○アバン・オープニング
明日夢N「鍛えて鬼になって人助けをする不思議な男の人、ヒビキさん。そして、イブキさんやトドロキさん。僕、安達明日夢の毎日は、そんな人たちと出会ったことで、変わってきました。持田も僕と一緒にたちばなでバイトすることになって、ますます鬼の人たちの手助けに張り切ってきましたが、最近変わったバケモノも出るようで……」
○オープニング曲『輝』
○サブタイトル
四十之巻『迫る邪道』
○提供ナレーション 下條アトム
○たちばな・地下研究室
ドドメキの皮膚を分析するみどり。
傍で見ているヒビキ。
ヒビキ「……どうなんだ?」
みどり「う~ん……、細胞のつくり自体は魔化魍特有のものだから、音撃で清められると思うのよねぇ」
ヒビキ「てことは、問題はあの目か……」
みどり「そうねぇ。その目眩ましを封じ込めた上で、脱皮される前に音撃につなげないと、結局、同じことの繰り返しになりそうねぇ」
ヒビキ「何かいい手はありませんかねぇ、みどりさん」
みどり「う~ん、色々考えてはいるんだけどねぇ……」
そこへ、香須実が駆け込んでくる。
香須実「ヒビキさん! また出たって!」
ヒビキ「あの気持ちワリーやつか!?」
香須実「ううん! 別のやつ!」
ヒビキ「何だって~!?」
○同・地下作戦室
電話中の勢地郎。
勢地郎「……うん、そうか。分かった。とにかく、よろしく頼むよ」
電話を切る勢地郎。
そこへ、ヒビキ、香須実、みどりが入ってくる。
ヒビキ「おやっさん!」
勢地郎「おお、ヒビキ」
ヒビキ「今度は何です?」
そう言いながら椅子に座るヒビキ。
勢地郎「いや、日光の寺で鍛えに入っていたダンキ君からだったんだが、オンモラキが出たというんだ」
ヒビキ「オンモラキ?」
勢地郎「うん。これまた伝説の魔化魍で、九百年程前に寺社仏閣に頻出したって記録がある。その時は、修行中の鬼が幾度となく襲われたということなんだ」
ヒビキ「……で、ダンキは?」
勢地郎「ショウキ君も一緒だったので事なきを得たようだが、……民家に近いだけに心配だねぇ」
ヒビキ、立ち上がり、
ヒビキ「とりあえず向かいます」
勢地郎「ああ。……ドドメキの方は、ゴウキ君がそのまま張ってくれているので」
ヒビキ「了解!」
ヒビキ、香須実に目で合図をして一緒に階段を駆け上がっていく。
○城南高校・ブラスバンド部部室
部員各自、自分のパートを個人練習中。
明日夢もドラムの練習をしている。
各部員を見回っていた部長、明日夢に近付き、
部長「調子いいな、安達」
明日夢「……あ、部長!」
部長「秋季大会が各地で続くから、この調子で頑張ってくれよ」
明日夢「分かりました!」
にこやかな表情で、楽譜に目を遣る明日夢。
しかし、そこでみどりとひとみの言葉が脳裏をよぎる。
みどり「ヒビキ君の弟子になろう、とは思わないのかな?」
ひとみ「安達君、もしかしてヒビキさんの弟子になろうとか、思ってる?」
明日夢、一瞬考え込むも、気を取り直して再びドラムを叩き始める。
○松原湖
ゴウキが、依然として単独でベースキャンプを張っている。
テーブルの上で、何やら記録を取っているゴウキ。
すると、前方の湖から大きなうねりとともにドドメキが現れる!
ゴウキ「(時計を見て)ふむ……」
ゴウキ、テーブルから離れて音角を鳴らし、ゆっくりと額へと持っていく。
炎に包まれて、ゴウキが鬼に変化!
剛力を両手に持って、剛鬼がドドメキに向かって走る!
