無口で無表情   作:マツユキソウ

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とても嬉しいです(毎回言っている気がします)

今回はタツミ君視点が入ります。

サブタイトルは気にしないで下さい。いつも適当に付けているので……



いやぁあああああああああああああ!?

人間は後悔する生き物である。

あの時こうしていれば……こう発言していれば……と、今の状況の反対である最も良い選択肢を思い浮かべる。

しかし、後悔したところで何も始まらない。ただの現実逃避だ。

では、なぜ人間は後悔するのか? その理由は至って簡単だ。

人間は後悔することで成長する生き物だからだ。

失敗したら次は成功するようにと勉強や仕事を頑張る。そうやって人間は成長していく。

後悔することは人間にとって大切なことである。

 

 

 

 

 

しかし、後悔してもそれで終わりの時もある。

それは………………死ぬ瞬間である。

 

 

 

 

 

タツミがナイトレイドに入って一週間程過ぎた日。

死亡率が高い初任務を数日前に終えたタツミと、元帝国の暗殺部隊に所属していたアカメにナイトレイド屈指のイケメン! だけど女性のボスであるナジェンダから任務が言い渡された。

任務の内容は、『革命軍約三万の命を奪ったエリア将軍の実力と帝具の能力』を調査することであった。

対象はエスデス将軍と同格とも言えるエリアの調査。

様々なパターンを考えた結果、帝都に手配書が回っておらず且つ対象に警戒される確率が低いタツミが人気の少ない場所まで対象を誘導し、アカメが襲撃する。という手はずで行った。

敵地である帝都で、一度の失敗も許されない任務。

危険を冒してまでエリア将軍の調査をする必要があるのか? 答えはyesである。

ナイトレイドの標的のリストとして名前が載っているエリアだが、革命軍から貰った彼女の情報が少なすぎたのだ。

確かに革命軍三万を殺したのはエリアだ、これは間違いない情報である。

しかし、その殺しの方法がわからなかった。

革命軍の死体を調べてみたが……剣で斬られていたり、槍の様な物で突かれていたり、身体の半分が無かったり……と、様々な死に方をしていた。と報告書には書かれていた。

 

彼女の帝具は何だ? 何ができるんだ?

彼女の扱っている武器は剣か槍か? それとも様々な武器を使えるのか?

そもそも、エリア将軍が率いている独自の部隊でもあるのではないのか?

 

様々な疑問が浮かび上がり、それを解消するべくエリアを襲撃したのだが……

結果として…………実にあっけないものであった。

たった一斬、それだけで彼女は倒れ、動かなくなった。

 

(やった! アカメの奴……やりやがったぜ!!!)

 

演技として、アカメに蹴られて倒れたタツミからはアカメの背中しか見えないが、エリアが肩から脇腹を帝具一斬必殺『村雨』で斬られた瞬間を見ていた。

帝具『村雨』は斬った場所から呪毒を体内に流し込み、確実に相手を殺す刀型の帝具だ。

間違いなく死んでいる。

直ぐにでも起き上がり、アカメの所まで駆け寄りたかったタツミだが、アカメが合図するまで気絶したふりをしなければならなかったので我慢してその時を待った。

 

 

 

アカメは目の前の光景に自分の目を疑った。

エリア将軍が……消えたのだ。

いや、溶けたと言うべきだろう。まるで乾いた地面に雨が染み込むように地面に沈んでいったエリア。

その光景に驚いたアカメであったが、直ぐに気持ちを切り替え……瞬間、アカメは背後からの殺気に気づき、咄嗟に振り向き刀を振るう。

 

「ッ!?」

『……』

 

身体がよろける程の衝撃と金属が擦れる音。

後ろに跳躍し、直ぐに体勢を立て直したアカメの目の前には…………無傷で立っているエリアがいた。

 

(確かに斬った……帝具の力か)

 

先手必勝。

アカメはエリアの実力を見極める為に、そして異変があれば直ぐにでも逃走できる様に斬りかかる。

無駄のない動き、体格からは想像できない程の重い斬撃。

一撃の世界で生きてきたアカメだからこそ出来る一斬をエリアに振るう。

 

『……』

 

しかし、その斬撃は対象に届くことはなく。

腹部を圧迫する感覚を感じた瞬間、アカメは衝撃で数メートル飛ばされる。

 

「かはっ」

 

何をされたのかわからない。いや、エリアの体勢から見て拳を打ち込まれたのはわかった。

だが、見えなかった。

銃の弾も避けられる程の動体視力と反射神経を持っているアカメですら、エリアの攻撃が見えなかった。

それ程までにエリアの速度が早かったのだ。

 

