

そう呟いたロニは、何かを決意したかのようにデータベースへ向かった。

 

 

 

同じ頃、マリーダは全地球圏に放送されている演習中継をクシャトリヤのコックピット内で見ていた。

 

「……まるでジオンのMSを処刑するかのような演習……!!!不愉快だ……!!!」

 

行われる連邦軍の諸行に苛立ちを抱く一方で、ヒイロに対しこれまでにない憂いを感じてならなかった。

 

「……この途方もないMSの海の中へ飛び込むというのか、ヒイロ……!!!!」

 

 

 

前日の夜・とある駐屯滞在エリア

 

マリーダはこの日の夜にヒイロから直接連絡をもらっていた。

 

ヒイロはマリーダが以前に負傷したケガに対し、気遣う様子を見せる。

 

「マリーダ…あれから怪我の具合はどうだ?」

 

「大丈夫だ。もう大分回復してくれた。ヒイロがそうやって気にかけてくれると私も励みになるな……」

 

ヒイロに気遣われる事自体に、マリーダは心か満たされる感覚を覚え、少しばかり嬉しげな表情を見せた。

 

「そうか……」

 

「戦うために生まれた私にとって、お前の存在そのものが励みにもなる。なんか……私のような存在は一人だけじゃないと思えてな…」

 

「マリーダ……」

 

強化人間としてこの世に生まれたマリーダの生い立ちは悲劇と常に向き合った人生だった。

 

だが、ジンネマンやヒイロ、姉になるプルとの出会いにより、その柵から解放されつつあった。

 

特に境遇が似た異性であるヒイロとの出会は大きかった。

 

対するヒイロも知らない間にマリーダに惹かれつつあった。

 

「マリーダ……俺も話しておく事がある」

 

「ん?何だ?」

 

「俺達は、明日開かれる地球連邦軍とOZの合同軍事演習に強襲をかける!!エージェントからの情報による敵機は500以上だ。これを俺達が叩く……!!!!」

 

マリーダは衝撃的な言葉を受け、つい重複確認で喋ってしまう。

 

「500機余りの戦力を叩くだと!??」

 

「あぁ」

 

「正気か!?いくらヒイロ達とはいえ、そんな大部隊……!!!これまでの大戦でさえそんな戦闘はないんだぞ!!!」

 

マリーダは真剣にヒイロの身を案じて感情を出す。

 

宇宙世紀史のMSの戦闘常識においても、非常識の極みであった。

 

だが、ヒイロは心配の必要はないと言わんばかりに平然と話続けた。

 

「初期の予想数値を大幅に上回っているが、俺達のガンダムならば成し遂げる可能性は十分にある。奴等に巨大な打撃を与える最大のチャンスでもあるしな……」

 

「だからと言って…余りにも無謀な行動だ!!!」

 

「その無謀な行動が俺達の任務だ」

 

「任務……!!」

 

「俺達はジオンを含めた全てのスペースノイドの為に闘っている。俺達は俺達のガンダムでそれを体現する……!!!」

 

マリーダは同じく任務で動いている身として、ヒイロ達の任務に質の違う重みを感じでならなかった。

 

「……それでも私はヒイロが心配でならない……だから私からの任務だ」

 

「任務?」

 

「ああ。無事に帰れ……!!!」

 

「……任務了解……」

 

 

 

ヒイロとのやり取りを思い返したマリーダは、モニター中継で連邦軍とOZのとてつもないMSの数を改めて確認した。

 

総機数は520機。

 

ヒイロの言っていた機数を上回る機数。

 

そして、まだ到着しないヒイロに向かい、マリーダは静かに呟いた。

 

「……ヒイロ……どうか無事に!!!」

 

 

 

オルタンシアのプルの部屋では、プルが一人でベットに寝転び、アディンへ贈るガンダムジェミナス01のマスコットヌイグルミをころころさせながら憂いを感じていた。

 

「アディン……大丈夫かな?なんか……しばらく会えなくなっちゃいそうな感じがしてきた……もっとアディンと一緒にいたい……ふぅ……」

 

ころころさせていたガンダムジェミナスのマスコットを枕元におくと、今度は猫の抱き枕を抱えた。

 

天井を眺め、入り込む陽射しを見続けるプル。

 

意中のアディンや、動く気持ちを感じ取っていたロニへのイメージや気持ちが何度も過る。

 

「アディン……それに……ロニも……でも、ロニはロニの気持ちがあるから……止めれないよ!!」

 

不安と愛しさとが混ざった気持ちになり、プルは瞳を閉じて、猫の抱き枕をきゅっとさせた。

 

部屋で、荷仕度らしき事を始めていたロニは、荷仕度の行動をしながら何かに借られたかのように口走っていた。

 

「今までダメかと思っていたカークス達との連絡がつけた!!無事でよかった……!!私も再び闘うんだ……!!カトル、プルちゃん、暫くは会えなくなるけど、ごめんなさい……!!私は、闘うの!!!」

 

 

 

今におけるGマイスターとの関わりを持つ女性陣のそれぞれの気持ちの向こうでは、男達が無謀という名のの火中へ飛び込んでいく。

 

各ビーム射撃や砲弾が飛び交う中を真っ向から挑む姿勢は、決して揺るがぬ姿勢であった。

 

その射撃の規模はこれまでの基地の強襲の規模を遥かに上回っていた。

 

五飛以外のGマイスター達が、オデルとカトルを中心に連絡を取り合う。

 

「ラルフがくれたデータと、目の前の光景を見ての通りだ。敵機の予想される数値を遥かに上回っている!!闇雲に突っ込んでも無意味に集中放火を浴びるだけだ。そこでフォーメーションをとって敵陣に攻め込む」

 

