○アバン・オープニング
明日夢N「鍛えて鬼になって人助けをする不思議な男の人、ヒビキさん。そして、イブキさんやトドロキさん。僕、安達明日夢の毎日は、そんな人たちと出会ったことで、変わってきました。自分の目指す道に悩む今日この頃、努さんや持田の言葉に色々と考えてしまう僕ですが、鬼の人たちにも色々と悩みがあるようで……」
○オープニング曲『輝』
○サブタイトル
四十五之巻『散渦する妖魔』
○提供ナレーション 秋山奈々
○熊谷近辺の林
林の手前で停車する、竜巻、不知火、そして雷神。
竜巻から降りるイブキ。
そして、不知火からヒビキとフブキ、雷神からトドロキが降りてくる。
ヒビキ「ん~、確か、この辺だと思ったんだが……」
ヒビキが木の上を見上げると、その背後から小さな塊が飛び出す!
フブキ「危ない!」
フブキ、手首のバンドから手裏剣のようなものを素早く取り出して投げる!
ヒビキの背中を襲わんとしていた塊にバシッと当たる!
奇声とともに方向を変えて飛んでいき、木の枝に止まる小さな影。
オンモラキだ!
イブキが鬼笛を吹いて、額へと持っていく。
疾風がイブキの体を包み、変身!
威吹鬼、烈風でオンモラキに向かって射撃を開始!
しかし、予測のつかない不自然な動きで難なくこれをかわしていくオンモラキ。
フブキ「動きを止めなくては……」
鬼笛を吹き、額へと持っていくフブキ。
体中を吹雪が包み込み、フブキが鬼に変化!
音撃管に麻酔針をセットして狙いを定める吹雪鬼。
しかし、その変幻自在な動きに照準が定まらない。
ヒビキ「いかんな……。トドロキ! 何とか足止めするぞ!」
トドロキ「はい!」
ヒビキが音角を響かせて額へと持っていく。
そして、トドロキも音錠を鳴らせて額へと持っていく。
二人が同時に変身!
響鬼、轟鬼の二人がジャンプして木に飛びつき、オンモラキの行く手を塞ぐ。
威吹鬼と吹雪鬼、なおも射撃・吹射するが、やはり捕らえることができない。
轟鬼「よおっし!」
轟鬼、木から木へ飛び移りながら、その枝という枝を烈雷で次から次へと斬り落としていく!
着地場所を失ってバタバタと飛び回るオンモラキ。
響鬼、そのオンモラキめがけて、口から火炎を連続噴射!
逃げ回るオンモラキ。
しかし、何度目かの火炎噴射がオンモラキの片方の翼をかすめる。
燃え上がる片翼!
威吹鬼「よし! バランスを崩したな」
威吹鬼、オンモラキに向かって烈風で射撃!
飛行能力が低下したオンモラキに、鬼石が見事に命中!
そして威吹鬼は、烈風に鳴風を取り付けてひと吹き!
疾風一閃の音色が響き渡る!
オンモラキの体を伝う波動!
そして……、爆発!!