アカメは後悔する。

エリアと戦ったことに…………あの時、エリアを斬った瞬間にそのまま逃げていれば良かったと、その後の確認はタツミに任せておけば良かった……と。

今回の任務は情報収集がメインで戦うことではなかった。

しかし、アカメはそうしなかった。

心のどこかに、『一度攻撃を当てれたんだ。もう一度……』という邪念が残っていたからだ。

 

『……』

 

後悔しても既に手遅れであった。

腹部を殴られた衝撃によって動けないアカメに向かって、無表情で見つめている殺戮人形がゆっくりと近づいてきた。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

あ~~ビックリした。

普通の人間だったら今の斬撃で死んでいましたよアカメちゃん。

アカメちゃんに斬られる瞬間、帝具の力を発動させた私はギリギリ……じゃなくて余裕で回避して後ろから殴る。

村雨で受け止められたのでもう一度殴る。

私に腹パンされたアカメちゃんは衝撃で少し後ろに吹き飛び、片膝をついて私を見る。

 

(あっ……篭手付けてなかったら今の危なかったかも)

 

何て思いながら殴ったせいで気絶させれなかった。

アカメちゃん痛いでしょ? 苦しいでしょ? 今楽にしてあげるね。

私は今度こそアカメちゃんを気絶させるべく一歩ずつ用心して近づく。

相手は原作主役キャラのアカメちゃん、何をしてくるかわかりません。

動けないフリをして間合いに入った瞬間……ズバッ!! っと斬られるかもしれませんからね。警戒警戒です。

それに、後ろで気絶したフリをしているタツミ君にも気を配らないといけません。

彼は仲間のピンチを放っては置けない真っ直ぐ主人公タイプの人間なので、作戦そっちのけで私に斬りかかってくるかもしれません。

 

さて……私を暗殺しようとしたのか、それとも私の帝具の情報が知りたかったのかは知りませんが、一発は一発ですよ? アカメちゃん。

え? さっきの腹パンは一発にカウントされるじゃないかって? あははっ、あれは0.5発ですよ。残りの0.5発分を今からやるんです。

 

勿論ですが、アカメちゃんは殺しません。気絶させてタツミ君を助けるふりをします。

やった事はありませんが、首元にシュッって手刀を打ち込んで気絶する……はず。

 

(首元にシュッ。首元にシュッ)

 

イメージトレーニングをしながらもアカメちゃんとタツミ君の動作に警戒する。

そして、何とか出来そうだと自信がついたのでアカメちゃんの目の前まで歩いた私は、彼女の鋭い視線に負けない様に見下す。

 

(視線が……滅茶苦茶怖いんですけど)

 

眼力だけで射殺出来そうな程睨むアカメちゃん、可愛い顔が台無しです。そして視線を逸らしたい。

でも、私は負けないッ!! 

私も負けずとありったけの威圧感&殺気を出して応戦する。無表情だけど。

目と目が合って数十秒。

私とアカメちゃんの戦いは、私の勝利で幕を閉じだ。

 

って、そんな事してる場合じゃありません!!

早くアカメちゃんを気絶させないと、回復して面倒臭い事になります。

首元にシュッ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………計画変更。

やっぱり腕の一本でも貰っておきます。

 

「っく!!」

 

私はアカメちゃんの右脇腹目掛けて右足を蹴る。

痛みから少しだけ回復していた様で、私のつま先が脇腹に当たるか当たらないかのギリギリの所で避けたアカメちゃんは、そのままうつ伏せで倒れこむ。

あ、丁度良い具合に倒れてくれましたね。

私はそのまま右足でアカメちゃんの背中を踏みつけ、動けないようにする。

そして……アカメちゃんの左腕を真っ直ぐ伸ばす形で持つ。

えーと、上腕骨を折りたいけど人体の構造っていうのかな……よくわからないので棒を折る感じでいきます。

ありったけの力を込めて、掌底を上腕骨にぶつければ折れるはずです。折れなかったら違う方法で折ります。

 

私が心変わりした理由は簡単です。

殺されそうになったのに、原作キャラだからって気絶させるだけとか甘すぎない? って訳ですよ。

あんまりのんびりしているとアカメちゃんが完全回復しちゃうのでパッと折ってパパッと逃げます。

 

痛いですけど、命を取られないだけマシだと思ってくださいアカメちゃん。

 