「まず、ヒイロとバーネット兄弟のお二人で突破口を作ります。そして更にできた突破口の前線でトロワが射撃し、その両側から僕とデュオで斬り込んでいきます。そしたらヒイロとバーネット兄弟のお二人は空中から比較的奥側の部隊へ射撃し続けてください。僕達三人は中近距離の部隊を叩き続けます。そこからヒイロ達は空戦部隊を叩くようお願いします。陸は僕達と五飛で攻め込んでいきます」

 

「あの敵機勢にそのフォーメーションをとるのは利に叶うな」

 

「なー、カトル!!その五飛はどーするんだ!?あいつも勿論来るんだよな!??」

 

「はい!勿論です。ただ、彼を遊撃部隊として一任していますので、どう攻撃するかはお任せです」

 

「結局そーなるのか!!ま、その方があいつらしいな!!」

 

「早いとこ、みんなで蹴散らしてキメようぜ!!!」

 

「ですが、攻撃対象はあくまでMSにしてください!!基地施設には一般の報道関係の人達がきているようなので……」

 

報道関係者の存在を知ったデュオは口笛混じりに高揚する。

 

「ひゅー……ってことは、大々的に俺達の活躍が世界に流れるってわけだ!!こいつは大いに活用させてもらおうぜぇ……!!」

 

「どう世論が捉えるかは別だがな……ではカトルが言ったフォーメーションで攻める!!最初の一手だ!!ヒイロ、頼む!!!先制攻撃が相手の心理を乱す!!」

 

「了解した」

 

「ヒイロが突っ込んだら俺達も展開するぞ、アディン!!」

 

「解ってるぜ!!!俺達がキメる!!!」

 

会話直後、バードモードのままウィングガンダムが加速しながら滑空する。

 

 

 

♪ BGM 「JUST COMMUNICATION」

 

 

 

これに対し、ニューエドワーズ基地側がガンダムを捕捉した。

 

「空軍部隊よりガンダムを視認との報告!!」

 

「基地からの最大射程距離到達まであと僅かとの事です!!」

 

「まだディセット特佐はここに来てはいない……!!演習を展開中の全部隊に砲撃命令を出せ!!」

 

「は!!」

 

ミスズの緊急対応の命令で、展開中のMS部隊が一斉にガンダムへ向け一斉に砲撃を開始した。

 

突き進みながら射撃を浴び、多数の着弾爆発が機体装甲面で起き続ける。

 

僅かなタイミングで向こうの先制攻撃を許してしまう。

 

だが、射撃を浴び続けながらウィングガンダムを突き進ませるヒイロの表情は、揺るがぬ信念を宿しているようでもあった。

 

突き進む先に展開する幾多のMS群に睨み飛ばし、ウィングガンダムを変形させる。

 

各部を変形させたウィングガンダムは、両足でアスファルトを砕き散らしながらブレーキをかけて着地した。

 

そして、ヒイロは見据えるようにしてバスターライフルをロックオンさせた。

 

ウィングガンダムは突き出すようにバスターライフルの銃口をMS群に向ける。

 

銃口に高エネルギーが圧縮され、ウィングガンダムは最大出力の一発を撃ち放った。

 

「最大出力で撃つ……!!!」

 

 

 

ヴゥギュリリリリリリィィィィ……

 

ヴァドォヴォアアアアアアアアアアアアァァァァ―――!!!!

 

ヴァゴゴゴゴゴォバガガガガァドガゴガシャダァアアアアアァァァァッッッ―――!!!!

 

 

 

荒れ狂うように直進する巨大ビーム渦流。

 

幾多のMSを豪快にかき消すように爆砕させながら、基地を一直線に突き進む。

 

展開する機体数に比例し、破壊されるMSの破壊規模の凄まじさも増していた。

 

 

 

ギュゴァアアア……ヴァズグガゴォァアアアアアアア!!!!

 

 

 

持続される高エネルギーが、地表を爆発させ、更に周辺のMS群を破壊した。

 

直後、ウィングガンダムの右サイドからガンダムジェミナス01が、左サイドからガンダムジェミナス02が飛び出す。

 

ウィングガンダムとのフォーメーションだ。

 

「アディン!!1・2で合わせるぞ!!!」

 

「OK!!!プル……俺はキメるぜ!!!!」

 

(バカか!?何回「キメるぜ」を言う気だ!??それにプルって……)

 

オデルは色々とアディンに言いたくなるが、リズムを合わせるべく、あえて何も突っ込まなかった。

 

アクセラレートライフルを構えた2機のガンダムジェミナスは、前面に向かいながら最大出力のチャージショットを息を合わせて撃ち飛ばす。

 

「1、2……シュートッッ!!!」

 

 

 

ギュリュリリリィィ……ヴヴァダァダァァァアアアアアアアア!!!!

 

ズドォゴヴァヴァドォドォゴゴゴガァアアアア!!!!

 

 

 

二本の中規模ビーム渦流が突き進み、MS群を吹き飛ばして破砕させていく。

 

そこから3機は、空戦部隊の撃破も兼ねて上昇した。

 

この攻撃を皮切りに、ガンダムヘビーアームズが前線地に着地し、ビームガトリンク、ブレストガトリンク、全ミサイルを一斉展開させる。

 

「更なる突破口を開く……ガンダムを見たもの、全てを消滅させる」

 

ガンダムヘビーアームズはメインカメラを光らせながら、展開させた火器を一気に撃ち放った。

 

 

 

ヴォヴァドゥルルルルルルルゥゥゥゥッッ……ドドドドドドドドシュシュシュシュゴゴゴゴゴゴォォォォォッッ!!!

 

ディギャヴァラララララァァン、ドドガギャララララガガガ、ドゴォヴァ、ドドドドドドドドゴゴゴォガガガガァァ!!!!

 

 

 

一瞬でMS部隊を砕き散らしながら破壊し、更に追い討ちをかけるようにグレネードランチャーを撃ち放った。

 

 

 

ディシュゴォォオオオオッッ……ヴァギャゴォドアアアアアアアア!!!!

