とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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ミランダと戦うヴィレッジルートです
日記形式ではありません
消して書き直すかもしれませんがとりあえずお試しで投稿してみます


ヴィレッジルート

雪が降る街中を歩く女が居た。女は特異な菌によって人並み外れた力を持ち、容姿を擬態により変えることができる。今現在の容姿は女本来のものではなく、ある女性に擬態したものとなっていた。これから女が向かう先にいる相手を油断させる為に行っている擬態であり、擬態の元になった女性を配下の四貴族の1人に足止めさせていた女は、それでも長くは持つまいと考えて足を早めていく。

 

娘を蘇らせることだけを目的としている女は、その為ならどんなことでもできる。邪魔をするものを殺すことも、幸せそうな家族から生まれたばかりの赤子を奪うことすらもできてしまうだろう。女は既に狂っていたのかもしれない。それはもはや子を想う母の愛などとは言えなかった。

 

我が子の為に生まれたばかりの赤子を利用しようとしている女は、歩みを止めることはない。もう止まるつもりはない女は辿り着いた一軒家のインターホンを押した。

 

「開けてくれないかしら、鍵を落としてしまったの」

 

そう女が言うと玄関が開き、白衣を着ている男が顔を出す。白衣の男は女を家に招き入れて玄関の扉を閉めた。部屋の中へ入り込んだ女は目的の赤子を連れていく為にベビーベッドまで近付いていったがベビーベッドはもぬけの殻であり、赤子の姿はない。

 

これはどういうことかを考えていた女の後頭部に白衣の男が構えた大型自動拳銃が押し当てられた。完全に気配を消していた男の動きを感じ取ることができていなかった女は、目的ばかりに気を取られ過ぎていたかと自嘲する。女が行動するよりも白衣の男の指が引き金を弾く方が速いと判断した女は1発は喰らうしかないと諦めた。

 

擬態を見破られる可能性はあると考えていた女は焦ることもなく口を吊り上げて笑うと白衣の男へ問いかける。

 

「何故、わたしが本物ではないと解った」

 

女の問いかけにつまらないことを聞かれたかのように呆れた顔をした白衣の男は答えた。

 

「この家の玄関は、家族全員が登録している指紋認証になっているからだな」

 

「だからそもそも鍵は必要ない」

 

最初から本物ではないことが解っていた白衣の男は女を逃がさない為に、わざと家に招き入れたようだ。女の正体を知っている白衣の男は、今日此処で始末するつもりであり、大型自動拳銃には特異な菌に効果がある特製の弾が装填されている。

 

「まぬけは、わたしの方か。いいだろう、撃つがいい」

 

余裕を崩すことなく銃で後頭部を撃たれることを許容する女は、撃たれた程度で死ぬことはないと確信していた。その余裕を感じ取っている白衣を着ている男は、1発程度では死なないと思っているのは此方を舐めているのだろうなと思っていたがそれを言葉にすることはない。

 

「言われなくても撃つさ」

 

銀色の大型自動拳銃L・ホークの引き金が弾かれると、銃声が防音設備の施された家の中に響き渡っていく。後頭部を50口径の大型自動拳銃の弾丸で撃ち抜かれた女の身体がよろめいた。まともな人間であるなら生きてはいられないが女は、まともな人間ではない。

 

白衣の男が開発した銃弾は特異な菌で人並み外れていた女に確かにダメージを与えていた。傷が塞がっておらず、穿たれた穴から血液が垂れる。想像以上に効いている特製の銃弾は女の身体を蝕んでいたが、そうと知った女の決断は速く、伸ばした鋭利な爪で自らの後頭部を切り落とし、銃弾を撃ち込まれた部位を切除した。

 

「まさか、ここまでしなければいかぬとは、想像以上に恐ろしい銃弾だ」

 

甘くみていた己の予想を越えた銃弾を脅威と判断した女の切り落とした後頭部が再生されていく。確かに効果があったことを実感している白衣を着た男は、弾丸に仕込める程度の少量で効果があるなら大量に注入すれば、始末することは不可能ではないかと考えた。再び大型自動拳銃を構える白衣の男に女は擬態を止めた本来の容姿で伸ばした鋭利な爪を向ける。

 

「お前の心臓を抉り出して、実験材料に加えてやろう、ジョン」

 

「その前に貴様を始末させてもらうとしようか、ミランダ」

 

白衣を着た男、ジョンと擬態を止めた女、ミランダが狭い室内で対峙すると銃声が連続して鳴り響いていく。脅威と判断した銃弾を避けることを選んだミランダだが、避けた先に回り込んだジョンが撃つ銃弾が幾つか身体にめり込んだようで、身体の動きが鈍る。トドメを刺す為に特異な菌を死滅させる薬品が装填されたアンプルシューターを取り出したジョン。

