真・響鬼   作:三澤未命

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四十二之巻『猛る戦士』

○アバン・オープニング

明日夢N「鍛えて鬼になって人助けをする不思議な男の人、ヒビキさん。そして、イブキさんやトドロキさん。僕、安達明日夢の毎日は、そんな人たちと出会ったことで、変わってきました。見たこともないバケモノが次々と現れる中、鬼の人たちにも怪我人が増えてきました。やはりこれは、命を懸けた大変な仕事なのです……」

 

○オープニング曲『輝』

 

○サブタイトル

 四十二之巻『猛る戦士』

 

○提供ナレーション 伊藤慎

 

○たちばな・地下作戦室

 机を囲んだまま沈黙している勢地郎、ヒビキ、イブキ、トドロキ、香須実。

トドロキ「……とにかく、ジッとしていても何も始まらないッスよ!」

ヒビキ「確かに、トドロキの言う通りだな。狙われているのが俺たち自身というのは不幸中の幸い。こっちから打って出れば、向こうも現れてくれるさ」

勢地郎「……よし! じゃ、イブキ君とトドロキ君で、この長野と群馬の県境付近を探索してくれ。奴らの拠点があるとすれば、君たちならきっと何か感じ取れるはずだ」

トドロキ「はい!」

イブキ「……分かりました」

勢地郎「オンモラキの方は、もう少しダンキ君とショウキ君に粘ってもらうとして、ドドメキ退治には……」

みどり「コレが有効よ」

 いつの間にか後方に立っていたみどり。

 小さな筒とともに、針のようなものを手に数本持っている。

ヒビキ「おっ、新しい武器か? しかし、その形は……」

みどり「使い手は、関東には一人しかいないわよね」

勢地郎「……しかし、彼女はまだウィーンにいるはずじゃあ?」

みどり「さっき帰国したって連絡があったんです。……ヒビキ君、止めを刺すのは、君よ」

 ヒビキ、立ち上がって、

ヒビキ「よーし! 待ってろよ~、気持ちワリー奴め!」

 ヒビキ、イブキ、トドロキが、それぞれ出発せんと階段へ向かう。

勢地郎「イブキ君」

 振り返るイブキ。

勢地郎「あきらを、頼んだよ」

イブキ「……はい!」

 一層真剣な目つきになり、階段を駆け上がるイブキ。

 ヒビキとトドロキも、頷き合ってその後に続く。

 

○同・店舗前

 下校して、バイトにやって来た明日夢とひとみ。

 たちばなの前で自転車を停めて、話ながら下りる。

ひとみ「昨日の応援も、バッチリ決まってたよね~」

明日夢「そう?」

ひとみ「うん、いい感じ!」

 自転車からカバンを取って、入口の扉を開けて中に入る明日夢とひとみ。

 

○同・店頭

明日夢「こんにちは~」

 二人が中に入るも誰もいない。

 明日夢、不思議そうな表情で奥へと入っていく。

明日夢「……こんにち……は……」

 地下から上がってくる日菜佳。

日菜佳「ああ、明日夢君、ご苦労様~!」

 何やら汗だくの様子。

明日夢「……なんか、忙しそうですね」

日菜佳「そ……、そうなのよ~。ちょっと色々あってねぇ。だから、しばらく二人に任せることが多くなると思うけど……」

明日夢「あ、任しといてくださいよ!」

 ニッコリする日菜佳。

日菜佳「じゃ、頼みマス!」

 慌しく地下へと下りていく日菜佳。

ひとみ「なんか、大変そうね……」

明日夢「うん……」

ひとみ「天美さん、今日も学校来なかったけど……、お仕事、忙しいんだね」

明日夢「そうみたいだね」

ひとみ「……じゃ、あたし先に着替えてくるね!」

明日夢「あ、ああ」

 居間へ入っていくひとみ。

 と、そこにお客さんが入ってくる。

 明日夢、振り返り、

明日夢「あ、いらっしゃいませ!」

 

○謎の洋館

 妖しい風が吹きすさぶ洋館。

 暗い廊下を歩く和服姿の男女。

 無言で、突き当りを曲がって、そのまま階段を下りていく。

 と、一階のある一室のドアの前に立ち、ゆっくりとそのノブを回す。

 男女が部屋に入る。

 中央のベッドには、あきらが横たわり、静かに眠っている。

 男女は、静かにあきらの傍に歩み寄り、その顔を覗き込む。

 男、ニヤリと笑い、サッと手をベッドの横に出して掌を広げる。

 と、床がモコモコッと盛り上がり、そこに黒クグツが出現。

 黒クグツ、あきらの体に近付き、ゆっくりと手をかざす。

 不気味な邪気があきらの体を包む。

 その様子を見つめる男女。

女「もう少し、時間がかかりそうね」

男「鬼の修行をしているということは、細胞変化への順応性も高いはずだ。すぐに馴染むだろう」

女「それまではずっと?」

男「いや、このコは奴らへのいい牽制にもなる。この時点でも使い道はあるさ」

 あきらの体から手を離す黒クグツ。

 パチッと目を開けるあきら。

 その瞳の色は、鮮やかな黄色に変わっている。

 あきら、ゆっくりと起き上がる。

 そしてベッドから降り、鬼笛を腰からはずして口元へ。

 静かに鬼笛を吹くあきら。

 すると、腰にぶら下げていたディスクアニマル達が飛び出してアニマル化し、あきらの周りで飛び跳ねる。

 その光景を見て、頷きながら不敵な笑みを浮かべる男女。

 