 

 

 

一転集中的に撃ち放ったプラズマ光弾が一気に爆発し、ドーム状のエネルギー爆発を巻き起こしてMS群を吹き飛ばして見せた。

 

バラバラになったリーオーやジェガン、ジムⅢの残骸が転がっていく。

 

そのタイミングでガンダムヘビーアームズの左右から迫るMS群にガンダムデスサイズとガンダムサンドロックが斬り込んで突っ込む。

 

「行きます!!!」

 

「でやぁああああっっ!!!」

 

左側へはガンダムデスサイズがビームサイズを振りかぶってジェガン部隊へ襲いかかり、右側へはガンダムサンドロックがヒートショーテルで斬り込む。

 

ビームサイズの強烈な振りかざしが、2機のジェガンを斜めに斬り刻み、ガンダムサンドロックのヒートショーテルの左右斬りがリーオー2機を斬り砕く。

 

 

 

ザギギャシャァアアアアッッ!!!

 

ディッッガァガギィィイイイン!!!

 

ドドドドゴバガァガァアアアアアン!!!

 

 

そこからガンダムデスサイズは振り回すようにビームサイズを振るい、3機のジェガンの上下半身を破断させて斬り飛ばした。

 

 

 

ザギャガガガァアアアアアアッッッ!!!

 

ゴゴヴァッ、ドドゴォガァオオオオ!!!

 

 

 

そして殴り込みを入れるかのようにバスターシールドをジェガンへ刺突させた。

 

 

 

ズシュドォオッッ―――!!!

 

―――ゴォヴァガァドォオオオオッッッ!!!

 

 

 

バスターシールドを刺し込まれたまま、ジェガンは破裂するように爆発した。

 

一方で、ガンダムサンドロックがヒートショーテルをリーオーに連続で叩き込む。

 

 

 

ディッッガギャン、ヒュズガァッッ、ディザァギャアアアア、ギャザァガァアアア!!!

 

 

 

胸部を狙ったヒートショーテルの斬撃で3機のリーオーが破砕し、ビームサーベルを振りかざしたリーオーを斬り払いで斬り飛ばす。

 

そしてクロススラッシュの斬撃をリーオー2機へと見舞った。

 

 

ディッッガァギィィィンッッ!!!

 

ドォドォゴバァァアアアアアッッ!!!

 

 

 

空へ舞い上がったヒイロ達は、空中からの射撃を慣行する。

 

ガンダムジェミナス01、02は下方より来る射撃を浴びながらも、断続的にアクセラレートライフルを撃ち放つ。

 

一発、一発が、ビーム渦流状態の出力で射撃している為、その破壊力はリーオーやジェガン、ジムⅢ達をなす術なく破壊していく。

 

ウィングガンダムは、前面から迫る空戦部隊を把握しながらも、モニターの奥面で地上展開している部隊群へと狙いを定めた。

 

そして再び最大出力のバスターライフルを撃ち飛ばす。

 

斜め上より襲い来る、破壊の鉄槌のごときビーム渦流が、ロト部隊群を一気に吹き飛ばす。

 

凄まじい破壊力で瞬く間にロトの大部隊が破壊され続ける。

 

ウィングガンダムは出力を維持させたまま、横方向へと銃身を動かし、更なる破壊被害を拡げていく。

 

バスターライフルが荒れ狂う下では、ガンダムヘビーアームズの終わらないガトリンクとグレネードランチャーの射撃が、ガンダムデスサイズの死の斬撃が、ガンダムサンドロックの華麗な斬撃が展開し続ける。

 

バスターライフルの出力が収縮した後、凄まじい爆発が起こり、爆炎の火柱を巻き上げた。

 

「敵襲!!!敵襲!!!総員第一種戦闘配置に移行せよ!!これは演習ではない!!繰り返す!!総員第一種戦闘配置に移行せよ!!これは演習ではない!!」

 

ニューエドワーズ基地のMS格納庫や、基地内部の廊下通路では、警報が鳴り響く中を兵士達が足音をダカダカと響かせて駆ける。

 

報道陣の関係者達も、一斉に緊急の報道の準備を始める。

 

「例のガンダムが攻めてきた!!!緊急速報準備急げ!!」

 

「カメラ回せ!!早く!!」

 

「おい!!音声と照明!!」

 

テレビ局においても慌ただしさが増す中、報道準備を急がされる状況になる。

 

「ガンダムが合同軍事演習に介入!!緊急速報だ!!しゃきしゃき動いてくれよ、しゃきしゃきー!!」

 

「ガンダムが…!?用意してたテロップよろしく!!急げ!!」

 

「は、はい!!」

 

そして、広大な基地の一面上では一斉に大規模な迎撃がガンダム達を迎え続ける。

 

しかし、それでもメテオ・ブレイクス・ヘルのガンダム達は怯む事なく攻め続ける。

 

その光景を眼前に捉えたミスズは、双眼鏡を外して眉間にしわを寄せた。

 

「あれが……メテオ・ブレイクス・ヘルのガンダム!!!何て力だ!!!MSの常識を当に外れている!!!!ソラック特佐の無念……託すぞ、ゼクス!!!」

 

上空でホバリングしながら待機するMS-TOPGUNの部隊。

 

ゼクスは来るべき戦いに高揚感すら覚えていた。

 

「あのビーム……まさにあの翼のガンダムだな……!!!この前の続きができるというわけだ。我々に挑む彼等を無下にはできん……各機に告ぐ。戦闘命令が出次第、攻撃をかける。全身全霊を賭してかかれ!!!」

 

「はっ!!」

 

リディもゼクス同様、攻め入るガンダム達に高揚感を覚えていた。

 

無論、狙いはガンダムジェミナス01である。

 

「さぁ……来てみろ……ガンダム!!!」

 