顔の変身を解く四人。
トドロキ「お疲れ様ッス!」
ヒビキ「いや~、とんだ道草だったなあ」
イブキ「じゃ、目的地へ急ぎましょう!」
それぞれのマシンへと向かう四人。
と、ヒビキの後ろからフブキが声をかける。
フブキ「ヒビキ君。あなた、私が着替えるまで外で待っていなさいよ」
ヒビキ「……ハイハイ」
緊張した中で、少しだけ笑みを浮かべるイブキであった。
○たちばな・地下研究室
音撃管を持って、標的に狙いを定めるバンキ。
それを見守るみどり。
バンキ、標的に向かって鬼石を発射。
標的に命中する鬼石。
そして、ジッとモニターを見つめるみどり。
みどり「……OK! 成功よ!」
バンキ「やりましたね」
みどり「でも、今は一つ作るのが精一杯ね。……慎重に使ってもらわないと」
そう言って完成した銃弾を見つめ、ガトリングケースに収納するみどり。
バンキ「まあ、その辺は、イブキなら大丈夫でしょ」
みどり「イブキ君の腕もなんだけど、あきらクンの体が耐えられるかどうか……」
バンキ、音撃管を仕舞いながら、
バンキ「成功すれば、魔化魍の核を追い出すことは出来るはず。でも……」
みどり「……賭ける、しかないのよね」
真剣な表情のみどり。
バンキ、少し微笑んで、
バンキ「人生、結局全てにおいて『賭け』ですよ、みどりさん」
ケースを握り締めて祈るみどり。
みどり「……すぐに本部のヘリを呼ぶわ。バンキ君も支度を!」
バンキ「(真剣な表情に戻って)了解!」
○謎の洋館
暗い部屋のベッドで眠っているあきら。
多量の汗をかいている。
あきらの頭の中で、イブキの声がこだまする。
イブキ「あきら! あきら! 目を覚ますんだ! ……あきら!!」
ガバッと上半身を起こすあきら。
真っ黒な自分の手を見てギョッと驚く。
一時的に自我が甦っている様子。
周りをキョロキョロと見回し、幽閉されていることを自覚するあきら。
腰から鬼笛を抜き、静かに吹く。
ディスクアニマルが起動し、ベッドの周りを飛び跳ねる。
しかし、ここで激しい頭痛に襲われ、頭を抱えて下を向くあきら。
あきら「うっ……!!」
部屋の扉が開き、入ってくる和服姿の男女。
男、あきらに近付き、
男「……どうした?」
あきら、ゆっくりと顔を上げ、黄色い瞳をギラつかせる。
あきら「ナンデモナイ。コノカラダハ、モウワレノモノ……」
立ち上がるあきら。
その周りをディスクアニマル達がうろうろと動く。
そして光る、黄赤獅子のレンズ眼……。
○渋川へと向かう道
疾走する竜巻、不知火、そして雷神。
竜巻のメーター横に取り付けてある、小型電波受像機のスイッチが入る。
その画面にうっすらと映し出される、あきらの姿。
イブキ「あ、あきら……!!」
装置で位置を確認するイブキ。
イブキ「やはり渋川か。……こっちの方角だな!」
大きく左にカーブする竜巻。
そしてスピードを上げる。
○雷神の中
トドロキ、イブキがスピードを上げたのを見て、
トドロキ「おっ!」
○不知火の中
ヒビキ、前を行く竜巻を見つめながら、
ヒビキ「……いよいよ勝負だな」
× × ×
さらにスピードアップして疾走していく竜巻、不知火、そして雷神。
○たちばな・地下作戦室
地図を見ながら電話中の勢地郎。
傍らにはみどり、そして準備万端のバンキ。
勢地郎「……渋川の……、ふん、……この辺りだな。分かった、すぐバンキ君を向かわせるよ」
勢地郎、電話を切って、PCのキーボードを叩く。
プリンターから地図がプリントアウトされ、それを取ってバンキに渡す勢地郎。
勢地郎「頼んだよ」
バンキ「了解!」
階段を駆け上がるバンキ。
みどり「気を付けてね!」
後ろ向きに、手でみどりにポーズを送るバンキ。
《CM》
○たちばな・店舗前
『臨時休業』と書いた紙を入口の扉に貼る日菜佳。
そこへ、明日夢とひとみがやってくる。
明日夢「……日菜佳さん!」
日菜佳「(振り向いて)あ、明日夢君、ひとみちゃん!」
ひとみ「どうしたんですか?」
日菜佳「あ……、うん。……ま、まあ、とにかく入って、二人とも!」