○明日夢の自宅・玄関口
帰宅する明日夢。
明日夢「ただいま~」
靴を脱いで、家に上がる明日夢。
台所の方から郁子の声。
郁子「おっかえり~! ゴハン出来てるから、早く手ぇ洗ってきなさい!」
明日夢「は~い」
○同・リビング
郁子、鼻歌を歌いながら味噌汁を器に入れる。
明日夢、リビングに入ってくる。
郁子「今日は部活だったんだよね~。どうどう? 調子は」
明日夢、席につきながら、
明日夢「ん? ……まあ、まずまずだね」
郁子「準レギュとはいえドラム叩けるようになったんだから、頑張らなくっちゃね!」
明日夢「うん……」
席に座る郁子。
明日夢「……母さん」
郁子「ん? 何?」
明日夢「母さんは……、夢って、あった?」
郁子「え!? な~によ突然……。あ! その顔は、もしや将来にかけるものが何か見つかったって顔!?」
郁子、嬉しそうな表情で明日夢の顔を覗き込む。
明日夢「あ、いや……、そういうわけじゃないけど」
郁子、乗り出した身をゆっくり戻して、
郁子「……夢ねぇ。まあ、人並みに結婚もしたし、子供も産んだし……、あ、結果的に別れちゃったけどね。ん、今はこうしてタクシーの運転手なんかしてるけど、なんかこう……、人のためになる仕事がしたい!ってのはあったかなあ」
明日夢「人のため……」
郁子「ま、どんな仕事でもそういうとこはあるんだろうけどね」
明日夢「ふ~ん……」
郁子「……あ、明日夢がやりたいことだったらさあ、母さん何でも反対しないつもりよ? ……まあ、しっかり青春を謳歌しなさい!」
明日夢「……うん! (手を合わせて)いっただっきま~す!」
食べ始める明日夢。
その明日夢の顔を、頼もしげに見つめる郁子。
○長瀞山中
ベースキャンプを張っているトドロキとザンキ。
トドロキ、地図をチェックしながら、
トドロキ「ザンキさん……」
ザンキ「ん?」
トドロキ「俺、こないだヒビキさんが言ってたこと、ずっと考えてたんスけど……」
ザンキ「こないだって?」
トドロキ「人が人を裁いていいのかって」
ザンキ「ああ……」
トドロキ「俺、鬼になる前は警官だったじゃないですか。言わば、鬼になる前から、人間を守るって仕事をしてきたわけですよ」
ザンキ「そうだな」
トドロキ「でも、正直言って、ヒビキさんのように考えたことなかったんスよね。悪いヤツからみんなを守るのが、俺の役目だって……」
ザンキ「それは間違ってないぞ?」
トドロキ、作業を止めてザンキの方を振り返る。
トドロキ「いや、何て言うか……、世の中には、いいヤツもいれば悪いヤツもいるって言うか……、悪いヤツも、人間には変わりないんだなって……」
ザンキ、作業の手を止めて、
ザンキ「……トドロキ。悪い心ってのはな、人間誰しも心の奥底には持ってるもんなんだ。それを抑えるのが、強い心だ。強い心を持つことが、人間が人間であり続ける大事な要素なんだと、俺は思うぞ」
トドロキ、明るい表情になって、
トドロキ「……あ、ああ。……なんか俺、ザンキさんにまた教えられたッス! ……人生、日々修行ですね~」
感動しているトドロキを見て、微笑むザンキ。
そこへ、緑大猿が帰ってくる。
ピョコンと飛んで丸くなり、トドロキがキャッチして再生。
トドロキ「(ディスクを読み取り)……来ました! こりゃあアミキリですね」
ザンキ「よし! 行ってこい!」
トドロキ「はい!」
再びアニマル化した緑大猿とともに、勢い良く走っていくトドロキ。
《CM》
○日光のとある寺
寺の境内で、ノドを潤しているダンキとショウキ。
そこへ、砂利の坂道を不知火が走ってくる。
ダンキたちの目の前で停車し、ヒビキと香須実が車から降りる。
ダンキ「ヒビキさ~ん! ……あ、香須実さんも!」
少しニヤけるダンキ。
香須実「お久しぶりです」
ヒビキ「……で、どんな具合なんだ?」
ダンキ「いきなりだったんスけど、木の上からボールみたいに飛んできたよ。……ガタイは大きくないんだが、予測のつかん動きをするなあ」
ショウキ「こっちにあった資料を見ると、平安時代の終わり頃に『赤い舌の狂鳥』が出たって記述で、オンモラキの伝説が載ってたんです」
香須実「童子と姫の姿は?」
ダンキ、割って入るような勢いで、
ダンキ「いやそれがですね香須実さん! どうも魔化魍の単独出現のようですよぉ?」
ヒビキ、ダンキの弾んだ様子にちょっと顔をしかめながら、
ヒビキ「ドドメキの方も単体だって話だしなあ……、なんか妙な具合だな。こりゃ」
香須実、少し考え込んだ様子で、
香須実「……ねぇ、そのオンモラキ、お父さんの話では、寺や神社に現れて修行中の鬼を襲ったってことよね?」
ヒビキ「どういうことだ?」
香須実「あ、いや……。イブキ君が、確か今日秩父神社に音撃鳴の清めに行ってるはずだったなあ、と……」
ヒビキ「(真剣な表情で)念のため、連絡しておいた方がいいな」
○たちばな・地下研究室
電話中のみどり。
みどり「へぇ~、そうなんだ。……ハハハ。で、次の予定は? ……え、事務きょ、おじさんが? ……ああ、そう。じゃ、もうすぐねぇ。……うん、楽しみにしてるね。じゃーね」
電話を切るみどり。
みどり「……そっか~。久しぶりだな~」
嬉しそうに机の下からスナック菓子を取り出すみどり。
ふと、手を止めて、
みどり「え? ……てことは、あの武器が使えるんじゃ……」
中空を見つめて思考するみどり。
みどり「そうよ!」
再び電話を持って、慌ててどこかへかけ始める。
○長瀞山中・山間の川辺
走るトドロキ。
と、いつの間にかその両脇を追走しているアミキリの童子と姫!
