真・響鬼   作:三澤未命

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四十一之巻『目醒める闇』

○アバン・オープニング

明日夢N「鍛えて鬼になって人助けをする不思議な男の人、ヒビキさん。そして、イブキさんやトドロキさん。僕、安達明日夢の毎日は、そんな人たちと出会ったことで、変わってきました。持田も僕と一緒にたちばなでバイトすることになって、ますます鬼の人たちの手助けに張り切ってきましたが、最近変わったバケモノが出るようで……」

 

○オープニング曲『輝』

 

○サブタイトル

 四十一之巻『目醒める闇』

 

○提供ナレーション 下條アトム

 

○長瀞山中

 ベースキャンプの地。

 ザンキを中心として、右側には牛顔の魔化魍、左側には馬顔の魔化魍が立ちはだかる。

 二匹とも、鋭い刃先をした槍のようなものを構えている。

 ジリジリと、ザンキに近付く二匹の魔化魍。

 そして、馬顔魔化魍がザンキに斬りかかる!

 素早く避けるザンキ。

 しかし、間髪入れず背後から牛顔魔化魍も襲いかかる!

ザンキ「ちぃ!」

 牛顔魔化魍がザンキを羽交い絞め!

 ザンキ、苦しみながらも音錠を鳴らしてディスクアニマルを呼ぶ!

 黄金狼が牛顔魔化魍に体当たり!

 転がり逃げるザンキ。

 しかし、即座に斬りかかる馬顔魔化魍!

ザンキ「うっ!」

 ザンキの左肩の辺りを、馬顔魔化魍の槍が切り裂く!

 そこへ、トドロキ(顔の変身は解除している)がようやく帰ってくる。

トドロキ「いやあザンキさん、今回のヤツはしつこかったッスよ……、あ!!」

 ザンキが襲われている光景を見るや、走り出して再び変身するトドロキ!

 雷鳴が轟いて再び鬼となった轟鬼、同時に青磁蛙を放つ。

 馬顔魔化魍に飛びかかる青磁蛙!

轟鬼「何モンだお前らーーっ!!」

 烈雷を振り回して二匹の魔化魍を蹴散らす轟鬼。

 二匹の魔化魍は、互いに目で合図し合うように離れると、それぞれ現れた方向へと走り去る。

 轟鬼、顔の変身を解除してザンキの元へ駆け寄る。

トドロキ「ザンキさん! ザンキさん!!」

 倒れ込んで息も絶え絶えのザンキ。

ザンキ「……ああ、大したことない。かすり傷だ……、ウッ!」

 ザンキ、左肩の傷は深く流血も激しい。

トドロキ「あああ~、ザンキさん! ……い、急がなきゃ!!」

 ザンキを抱えて雷神へと走っていくトドロキ。

 

○病院

 手術室の前の廊下で、立ったり座ったりと落ち着かないトドロキ。

 そこへ、勢地郎が走ってくる。

勢地郎「トドロキ君!」

トドロキ「あ、事務局長!」

勢地郎「……で、どんな具合なんだ?」

トドロキ「わ、分かりません……!! ザンキさん、自分では大丈夫だ大丈夫だって言ってましたけど、物凄い血で……」

 半分涙声のトドロキ。

 その時、『手術中』のランプが消えて、中から執刀医が出てくる。

勢地郎「先生!」

医者「……ああ、大丈夫だ。傷は深いが、致命傷ではない。ま、しばらくの間は絶対安静だがな」

勢地郎「そうですか……」

トドロキ「良かった……」

 安堵の表情の勢地郎とトドロキ。

 改めて長椅子に座り直す。

勢地郎「……しかしトドロキ君、また、見たこともない魔化魍だって?」

トドロキ「そ、そうなんス! 牛顔と馬顔のヤツで、デッカい槍持ってて……」

 勢地郎、ギョッとした表情で、

勢地郎「牛に馬だって……!? そりゃ、ゴズキとメズキじゃないか!」

トドロキ「ゴズ、メズ?」

勢地郎「伝説も伝説、地上にいるかどうかも定かではないと噂されている魔化魍だよ。……こいつは大変なことになったぞ」

 珍しく顔色を変える勢地郎。

 

○秩父神社

 境内。

 携帯電話で電話中のイブキ。

 傍らには、荷物整理をしているあきら。

イブキ「……分かりました。気を付けます」

 電話を切るイブキ。

あきら「何ですか?」

イブキ「鬼を襲う魔化魍ってのが各地に出没しているらしい。さっき、香須実さんからも同じような連絡があったよ」

あきら「鬼を襲う……」

イブキ「とにかく、今日は早く引き揚げた方が良さそうだ」

あきら「はい」

 神社の出口へと向かい、歩き始めるイブキとあきら。

 と、その時、小さな鳥のような影が前を横切る!

 影は、イブキを威嚇すると不自然な動きで方向を変え、今度はあきらに向かって突進する!

イブキ「……あきら!」

あきら「きゃあああああ!」

 あきらに飛びかかる影!