ガンダムジェミナス01を見据えながら闘志をみなぎらせるリディ。

 

アディンも、空戦部隊の向こうにいるユニコーンを意識しながら射撃する。

 

遠方の空をズームアップさせ、口許に半ば笑みを浮かべてユニコーンの機体を確認した。

 

「へへへ……いやがるぜ、角ヤロー……!!!」

 

アディンはニヤつきながら再び射撃に集中する。

 

「アディン!!後はカトル達に下を任せるぞ!!上昇する!!」

 

「あいよ、兄さん!!!」

 

2機のガンダムジェミナスは、タイミングを見計らい上空へと舞い上がった。

 

上空では先に上昇したウィングガンダムが、旋回しながらマシンキャノンを連射し、エアリーズ、リゼルの機体群を撃墜する。

 

少しでもバスターライフルのエネルギー回復を図るためだ。

 

ヒイロは瞬発加速を断続させながらモニターの向こうにいるトールギスを見据える。

 

「やつか……!!いいだろう……ゼクス。ここでお前を殺す……!!!」

 

一方で、格納庫から出撃する増援部隊が次々と出撃していく。

 

増援部隊の多数がドーバーガンを装備したリーオーの重装備型だ。

 

各機が、展開する部隊の外側を回り込むようにブーストダッシュしていく。

 

「ガンダムは現在、地上と空中に分散し、基地を強襲中!!!回り込んでこれらへ重火力を撃ち注ぐ!!!」

 

「オペレーションは発動してはいませんが!?」

 

「その為の攻撃だ!!ここで―――」

 

展開する隊長機のパイロットが指事を言いかけたその時、隊長機の1機のリーオーへと、シェンロンガンダムが飛び蹴りを食らわせながら突っ込んできた。

 

 

 

ディガドォオオオオッッ!!!

 

 

 

シェンロンガンダムの爪先が、リーオーの胸部を貫いて破壊する。

 

蹴りを食らわせたリーオーを、スライドしながらのブレーキで激しく破砕させた。

「またガンダムか!??くっ!!!」

 

リーオー部隊は一斉にドーバーガンの集中放火をシェンロンガンダムへ放った。

 

無論、これ程の集中放火を浴びれば並みのMSは完全に破壊される。

 

破壊数値上はガンダリウム合金を破壊するには充分過ぎる域に達する。

 

「やったか!??」

 

が、爆煙が晴れた向こうには、装甲面の表面が焦げたシェンロンガンダムがシールドで防御した姿勢で静止していた。

 

「なんだと!??」

 

「こんなものか……ナタクを斃すなど不可能だ……」

 

シェンロンガンダムは、その場から一気に跳躍し、撩牙を突き刺してリーオーを串刺し状態にした。

 

 

 

ザガギャアアアアアアアア!!!

 

 

 

そして豪快にリーオーが突き刺さったままの状態で撩牙を振りかぶって、リーオー部隊へ襲いかかる。

 

「はぁああああああ!!!」

 

 

 

ダガギャアアアアアアアアアアア!!!!

 

 

突き刺さったままのリーオーを斬り潰しながら、2機のリーオーを吹っ飛ばした。

 

更に2機のリーオーが別のリーオー部隊へ吹っ飛ばされ、著しく陣形を乱す。

 

五飛は空かさずその場所へドラゴンハングを伸ばさせ、火炎放射のジェットバーナーを浴びせた。

 

 

 

ギュゴァアアアァァアアアァァ!!!

 

ゴッゴゴヴァヴァガゴォオオオオ!!!

 

 

 

超高熱により、リーオー達は動力炉を連続で誘爆発を巻き起こされた。

 

その炎の上を歩きながら、ビームグレイブを取り出し、撩牙と合わせて構えると、ビームライフルとミサイルの放火を始めたジムⅢ部隊へ突っ込んだ。

 

「どけっっ!!!雑魚が邪魔するなっっ!!!!」

 

シェンロンガンダムはお構いなしに攻撃を浴びながらビームグレイブと撩牙を巧みに振るい、怒濤の斬撃を乱舞する。

 

まさに暴れ狂う龍のごとく。

 

 

 

ヴィジュギギャア、ザガドォオオオ、ザガシュガァアアアア、ギャガガィィッッ、ザヴィシュガァアアアア……!!!

 

 

 

ギンッと両眼を光らせたシェンロンガンダムは、ブーストダッシュで加速し、展開するジェガン部隊に襲いかかる。

 

ビームグレイブで3機を斬り飛ばし、眼前のジェガンに撩牙を豪快に突き刺して加速した。

 

撩牙を突き刺したまま、多数のジェガン部隊へ突っ込み更なる突貫を慣行し、多数機を破壊する。

 

「ディエス!!!決着をつけるぞ!!!!待っていろ!!!!」

 

その時、五飛の気迫に答えるかのように、ディエスのバイアランカスタムがニューエドワーズの空に舞い上がった。

 

「見つけたぞ……龍のガンダム!!!今日はフィーアを乗せちゃいない。存分に闘いをやらせてもらう!!!」

 

五飛も、ジェガン部隊を斬り飛ばしながらバイアランカスタムを視認した。

 

「現れたか……!!!」

 

再び麒麟と龍とが対峙する。

 

バイアランカスタムは、ビームサーベルを発生させたライトアームを振りかざして急降下を慣行した。

 

対するシェンロンガンダムは、撩牙をアスファルトに突き刺して、バイアランカスタムへ向かい飛翔する。

 

正々堂々と闘うがゆえの五飛の信念の現れだ。

 

両者のビームサーベルとビームグレイブが振りかざされ、空中で激突した。

 

 

 

ギャギィヴィィィィッッッ!!!

