真・響鬼   作:三澤未命

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三十六之巻『飢える鬼』

○アバン・オープニング

明日夢N「鍛えて鬼になって人助けをする不思議な男の人、ヒビキさん。そして、イブキさんやトドロキさん。僕、安達明日夢の毎日は、そんな人たちと出会ったことで、変わってきました。色んなバケモノを退治する鬼の人たちですが、中には見たこともないのもいて大変そうです。天美さんも無事退院できて良かったのですが……」

 

○オープニング曲『輝』

 

○サブタイトル

 三十六之巻『飢える鬼』

 

○提供ナレーション 森絵梨佳

 

○謎の洋館

 机上の大きな箱の中をを覗き込む、和服姿の男。

男「フム。一体化は、そう難しいことじゃない、か」

 後ろから近付く和服姿の女。

女「課題はまだ残っているわ。今は時期尚早なんじゃない?」

男「しかし、そろそろ試さないとなあ」

 箱の中の何かを掴み、少し離れた位置に置きかえる男。

男「さーて、お手並み拝見といくか」

 ニヤリと笑う男。

 

○山の中腹

 童子&姫と戦う裁鬼。

 裁鬼、閻魔を振りかざすが、それをジャンプして避ける童子&姫。

 童子&姫、サッと顔の前で手をクロスさせて、怪童子、妖姫に変化!

 口元から、クワガタの角のような牙を見せている怪童子と妖姫。

裁鬼「コイツらは……」

 身構える裁鬼。

 襲いかかる怪童子と妖姫。

 鋭い牙を剥いて裁鬼に飛びかかるが、これを手で払いのける裁鬼。

 閻魔を持ち替えて、気合いを溜める。

裁鬼「……イヤァーーー!!」

 裁鬼、華麗な閻魔の動きで童子を粉砕!

 と、辺りの地面が突然揺れる!

 そして目の前に現れたのは、魔化魍・ノツゴ!

 裁鬼、大きなハサミを広げるノツゴを見上げて、

裁鬼「ノツゴか……、十年ぶりだな」

 そこへ、上空から突如一つの影が現れ、姫に襲いかかる!

裁鬼「……何だ!? また乱れ童子か!?」

 姫の首筋にかぶりつく謎の生物。

 ちゅるちゅると姫の体液を吸い込んでいき、やがて皮と骨だけになる姫。

 干物と化した姫の体をポイッと投げ捨てた謎の生物が、裁鬼の方を振り向く。

 裁鬼、その顔を見て、

裁鬼「……その顔、ちょっと待て! お前は、……シュキ!!」

 その瞬間、謎の生物は背中の翼を広げて空中へ飛び立つ。

 そして、しばらく旋回したかと思うと、どこかへ飛び去っていった……。

裁鬼「これは一体……」

 裁鬼が振り返ると、ノツゴの姿は既に消えていた。

石割「裁鬼さん!」

 裁鬼、声の方へ振り向く。

 石割が浅葱鷲を持って走り寄ってくる。

石割「急だったんで、うまく録れてるかどうか分かんないんですが……」

裁鬼「何!? 今のやつ、記録できたのか!? そいつはデカした! ……いや~、お前はホントに優秀なサポーターだよ」

 引き揚げていく二人。

 