 あきら、咄嗟にリュックで自分の体を庇う。

 バッサリ切り裂かれるリュック。

 尻餅をつくあきら。

イブキ「大丈夫か!?」

あきら「……は、はい!」

 そのまま鳥のような影は、木と木の間へと姿を消した。

 イブキ、影の消えた方向を見ながら、

イブキ「……あれが香須実さんの言ってたヤツか。あきら、急ごう!」

 イブキ、あきらの方を振り返る。

 と、あきらはその場にうずくまり、ブルブルと震えている。

イブキ「あきら、どうした! どこかやられたのか!?」

 あきら、そのままバッタリと倒れる。

 そして、その腕や足から、黒い斑点が浮き出てきた。

 これは、あの時の異質なエキスの斑点じゃないか!

 ハッとするイブキ。

イブキ「……治って……なかったのか……」

 ワナワナと震えながらあきらを抱き起こすイブキ……。

 

○病院・受付

 窓口で、ザンキの入院手続きをするトドロキ。

トドロキ「……それでは、よろしくお願いします」

 トドロキ、受付の看護士に一礼して、ロビーの椅子に座っている勢地郎のところへと歩く。

勢地郎「(立ち上がって)じゃ、戻ろう」

トドロキ「はい!」

 二人、病院を出ていく。

 

○同・駐車場

 雷神の停めてあるところへ歩いていく勢地郎とトドロキ。

トドロキ「……で、何なんですか? ゴズキとメズキって」

勢地郎「地獄の番人だよ」

トドロキ「じ、地獄~っ!?」

勢地郎「仏教界では、そういう位置付けだ。魔化魍世界でも  伝説の門卒としていくつかの記録がある」

 トドロキ、雷神のロックを解除して、運転席のドアを開けながら、

トドロキ「じゃあ、あれがそのゴズキとメズキ……ですか」

 勢地郎、助手席のドアを開けて雷神に乗り込みながら、

勢地郎「牛と馬の顔、そして大きな槍とくれば間違いないだろうね。ヤツらが現れたってことは、これはかなり大事だよ」

 トドロキ、運転席で唇を噛み締める。

 

○秩父神社

 あきらの様子を伺うイブキ。

 あきら、脂汗をかいて失神寸前の様子。

イブキ「……この様子では、バイクでの搬送は無理だな」

 イブキ、携帯電話を取り出して、吉野本部へと電話。

イブキ「あ、もしもし! 関東支部のイブキです! 実は……」

 本部に連絡をとっているイブキの足元で苦しむあきら。

 あきらの手足に出ている黒い斑点が、徐々に大きく広がっていく。

イブキ「……はい! では大至急お願いします!」

 電話を切るイブキ。

 足元に目を遣ると、そこにあきらの姿がない!

イブキ「……あ、あきら!?」

 次の瞬間、イブキが背後から首を絞められる!

 絞めていたのは、もはや肌全体がドス黒く変色したあきらであった!

イブキ「あ……あき……ら」

 苦しむイブキ。

 既に常軌を逸しているあきらは、白目を剥いてイブキの首を絞め続ける!

イブキ「う……、う……!!」

 イブキ、絞めつけるあきらの手を力ずくで振り払う。

 地面にバタッと落ちるあきら。

 ユラリと動き始め、地面を這うような仕草を見せるあきら。

 その挙動は獣のようだ。

イブキ「あ、あきら……」

 その時、頭上から鳥のような魔化魍が現れてあきらに飛びつく!

 オンモラキだ!

 オンモラキは、あきらの背中を前足で掴むと、そのまま上空へ飛び上がる!

イブキ「あきら! ……くっそう!」

 駐車している竜巻のところへ走り、素早くまたがるイブキ。

 しかし、オンモラキはあっという間に大空の彼方へと姿を消してしまった。

 悔しげに空を見上げるイブキ。

イブキ「あきらーーーーーーっ!!」

 

《CM》

 

○日光・寺の離れの小屋

 小屋の中で座っているヒビキ、ダンキ、ショウキ、そして香須実。

ヒビキ「鳥ってことは、太鼓じゃキビしいかねぇ」

ダンキ「そうッスね~。やっぱ遠隔攻撃じゃないとなあ」

ショウキ「(ニヤッと笑って)俺がいますんで、大丈夫です」

ヒビキ「(からかうように)おーおー、頼りにしてますよ」

 と、ヒビキの携帯電話が鳴る。

 電話に出るヒビキ。

ヒビキ「はいはい、こちらヒビキ。……え、何だって!? あきらがぁ!?」

 香須実、ダンキ、ショウキがヒビキの方を向く。

 電話を切るヒビキ。

香須実「……どうしたの!?」

ヒビキ「ダンキ! ショウキ! すまんが、ここは頼むぞ!」

ダンキ「よ、よっしゃ! 任しとけ!」

ヒビキ「香須実、一旦戻るぞ!」

 厳しい表情で小屋を出ていくヒビキ。

香須実「ちょ、ちょっと、どうしたのよ!」

 慌ててヒビキを追う香須実。

 

○松原湖

 三度、ドドメキと対峙している剛鬼。

 多少俯き加減で、ドドメキに向かって走る!