 

 

 

「確か……五飛と言ったな!!!トリントンの続きだ!!!」

 

「俺もそのつもりだ……決着を着けるぞ!!!ディエス!!!」

 

2機は一騎討ちとなり、刃をぶつけ合いながら地上を砕くように着地した。

 

友軍のバイアランカスタムを捲き込まないよう、シェンロンガンダムへの攻撃は止むことになる。

 

だが、他のガンダムにはこの大規模の軍勢に比例する攻撃は止むことはない。

 

大雨に打たれるかのような弾雨攻撃の状況下に晒され続けながら、個々が持てる力を奮って戦う。

 

ダカールに迫るアフリカエリアで滞在中のフロンタルとアンジェロもこの戦闘の中継を見ていた。

 

「大佐……あの群勢に例のガンダムが攻撃を開始しましたよ……」

 

「あぁ……実に興味深いな……果たしてあの無謀な闘いがどうなるのか……宇宙世紀を振り返ってもこのような例はなかったからな……」

 

「はい」

 

「我々もダカール制圧を控えている。決して他人事ではない。機体は違えど彼らの闘いをよく見ておく必要がある」

 

「はい、大佐!」

 

「我々は精鋭が揃うのを待つだけだ。揃い次第にダカールへ向かう」

 

「いよいよですね……ダカールの陥落が……」

 

「あぁ。だが、ようやく第一段階を終えるに過ぎん。陥落が成功すれば次の段階を迎える。より励んでもらいたい」

 

「はっ!!お任せください!!」

 

 

 

カトル達は直撃弾を幾つも浴びながら突貫する。

 

「躱そうとしても、躱せるものじゃない!!!ガンダムの装甲を信じて戦力を徹底して削るんだ!!」

 

接近して取り付くリーオーやジェガン、ジムⅢを、ガンダムサンドロックのスキルであるパワーを生かした力強い斬撃で幾度もなく連続斬りで叩き伏せていく。

 

両手に持ったヒートショーテルの一刀、一刀を食らったMS達は綺麗に破断され、躯と化して崩れ爆発していく。

 

ジェガンとリーオーをクロススラッシュで斬撃した直後、ガンダムサンドロックは前面から来るビーム弾雨を睨むように顔を上げた。

 

「へっへへ……鼻から撃たれまくりは承知だぜ、カトル!!ち~っとばかし攻撃はうざいけどな!!!ま、この敵勢だ……豪快に行こうぜ!!!」

 

デュオはガンダムデスサイズを断続加速させながら、ジムⅢ部隊とジェガンの部隊へと突っ込み、ビームサイズを豪快に振るって斬り飛ばしては、斬り伏せ、斬り飛ばしては、斬り伏せる。

 

ジムⅢ部隊やジェガン部隊が放つミサイルやビームの攻撃は確実に直撃しているが、ガンダムデスサイズはモノともせずにビームサイズを振るう。

 

ガンダムデスサイズのビームサイズの一振りは、3機、斬り伏せは2機を確実に仕留めていく。

 

そしてガンダムサンドロックはヒートショーテルを×の字に構えたまま、フルブースト加速をかけて弾丸のごとくMS群へ突っ込む。

 

リーオーやジェガンが無作為に斬り砕かれて破砕されていった。

 

ガンダムデスサイズも、ビームを撃ち続けるジムⅢやジェガンの部隊へバスターシールドをかざして撃ち飛ばす。

 

一直線に高速で突き進むバスターシールドが一瞬でMS軍勢を刺突しながら突き砕いた。

 

「確実に仕留めさせてもらう……残り約450機。一人50機の割り当てで破壊すれば自ずと戦意を奪える」

 

既に7機のガンダム達は短時間で、約70機余りのMSを破壊していた。

 

ウィングガンダムやガンダムジェミナス01、02そしてガンダムヘビーアームズの攻撃が大きな要因であった。

 

トロワは更にMS部隊を削るべく、突き出すように構えられたビームガトリングやブレストガトリング、マシンキャノンを連動させながら、ごり押し射撃を慣行し続ける。

 

ジムⅢやリーオー、ジェガンを次々に蜂の巣にして撃ち斃す。

 

射撃を食らったMS達は砕け散って虚しく破砕される。

 

そして時折グレネードランチャーをぶっ放し、一点にいるMS部隊を激しいまでに撃砕させた。

 

ガンダムヘビーアームズは、その場から上昇し、低空より持てる火器の射撃をぶっ放す。

 

スタークジェガンやロト部隊が蜂の巣になって連続爆発を巻き起こし、 重装備型リーオーの部隊がグレネードランチャーによって一斉に破砕されていった。

 

上空においても、ウィングガンダムと2機のガンダムジェミナスがビームチェーンガンやビームライフルの火線が飛び交う中で猛威を振るう。

 

「うぉ~っ!!!ヤバイくらいの流星弾雨だぜ!!!それに、エアリーズとリゼルがハエみたいにウザい!!!」

 

アディンは、文句を吐きながらもロックオンした敵機に向かい、チャージショットを連発してアクセラレートライフルのビーム渦流を撃ち込んでいく。

 

ビーム渦流がエアリーズやリゼルのボディーを吹き飛ばしながら爆破させていった。

 

ヴィギュダァアアアッッ、ヴィギュダァッッ、ヴィギュダァッッ、ヴィギュダァアアア!!!

 

 

撃ち込んでいくビーム渦流は一発につき、2、3機、時折4機のターゲットを撃ち堕とす。

 

確実にアディンの射撃能力は上がっていた。

 

機体を加速させながら、ロックした敵機を次々に撃破していくガンダムジェミナス01。

 

後方よりアンクシャとリゼルが迫るが、空かさずアクセラレートライフルの銃口を向けてシュートさせる。

 

 

 

ヴァズダァアアアァァッッ!!!

 

ズドォガシャアオオオオオオッッ!!!

