真・響鬼   作:三澤未命

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三十七之巻『甦る修羅』

○アバン・オープニング

明日夢N「鍛えて鬼になって人助けをする不思議な男の人、ヒビキさん。そして、イブキさんやトドロキさん。僕、安達明日夢の毎日は、そんな人たちと出会ったことで、変わってきました。そんな中、持田の様子がおかしいようで、ちょっと心配な今日この頃です。そして、鬼の人たちの世界でも色んなことがあるようで……」

 

○オープニング曲『輝』

 

○サブタイトル

 三十七之巻『甦る修羅』

 

○提供ナレーション 森絵梨佳

 

○たちばな・地下作戦室

 PCのモニターを見ながら電話をする勢地郎。

 傍にはヒビキが座っている。

勢地郎「……うん、そうなんだ。ノツゴを退治しなきゃならない大変な時なんだけど、こりゃ、どうもヤマアラシみたいだなあ。……うん、とりあえず、浅間山の方へ向かってくれないか。……じゃあ、よろしく」

 電話を切る勢地郎。

 傍にいたヒビキが話しかける。

ヒビキ「今頃ヤマアラシですか」

勢地郎「ああ、こう集中すると、みんなにも負担かけるねぇ。あ、ヒビキは引き続き例の調査の方を」

ヒビキ「了解」

 ヒビキ、立ち上がって階段を駆け上がろうとするが、ふと止まって、

ヒビキ「……おやっさん」

勢地郎「ん?」

ヒビキ「(階段の上の方を見つめた姿勢のまま)シュキって人は、もう人間ではないと考えてもいいもんなんでしょうかねぇ」

勢地郎「……ヒビキ」

ヒビキ「……行ってきます」

 階段を駆け上がるヒビキ。

 それを真剣な表情で見送る勢地郎。

 

○浅間山へ向かう道

 雷神を運転するザンキ。

 助手席にはトドロキ。

トドロキ「……この時期に、またヤマアラシですかあ」

ザンキ「とりあえず、シュキの方はヒビキに任せるしかないな。ノツゴも気になるが、あれは弦の攻撃ではどうにもならんからなあ」

トドロキ「てことは、イブキさんの出番ってわけですね?」

ザンキ「ああ。……だが、ノツゴ相手となるとイブキだけではキツいだろうから、トウキさんとショウキも応援に廻ることになったらしい」

トドロキ「へぇ~。管の戦士揃い踏み!って感じですね。自分も、サバキさんやバンキさんと一緒に、弦の三重奏とかやってみたいもんスね!」

ザンキ「バカ。何のために分散してシフト組んでると思ってんだ。そんな事したら後手後手に廻っちまうだろうが。……今回は特別だ!」

トドロキ「あ、そうッスよね~! ハハハ」

 呑気に笑うトドロキ。

 車は、浅間山の山道に差し掛かる。

ザンキ「ん?」

 ザンキ、道端に転がる物体を見て車を止める。

 トドロキとともに車から降りて、その物体に近寄る。

トドロキ「こ、これは……」

 それは、人間が全身の水分を抜き取られ、無残にも皮と骨だけになっている亡骸だった。

 亡骸に触れるザンキ。

 まだ暖かい。

ザンキ「……トドロキ! すぐヒビキに連絡しろ! ……近くにいるぞ!」

 トドロキ、素早く下がってヒビキに電話をかける。

 緊張するザンキ。

 その瞬間!

上空からザンキの背後に舞い降りてきたシュキ!

 後ろからザンキを襲う!

トドロキ「……ザ、ザンキさん!」

 大慌てで烈雷を取り出すトドロキだが、シュキの牙がザンキの首筋に迫る。

 と、その時、今度はシュキの背中に一つの影が降り立つ!

 裁鬼だ!

 裁鬼の閻魔が、シュキの背中を切り裂いた!

シュキ「グワッ!」

 ザンキから離れるシュキ。

 しかし、背中に受けた傷はみるみる治癒していく。

裁鬼「大丈夫か!? ザンキ!」

ザンキ「(首筋を手でなでながら)おう、サンキュー」

 挙動不審な動きを繰り返すシュキ。

 裁鬼が語りかける。

裁鬼「おいシュキ! 俺が分からんのか!? 裁鬼だ! おい!!」

 反応のないシュキ。

ザンキ「裁鬼よせ、ムダだよ。こいつは、もう魔化魍に支配されている……」

 三対一で不利と見たのか、或いは何か他の事情からなのか、シュキは二、三歩後ずさりした後、バッと上空へ飛び立った。

 そして、そのまま大空の彼方へと消えていった……。

 