 ピカッと光るドドメキの体中の目!

 遮られるように動きが止まる剛鬼。

剛鬼「……目を瞑っていても、圧力が……、凄いな!」

 目に見えぬ空気の壁に、行く手を遮られる剛鬼。

 しかし、光が止むごとに少しずつドドメキに近付き、ついにその腹元に潜り込んだ!

 音撃鼓・金剛をドドメキの腹に取り付ける剛鬼。

 バッと広がる金剛。

剛鬼「剛腕無双の型!」

 仰向けのままバチを打ち鳴らす剛鬼!

 音撃の波紋がドドメキに広がる!

 しかし、ドドメキの体が背中でピリピリと裂けると、やはり一瞬にして脱皮してしまい、新たなドドメキ本体は湖に逃げ去った。

 素早く下がる剛鬼。

 そして、残された皮が音撃の威力で四散する!

剛鬼「ムゥ……」

 ゆっくりと立ち上がり、その場で考え込む剛鬼……。

 

○たちばな・地下作戦室

 机を囲んで座っている勢地郎、ヒビキ、イブキ、トドロキ、そして香須実。

トドロキ「……あ、あきらクンが!?」

香須実「……音撃浄化が不十分だったってこと?」

イブキ「……僕が、未熟だったんです……」

 イブキの言葉にハッと口を押さえる香須実。

ヒビキ「自分を責めるんじゃねー、イブキ」

 絶句する一同。

勢地郎「……とにかく、我々で捜索するしかないんだが……」

トドロキ「でも、どこをどう探しゃいいんだか……」

 一瞬の沈黙。

 ヒビキ、顔を上げて、

ヒビキ「ヤツら、どこかに拠点を持っているんじゃないでしょうか?」

勢地郎「ああ。こないだのシュキの動きもそうだったんだが、長野と群馬の県境を中心に行動範囲が広がっているみたいなんだなあ。そして、ここ数日現れている新手の魔化魍もそういうフシがある……」

トドロキ「……ってことは、この辺りのどこかに……」

 そう言って、机上の地図を広げて睨むトドロキ。

勢地郎「……あと、みんなに言っておきたいんだが」

ヒビキ「何です?」

勢地郎「ここ数日に現れた魔化魍は、ドドメキ、オンモラキ、ゴズキ、メズキ……。これを漢字に直すと、こうなる」

 そう言って紙に魔化魍の名前を書く勢地郎。

 それを覗き込む他の者。

ヒビキ「百々目鬼……、陰摩羅鬼……、牛頭鬼……、それから馬頭鬼……」

勢地郎「共通しているのは?」

 香須実、ハッと机を叩いて、

香須実「……お、鬼!?」

勢地郎「そうだ。……古来より、日本では、表の世界を官吏が、そして警官が人々を支え、裏の世界では我々猛士が日々人間を守ってきた。鬼の力を使ってね」

 勢地郎の話に聞き入る他の者。

勢地郎「魔化魍を清めるために存在している鬼だが、実は鬼と魔化魍の間には、昔から深い関わりがあるとされているんだ」

ヒビキ「鬼と……、魔化魍が?」

勢地郎「(頷いて)鬼は大別して二つ、『光の鬼』と『闇の鬼』に分かれるんだ。君たち猛士の鬼が光の鬼、そしてこの四体の魔化魍こそ……」

ヒビキ「闇の鬼……ってわけですね?」

勢地郎「ああ。そして闇の鬼は、ある者の謀(はかりごと)によって出現するという言い伝えがある……」

香須実「ある者?」

勢地郎「それはもう少し調べてみないと分からんが……、闇は、光を消すために存在するとも言われている」

 息を呑む他の者。

勢地郎「特に、ゴズキとメズキが現れたってことは、過去に例を見ない事態が発生していると推測できる。ターゲットは間違いなく、君たち光の鬼、だ……」

 それぞれ神妙な面持ちになる、ヒビキ、イブキ、トドロキ。

勢地郎「……それはともかく、今はあきらのことが心配だ。急がなければ、シュキと同じ運命を辿ってしまう可能性が……」

トドロキ「……早く! 早く探さないと!」

香須実「でも、どうやって……」

 またしても沈黙してしまう一同……。

 

○謎の洋館

 あきらを抱えたオンモラキが、二階の窓から部屋に入る。

 あきらをバタッと床に落とすオンモラキ。

 部屋には、和服姿の男と女が立っている。

 床に倒れたあきらの下へ歩み寄る男。

男「待っていたよ……、アメヒメ」

 

○四十一之巻 完

 

○エンディング曲『少年よ』

 

○次回予告

 たちばな地下で話し合う猛士の面々。

トドロキ「とにかく、ジッとしていても何も始まりませんよ!」

 たちばな店頭で話す明日夢とひとみ。

ひとみ「天美さん、今日も学校来なかったけど……、お仕事、大変なんだね」

 洋館で話す男と女。

女「もう少し、時間がかかりそうね……」

 四十二之巻『猛る戦士』

 

○提供ナレーション 下條アトム


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