 

 

 

「見え見えたぜ!!!!」

 

撃ち漏らすことなく、迫っていたリゼル2機とアンクシャ2機を撃ち飛ばした。

 

更には真っ二つにしようと斬り込んできたアンクシャに銃口を突きつけ、零距離で撃ち放つ。

 

「っと……!!」

 

 

 

ヴズヴァアアアアアアアア!!!

 

ズギャシャアアアアアァァッッ!!!

 

 

 

「デカイ分、当てやすいんだよ!!!さっ、どんどんキメるぜぇっっ!!!」

 

オデルのガンダムジェミナス02もアクセラレートライフルで射撃をかけ続ける。

 

だが、アディンのように連発して撃つのではなく、確実に多数の機体を仕留めていく撃ち方に専念していた。

 

「アディン、大部命中率が上がっているな!!だが、まだまだだ!!」

 

モニターの射撃線上に多数の敵機をロックしたオデルは、射撃のタイミングを逃さずチャージショットを撃ち込んだ。

 

 

 

ヴァズヴァアアアアアアァァッッ!!!!

 

 

撃ち込んだビーム渦流に、エアリーズ4機、リゼル3機を捲き込んで吹き飛ばす。

 

右側面方向からのビーム射撃を受けながらも、銃身をしっかり構え、エアリーズやリゼル部隊へと撃ち放つ。

 

 

 

ヴァドォダァアアアアアアア!!!

 

 

 

ズギャズズズドドドォオオオオオオォォォォ!!!!

 

 

 

一撃のアクセラレートライフルの一発は3機のエアリーズと4機のリゼルを総なめにして撃ち飛ばした。

 

その時、下から来たビーム射撃とミサイルの直撃を受ける。

 

「む!!下からか……!!!狙いは外さん!!!」

 

下方から迫るアンクシャ4機とエアリーズ4機。

 

オデルが撃つチャージショットが、これらの機体達に撃ち放たれる。

 

 

 

ヴヴァダァアアアアアアアアア!!!!

 

ダヴァガドォオオオオオオオオッッ!!!!

 

 

 

ガンダムジェミナス02が放ったビーム渦流が、上から叩き潰す勢いで、ロックした機体群を砕き飛ばした。

 

一方で、ヒイロのウィングガンダムは、ビームサーベルでエアリーズとアンクシャの部隊に斬りかかっていた。

 

「障害は排除する……!!!」

 

機動力を活かした動きで、瞬発加速させながらアンクシャを斬り刻み、瞬く間にエアリーズ2機を斬り払って破壊する。

 

 

 

ギュドアッッ―――ザズゥバァアアアアアン!!!

 

ギュゴォォオッッ―――ズバシュダァアアアアアン!!!

 

ドッッ―――ジュギャイイイイイイイ!!!!

 

 

 

一撃離脱戦術で各個撃破する技術は、ヒイロの得意分野でもあった。

 

可動音をならしながらウィングバインダーを展開させ、更にウィングガンダムを加速させる。

 

風を切り裂く甲高い飛行音を響かせながらリゼルへと斬撃を浴びせた。

 

 

 

―――キィィィイイィィィィンッッ―――ザガギャアアアアアアアア!!!

 

 

 

激しく叩き斬られたリゼルは、斬られた瞬間に爆発し、砕け散って四散した。

 

そのままウィングガンダムは、接近するエアリーズに襲いかかり、大きく斬り払った。

 

 

 

キィイイイイイイィィィィンッッ―――ズシュバァガァアアアッッッッ!!!

 

 

大空を羽ばたくハンターのごときウィングガンダムは更に加速をかけて、連続斬りで2機のエアリーズと2機のリゼルを墜とすと、再びバスターライフルを手にし、展開するアンクシャ、エアリーズ部隊へとビーム渦流を撃ち放った。

 

「エネルギー充填完了。再びバスターライフルで射撃する!!!」

 

振りかぶって構えられるバスターライフル。

 

高エネルギーが圧縮され、再び荒れ狂うビームが撃ち放たれた。

 

 

 

ディッガキィィンッッ―――ヴギュリリリィィィィ………ズドォヴゥヴァアアアアアアアアアアアアアッッッッ―――!!!!

 

 

 

バスターライフルのビーム渦流は、瞬く間にエアリーズやリゼル、アンクシャの部隊群を吹き飛ばして見せた。

 

空には幾つもの爆発光の華が咲き乱れる。

 

ウィングガンダムは更に自機を自転させるようにバスターライフルの銃身をスイングさせながら振り回す。

 

 

ギュグァンッッ―――ドゥヴァシュドォアアアアアアアアォオォォォッッ―――!!!

 

ズドォドォドォドォドォグガシャヴァアアアアア………!!!

 

 

 

一気に破壊の範囲が拡大し、周囲にいたMS部隊は一瞬で吹き飛ばされ、破砕された。

 

この状況下の中、作戦指令室ではディセットが入室し、いよいよ「オペレーション・イカロス」が発動しようとしていた。

 

ディセットの入室と共に、ミスズはそれまでの戦闘観察の姿勢を解き、ディセットへの敬礼をした。

 

(ディセット・オンズ中級特佐。トレーズ閣下の忠実なる側近……か)

 

ミスズは心中では上からの目線で歩くディセットに視線と敬礼を合わせた。

 

ディセットは目に止まったミスズに状況を問う。

 

「状況はどうか!?」

 

「はっ!!この間にも既に少なくとも100機以上の機体が撃墜されています!!!ガンダムの戦闘能力は遥かに予想を越えています!!!一刻も早くオペレーションを!!!」

 

「無論だ!!直ちにオペレーション・イカロスを発動させる!!!MS-TOPGUNと地上増援部隊へ攻撃命令を出せ!!!」

 

「は!!」

 

