ありがとうございます。とてもうれしいです!!
そして、相変わらず話の繋ぎ方が下手な私です
「はぁあああああああああ!!」
上段からの最速斬撃。
私は難なく後ろにステップして避ける。
「っく……当たんねぇ。気配は全然たいしたことないのに、どうなってるんだ」
そう言ってタツミ君は頭を傾げる。心なしか頭の上にハテナマークが見える様な気がします。
まぁー、彼が慌てるのも無理はないでしょう。
私は実力を隠しています。『能ある鷹は爪を隠す』というヤツです。
だから、相手の力量を測ることができるタツミ君にも見破れなかったという事です。
彼から見たら私はそこら辺の兵士と変わらない実力だと感じたことでしょう。
だからなのか、私と模擬戦をする時に『真剣で良いんですか?』って心配そうに聞いてきたんですよね。
勿論ですが真剣で大丈夫です。今のタツミ君の実力なら余裕で避ける事ができます。
タツミ君にOKサインを出すと、少し戸惑いながらも打ち始めてくれました。
『一般兵の実力しかない将軍……でも、将軍だから彼女を倒して実力を認めてもらえれば大出世間違いなしッ!!』とでも思ったのでしょうが、残念でしたね。
模擬戦を始めてかれこれ十分程経ちますが、未だに彼の剣が私に届くことはありません。
でも、アカメちゃんやエスデス将軍から『将軍級の器』と称されるだけあって、タツミ君の実力には目を見張るものがあります。
「これならッ!! どうだ!!」
間合いを詰めて……下段からの斬撃。
後ろに飛んで回転しながら回避します。
あ、普通に後ろにステップすれば回避できましたが、何となく格好良く回避したくて回転してみました。
「くっそぉおお!! これもダメなのか……」
タツミ君は私に攻撃を当てられなくて物凄い悔しがっていますが、こうしている間にも彼は着実に進歩しています。
私はタツミ君に気づかれないように鎧を見ると、少しだけ……目を凝らさないと見えない程度ですが傷がついています。
先程までの彼の斬撃ならあの速さで回避できていましたが、いやぁー、凄いですね。
まさに才能の原石。
磨けば磨くほど強くなっていくのですから、鍛錬好きのブドー大将軍が見たら大喜びしそうですね。
まぁー、あの人は基本宮殿にある練兵場から出てきませんから、彼がタツミ君をこの時期(ナイトレイド加入前)に見ることはないでしょう。
…………あのヒッキー大将軍『私と一緒に帝国を守ろう』みたいなこと言ったくせに、『大将軍が賊狩りなど、兵の士気が下がるようなことはせん』とか言って全部私に押し付けやがって……でも、間違ったこと言ってないんですよねー。
大将軍が一々雑魚を倒しに行くのは嫌ですからね。
例えるなら万引き犯を捕まえるために特殊部隊が出動する感じです。無駄遣いです。
でも、ちょっとくらい手伝ってくれても……
「隙アリッ!!!」
ん? ……わわ!? 考えることに夢中になってタツミ君を見ていなかった……目の前まで接近されましたが、余裕の回……先程よりも数段速い斬撃ッ!?
回避は間に合わない。
じゃあ、真剣白羽取り……ごめんなさい嘘!! やり方はわかるけどやったことないから無理ッ!
足払いや篭手で受け止めるのも今の彼には通用しなそう……
うむむ……帝具……使っちゃいます。
☆ ☆ ☆
(やった、当たるッ!!)
そう思ったタツミの口から笑みがこぼれる。
実力を見てもらい、使えるようなら仕官させてもらおうとエリア将軍に意気揚々と模擬戦を挑んだのだが、先程から何十回とエリアに自慢の剣技を避けられていた彼はようやく当てる事ができると純粋に喜んでいた。
鍛えれば将軍にもなれる程の才能を持つタツミだが、今は成長段階であって、実力が違いすぎるエリアに一太刀入れることなど不可能なのだが……エリアの雰囲気が彼の判断を鈍らせていた。
『将軍って言われてるけど、あんまりたいした事ないな』
タツミがエリアを見た第一印象がそれであった。
成長段階といっても、タツミの実力は既に並みの兵士なら数人でかかっても倒せない一級危険種を一人で狩れるほどに成長している。
そして、危険種を一人で討伐でき、相手の実力を測れるほど成長しているタツミが彼女の実力を測った結果が『たいした事ない』であった。
勿論そんなことはない。
タツミでは気づくことが出来ない程、彼女の隠し方が上手だったのだ。
そもそもな話、兵士たちから『将軍』と敬られているのだからその実力は確かなものなのだが……
もう一つ、タツミの判断を鈍らせた理由があった。
エリアの顔はとても美しかったのだ。
まるで故郷の村に積もる新雪の様に美しく、それでいて凛とした顔立ちであった。
腰の辺りまでの長さがある青紫色の髪はツインテール。毛先まで手入れが行き届いており、陽の光に当てられて美しく輝いていた。
身長は160cm程でタツミと同じくらいであった。
服装はドレスと甲冑が合わさったようなもので、上半身は帝国のエンブレムが大きく掘られた白銀の甲冑で覆われ、下はドレスであった。
全てが美しい彼女に見とれていたタツミであったが、直ぐにその異様さに気づく。
エリアの顔は『無』であった。
人間というのは少なからず何かしらの反応を示す。
しかし、エリアからは何も感じられず、剣を避ける時も……もう少しでタツミの剣が当たるという時も彼女は表情を変えず、唯々タツミを見るだけであった。
そして、タツミはそんな彼女の視線に目を合わせようとしなかった。
理由は簡単である。恐ろしかったのだ。
美しい顔とは裏腹に、彼女の瞳は濁りきっていた。
目の部分だけポッカリと穴が空いた様な……どこまでも闇が続く瞳。
うっかり彼女の瞳を覗けば、そのまま闇に吸い込まれてしまいそうな錯覚にまで陥ってしまった。
(怖がんな俺ッ!! この程度で怖気付いたら村のみんなに笑われちまう!!)