顔を見合わせる明日夢とひとみ。
日菜佳、扉を開けて中に入る。
その後ろに続く明日夢とひとみ。
○同・店頭
日菜佳、明日夢、ひとみが中に入ると、香須実とみどりが、座って両手を合わせて祈っている。
日菜佳「あ、姉上……」
顔を上げる香須実、明日夢とひとみに気付いて、
香須実「あ、いらっしゃい。……ああ、バイト休みって言ってなかったわね、ごめんなさい」
明日夢「え? 休みですか……」
香須実「……あきらクンが助かるまでは、もうお店どころじゃなくってねぇ」
明日夢「そうですか。……で、今は?」
日菜佳「居場所が分かったので、イブキさん達四人で救出に向かったところなんです」
そう言って、店頭の奥に歩いていき、神棚に向かってパンパンと手を叩いて拝む日菜佳。
日菜佳「神サマ……!!」
必死に祈る日菜佳。
明日夢、そんな日菜佳の姿を見て、思わず拳を握り締める。
その明日夢の様子を見て、別の意味での不安を感じてしまうひとみ……。
○謎の洋館前の林
木の陰から建物を見上げるイブキ。
その傍らにはフブキ。
イブキ「ここか……」
後ろから、ヒビキとトドロキが歩いてくる。
ヒビキ「イブキ」
振り返るイブキ。
ヒビキ「ホラよ」
小さなガトリングケースをイブキに放り渡すヒビキ。
ヒビキ「バンキからだ。一発しかないから、よく狙って撃てとさ。……向こうの山で待機している」
イブキ、ガトリングケースをジッと見つめる。
そして、それを固く握り締めてポケットに入れる。
トドロキ「……しっかし、気味悪いところですねぇ。町外れに、ポツンとこんな洋館があるなんて……」
ヒビキ「踏み込むか?」
イブキ「まずは様子を……」
そう言って烈風を構えるイブキ。
と、そこへ現れた二つの影!
ゴズキとメズキだ!
二匹は、槍を大きく振りかぶって突進してくる!
回転してかわした四人が、同時に変身動作に入る!
○謎の洋館
洋館の二階にいた和服姿の男、何かの気配を察知して窓の方を振り返る。
男「……何だ!?」
窓から外を覗く男。
そこには響鬼たちの戦う姿が!
男「な、なぜここが……!?」
部屋の中央に振り向く男。
そこには無表情に佇むあきらの姿が。
周りにはディスクアニマル達。
男は、そのディスクアニマルをマジマジと見つめる。
男の目がキラッと光り、その瞬間、黄赤獅子のレンズ眼がバチッという音とともに破壊された。
怒りの表情となって、黄赤獅子に向けてサッと手を出す男。
瞬間、煙に包まれて消滅する黄赤獅子。
男「……鬼めェ! こしゃくなぁぁぁ!」
体を震わせる男。
あきら「ワレガ……」
フワッと浮き上がるあきらの体。
そして、そのまま壁をすり抜けて響鬼たちが戦っているところへと飛んでいく!
○謎の洋館前の林
ゴズキ&メズキに苦戦する響鬼たち。
四人が代わる代わる飛びかかるも、大きな槍で吹っ飛ばされる。
と、そこへ上空より現れたあきら!
威吹鬼、その姿に気付いて空を見上げ、
威吹鬼「……あきら!」
尻餅をついている響鬼と轟鬼も、立ち上がりながらあきらの方を見る。
響鬼「あきら……」
轟鬼「あきらクン!」
宙に浮いたままのあきら、ゆっくりと手を広げ、
あきら「ワレハアメヒメ……、ジャマモノニハ……、シヲ」
その瞬間、周囲の木の枝が何本もボキボキッと折れて、猛スピードで威吹鬼に向かって飛んでいく。
鋼鉄と化した木の枝が、次々と威吹鬼に突き刺さる!
威吹鬼「うっ……!!」
威吹鬼、傷を受けながらも、あきらに向かって叫ぶ。
威吹鬼「あきら! 目を覚ますんだ! ……思い出すんだ! 僕たちの絆を!!」
ピクッと反応するあきら。
しかし、すぐに元の夜叉のような顔つきに戻る。
なおも襲いかかる鋼鉄の木の枝。
響鬼、轟鬼、吹雪鬼の方へも次々と飛んでいく。
それを手で払いのけていく三人。
威吹鬼、鋼鉄の枝に襲われながら烈風に新しい鬼石を込めて、覚悟を決めた様相で、
威吹鬼「……あきら! 僕たちの……、僕たちの修行は、まだ終わっちゃいないんだあああああああああああ!!」
引き金を引く威吹鬼。
そして、勢い良く烈風から発射される魂の鬼石!
