美暁が長い塀に囲まれた建物に入っていく。
それを電柱の陰から窺う直斗。
「何故、美暁さんが刑務所などに……。誰かに面会だろうか? だとすれば一体、誰の……?」
さすがの直斗も刑務所内においそれとは入れない。
ここは、ひとまず遼太郎に連絡を取るべきだろう。
そう考え、直斗は携帯電話を取り出す。
「ツルルル…、ツルルル…、ガシャッ!」
刑務所の入口を睨みながら、直斗が通話を始める。
「……あ、堂島さんですか? 白鐘です」
「し、白鐘か!! ……今、お前に電話しようと思っていたところだ!」
「え?」
「お前今日、被害者が持ってた雑誌に載っていた着物作家に会いに行くって言ってたな!?」
「はい。春野美暁さんという女性です」
「その春野美暁が、たった今第三の犠牲者になったんだよ!!」
「…………!!」
声にならない声を発する直斗。
そんなバカな!?
美暁は、今まさに自分の目の前にいるはずなのだ!
「堂島さん! ちょっと待って下さい! ……僕は今、美暁さんを尾行して○×市の刑務所前にいます! そこに、たった今彼女は入っていったんですよ!?」
「何だと!? そんなワケあるか! 春野美暁はたった今病院に運ばれたんだ!!」
「そんな……バカな……」
右手で帽子をクシャッと潰しながら直斗が顔をしかめる。
「……ちょ、ちょっと待って下さい! 今まだ夕方の五時ですが……、被害者は……太陽にやられたんですよね?」
「そうだ! 前の二人と同じだよ! ……火傷の状態からして、事故が起こったのは二、三時間前ってとこだな。……お前、本当に春野美暁と会っていたのか?」
遼太郎にそう言われ、ドキリとする直斗。
確かに自分は会っていた。
だが、それが美暁本人だという証拠はない。
さらに言えば、今病院に運ばれたのが美暁本人だという証拠もないわけだ。
何かが……、何かがおかしい……。
* * * * *
「あらって……、夜美アンタ、飲んでるわね?」
研究所の更衣室。
私服に着替えながら携帯で夜美に連絡中の美雪。
「そーよー。オフに飲んでちゃ、悪いかしら?」
「あのね、いくら休みだからってまだ外は明るいわよ? ……まあいいわ。酔った頭でしっかり聞きなさいよ!?」
「えー? なにー?」
酩酊気味の夜美に向かって、美雪がズバリと言い放つ。
「美暁ちゃんが……、第三の被害者として運ばれたわ」
「……えーっと」
一瞬の空白の後、夜美は顔色を真っ白に変えてその場に失神した。
「ちょ! 夜美さん!! どうしたんですか!? 夜美さん!!」
暁が慌てて夜美を抱き起こす。
と、床に転がった携帯電話から美雪の声が。
「……暁さん!? そこにいるんですか!? 暁さん!!」
戸惑いながら夜美の携帯電話を拾って耳に当てる暁。
「も……、もしもし!?」
「暁さん! ……落ち着いて聞いて下さいね。……妹さんが、……美暁ちゃんが」
美雪の言葉を聞き終わるや、厳しい表情で眉間に皺を寄せ始める暁。
その腕の中で失神している夜美の顔は……、笑っていた。
* * * * *
そして、ここはテレビの中の世界。
りせが単独で調査に赴いている。
「……微妙だけど、この反応は確かに……」
カンゼオンのレーダーで何かを感知したりせ。
ゆっくりと、レーダーが反応を示す方向へと浮遊した身体を進ませる。
そして、ボーッとした光に包まれる『何か』へと近付く。
「……えっ!?」
そこには、少女が身に付けている真紅の着物を力尽くで剥ぎ取ろうとしている男がいた。
「ちょっと待って! …………悠センパイ!!」
(続)