○たちばな・地下作戦室

 机を囲む勢地郎、香須実、日菜佳、そしてみどり。

香須実「……どう思う? お父さん」

勢地郎「う~ん……、どうだろうねぇ」

みどり「もう隠していくには、難しい状況になってるってのは、事実なのよね」

勢地郎「まあ、ひとみちゃんだったら、秘密はちゃんと守ってくれるだろうと思う。ただ……」

香須実「ただ?」

勢地郎「うん。ひとみちゃん自身が、この重みに耐えられるかどうかってことが、問題なんだねぇ。……明日夢君の場合は、我々猛士や魔化魍のことを知っても、しっかり自分の生活ってものを崩すことなく生きてこれた。彼は、そういう強さを持った少年なんだよねぇ。まあ、そこにヒビキも惚れ込んだんだろうけどね……」

 目を見合わせて微笑む香須実とみどり。

みどり「……まあ、その明日夢君を見込んだのが、他ならぬひとみちゃんなんだから。……大丈夫じゃないかなあ」

勢地郎「そうだねぇ……」

日菜佳「そうそう! 大丈夫ッスよ!」

香須実「アンタが言うと、今イチ説得力ないのよね~」

 ムッとして香須実をニラむ日菜佳。

 笑う勢地郎とみどり。

 

○同・店頭

 ひとみの前に座る勢地郎、香須実、日菜佳、そしてみどり。

 四人の訴えかけるような眼差しに、ひとみは目をパチクリさせる。

ひとみ「あの……、どういうことなんでしょうか?」

勢地郎「(困ったような顔つきで)いや、だからね……」

ひとみ「何ですか!? テレビの番組かなんかですか? あ、じゃあ私もやってみたいな! 私、演劇部だったから、演技には自信あるんですよ~」

香須実「……あの、そうじゃなくてね、ひとみちゃん。……みんな、ホントの事なの、今言った事は」

ひとみ「え?」

香須実「日本には、魔化魍というバケモノが昔からたくさんいて、ヒビキさんや私達のような組織が全国で密かに戦ってるのよ。仕事としてね。……で、ある時明日夢君が、ヒビキさんが鬼になってバケモノと戦うところを偶然見ちゃったのね。それ以来、明日夢君もこの世界のことを色々知るようになっちゃって……。ウチでバイトし始めたのも、その手助けのためなの。……こないだのあきらクンの入院も、こういう事情なので誰にも言わなかったんだと思うのよね」

ひとみ「あ……」

 表情が一変するひとみ。

 しばらく沈黙……。

みどり「……ひとみちゃん?」

ひとみ「あの……、私、なんか頭がこんがらがっちゃって……。すみません、し、失礼します!」

 勢いよく立ち上がり、外へ出ていくひとみ。

香須実「ひとみちゃん!」

 後を追って外へ出ていく香須実。

 一同、しばし沈黙。

勢地郎「……やっぱり、ひとみちゃんには荷が重い話だったかなあ」

 深刻な表情の日菜佳とみどり。

 

《CM》

 

○河川敷の土手

 座り込んで虚ろな目のひとみ。

 香須実、後ろから静かに近付き、ひとみの隣に座る。

ひとみ「(振り向き)香須実さん」

香須実「……ゴメンね。びっくりさせちゃって」

ひとみ「いえ……」

 再びうつむくひとみ。

香須実「……普通じゃ考えられないもんね、バケモノ退治してるなんて。……明日夢君も、はじめは凄く驚いたと思うんだ。でも、ヒビキさんが、ありのままを見せるのが誠意なんだって、明日夢君に全部見せちゃったのよね。……あの時の私は、ヒビキさんの言ってる意味がよく分かんなかったんだけど、今はなんとなく分かるような気がするの」

 ひとみ、ゆっくりと香須実の方に首を向ける。

香須実「あの時、私、ヒビキさんに、明日夢君、高校落ちるよなんて言っちゃったんだよね。でも、そんなことなかった。……明日夢君、強かったんだ。……さすが、ひとみちゃんの見込んだ男の子だよね」

ひとみ「え……!?」

香須実「……あ~、いい天気だ~!」

 そう言って土手に寝っ転がる香須実。

 ひとみ、空を見上げる。

 青い空、白い雲。

 しばらく上を向いていたひとみ、香須実の方を向いて、

ひとみ「香須実さん! ……あの、ありがとうございました!」

香須実「え?」

ひとみ「あの、まだ、よく分かんないですけど……、これだけは……、これだけははっきり言えます。私……、皆さんのこと、大好きです!」

 香須実、安心したような笑顔で、

香須実「私も大好きよ、ひとみちゃん」

 二人で空を見上げる……。

 

○別の山の中腹

 ベースキャンプを張っているイブキとあきら。

あきら「……ノツゴって、そんなに強いんですか?」

イブキ「うん。十年に一度現れるかどうかっていう魔化魍なんだけど、記録によれば、外部からの音撃では倒せないってことらしいんだ。だから、飛び道具を持っている僕ら管の戦士が適任ってことになるんだね」

あきら「イブキさんにとっても、初めての経験なんですね?」

イブキ「そうだよ。だから不安もあるけど、今回は力強い味方もいるしね」

 そこへ、鈍色蛇が帰ってくる。

 ピョコンとイブキの方へ飛んで丸くなる鈍色蛇。

 それをキャッチして音笛で再生するイブキ。

イブキ「(ディスクを読み取って)……来たな! ……あきら! トウキさんとショウキさんに早く連絡を!」

あきら「はい! 分かりました!」

 携帯電話を取り出すあきら。

 イブキ、鈍色蛇とともに走り出す。

 走りながら音笛を吹くイブキ。

 音笛を額に持っていく。

 イブキの体を風が取り巻き、変身!