タツミは自分を奮い立たせる。
(このままだとエリアさんが傷ついちまうから……甲冑の部分に当てる感じで……)
タツミは剣先を少し上げて甲冑に当てるように軌道を変えると、そのまま振り抜く。
スカッ。
「はっ……へぇえええええええええ!?」
エリアの胴に当たると思っていた……いや、確実に当たっていた剣は対象を見失い空を斬る。
タツミは声を上げ、慌てて辺りを見渡すと
『今のは良かった』
そう書かれた紙を持ってエリアが後ろに立っていた。
「嘘だろ……おい」
タツミは幽霊でも見るかの様に彼女を見る。
絶対に当たっていた剣を避け、気づかれることなく背後に回る、などというとんでもない行動をした彼女の実力は、自分よりも数段……いや、数百倍上なのだと自覚した瞬間であった。
『少しだけ』
そう書かれた紙をタツミに見せたエリアが、何かを掴むように右手を横にする。
「嘘…………だろ……」
何かが軋む様な……とても不快な音が響いたかと思うと、彼女の手には大きな鎌が握られていた。
(ど、どうやって出したんだ。ってかさっきのどうやって避けたんだよッ!?)
頭で理解できないことを立て続けに経験したタツミは、『うむむ』と唸るとそのまま座り込んでしまった。
そして、誰が見ても明らかな隙をエリアが見逃すはずもなく、これまたいつの間にか大鎌を仕舞った彼女は、音もなくタツミに近づくと……
『未熟』
「っへ!?」
そう書かれた紙をタツミの額に貼り付けて、そのままどこかへ行ってしまった。
一人残されたタツミは呆然とする。
未熟……つまりエリアの及第点に自分の実力は達しなかっということであろう。
タツミはそのまま仰向けに倒れる。
「はぁー、何もできなかったな……俺」
タツミは自分の無力さを思い知らされ、これからどうしようかと考えていると
「お困りのようだねぇ少年! お姉さんが力を貸してやろうか?」
明るく元気な女性の声が聞こえたかと思うと、タツミの目の前に二つの大きな山……否、大きな胸の女性が現れる。
(で、デケぇ……これが帝都か!?)
何とも意味のわからない事を思い、女性の胸を凝視していたタツミであったが彼女の言葉で我に返る。
「少年はさ、帝都にロマンを求めてやってきた口だろう?」
「な、なぜわかる!!」
「そりゃ、帝都に長く住んでればわかるさ。で、私手っ取り早く仕官できる方法を知ってるんだけど……」
「マジッ!?」
女性の言葉に飛びつくタツミであったが、先ほどのエリア将軍との出来事もあり、少し思考する。
「あぁーエリア将軍の事は気にするな少年。アレは少し変わった将軍だからさ」
「え……そうなのか?」
「そうだよー。あの将軍とは関わらない方が身の為ってヤツだ」
目の前の女性の言い方に少し引っかかる所があったタツミだが、基本的に人の言う事をホイホイ信じてしまう性格な為、何の疑いもなく彼女の言葉を信じる。
「さてと、どうする少年?」
「そりゃぁー勿論、仕官する方法を教えてくれ!!」
右手をぐっと握り締めたタツミが力強く言うと、彼女……レオーネはニッコリと笑って
「んじゃ、日もだいぶ落ちてきたし、夕食も兼ねてお姉さんにご飯奢って」
そう言った。
見るとタツミ達がいる通りは建物の影で薄暗くなっていた。
「よっしゃ! 俺に任せとけ」
力強く胸を叩いたタツミは、レオーネの案内のもと人混みの中へと消えていった。
『……』
その様子を、薄暗くなった通りの影の中から見ている人物に気づくことなく……
☆ ☆ ☆
いやはや……誰かに見られていると思ったら、やっぱり原作キャラのレオーネさんでしたね。
あの時タツミ君の斬撃を帝具の力で避けた私は、そのまま帝具を使って彼を気絶させようと思いましたが、誰かの視線を感じてやめたんですよね。
私達の模擬戦を何人かの野次馬が見ていましたが、その視線とは別の……私を探るような視線だったので咄嗟に帝具を仕舞って正解でした。
レオーネさんはナイトレイドの一員で、帝具『百獣王化ライオネル』を持っている人だったと思います。
多分、タツミくんの後をつけて来たら私がいたので情報収集をしようとしたんでしょうね。
でも残念でした、私はそう簡単には帝具の性能は見せませんよ!