○県境へと向かう道

 あきら救出のため、敵の拠点探索に向かうイブキの竜巻とトドロキの雷神。

 と、その前方に一台のバイクが立ちはだかる。

 停車する竜巻と雷神。

 前のバイクから降りた男がヘルメットを脱ぐ。

バイクの男「水くさいねぇ、イブキったら」

イブキ「バンキさん!」

 トドロキ、雷神の窓から顔を出して、

トドロキ「バンキさぁん!」

 トドロキに軽く会釈するバンキ。

 そして、再びイブキの方を向き直り、

バンキ「あきらは、イブキの弟子かもしれないけど、俺にとってもかけがえのない友達なんだよねぇ」

イブキ「バンキさん……」

 バンキ、ニッコリ笑って、

バンキ「……さて、急ぎましょ!」

 ヘルメットを被ってバイクにまたがるバンキ。

イブキ「……よし!」

 三台のマシンが唸りを上げて、いざ出発する。

 

《CM》

 

○松原湖

 テントの前で、一人自らの手当てをするゴウキ。

 腕、足など数箇所に包帯を巻いている。

 そこへ不知火が走り寄り、テントの近くに停車。

 中から、ヒビキ、香須実、みどりが出てくる。

ヒビキ「ゴウキ! 大丈夫か?」

ゴウキ「ええ……、何とか」

 ヒビキ、香須実、みどりがゴウキの近くに歩み寄る。

香須実「……あ、お手伝いします!」

 香須実、しゃがんでゴウキの手から包帯を取り、腕に巻いてやる。

ゴウキ「あ、すいません」

ヒビキ「……で、あれから何度出た?」

ゴウキ「二回です」

ヒビキ「バチでは厳しいか?」

ゴウキ「いえ、効果はありそうですよ。……ただ、脱皮されないように表と裏から同時に攻める必要アリ、ですね」

ヒビキ「よ~し! ほんじゃあ、一丁タッグ組むか!」

ゴウキ「しかし、あの目が……」

みどり「大丈夫! もうすぐ着くはずよ」

 不思議そうな表情で、みどりを見るゴウキ。

 その時!

 湖から奇声とともにドドメキが出現!

ヒビキ「出やがったな」

ゴウキ「えらく周期が早いな」

ヒビキ「俺たちの匂いを嗅ぎ取ったってことだな。……行くぞ!」

 音角を鳴らして額へ持っていくヒビキ。

 ゴウキも立ち上がり、同じように音角を鳴らして額へと。

 二人の額に紋章が浮き上がり、炎に包まれて鬼に変化!

 みどり、前を行く二人を止めて、

みどり「待って! まだ……」

女の声「私なら、もういるわよ」

 前方の丘の上からの声。

 そこには、白ベースの風貌をした管の戦士が立っていた。

 関東支部の紅一点・吹雪鬼だ!

吹雪鬼「みどりさん、アレを」

みどり「OK!」

 持っていた小さな筒を、吹雪鬼に向かって投げるみどり。

 吹雪鬼、それをキャッチして、中から数本の針を取り出し、フルート型の音撃管にセットする。

吹雪鬼「いきます」

 吹雪鬼、丘から飛び立ってドドメキに立ち向かう。

 ピカッと光るドドメキの目!

 しかし、フッと吹いた吹雪鬼の息が、手元で氷のバリアとなり、その光をはね返す!

 吹雪鬼、音撃管を縦笛のように持ち替えて口元へ。

 そして、吹き矢の如く鬼針を発射!

 ドドメキに突き刺さる鬼針!

 さらに、ドドメキの周りをジャンプ移動しながら鬼針を吹き放つ吹雪鬼。

 次々とドドメキに突き刺さる鬼針!

 そして立ち止まった吹雪鬼、音撃管にベルトの音撃鳴を取り付け、麗麗とフルートを奏でる!

 反応する鬼針。

 ドドメキの全身にその波動が響き渡り、無数の目が静かに閉じ始める。

 鈍い奇声とともに、全ての目を閉じてしまったドドメキ。

 どうやら、麻酔効果のある鬼針だったようだ。

吹雪鬼「余計な目は瞑らせる、単純明快ね。……響鬼君、よろしくてよ」

 響鬼、あきれたような仕草で、

響鬼「……相変らずお高いこって。……剛鬼!」

剛鬼「了解!」

 動きが止まったドドメキの背中に飛び乗る響鬼。

 そして、剛鬼は腹元へと潜り込む。

 響鬼、剛鬼、ともに音撃鼓をドドメキに取り付ける。

 広がる二つの音撃鼓。

響鬼「爆裂強打!」

剛鬼「爆裂乱打!」

 勢いよく鼓を叩き始める響鬼と剛鬼。

 二人の音撃打の振動がドドメキの体に響き渡る!