 風のように走る威吹鬼。

 そして、広く開けた平野部へと出る。

 すると、眼前に現れた、ノツゴ!

 

○高速のドライブイン

 車両の傍で休憩中のサバキと石割。

 サバキは車両にもたれて缶ジュースを飲んでいる。

 そして、石割は車両のバックラックを開けた状態で、ノートPCの画面を見つめている。

 しばし考え込み、慣れた手つきでPCのキーボードを叩く石割。

石割「……サバキさん」

サバキ「ん~?」

石割「シュキ……さんの行動パターンを分析すると、いかにも動物的なんですよね」

サバキ「どういうことだ?」

 サバキ、そう言って石割に近付く。

石割「概ね、本能で行動しているように窺えます。そして、この頭の上に伸びたもの、これは、触覚じゃないですかね?」

サバキ「むぅ……」

 モニターを覗き込むサバキ。

石割「もしそうだとすると、獲物の匂いを嗅ぎ分けて行動しているのかもしれません。……こないだ、ザンキさんが襲われましたよね?」

サバキ「……てことは、オイ!」

石割「(頷いて)浅間山、ですね」

 缶ジュースを飲み干して、缶をゴミ箱に放り投げるサバキ。

 そして、急いで助手席へと向かう。

 石割、静かにPCを閉じ、バックラックを閉めて、運転席へと向かう。

 

○凱火で走るヒビキ

 公道を走っていたヒビキ。

 ポケットの携帯電話が鳴ったのに気付いて、道の脇に凱火を停車させる。

ヒビキ「(電話に出て)もしもし。ああ、サバキさん。……はい。了解しました」

 電話を切るヒビキ。

 一つ溜め息をついて、空を見上げる。

 その表情は、何かに迷っているようだ。

 やがて、キリッとした表情に戻り、ヘルメットを被り直して、凱火を発車させるヒビキ。

 

○浅間山

 ヤマアラシの童子&姫と戦うトドロキとザンキ。

 ザンキの蹴りに吹っ飛んだ童子と姫を、トドロキが烈雷で突き刺していき、次々と粉砕!

 と、眼前に現れたヤマアラシ!

トドロキ「おし!」

 トドロキ、烈雷を地面に突き刺し、音錠を鳴らす。

 腕を額に持っていき、雷鳴が轟いてトドロキが鬼に変化!

 ヤマアラシに向かって走る轟鬼。

 素早い動きでヤマアラシに近付き、烈雷で斬りつける。

 そして、ヤマアラシの胴体に烈雷を突き刺す!

轟鬼「音撃斬・雷電激震!」

 ヤマアラシに伝道する轟鬼の音撃。

 そして、爆発!

 と、その爆煙の後ろに一つの影が……。シュキだ!

ザンキ「出やがったな」

 ザンキに襲いかかるシュキ。

 それを必死で振り払うザンキ。

轟鬼「あのヤロー、なんでザンキさんばっかつけ狙うんだよ!」

裁鬼「それは、ザンキの匂いを覚えてしまったからだろう」

 後方から裁鬼の声。

 そしてその後ろには響鬼の姿も。

轟鬼「裁鬼さん! 響鬼さん!」

裁鬼「トォーーッ!」

響鬼「ハッ!」

 ジャンプしてシュキに飛びつき、ザンキに加勢する裁鬼と響鬼。

 その攻撃で転がり倒れるシュキ。

 シュキを囲む裁鬼、響鬼、そして轟鬼。

裁鬼「今度は逃がさんぞ。……シュキ!」

 身構えるシュキ。

 ジリジリと近付く裁鬼と轟鬼。

 しかし何故か響鬼はその時、ジッと空を見つめていた……。

 

○三十七之巻 完

 

○エンディング曲『少年よ』

 

○次回予告

 浅間山で戦う裁鬼、響鬼、轟鬼。

裁鬼「……おい響鬼、どうした!?」

 ノツゴの前に勢揃いする管三人衆。

闘鬼「ノツゴとやんのは俺も初めてだが、なるほどこいつぁスゲェプレッシャーだな」

 たちばな地下で話し合う猛士の面々。

ヒビキ「俺たち鬼の使命は、人間を守る、ってことですよね」

 三十八之巻『迷える音撃』

 

○提供ナレーション 森絵梨佳


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