とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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マザー・ミランダの娘の復活を手伝うマザールートです
今回は日記形式になります



マザールート

 月 日

私の拠点の1つに1人の女が訪ねてきた。表向きはハーブを商品として扱っている私の元に訪れた女の目的はハーブではなく、どうやら私の研究者としての力を借りたいらしい。擬態の能力を持っていた女は姿を変えると本来の顔を露にして、娘の復活を手伝ってほしいと言った。

 

マザー・ミランダが真正面から頼みに来るとは思っていなかったが敵対ではなく協力を求めてきたなら一考の余地はあると判断した私は、拠点にミランダを招き入れて詳しい話を聞くことにした。詳細を聞くと1909年6月に生まれた娘のエヴァを1919年8月にスペイン風邪で亡くしたミランダは、特異菌の菌根に記録されたエヴァの記憶を用いてエヴァの復活を考えていたらしい。

 

特異菌には人間の脳のように記憶を宿す力があるようだ。その力を応用してエヴァを復活させる、その為だけに実験を繰り返したミランダだがエヴァを復活させることはできておらず、実験は行き詰まっているとのことだった。特異菌に関する研究を長年続けているミランダが特異菌だけにこだわり過ぎているような気がした私は、精神と記憶の転移システムについて話をしてみる。

 

脳の情報を電気信号に変えて、別の脳に移し替えることで精神と記憶を転写する仕組みをミランダに説明すると凄まじい勢いで食い付いてきた。人間の脳は、非常に複雑な生物的マシーンそのものであり、マシーンである以上、記憶・感情・人格・その他全ては脳細胞や、その間を行き来する神経伝達物質内に埋め込まれたプログラム・ソフトウェア・情報パターンに過ぎない。

 

情報はいかに複雑だとしても情報であり、ハードウェアを交換する程度のことは可能だということだ。脳内で起こっていることのほとんどが、化学反応や電気信号の授受であり、そのネットワークが記憶を生む。

 

特異菌の菌根がエヴァの記憶を宿しているなら、その記憶をコンピューターに精神データとして転写して、新たな肉体の脳に精神データを転送すれば、エヴァは復活するのではないかとミランダに話したところで、ミランダが菌根からエヴァの記憶をコンピューターに転写する手伝いをしてほしいと言い出した。

 

機材を用意する必要があるのでしばらく時間がかかると言って連絡先を交換し、ミランダを帰らせたが、エヴァの復活の可能性を掴んだミランダは上機嫌で帰っていったな。とはいえエヴァの新たな肉体を用意する必要があるので研究設備も整えなければいけない。さほど手間ではないが少し時間がかかることになるだろう。

 

娘を復活させたい一心で動いてきたミランダはHCFやコネクションとも接触して、エヴリンを造り出した存在ではあるが、今ではエヴリンは私の家族だ。エヴァを復活させることが成功したなら、HCFやコネクションとミランダが接触することを禁止させるようにしておけばいい。

 

さて、少々忙しくなりそうだな。

 

 月 日

機材を揃えてミランダが待つ場所まで向かい、特異菌の菌根から記憶をコンピューターに転写していく。複数人の記憶が存在していたが、ミランダにチェックしてもらい、不必要な記憶をコンピューターから削除していった。残ったエヴァの記憶を精神データとして保存することに成功。まずは第一段階はクリアといったところだ。

 

次はエヴァの10歳2ヶ月の記憶を宿すことになる肉体が必要となることをミランダに説明して、ミランダから細胞を採取してクローンを造る許可を取る。新しいエヴァの身体は、病魔に負けることのない強い身体にしてほしいとミランダからリクエストされたので、免疫力を高めた身体にしておくことにした。

 

クローン技術によって細胞から肉体の生成を行うことは、元アンブレラの研究員であった私には造作もないことだ。細胞を使って1から肉体を造るには時間がそれなりにかかるが1ヶ月もあれば、10歳2ヶ月の肉体を造り出すことは可能であるが、生物兵器を造る訳ではないのであまり急速に成長させ過ぎると寿命に問題が出てくることになる。

 

とはいえその点に関しては改善することは不可能ではない。寿命に関しては問題はないと判断していいだろう。問題があるとするならミランダがこれまで行ってきた実験の結果が村人達の害となっていることだ。なんだ四貴族とは、それについては聞いていないぞミランダ。

 