 そして、全身に伝道するその力!

響鬼「ハァッ!!」

剛鬼「イョッ!!」

 最後の一打を決め、ドドメキはついに爆発!!

響鬼「フゥ……」

 烈火で肩を叩いて溜め息をつく響鬼。

 響鬼、剛鬼、顔の変身を解きながらテントに戻ってくる。

香須実「ご苦労様!」

ヒビキ「おう! ……あれ? フブキさんは?」

みどり「(辺りをキョロキョロと見渡して)あ、もういない」

ヒビキ「……まさに神出鬼没だな」

ゴウキ「ああいう女(ひと)は、……苦手ですね」

 そう言って、そそくさとテントに入っていくゴウキ。

 それを見て、思わず吹き出す香須実とみどり。

 

○とある病院・病室

 入院しているサバキ。

 ベッドに横たわり、ボーッと窓の外を眺めている。

 と、ドアをノックする音が。

サバキ「(体をドアの方に傾け)んん?」

 ドアが開き、石割が顔を覗かせる。

石割「お加減、いかがですか?」

 笑顔で病室に入ってくる石割。

サバキ「おお、……まあまあだな」

 石割、サバキのベッドの横に座り、

石割「いい機会だから、ゆっくり休んでくださいね」

サバキ「そういうわけにはイカン! 早く復帰して、闇の鬼とやらを退治せんとな、ウン」

 真剣な表情で頷くサバキ。

 それを見て微笑む石割。

石割「そう言えば、フブキさんが帰ってきたらしいですよ」

サバキ「何!? ……アイツめ、フラフラしやがって、一体どういうつもりだ」

石割「フフ……、僕は、フブキさんのような生き方も面白いと思いますけどね」

サバキ「お前は寛大だな。俺には分からん」

 天井に向き直るサバキ。

 しばらくの沈黙の後、

サバキ「……石割」

石割「はい?」

サバキ「お前、やっぱり変身検定受ける気にはならんか?」

石割「そうですねぇ……、はい」

サバキ「お前ほどの実力がありゃあ、きっといい鬼になると思うんだがなあ……。せっかく序の六段までいったってにのに、もったいないとは思わんのか?」

石割「そうですね……」

サバキ「去年、戸田山が検定受かった時、みんなお前だと思ってたらしいぞ?」

 うつむいて笑顔のままの石割。

サバキ「……ま、お前の人生なんだから、いいんだけどよ」

 そう言って、目を瞑るサバキ。

 石割、ちょっと考えた後、

石割「……僕は、やっぱり研究者の道を進みたいんですよね。ですので、ここから先は『銀』の段位に移るつもりです」

 サバキ、思わず体を起こして、

サバキ「じゃあ、最初から『銀』のコースでいっときゃ良かったじゃないか! ……そしたら、今頃どっかの研究室任されてんぞ!?」

石割「(軽く首を横に振りながら)そんなこと……。僕はね、サバキさん。現場を知ってる研究者になりたいんですよ。ディスクアニマルの開発一つにしても、現場の空気を体感しているのとしてないのとでは、やっぱり違うと思うんですよね。そのためには、ちょっと遠回りだったかもしれないですけど、鬼の道を一旦経験するのが一番かなあって……」

サバキ「石割……」

石割「サバキさんにとっちゃあ、鬼になる気のないサポーターなんて、迷惑な話かもしれませんね。……すいません」

 頭を下げる石割。

 石割の話を、真剣な顔で聞いていたサバキ、ゆっくりと窓の方へ体を傾けて、

サバキ「……謝るコタァねえ。お前は、俺の自慢の弟子なんだからよ」

 背中で語るサバキ。

 それを見て、ニッコリと微笑む石割。

 

○日光のとある寺

 小屋の中で武器の手入れをしているダンキとショウキ。

ショウキ「……俺たち、ホントにここにいていいんスかねぇ」

ダンキ「ええ?」

ショウキ「オンモラキのヤツ、秩父の方にも出たって言うし」

ダンキ「今はここが担当なんだから、いいんじゃねーの? それよりも、ヤツが出た時のために、合体技考えとかなきゃな!」

ショウキ「合体? ああ、コンビネーションプレイね、ハイハイ」

ダンキ「お前がこう撃ったらだな……、俺がこうして……」

 セカセカと音撃の仕草を見せるダンキ。

ショウキ「いや、そこは俺がこう撃ってからですねぇ……」

 ダンキとショウキ、イメージトレーニングに余念がない二人であった。

 

○四十二之巻 完

 

○エンディング曲『少年よ』

 

○次回予告

 拠点探索をするトドロキとバンキ。

バンキ「ザンキさんの具合、どうですか?」

 たちばなでバイト中の明日夢とひとみ。

努「やあ、久しぶりだね」

 あきらと対峙するイブキ。

イブキ「あ、あきら! ……僕が、僕が分からないのか!?」

 四十三之巻『変わりゆく身』

 

○提供ナレーション 伊藤慎


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