童子「競争だ」
姫「競争だ」
トドロキと併走しながら、怪童子、妖姫に変化!
トドロキ「この~、バケモンめぇ!」
怪童子、妖姫に向けて烈雷を振り回すトドロキ。
サッと避ける怪童子と妖姫。
川辺の水際で身構える。
トドロキ、立ち止まって音錠を鳴らし、額へと持っていく。
トドロキの額に紋章が浮き出て、頭上から雷鳴が轟く!
トドロキ、鬼に変化!
怪童子、妖姫が轟鬼に襲いかかる!
烈雷で怪童子を切り裂くも後ろから妖姫に捕まるトドロキ。
一瞬たじろいだ怪童子、再び轟鬼に走り寄る。
と、それをキックで蹴散らす轟鬼!
返す刀で妖姫を背負い投げ!
怪童子、妖姫が二体縦に重なったところで、その胴体めがけて烈雷を投げつける轟鬼。
妖姫の胴体に命中した烈雷は、そのまま貫通して怪童子にも突き刺さって崖に激突して、粉砕!
轟鬼「フゥ……」
と、頭上から現れたアミキリ!
轟鬼「おおっと!」
轟鬼、烈雷を拾ってアミキリの方へ振り向く。
アミキリの巨大なハサミが轟鬼に迫る!
避ける轟鬼!
崩れる崖!
轟鬼「オリャーーーー!!」
轟鬼、着地したアミキリに向かって走り寄り、その足に烈雷で斬りかかる!
バランスを崩すアミキリ。
素早く下っ腹に潜り込んで烈雷を突き刺す轟鬼。
轟鬼「音撃斬・雷電激震!」
轟鬼が烈雷をかき鳴らす!
アミキリに伝道する音撃の波動!
そして、爆発!
轟鬼「フゥ……」
烈雷を地面に突き刺して、その場にうなだれる轟鬼。
○同・ベースキャンプの地
ディスクアニマルの手入れをしているザンキ。
ふと妙な気配に気付いて、周りを見廻す。
立ち上がって二歩、三歩と歩くザンキ。
と、そこに突如として現れた二体の人型魔化魍!
右の方に現れた魔化魍は牛の顔、左の方に現れた魔化魍は馬の顔。
そして、二体とも鋭い刃先の大きな槍を持っている。
身構えるザンキ。
ザンキ「……なんか最近、襲われグセがついちまったか?」
○たちばな・地下作戦室
中央の机で資料を読み漁る勢地郎。
傍らで、日菜佳が電話を切る。
日菜佳「……イブキさん、無事終わったみたいです」
勢地郎「そうか」
日菜佳「しかし大変ッスよね~。ザンキさんとトドロキ君は長瀞、ゴウキさんは松原湖、イブキさんは秩父、んで~、ヒビキさんたちは日光……、今日はみんな散り散りですねぇ」
ピクッとする勢地郎。
勢地郎「こりゃあ、もしかして……」
○四十之巻 完
○エンディング曲『少年よ』
○次回予告
病院でソワソワするトドロキ。
トドロキ「ザンキさん、自分では大丈夫だ大丈夫だって言ってましたけど……、物凄い血で……」
秩父神社を歩くイブキとあきら。
イブキ「とにかく、今日は早く引き揚げた方が良さそうだな」
たちばな地下で話す猛士の面々。
勢地郎「あと、みんなに言っておきたいんだが……」
四十一之巻『目醒める闇』
○提供ナレーション 下條アトム