 

死ぬわけにはいかないと瞬時に判断したミランダは跳躍して天井を突き破ると家屋の外へと逃げた。それを追って家屋の屋根まで上がったジョンが再び大型自動拳銃を撃つが、翼を生やして飛んだミランダに銃弾が当たることはない。

 

背から生やした翼で飛翔したミランダは体内に撃ち込まれた銃弾付近の肉ごと抉り取って肉体を再生させていく。完全に再生した肉体でどうやってジョンを排除しようか考えていたミランダは、保険を用意しておいて正解だったとほくそ笑む。

 

「出番だぞ、ハイゼンベルク!」

 

念のためにミランダが呼び寄せていた四貴族の1人であるカール・ハイゼンベルクが金属を操りジョンへと飛ばす。ついでとばかりにジョンが持っていた大型自動拳銃まで操られてはるか彼方まで飛ばされていってしまう。飛ばされた金属を避けていきながら帽子を被った男、ハイゼンベルクに近付いたジョンが左腕で殴りかかった。

 

しかし金属が含まれているジョンの左腕義手までもがハイゼンベルクに操られてしまい、操られた左腕義手に引かれたジョンの身体がハイゼンベルクから大きく引き離されていく。瞬時に左腕義手を外したジョンは片腕になろうと迅速に疾走し、ハイゼンベルク目掛けて駆ける。接近しながら放たれた一撃。

 

「おっかねぇな、だが俺だけに気を取られてていいのかい」

 

繰り出されたジョンの拳を受けてひしゃげた鉄槌を見ながらそう言ったハイゼンベルク。瞬く間にジョンの背後へと近寄っていたミランダが伸ばした鋭利な爪で首を切断しようと振るう。常人の目にも止まらぬ素早さで首に向けて振るわれた爪を横に跳躍して避けたジョンへと金属が降り注ぐ。

 

高速で降る金属の雨を回避し続けていくジョンに向けて、ミランダは菌を操り地面から生やした樹木のような物体を伸ばす。急速に成長したそれはジョンを天高く押し上げようとするが迷わず後方に跳んだジョンは距離を離されることを避けた。金属を自在に操るハイゼンベルクは凄まじい速度で金属を射出し、それをジョンは回避していく。

 

「力を解放しろハイゼンベルク」

 

ミランダはそう言うとジョンの動きを封じ込むように菌で生やした樹木でジョンを縛りつける。数秒程度しかジョンの動きを封じることはできなかったが、ハイゼンベルクが力を解放するには充分な時間であったようだ。金属に覆われたハイゼンベルクの身体から生える腕の先には巨大な丸鋸がついており、ジョンに向けてそれが振り下ろされた。

 

「さあ、この鋼の身体に平伏すがいい!」

 

そういいながら腕を振り回したハイゼンベルクによってジョンが住んでいた家は破壊されることになる。丸鋸によって切り刻まれた家は残骸と化し、ジョンの子ども達が避難している地下室以外は全てが壊されてしまう。頑丈な地下室以外は瓦礫となった家を見て、それなりに思い入れはあったんだがなと思ったジョンは異形と化したハイゼンベルクを睨んだ。

 

ハイゼンベルクに一瞬意識が向いていたジョンへと鋭利な爪による刺突を行ってきたミランダの攻撃は全て人間の急所を狙っており、頭部や心臓に臓器を狙うミランダはジョンを殺そうとしていた。目的を達成する為にジョンが邪魔になると判断しているミランダは、ジョンを排除する為に考える。

 

一方その頃本物のアレクシアが何をしていたかというと、長身と言うには大き過ぎる妙齢の女性、オルチーナ・ドミトレスクと殺し合いをしている真っ最中であった。四貴族と呼ばれるミランダ配下の1人であるドミトレスクは、伸ばした刃の様な爪でアレクシアを切り裂こうとするが、振り下ろした爪は空を切り、くるりくるりと回転したアレクシアの遠心力も加わった上段廻し蹴りがドミトレスクの顔面に叩き込まれていく。

 

「よくもわたしの顔に!」

 

強い怒りを露にするドミトレスクは顔に蹴りを入れられたことを屈辱に感じていたようだ。怒りで冷静さを欠いているとしてもミランダの言いつけを守り、アレクシアを足止めしているドミトレスクはミランダの役に立っていることは間違いない。ウィルスの力を解放したアレクシアを相手にして、まだ生きているドミトレスクも普通の人間ではないことは確かだ。