○たちばな

 日曜日ということで、朝からバイトに来ている明日夢が机を拭いている。

 入口の扉が開き、イブキとあきらが入ってくる。

イブキ「おはようございます」

明日夢「あ、イブキさん! おはようございます! ……あ、天美さんも」

あきら「おはようございます」

イブキ「明日夢君、こないだはどうもありがとう」

明日夢「いえいえ、とんでもない!」

 奥から出てくる勢地郎と香須実。

勢地郎「やあイブキ君、早いね」

イブキ「おはようございます。いや、あきらがもう復帰したいと言うもんで、一応報告にと……」

勢地郎「(にこやかに)ああ、そう」

香須実「(不安げな表情で)大丈夫なの? あきらクン。もう少しゆっくりしてた方がいいんじゃない?」

イブキ「僕もそう言ったんですが、あきらがどうしてもって」

あきら「大丈夫です。……鍛えてますから」

 ヒビキの真似をして、シュッ!のポーズを取るあきら。

 一同、軽く笑う。

 と、入口の扉が開き、ひとみが入ってくる。

ひとみ「……おはよう……ございまぁす」

 少し遠慮気味に入ってくるひとみ。

勢地郎「やあ、ひとみちゃん。おはよう」

 会釈するひとみ。

イブキ「じゃ、僕たちはこれで」

香須実「あ、行ってらっしゃい!」

 香須実に向かって銃撃のポーズを決めるイブキ。

 そのまま、あきらとともに外へ出ようとするが、そこへひとみが声をかける。

ひとみ「……あの、天美さん」

あきら「(振り向いて)え?」

ひとみ「あの……、退院おめでとう。……その、私、入院してたなんて知らなかったもんだから……、ゴメンね、お見舞いも行けなくて……」

あきら「そんな、いいのよ。ありがとう」

 ひとみの微妙な表情を見て少し怪訝な顔つきのイブキ。

 あきらを促して、外へと出ていこうとする。

明日夢「頑張ってね、天美さん!」

 明日夢に手を振って出ていくあきら。

 それを見て、更に不安げな表情になるひとみ。

 その様子を見て直感した香須実が、

香須実「……ひとみちゃん! ね、まあ座って、お茶でもどう?」

 ひとみを席へ促がすが、

ひとみ「あ、いや……、やっぱり私いいです。失礼します!」

 そう言って慌しく外へ出ていってしまうひとみ。

 茫然とそれを見送る四人。

勢地郎「……明日夢君、ひとみちゃんと何かあったのかい?」

明日夢「いえ、別に何も……」

 不思議そうな表情の明日夢。

 それを見て考え込む香須実。

 

○サバキ車両の中&たちばな・地下作戦室

 専用車両で下山するサバキと石割。

 助手席のサバキが、勢地郎と携帯電話で通話中。

サバキ「……はい、そうなんです。あれは、確かにシュキの顔でした」

    ×   ×   ×

 画面、交互に勢地郎、サバキ。

勢地郎「何だって~? まさかそんな……、見間違いじゃないのかい?」

    ×   ×   ×

サバキ「いや、俺も最初はそう思ったんですが……、やっぱり、アイツの顔は忘れませんからねぇ」

    ×   ×   ×

勢地郎「ん~……、ま、とにかく、一度吉野に問い合わせておくよ」

    ×   ×   ×

サバキ「頼みます。……はい。とりあえず、そっちへ行きますんで」

 電話を切るサバキ。

石割「サバキさん、シュキって誰ですか?」

サバキ「ああ、お前には話してなかったっけな。……結構、ヘビーなんだよなあ」

 サバキの真剣な表情を見て、敢えてそれ以上は聞こうとしない石割。

 黙々と運転に徹する。

 

《CM》

 

○たちばな・居間&山中

 午後、居間で休憩をとっている香須実。

 机の上に置いてあった携帯電話が鳴る。

 慌てて取る香須実。

香須実「はい! ……ああ、イブキ君?」

    ×   ×   ×

 画面、交互にイブキ、香須実。

イブキ「ちょっと、気になることがあるんですけど……」

    ×   ×   ×

香須実「……ひとみちゃんのこと?」

    ×   ×   ×

イブキ「あ、よく分かりますね」

    ×   ×   ×

香須実「私もね、今朝からずっと気になってたのよ……」

    ×   ×   ×

イブキ「ひとみちゃん、あきらの事で、何か明日夢君のことを誤解しちゃってるのかなあって……」

 イブキの電話を気にしながらディスクのメンテナンスをするあきら。

    ×   ×   ×

香須実「明日夢君が、私たちに気を使って内緒にしてたのが、かえってマズかったみたいね……」

    ×   ×   ×

イブキ「そうみたいですねぇ……」

    ×   ×   ×

香須実「……ま、ここは女同士、私からうまく話しておくわよ!」

    ×   ×   ×

イブキ「よろしくお願いします。……じゃ」

 電話を切るイブキ。

 それを見守る心配そうなあきら。

あきら「すみません、私のために……」

イブキ「あきらのせいじゃないって。それより、無理しちゃダメだよ?」

あきら「はい、大丈夫です!」

    ×   ×   ×

 電話を切って、考え込む香須実。

香須実「……とは言ったものの、う~ん」

 そこへ、みどりが入ってくる。

みどり「どしたの? 考え込んじゃって」

香須実「あ、みどりさん。ん、実はね……」

 

○たちばな・地下作戦室

 勢地郎を中心に、ヒビキ、ザンキ、トドロキ、そしてサバキと石割がいる部屋の中。

 ディスクアニマルをドライブにセットする勢地郎。

 モニターに映像が映し出される。

 モニターを見る勢地郎。

勢地郎「う~ん、こりゃ確かに……」

 トドロキ、モニターを覗き込んで、

トドロキ「え、何なんですか? ……コレって、テングですよね、この体つき。でも、顔はなんか人間の男みたいな……」

サバキ「シュキだ」

ヒビキ「シュキって、まさかあの……」

ザンキ「十五年前に殺人事件起こして懲戒になった、あのシュキか?」

トドロキ「さ、殺人って……!! 何ですかソレ!?」

 思わず大声を出すトドロキ。

 そして、冷静な中にも驚嘆の色を隠せない石割。

サバキ「シュキは、俺と同じ時期に修行していたヤツでな、元々優れた素質でトントン拍子に鬼になっていったんだ。しかしそれは、家族を殺した奴に復讐するためだったんだな」