特に害があるのはオルチーナ・ドミトレスクという巨女であり、村人達からは吸血鬼と言われているようだった。村人達も何人かドミトレスクの城まで連れ去られているらしい。とりあえず、ミランダにどうにかしろと言っておくことにした。

 

自分の配下の手綱くらいしっかりと握っておきなさい。

 

 月 日

エヴァの新たな肉体が完成した。外科手術で記憶を焼き付ける為の生体チップを埋め込むことにも成功し、埋め込まれたチップは徐々に溶けはじめて体外に排出されるので、生体チップが体内に残ることはない。続けて特異菌の菌根からコンピューターに精神データとして転写したエヴァの記憶を新たな肉体に転送していく。

 

1909年6月に生まれてから1919年8月にスペイン風邪で亡くなるまでのエヴァの記憶を転送し、精神データに含まれているエヴァの人格も転送する。記憶と人格の調整を行った肉体が自然に目覚めるのを待つこと数十分が経過したところで目覚めた肉体が、間近にいたミランダを見て「ママ」と言った。

 

大粒の涙を流して新たな肉体で復活したエヴァを抱き締めたミランダは、娘の名前を何度も呼びながら喜んでいたな。とりあえずしばらくは親子2人だけにしておこうと思った私は部屋の外に出て、成功して良かったと考えていたが、この成果は公表しないほうがいいと判断して、胸にしまっておくことにした。

 

精神と記憶の転移システムの成功例であるセルゲイとスペンサーがいたことから、成功する確率は高いと見積もっていたが、死に別れた親子が再び再会することができたのは悪いことではないだろう。しかしこの技術が悪用されれば世界に無用な混乱を招くことになるのは間違いない。

 

感動の再会が終わった頃にミランダへ娘が復活したことは口外しないように釘を刺しておく。了承したミランダは、決して口外することはないと固く誓っていたが、何処からどう情報が漏れるかはわからないので私も気を付けておくことにした。

 

 月 日

ミランダとエヴァの親子が新生活をおくれるように支援することにした私は、新たな住居と名前はそのままだが新たな身分と充分な生活費を支給する。娘が可愛いからといって甘やかし過ぎないようにとミランダに忠告して、新生活を始める2人の門出を祝った。お祝いの1つとして私がエヴァにプレゼントした熊のぬいぐるみは気に入ってもらえたらしい。

 

ちなみに四貴族は、どうしたのかをミランダに聞くとドミトレスクを処理したそうだ。ドミトレスクは生かしておくと好き勝手やりそうだと判断して処理したようで、何人もの犠牲者を出していたドミトレスクが消えて村人達も胸を撫で下ろしたことだろう。モローはミランダの家族になりたかったみたいだが、ミランダには拒否されて傷心中。

 

人形使いのドナは人形屋敷に引きこもっており、害はない。ハイゼンベルクは自由になりたがっていたので自由にしてやったそうだがミランダへの反逆を考えていたハイゼンベルクは、困惑しながらも自由を謳歌しているらしい。ミランダから聞いた四貴族の近況はこんなところだ。

 

まあ、村人に被害を出していたドミトレスクを処理したことは悪いことではないか。それはそれとして、エヴァの頭を撫でながらミランダが「この子には父親が必要だと思うのだが」と言って私のことをじっと見つめてくるのはどうにかしなければいけないな。私には妻も子どももいるんだから別の相手を探してくれないだろうか。

 

その内ミランダ対アレクシアの戦いが勃発しそうで困るんだがね。

 

 月 日

長い時を越えてようやく娘であるエヴァと再会したミランダは完全に親バカとなっていた。ことあるごとにエヴァについて語り、自慢してくるミランダは、私以外に娘について話せる相手がいないからか、ちょくちょく直通の電話で私に連絡してくる。

 

娘であるエヴァが可愛いのはわかったので、母親のミランダにはもう少し冷静になってもらいたいものだが、まあ、長い年月を娘の復活を願って実験を繰り返していたミランダの念願が叶ったのだから、喜びのあまりこういう行動に出てしまうのも仕方がないかもしれない。

 

愛する家族がいるということは、とても幸せなことだ。亡くした娘とまた出会えたミランダの喜びはとてつもなく大きいのだろう。家族を大切にすることは悪いことではないので、多少ミランダが親バカになっていたとしても許容しておくとしようかね。

 