 

ジョンが用意してくれた武器を使ってみましょうかと考えていたアレクシアは、ウィルスを解放しても燃え尽きることのない特製の衣服に装着したバックパックからナイフを取り出す。

 

そのナイフの刃には古今東西の猛毒が塗り付けられており、常人が刺されれば確実に無惨に死亡する代物であるナイフを構えたアレクシアは、ウィルスを解放したことで強化された脚力で瞬時に間合いを詰めるとドミトレスクの腹部にナイフを突き刺した。

 

苦しみ悶えるドミトレスクの身体が膨れ上がっていき、西洋の竜とも言える形へと姿を変える。竜の背から本体とも言える部位が生えており、そこが弱点であると判断したアレクシアはバックパックから取り出した黄金の拳銃、ゴールドルガーを構えて本体に狙いを定めていく。

 

「光栄に思うことね!この姿を見たのはミランダ様以外ではお前が2人目よ!」

 

姿を竜に変えようと傲慢さは消え去っていないドミトレスクは、高らかに言い放つと翼を羽ばたかせて空へと舞い上がる。拳銃では届かない射程にまで離れたドミトレスクに、ゴールドルガーを下ろしたアレクシアは、さて、どうしようかしらとドミトレスクをどうやって倒そうかと考えていた。

 

「骨まで喰らい尽くしてやる!」

 

そう言いながら上空から降りてきたドミトレスクは、竜の顎門を開きアレクシアへと噛みつこうとする。前方へと跳躍し、噛みつきを回避したアレクシアは、ドミトレスクの竜の背に乗り、背から生える本体へと向けたゴールドルガーを至近距離で連射。特異な菌を死滅させる薬品が弾頭に仕込まれた銃弾がドミトレスクの身体を蝕んでいく。

 

「綺麗に燃えてね」

 

銃弾で抉られたドミトレスクの傷口に手刀を突き入れたアレクシアは発火する血液をドミトレスクに流し込んでいき、竜を燃やし尽くす炎を発生させた。注がれた血液から生み出された高温の火がドミトレスクを焼き尽くしていく。焼かれていくことしかできないドミトレスクは残された最期の力で言葉を発する。

 

「呪ってやる」

 

そう言葉を残したドミトレスクは完全に焼き尽くされて完全に灰となり、その場には灰しか残ることはない。

 

「呪われてるのは貴女でしょう」

 

残った灰に向けて言ったアレクシアは、ジョンと子ども達の元へ全速力で駆けていく。しっかりと足止めされてしまったことを理解していても不安な気持ちがないのはアレクシアがジョンのことを信じているからだ。ジョンならばきっと負けることはないとアレクシアは信じている。

 

「それに、ジョンだけではないのよ」

 

貴女の思い通りにはならないわよミランダと考えたアレクシアは微笑むと、更に走る速度を上げた。もはや残像が残る速度で駆けているアレクシアを常人の目では捉えきれない。ウィルスを解放したアレクシアの肉体は人の領域を容易く踏み越えていく。

 

上空から降ってくる形で戦いに乱入したモーフィアス・D・デュバルは、異形と化したハイゼンベルクの脳天に右腕の爪を突き立てると全力でプラズマを叩き込む。悲鳴を上げるハイゼンベルクが脳天に爪を突き立てているモーフィアスを切り裂こうと丸鋸の様な腕をモーフィアスに近付けたが、金属で作られていた腕は電磁バリアによってモーフィアスに届くことはない。

 

帯電しているモーフィアスには荷電粒子ライフルなどの特殊な武器を使うか肉弾戦を挑まなければ倒すことは不可能だ。もっともウィルスによって肉体が変化しているモーフィアスに肉弾戦で勝てるのは、ウィルス適合者かミランダ等の菌によって力を得た者達だけだろう。

 

力を解放していない素手のハイゼンベルクなら勝負になっただろうが、今の異形となったハイゼンベルクの身体は金属に覆われていてモーフィアスにまともに攻撃を当てることは不可能となっていた。相性が最悪であるハイゼンベルクとモーフィアスの戦いは、モーフィアスの有利に進んでいて、ハイゼンベルクの敗北は目前に迫っている。

 

ミランダは既にハイゼンベルクを切り捨てたのか気にすることなくジョンを狙っていたが、他の四貴族も投入する必要があるかと考えていたらしい。合図を送ったミランダは、背に翼を生やして飛ぶ。直後に流れ込んできた大量の水を見たジョンは、子ども達に地下室から出るように言った。

 