私がアカメちゃんの腕を折ろうとした瞬間、一発の銃声が帝都の闇に響く。

咄嗟にアカメちゃんの拘束を解いて離れると、私の頭があった部分に光が横切り……そのまま地面にぶつかる。

ビームですか、危ないですね。

それにこの射角……頭部を狙った正確な射撃、距離からして撃ったのは間違いなくナイトレイドの一員で、帝具浪漫砲台『パンプキン』所有者のマインちゃんですね。

私と同じツインテールでピンク髪のツンデレマインちゃん、原作だと他の任務でいなかったはずですが、任務の帰りに偶然見かけたのでしょうか? だとしたら運が良いこと……

 

やはり、ここでアカメちゃんが負傷すると神様的に不味いんですかね。

だとしたら、今ここで無理やりにでもアカメちゃんの腕を折る必要はないですね。

 

(この世界の神様、私はこのまま逃げるんでそれで良いですか?)

 

この世界の神様に一度もあったことありませんが(ホントにいるのかな?)一応言っておく。

勿論、神様からの返答はなく……代わりにもう一発私の頭部を狙ったパンプキンの砲撃がきました。

 

腕を折ることが出来ないのなら、長居する必要はありませんね。

私は気絶したフリをしているタツミ君を担ぎ上げる。

え? どうして罠にはめた張本人を連れて行くのかって?

それは勿論助けるためですよ。

 

『一般人(タツミ君)が私に迷惑をかけたので、お詫びも兼ねて美味しいご飯の店を案内していたが道に迷ってしまい、しかも暗殺集団ナイトレイドのアカメちゃんに襲撃される。一般人は勇気を振り絞ってアカメちゃんに攻撃するが返り討ちに遭って気絶してしまう。

そんな勇気ある一般人を放って逃げれるはずもないので、私ことエリア将軍は数回の戦闘の後、一般人を安全な場所まで退避させるべく暗殺者アカメから仕方なく逃走する』

 

報告書の内容はこんな感じで良いですね。

こうやってナイトレイドの作戦に乗っておけば、私も報告書を書くのが楽!! ナイトレイドも何の被害もなく良かった!! で、終わると思うので……タブン。

もしも大臣が「どうして一般人を見捨てて賊を殺さなかったのですか?」って聞いてきたらその場のノリで誤魔化します。最悪、殴って記憶を物理的に消去します。

 

「まっ待て!! どうして私を殺さないッ!!」

 

私がタツミ君を抱き上げて逃げようとすると、後ろから怒気の篭った声。

後ろを振り返ると、案の定すっごい睨んでいるアカメちゃんが立っていた。

何ですかアカメちゃん、貴女はそんなに死にたいんですか?

それとも、殺せたのに殺さなかったから? 殺す価値がないと思われたから怒ったのかな。

うーん、困るなぁ。このまま無視して逃走しても良いけど、何か悪い気がします。

……ッハ!! 名案を思いつきましたよ!

 

私は一度タツミ君を降ろし、『任務じゃないから』と書いた紙をアカメちゃんに渡す。

え、アカメちゃん、なにその『何書いてんのこの人……』みたいな顔はッ!? そんなにおかしい理由!? 私としては、これ以上の名案は思い浮かばないんだけど……

 

まぁいいや、答える質問にも答えたし、お腹空いたし、タツミ君を助ける演技をしないといけないし、お腹空いたし、お腹空いたし……逃げますッ!!!

 

私はそのままタツミ君を抱き上げ、今度こそアカメちゃんから逃走するべく帝都の闇へと消えていった。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

まさかアカメでも歯が立たないなんて……エリア将軍、恐ろしい人だ。

でも、アカメが殺されなくて良かった。

あの時の砲撃も多分だがマインが撃ったものだろうし、今頃はアカメの奴もマインと合流しているだろう。

 

あとは……あとは俺が無事にこの人から逃げ出すだけだぜッ!!

焦るな俺、もう少ししたら何食わぬ顔で起き上がって、適当に言葉を交わしてサヨナラすれば良いんだ。簡単だ。

一つ問題があるとすれば……

今もこうして後頭部から伝わる柔らかな感触と女の子特有の良い香り。

エリアさんに運ばれる際にチラっとだけ見えた公園のベンチ。

そう、俺ことタツミは、帝国最凶と言われているエリアさんに夜の公園で膝枕をしてもらっている最中なのだ。

 

美少女(無表情で目が怖いけど)に膝枕されるとか……俺は幸せだ。

 

ってそんなこと思ってる場合じゃない!!