まっすぐ延びたその銃弾があきらの胸元に命中!
激しい衝動で後ろに吹っ飛ぶあきら!
そして、倒れたあきらの胸元を中心に、ゆっくりと波紋が広がっていく!
あきらの中のアメヒメ「ナンダ、コノカンカクハ……!? コノ、オゾマシイカンカクハ……!!」
波紋は、あきらの体全体に伝道する。
反魔化魍エキスとも言うべき、超常能力を無力化させる力が、あきらの体に充満する!
あきらの中のアメヒメ「ウ……、ウワアアアアアアッ!!」
あきらの胸元からポーンと飛び出すアメヒメの核!
コロコロと転がって、ムックリと立ち上がる。
それは、顔面だけの体から小さな手足が生えた、ドス黒く醜い姿の魔化魍であった。
威吹鬼、烈風に鳴風をセットして構え、渾身の力で吹き鳴らす!!
響き渡る疾風一閃の音色!
アメヒメの体全体にその波動が充満していく!
アメヒメ「ウギャーーーーーッ!!」
激しく雄叫びを上げるアメヒメ。
そして……、爆発!!
× × ×
爆煙が止むと、そこにはグッタリと横たわる血だらけのあきらの姿が……。
威吹鬼「……あ、あきらーーーっ!!」
威吹鬼、あきらの下へ走り寄る!
吹雪鬼「フム……」
事態を察知した吹雪鬼が腕をサッとひと振りすると、辺り一面が凄まじい吹雪に覆われた!
ひるむゴズキとメズキ。
その中を、素早く走り抜けていく響鬼、轟鬼、吹雪鬼、そしてあきらを抱えた威吹鬼!
吹雪が止んだその後には、戸惑うゴズキとメズキだけが取り残されていた……。
○山中の待機場所
本部のヘリコプターの前で手を振るバンキ。
バンキ「こっちだ! ……早く!」
顔の変身を解いたヒビキ、トドロキ、フブキ、そしてあきらを抱えたイブキが走ってくる。
イブキ、あきらを抱えたままヘリに乗り込む。
その後ろからバンキも乗り込み、閉じられるヘリの扉。
○本部ヘリの中
ストレッチャーに寝かされるあきら。
バンキ「……物凄い出血だ。本部までもつだろうか……」
イブキ「あきら……」
イブキ、あきらの頭を抱きしめる。
あきらの目がゆっくりと開く。
あきら「イ……、イブキ……さん……」
イブキ「あ、あきら! ……しっかりするんだ! あきら!!」
あきら「ううっ……」
再び意識を失うあきら。
医療スタッフ「イブキさん! とりあえず応急処置を……!!」
イブキ、医療スタッフにあきらの身を委ねる。
○山中の待機場所
地上では、飛び立っていくヘリをヒビキ達が見上げている。
トドロキ「……あきらクン、助かるんでしょうか……」
ヒビキ「助かるさ。……師弟の絆ってモンはな、そんなに弱いもんじゃあない」
ヒビキ、トドロキ、フブキの三人が、あきらの無事を祈りながら上空を見上げ続ける……。
○四十五之巻 完
○エンディング曲『少年よ』
○次回予告
吉野本部で待機するイブキとバンキ。
バンキ「信じるんだ、医療スタッフの力を、あきらの精神力を」
謎の洋館で話す和服姿の男と女。
男「迂闊だったな……、まさか奴らに謀られるとは……」
たちばな地下で話す猛の面々。
ヒビキ「ま、データがない以上、とりあえず当たってみないことには何とも言えないですね」
四十六之巻『探る鬼道』
○提供ナレーション 秋山奈々