「脅威となる異常な火力を封じ、ローテーションによる砲撃を持続させ、彼らに消耗戦を仕掛ける!!!消耗し切ったところをエレキアンカーでガンダムを鹵獲する!!!尚、騎士道精神ある者は鹵獲前に決着を着けることを命ずる!!!作戦とトレーズ閣下へのエレガント精神の両立だ!!!」

 

オペレーション・イカロスはガンダム鹵獲作戦であった。

 

上空で攻撃命令を待ち続けていたMS-TOPGUNに攻撃命令が通達される。

 

内容を読んだトレーズは、ディセットを少し評価した。

 

「少しは理解してくれたようだな。ディセット……」

 

モニターに受信したオペレーション開始の命令を見ながら、ゼクスは不敵に笑った。

 

「ふっ……鹵獲前に決着を着けるか……各機に告ぐ!!オペレーション開始の命令が出た!!我々は上空のガンダムへ攻撃をかけるが、オーバーエアリーズ隊は地上の援軍を頼む!!リゼルカスタム隊は蒼いガンダムへ、白いガンダムにはリディ少佐、そして翼のガンダムには私が仕掛ける…!!!」

 

「了解!!」

 

「この時を待っていた!!!ユニコーン、次こそは叩くぞ!!!」

 

「トールギス……私に勝利を与えてくれ!!!」

 

リゼルカスタム隊が一斉にガンダムジェミナス02を目刺し、ユニコーンがその角を突き出すかのように一直線にガンダムジェミナス01へ突き進む。

 

そして、屈折するような軌道でトールギスが高速でウィングガンダムを目指して突き進んだ。

 

「奥面の部隊が動いた……!!堕とさせてもらう!!!」

 

オデルは、リゼルカスタムの部隊の動きを確認し、アクセラレートライフルをチャージショットで撃ち放つ操作をした。

 

ビーム渦流がリゼルカスタム隊に突き進む。

 

だが、リゼルカスタム達はこれを躱しきり、一斉にビームランチャーを撃ち放つ。

 

「何!??―――ぐっ!!!」

 

ビームランチャーのビームが、ガンダムジェミナス02の両肩や両脚に被弾して衝撃を受ける。

 

着弾部は装甲面を僅かに痛ませた。

 

「いつまでもいい気になるな!!ガンダム!!」

 

「ガンダムは連邦の名優のような存在だったはずだ!!」

 

ガロム機、ホマレ機を筆頭に一撃離脱戦法でガンダムジェミナス02の周囲をリゼルカスタムが翔る。

 

「くっ……!!速いな!!高機動機による一撃離脱戦法……あちらさんも手を打ってきたな!!!」

 

オデルは、飛び交うリゼルカスタムとビームランチャーのビームに少しばかり翻弄される。

 

躱しては掠め、躱しては中ってしまう。

 

明らかにエースパイロットであることをオデルは悟る。

 

「……っちぃ……だが、ようやく私もエースパイロットに出くわしたな!!」

ガンダムジェミナス01に迫るリディのユニコーン。

 

ビームマグナムを一発、二発と撃ち放ち、牽制射撃をする。

 

それに答えるようにアディンも、アクセラレートライフルで対抗し、射撃した。

 

数発撃たれたビームは、互いの機体を掠める。

 

「来やがったな!!角ヤロー!!!」

「反逆のガンダムっっ……!!!」

 

戦意全開でアディンとリディは迫り合い、ライフルを素早く同時に収容して、ビームの刃を抜き合う。

 

「おぉおおおおおおっっ!!!」

 

アディンとリディの気迫も重なり、ビームソードとビームサーベルが全開の力で互いの激突した。

 

 

 

ギャディギィイイイイイイィィッッ!!!

 

 

 

拮抗する激突の中、アディンはユニコーンのパワーが上がっている感覚を覚えた。

 

「……っなんだ!??パワーが……上がってやがるのか!??」

 

音声回線は開いていないが、アディンの疑問符に答えるように、リディはモニター上のガンダムジェミナス01へ向かい答える。

 

「貴様たちに対抗する為、俺のユニコーンやゼクス特佐のトールギスはチューンを施してある!!!装甲は劣るが、トータル機能では負けん!!!」

 

アディンも、聞こえずともユニコーンから伝わる感覚に向かって話し返すように喋った。

 

「……相手も…それなりに対抗してくれてんのか……上等だぜ!!!」

 

ヒイロとゼクスも互いの存在を強力なまでに意識し、迫る好敵意に対して反射的にビームサーベルを装備した。

 

「ゼクス・マーキス……!!!」

 

「さぁ……受けて立て!!!ガンダム!!!」

 

バーニアの出力を上げ、ウィングガンダムへ高速で迫るトールギス。

 

風を切り裂きながら大きくビームサーベルを振りかざす。

 

ウィングガンダムも脇を締めるようにビームサーベルを抜刀するように構えた。

 

2機がぶつかる瞬間、スローモーションのような時間が流れ、ウィングガンダムとトールギスは互いに睨み合う。

 

そして、唐竹の斬撃と斬り上げの斬撃とが凄まじく衝突し合い、激しきスパークを発生させた。

 

 

 

ギィヴィギャアアアアアアアァァッッッ!!!