水を避けるようにオグロマンを元に作られた巨大なモールデットの手に乗るジョンの息子とエヴリンに、エヴリンに抱えられた、ジョンとエヴリンの娘である赤子を見たミランダは、目的であるエヴリンの娘に狂喜に満ちた眼差しを向ける。自らの悲願を達成する為に他者の家族を犠牲にしようとするミランダ。

 

大量の水に流されまいと踏ん張っていたジョンに、力を解放して巨大な魚のような姿になっていたサルヴァトーレ・モローが迫る。それを見たエヴリンが作り出した2体目の巨大なモールデットがモローを掴み取り、持ち上げていく。水から引き出されて露になったモローにジョンの息子が素早く投げた薬品が詰まったアンプルが突き刺さった。

 

その薬品は特異な菌を死滅させる薬品が詰まったアンプルであり、注入されたモローの身体が薬品によって崩れさると、もはや何も残ることはない。子ども達に助けられたなと思ったジョンは、巨大なモールデットを駆け上がると子ども達の元へ向かう。

 

「パパ、これ使って」

 

ジョンの息子が持っていた予備の左腕義手と、特殊合金の槍を受け取ったジョンは左腕義手を装着して槍を持つ。エヴリンに指示を出したジョンは、巨大なモールデットを幾つか作り出させると、それを足場にミランダへと接近していき、槍を振るう。

 

「まだだ、俺は、ミランダを」

 

そう言葉を残して絶命したハイゼンベルクから爪を引き抜いたモーフィアスは、戦況を確かめてジョンの援護をする為にモールデットを駆け上がり、ミランダへとプラズマを放射する。プラズマを避けたミランダの背中へと続けて放たれたアレクシアの火球が直撃し、背の翼を燃やし尽くされたミランダが落ちていく。

 

上空から落ちるミランダへとモールデットから跳躍して接近したジョン。抵抗する為に伸ばされたミランダの鋭利な爪を瞬時に右腕で握った槍で弾き上げたジョンは左腕義手に握るアンプルシューターをミランダの眉間に押し当てて引き金を弾いた。特異な菌を死滅させる薬品が詰まったアンプルシューターは強化プラスチックで作成されていた為に、ハイゼンベルクに操られることはなくジョンの手元に残っていたのだ。

 

死滅していく肉体を感じていたミランダは落ちていく最中にエヴリンが抱える赤子へと手を伸ばす。それは娘を亡くして狂っていても母親として、娘を求める母親として、愛する娘とまた会いたいという一心で手を伸ばした。

 

「エヴァ」

 

最期の最期に愛する娘の名を言ったミランダは、落ちていく最中に全身に回った薬品の影響で身体が崩れさり、ジョンと共に水に落ちた瞬間にはもうミランダの身体は残っていない。こうして戦いは終わったが住む家が無くなったジョン一家は、しばらくホテル暮らしとなったようだ。

 

娘を取り戻したいと思った母親が引き起こした今回の出来事で自分がもしも家族を亡くしたら、自分はどうするだろうかと考えていたジョンは、死んでしまった愛する家族に、また会いたいと思うのは自然なことなのかもしれないなと思っていた。

 

たとえ、誰を、何を、犠牲にしたとしても、また会えるのなら、その道を私も選ぶかもしれない。だが、今は違う。愛する家族は生きている。生きているんだ。私は私の家族を守る為に戦ったことに後悔はない。

 

私の愛する家族を奪おうとせず、娘の蘇生を手伝ってほしいと素直に頼まれたなら、私は手伝っていたかもしれないが、と考えてジョンは、もう終わった話だがねと頷いて日記を開いた。




ネタバレ注意
バイオハザードヴィレッジの登場人物、またはボス紹介

オルチーナ・ドミトレスク
城の主
イーサンの血を吸ったりする人
イーサンに猛毒が塗ってある短剣で刺されてドラゴンに変身
その姿をミランダも見たことがあるらしい

サルヴァトーレ・モロー
怪人
イーサンの前で何かゲロ吐いてた人
巨大な魚のような姿に変身する
四貴族の中で1番人間離れした姿をしている

カール・ハイゼンベルク
工場長
金属を自在に操る力を持つ
力を解放すると異形と化し、丸鋸のような腕となる
ミランダに反逆しようと考えていてイーサンに、組まないかと提案したりもするがイーサンに断られて戦いとなる
日本語版の声が大塚さんに似ているが違う人である

マザー・ミランダ
かつて亡くした娘であるエヴァを取り戻す為に、イーサンの娘であるローズマリーを拐って、菌根の記憶を受け継ぐ力を使ってローズマリーでエヴァを取り戻そうとしたが失敗
ローズマリーに力を奪われて弱体化したところをイーサンに倒される

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