私よりも歳上なのだからもう少しミランダには落ち着きをもってもらいたいとは思うが、時が経てば自然に落ち着きを取り戻す筈だと信じようじゃあないか。

 

それまでは我慢するしかないな。

 

 月 日

非常事態だとミランダに呼ばれたので直接私が出向いて会いに行くことにした。向かった先の一軒家でエヴァにそっぽを向かれておろおろしているミランダを発見。どういうことかを聞くとエヴァに構い過ぎてエヴァに嫌がられてしまったらしい。非常事態とは何事かと思えば、このことかと呆れてしまったが、ミランダにとっては非常事態だったようだ。

 

「どうすればいいのだ」と言っていたミランダは完全に困っている様子であったので、親として適切な距離感を学びなさいと言っておいた。長く生きすぎて自然な接し方を忘れてしまっていたミランダは、エヴァが可愛くて片時も離さなかった結果、エヴァがミランダにべたべたされることを嫌がったらしく、現在に至る。

 

娘に拒絶されてショックを受けていて使いものにならないミランダは放置し、私はしゃがんでエヴァと目線を合わせて「きみのママは、きみが大好き過ぎてついつい構い過ぎてしまったようだが、ママのことが嫌いになった訳ではないんだろう?」と聞いてみた。

 

頷いたエヴァは「ママが離してくれないのが嫌だっただけで、ママのことは嫌いじゃないよ」と答えてくれたので、やはりミランダを嫌っている訳ではないらしい。甘えん坊ではないエヴァは、自分のことは自分でやりたいと考えているようだった。

 

ミランダとエヴァはお互いに話し合う必要があるのだろう。エヴァのことを考えずにただ可愛がっていただけのミランダに問題があったということだな。ミランダの娘であるエヴァが生きているなら意思があるのは当然だ。言わなければ伝わらないことがあるのだから互いに理解し合う為には会話が必要になる。

 

ミランダがエヴァのことを本当に大切に思っているなら、エヴァとしっかり話をして、彼女がどうしてほしいのかを知らなければいけない。母親として娘を育てるなら娘のことを考えなければ駄目だ。ちょっと娘にそっぽを向かれただけで何もできなくなるようでは先が思いやられるな。

 

かつてはミランダも母親だったのだから、もうちょっとどうにかならなかったのかと言いたいところだ。娘への想いが行き過ぎていることが原因なのかもしれないが、エヴァに対して打たれ弱過ぎるだろう。

 

とりあえず私が買ってきたケーキと引き換えに、ようやくミランダと話すようになったエヴァは「あんまりべたべたしないでほしい」とミランダに言っていたな。今後似たようなことがあった場合は、親子だけで解決するようにと言った私が立ち去ろうとしたところにミランダが引き留めてきた。

 

何かと思えば「エヴァに拒絶されずに触れ合う方法を一緒に考えてほしい」と言うミランダ。自然に接すればいいと言っても、それがわからないと答えるミランダは、育児の仕方を完全に忘れてしまっているらしい。

 

手本になるかはわからないが、私が家族と接する時に気を付けていることを教えておいた。ミランダは私が教えたことをメモに書き込んでいるが、しっかり活用されるかは今後次第だ。すっかり新米ママとなっているミランダがエヴァの母親として、もしエヴァが悪いことをしたらちゃんと叱れるかが心配だな。

 

とはいえ赤の他人である私が気にし過ぎることではないような気もするが、エヴァを復活させる手伝いをした身として、気になると言えば気になるのも事実。まあ、これからも私にできる範囲でミランダとエヴァの親子を気にかけておくことにしよう。

 

ミランダには母親として頑張ってもらわなければいけないな。この世でエヴァの母親はミランダしかいないのだからね。

 

だから、大切な家族と今度こそ幸せになりなさい、ミランダ。




ネタバレ注意
バイオハザードヴィレッジの登場人物

ドナ・ベネヴィエント
人形使い
四貴族の1人だが主人公であるイーサンと直接の戦闘はない
アンジーという人形を操る
イーサンに幻覚を見せて翻弄するが、イーサンによってハサミを頭に何度か突き刺されて死亡する

アンジー
かわいい?お人形
花嫁のような格好をしている人形
幻覚を見せられていたイーサンはアンジーにハサミを何度も突き刺すが、幻覚が解けるとそこにあったのはドナの死体であった

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