 

目映いスパーク光に照らされながら、ヒイロとゼクスは互いのプライドをかけて激突する。

 

ヒイロも刃を交えた瞬間にトールギスの性能が引き上げられた事を感じとる。

 

エースの勘が成せる直感だ。

 

「……機体性能を上げたか……!??」

 

「トールギスを貴様のガンダムの性能へ近づける為、機体のあらゆる機構ヵ所にチューンを施した!!少しは応えに沿える筈!!!」

 

 

地上では、ガンダムが攻め去ったエリアの地下ハッチ口が次々と持ち上がり、増援部隊が次々に出撃していく。

更には基地の両側面側からも増援部隊が出撃していく。

 

そのほとんどが、重装備型リーオー、ロト、スタークジェガン、ジムⅢの部隊であった。

 

それらのMSを厳選したのは武装面によるものであった。

 

打撃の衝撃を与える徹甲弾型ミサイル・メタルミサイルの仕様の装備がそれぞれの機体に施されていた。

 

オーバーエアリーズに通常装備されているミサイルだ。

 

ガンダリウム合金製のミサイルであり、現存するミサイルで最も高い硬度を誇る。

 

基地の機体数値が膨れ上がるのと同時に、ガンダム包囲網が出来上がる。

 

止まぬ攻撃が展開される中、カトル達は周囲の状況の変貌に警戒した。

 

「敵機の数に次々と増援部隊が加わっています!!それに、陣形も囲むかのような陣形になりました!!!」

 

「こいつは……ヤバイかぁ……?!?へっ!!ま、いいさ……やられる前に、殺れってなぁっっ!!!」

 

「デュオ!!!くっ……!!!」

 

デュオは状況が不利な方へと傾きつつある事を承知で戦い続けた。

 

ガンダムデスサイズはビームサイズを振りかざして突っ込み、斬撃を食らわし続ける。

 

カトルもデュオに続き、ヒートショーテルの斬撃を俊敏に食らわして駆け抜ける。

 

「包囲網が敷かれたか……その戦略は正しいな……!!!」

 

ガトリングの斉射を唸らし続けるガンダムヘビーアームズ。

 

トロワ自身も敵側の利にかなう布陣を評価するが、次の瞬間、一斉に蔓延っていたMS群勢が離脱を開始した。

 

「やはり……そうなるか」

 

「敵機が一斉に離脱していく!??しまった……!!!」

 

「こんだけいて、逃げる方がおかしいよな、普通……!!」

 

トロワは冷静に状況下を把握し、カトルは大規模演習に潜んでいた意図を確信、デュオは離脱するMS群勢の向こうに見えた大部隊にあきれた笑いをした。

 

そして、全部隊がメタルミサイルを撃ち放つ。

 

まさに電光石火の言葉が合うミサイル攻撃の情景。

 

デュオ、トロワ、カトルのガンダムは、一点集中放火を浴び始めた。

 

直撃を浴び続けるのは必至であった。

 

ガンダムのガンダニュウムの装甲に連続して無数の衝撃が襲い、姿勢制御のバランスが崩されていく。

 

例えるなら多方から杭状のモノで殴られているに等しいものであった。

 

「がぁっっ……!!こいつは、あの時のエアリーズのミサイルか!??うざってーな!!!こん畜生!!!」

 

「これでは身動きがとれんな……」

 

「確かに!!かなりの癖のある攻撃です!!!」

 

メタルミサイルは着弾すると、ドラム缶を押し潰したよう変形し、弾き飛んでいく。

 

撃ち尽くした機体は順に後退し、弾丸の補充を図る。

 

そして次の砲撃係のMSに交替して攻撃するというローテーションを繰り返す。

空中からも、MS-TOPGUNのオーバーエアリーズが飛来し、ガンダム達へ迫りながらメタルミサイルを撃ち飛ばしていく。

 

「ここでガンダムのデータを録る!!さぁ、ガンダム……力を見せてみろ!!」

 

「ワーカー特士!!あまり無茶をするなよ!!」

 

「はい!!オットー特尉!!」

 

「死神め……以前の屈辱……はらさせてもらう!!!」

 

ワーカー、オットー、トラントを筆頭に、オーバーエアリーズの滑空しながらの射撃が、3機のガンダムへと撃ち注いでいった。

 

「黒いエアリーズ!??」

 

「当然上空からも来るか……」

 

「めんどくさいエアリーズが来やがったぜ!!!」

 

地上で唯一シェンロンガンダムだけがそれをまぬがれ、五飛は基地の敷地外でバイアランカスタムと一騎討ちの斬撃戦闘を繰り広げていた。

 

2機は一騎討ちの余りに、基地敷地外へと離脱していたのだ。

 

ビームグレイブとビームサーベルの斬撃が幾度もスパークを撒き散らし、カンフー映画さながらの剣撃がMSサイズで巻き起こる。

 

「はぁあああ!!!」

 

「づあああああ!!!」

 

ビームグレイブとビームサーベルを押し合って剣撃が拮抗し、荷重が掛かった両者の足が土に食い込む。

 

ガンダムジェミナス01とユニコーンも互いのビームサーベルを交わせたまま回転し、パワーを拮抗させ続ける。

 

ユニコーンのパワーのチューンは、確実に効果が表れていた。

 

アディンとリディは、コントロールグリップを握りしめ、晒される回転Gに耐えながら険しい表情で歯を食い縛る。

 

「ぐぅううっっ―――……!!!」

 

ガンダムジェミナス01とユニコーンは、カメラアイを光らせた瞬間に互いのビームサーベルを捌き合い、二度三度とビームサーベルを激突させ、再び力を拮抗させた。

 

そしてウィングガンダムとトールギスは甲高い加速音を響かせ、アーチのような軌道で連続で激突し合っていく。

 

激突の度に、ビームサーベルのスパークが空中に奔る。

 

激突し合った2機は、衝撃波を起こすほどの瞬発加速で離脱し、再び加速。

 

2機はすれ違いながらビームサーベルを激突させて駆け抜ける。

 

「ゼクス……!!!」

 

「反逆のガンダム……!!!」

 

管制塔の前ではトールギスⅢが立ち、トレーズはコックピットモニターに映る戦闘の場景を望む。

 

「戦場の輝きは美しい……人は戦う姿勢が一番輝くのだ。さぁ、反逆の意志を持つガンダム達よ、私にもっとその輝きを見せたまえ……」

 

トレーズは映像に手をかざし、戦場を掌にのせるかのような仕草をした。

 

まさにその状況下が彼の眼前に広がっていた。

 

 

 

 

 

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