起きるタイミングがわからない……流石エリアさん、隙がないぜ。

 

でも、俺がナイトレイドの皆から聞かされたエリアさんと、今のエリアさんの印象は違う気がするな。

『殺戮人形』って言われてるけど、今のこの人は優しい感じがする人だ。

もしかしたら……無表情で無口だから誤解されているだけなんじゃないのか? 本当は心の優しい人なんじゃ……

 

いやっ、帝都でそんなに人をホイホイ信じちゃダメだ。

この人は俺たちが倒すべき標的なんだ。今は無理だとしても、いつか必ず倒してみせる。

 

「……?」

 

不意に俺の頬を撫でる感触。

どうやらエリアさんが俺の頬を撫でたみたいだ。

思わず目を開けると、夜にも負けないくらい暗い二つの瞳。

こっ怖ぇええええ。やっぱりエリアさんの目は桁違いに怖いぜ……

 

『起きた』

「あ……はい、起きました」

『良かった。ケガはない?』

「まだ蹴られた所が痛いですが、大丈夫です! それよりもエリアさんも大丈夫ですか?」

『大丈夫。君を危険な目に』

カキカキ

『さらしてしまった』

「い、いえ! そんな事ないです!! 二人とも無事で良かった。それでいいじゃないですか」

『そうだな』

「そうですよ! いやぁー本当無事で良かった……ハハッ」

 

……気まずい。空気が重い。帰りたいッ!!

標的って言ったけど、こんなに俺の事を心配してくれてる? 女の子を騙してる自分が情けねぇ。

これ以上ここにいたら罪悪感で押し潰されそうだし

 

「じゃあエリアさん、俺は帰るよ」

 

逃げる!!

『送る?』というエリアさんのご好意を丁寧にお断りした俺は一目散にその場を去る。

 

この後、無事にアカメたちと合流できた俺はナイトレイドのアジトへと帰路に着くのであった。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

あぁ、行っちゃったよタツミ君……逃げ足の速いこと速いこと……

私は小さくなっていくタツミ君の背を見ながら心の中で

 

ご飯奢るって言ったじゃないですかぁああああああああああああ!!

 

叫ぶ。それはもう叫ぶ。声が出ないことをいいことに滅茶苦茶叫ぶ。

何? ご飯奢るっていうのも嘘なの?? あんなにドヤ顔でお店の案内をしてくれてたのにアレも演技だったの? だったら絶対ユルサナイ。タツミ君フルボッコ、慈悲はない。

食べ物の恨みは恐ろしいですよタツミ君、今度会ったら絶対奢ってもらいますからね。

 

……はぁ、今日は朝から疲れました。

カインさんの五月蝿いモーニングコールで起こされて、タツミ君に騙されてアカメちゃんに襲撃されたり……もう散々です。

この分だとオーガさんの暗殺イベントは回避されたと見て良いでしょう。代わりに私が襲われたんですからね。

確かに疲れましたが、この程度の苦労で済むならオーガさんを助けた甲斐があるってものですよ。

いやぁー良かっ「あれ? そこにいるのはもしや……エリア将軍!!」

 

……何処かで聞いたことのある声がする。

明るくて騒がしい声……そう、一週間前に警備隊の詰め所で聞いた声。

私が振り返ると、そこには満面の笑みで近付いてくるセリューさん&コロちゃんの姿がッ!?

 

いやぁあああああああああああああああああああああああ!!

どうしてッ!! どうしてなの!?

私が「この程度の苦労」なんていったせいなの? そうなのねッ!!

だったら今すぐ言い直しますッ!! 本当に大変だったので見逃して下さいぃ。

セリューさんと話すと疲れるんです……だから、だからッ!

私を助けて下さい。神様。

 

「やっぱりエリア将軍でしたか!! 私のこと覚えていますか? 帝都警備隊所属セリュー・ユビキタスあ~~んどコロですッ!!」

 

神は死んだ。

そして私は後悔する。

どうしてさっさと帰らなかったのかと……

だけど、もう遅かった。遅すぎた……

 

私の目の前には、眩しいくらいの笑顔で立っているセリューさんと、黒豆みたいな目で見つめてくるコロちゃんがいた。

 

 

 

私が宮殿へと帰った後、オネスト大臣直々に『首斬りザンク』の討伐任務が言い渡されるのは、セリューさんの数時間にも及ぶ【正義について】の講義&訓練をした……数日後のことだった。

 

 

 

 




【少しだけ説明】
原作ではオーガさん暗殺任務がタツミ君の初任務でしたが、このお話ではタツミ君の初暗殺任務は既に終了して、無事にアカメちゃんの笑顔も見れています。

そしてタツミ君の口調とか難しい~……

アカメちゃんを軽くあしらっちゃうエリアは間違いなく最凶です。
帝具の能力は……ザンク戦で書こうと思うので今しばらくお待ちください。


感想書いて下さるとry

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