まぁー、私は革命軍の件でナイトレイドの標的になっていると思う……いえ、絶対になっているのでいつか戦う時が来るのでお楽しみに~です。
ですから、その時まではナイトレイドには手を出しません。お仕事じゃなければ戦いたくないです!
さてと、原作通りタツミくんはレオーネさんに任せて、私は私のお仕事をするとしましょう。
私は急ぎ足でとある場所へと向かう。
いざ、帝都警備隊隊長のオーガさんの元へ!!
☆ ☆ ☆
「オーガ隊長、見回りご苦労様です」
「おう、俺が留守の間、なんか変わったことはないか?」
「いつも通りです。それと、オーガ隊長にお会いしたいという方がおりまして……隊長のお部屋へと案内しておきました」
「ご苦労さん」
帝都警備隊隊長であるオーガが数人の部下を連れて帝都の見回りから帰ってみると、詰め所の雰囲気がいつもと違っていた。
警備隊の皆々が額に汗をかき、縮こまっていたのだ。
(どうやら、俺に会いたいという人物のせいで部下がこんなに情けなくなっているのか。
まぁ、どんな奴かは知らんが俺様の前じゃソイツも部下たちの様に縮こまるしかねぇんだけどな)
オーガはニヤリと笑って二回にある隊長室へと向かう。
帝都警備隊隊長。文字の通り帝都を警備する者たちの一番上……つまり、彼が一声警備隊を招集すれば全員が集まり、彼が罪人だと言った人物が罪人になるのだ。
この街では誰もオーガには逆らえない、警備隊の隊長ということもあるのだが、もう一つ理由がある。
『鬼のオーガ』……鬼と呼ばれるだけあり、その剣の腕は鬼人の如く力強く、犯罪者たちから恐怖の対象であった。
まさに敵なし、オーガは帝都では王様の様な存在であった。
くどい様だが、彼の前ではいかなる人物も逆らえないのだ……唯一、逆らえるとしたら彼より上の階級である大臣や、実力を持つ将軍くらいであろう。
「おう、待たせたな。俺が警備隊の隊長オーガ……!?!?」
オーガが隊長室のドアを開けると、『こんばんは』と書かれた紙を持った少女が待っていた。
青紫色の髪をツインテールにし、ドレスアーマーを着た少女の姿に一瞬だけ停止するオーガであったが、直ぐに再起動する。
「こ、こんばんはであります!! エリア将軍」
見事なまでに直立して敬礼をするオーガ。
普段の彼なら絶対に見せない行動なのだが、相手が将軍では無理もない。
しかも、ただの将軍ではない、相手は賊軍三万をたった一人で皆殺しにし、殺戮人形と恐れられている将軍なのだ、鬼如きでは到底勝てるものではない。
『楽にしていいですよ』
人を殺せるとは思えないほど綺麗な手で文字を書き、オーガがいつも座っている正面のイスに座るように手を向ける。
言われるがまま……ではなく書かれるがままにエリアの指示に従い、自身のイスに座るオーガであったが、疑問に思うことがあった。
(なんで、エリア将軍がこんなとこにいんだ?)
エリア将軍の職務は基本的に賊軍の排除並びに帝都の治安維持である。
後者は帝都警備隊……オーガたちが目を光らせているので、余程の事件じゃないと将軍は動かない。
そして、エスデス将軍と同格とも言われているエリア将軍の実力は、前者の賊軍の排除にこそ輝くのだ。
そんなエリアが事件でもないのに態々自分に会いに来るとは、想像していなかった。
オーガは額に汗をかきながら、自分の目の前に座っているエリアを見る。
『殺戮人形』と恐れられているにも関わらず、エリアが身に纏っている気はとても静かで、禍々しいものではなかった。
目の前にいる美しい少女は傍から見ればたいした事ない存在であろう。
しかし、オーガは知っていた。エリアの実力を…………
『いつも見回りご苦労』
「恐縮です。エリア様もいつもお疲れ様です」
『そんなことはない』
カキカキ
『さて、早速だが本題に入る』
カキカキ
『私がここに来たのには』
「は、はい」
カキカキ
『理由がある』
「はっ…はぁ……」
(……もう少し、紙を大きくすればいいじゃねえのか? アレだと大変そうだ)
何枚も何枚も書いては見せ……を繰り返しているエリアに少し同情するオーガであったが、彼女が次に書いた内容を見た瞬間、オーガは銅像の様に固まる。
『賄賂ダメ!絶対!!』
帝具チラ見せで終わった主人公……そして、タツミくんは原作通りレオーネさんにお金取られてアリア宅にお泊りします。
がんばタツミ!!
主人公であるエリアさん、警備隊隊長オーガさんとお話です。
どうやら色々と考えている様で……って、オーガさんとの絡みとか需要あるんですかね……
感想書いて下さると作者のテンション上がります!!