トドロキ「何ですって!?」

サバキ「シュキは、中学生の時に交通事故で妹を亡くしたんだが、その時の加害者をどうしても許せなかったんだ。もちろん、そいつに法の裁きは下されたが、シュキとしては納得できなかった」

石割「何故です?」

サバキ「(少し考え込んで)現場で、警官に対しては従順な態度だった加害者が、警官が後ろを向いた瞬間に、冷たい表情で道路に転がった妹のカバンに唾を吐きかけたというんだな」

トドロキ「……ひでぇ」

サバキ「でも、その時はアイツは何も言わなかった。だから、後の事件が起こるまでは誰にも分からなかったんだ」

トドロキ「……で、鬼の力を使ってソイツに復讐したってわけですか?」

石割「でも、そういう気持ちを持ってしまうと、鬼の力は消滅してしまうと聞きましたが?」

サバキ「そうだ。だからシュキは、自らの復讐心を心の底に閉じ込めて修行を積み、鬼としての段位者となった途端、復讐を実行に移した。……もちろん、その瞬間に鬼としての能力は消滅してしまったので、実際に殺人を実行したのは、音撃弦の刃なんだが……」

ヒビキ「音撃弦を、凶器として人間に使っちまったってわけか」

 トドロキ、バンと机を叩いて、

トドロキ「許せないッスね!」

勢地郎「そう。だから弦の戦士ってのは、直接凶器になる武器を持つって意味で、人格者としての資質も問われる重要なポストなんだ」

トドロキ「重要なポスト……」

ザンキ「お前はまだまだ修行が必要だ」

 ザンキの言葉に小さくなるトドロキ。

ヒビキ「しかし、その後シュキは、本部に拘留されているはずでは?」

勢地郎「それなんだがねぇ。当時、事件の方は吉野の圧力で世間的には表沙汰になることはなく、シュキの身柄についても、本部の限られた人間にその更生を任されたと聞いているんだ。さっき、サバキ君からの電話の後、吉野に問い合わせてみたんだが……」

サバキ「すると?」

勢地郎「シュキは、確かに吉野に拘留されているというんだ」

トドロキ「どういうことですか?」

勢地郎「分からない。分からないが、吉野の予測ではもしかすると…………だろう、と」

 一層真剣な表情になるヒビキ、ザンキ、サバキ。

勢地郎「とにかく、みんなで協力して調査してくれ。通常業務に加えての調査で大変だろうが、ひとつよろしく頼むよ」

 

○同・店頭

 忙しく動き回る日菜佳と明日夢。

 それを奥から覗き込む香須実とみどり。

 

○同・居間

 香須実とみどり、再び居間に戻って、

香須実「……これ以上、ひとみちゃんに猛士のことを隠しておくのは、ちょっと不自然かもね」

みどり「何だかんだ言って、明日夢君を巻き込んじゃったのも私たちの責任だもんね。それに、トドロキ君の方もよく話しづらそうにしてるもんねぇ……」

香須実「うん。……何にしても、明日夢君に対する誤解は問題よ、女としては!」

 顔を見合わせ、互いに頷き合う二人。

 

○謎の洋館

 空から洋館の裏庭に着地するシュキ。

 そこに、黒クグツと白クグツが現れる。

 黒クグツと白クグツを威嚇するシュキ。

 構わず、シュキに向かって同時に手をかざす黒クグツと白クグツ。

シュキ「シャーーーーッ!」

 不気味な妖気が、シュキの周りを囲む。

 そして、苦しそうに頭を抱えるシュキ。

 やがて力を失い、その場に倒れ込んでいく。

 シュキの体を抱えて、ゆっくりと洋館の中へ入っていく黒クグツと白クグツ。

 落ち葉が舞い散る洋館の裏庭に、不気味な余韻が残る……。

 

○三十六之巻 完

 

○エンディング曲『少年よ』

 

○次回予告

 たちばな地下で話す勢地郎とヒビキ。

ヒビキ「シュキって人は、もう人間じゃないと考えていいもんなんでしょうかねぇ」

 河川敷の土手で話す香須実とひとみ。

香須実「ゴメンね、びっくりさせちゃって」

 山中でキャンプ中のイブキとあきら。

あきら「……ノツゴって、そんなに強いんですか?」

 三十七之巻『甦る修羅』

 

○提供ナレーション 森絵梨佳


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