とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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後日談その15

 月 日

ヨーロッパの寒村から回収した原種プラーガを改良して兵器としての純度を高めたものが、トライセル製薬部門が開発したプラーガのタイプ2だ。プラーガに生物学的、遺伝学的な改造を施すことで、寄生方法や精神支配の即時性を高めた寄生体となっている。原種プラーガでは、寄生体が卵の状態で人間に寄生し、数時間かけて成長しながら宿主の精神を支配していたが、タイプ2ではすでに成長した寄生体を人間に投与するため、精神支配の効果が直ちに現れるようになっているようだ。寄生方法は経口投与、つまり感染者が人間に直接口を押し付けて寄生体を流し込むという強引なもので、寄生体はそのまま食道を突き破って体内へと侵入し、延髄を手始めに脳、脊髄などの中枢神経に寄生。10秒という僅かな時間で精神の支配を完了する。感染後は宿主の知性がそのまま残り、身体能力も寄生された人間のものに依存するという点で原種プラーガと共通だが、感染者が積極的に仲間を増やそうとするという行動は、タイプ2独自のものといえるだろう。タイプ2に寄生された人間は生物兵器を売買する商人の間でマジニと呼ばれている。これは現地の言葉で悪霊を意味する言葉であり、プラーガという生物に乗り移られて自由を奪われた彼等には相応しい呼び名と言えよう。

 

アフリカ・キジュジュ自治区でプラーガ・タイプ2の最終評価試験が行われた後、トライセルでは身体能力を飛躍的に向上させた兵士を作り出すために、プラーガを更に改良する研究が行われた。そこで誕生したのが、改良型プラーガ・タイプ3である。これは原種プラーガに死んだ支配種プラーガの因子を移植したもので、実地試験の結果、様々な課題を研究チームに突き付けた。まず、定着率の低さ。成人男性への定着率が92%と通常のプラーガ並みだったのに対して、女性や子供への定着率はほぼ0%だった。次に問題となったのは外見の著しい変化で、一部の被験者は3m近くまで巨大化したからだ。これでは目標とする生物兵器にはほど遠い。失敗の原因は、死んだ支配種プラーガの因子が強すぎるためと思われたが、被験者の中には飛躍的に跳躍力を進化させた者もいたため、次の研究に繋げるための布石として許容範囲とされた。こうしたトライセルが残した研究の成果は生き延びた元トライセルの研究員達から世界へと広げられて、今現在もプラーガ研究は進められている。タイプ3を越えたタイプ4のプラーガも今では存在しているそうで強すぎた死んだ支配種プラーガの因子を弱めて身体能力の向上と定着率を高めた代物であるそうだ。常人を越えた身体能力を持ち、男女共に変わらない定着率があるタイプ4であるが「P.R.L.412」などの特殊な放射線に弱いところは変わっておらず弱点が残ってしまっていることから対策を立てられてしまえば脆いという問題がある。唯一の弱点であるそれを改善するために躍起になっている組織は幾つも存在しているが、改善できたという組織は1つもない。そう簡単にはいかないのは当然のことだ。

 

 月 日

トライセル・アフリカ支社長を務めていたエクセラ・ギオネは、飛び級で大学に入学して遺伝子工学を専攻したほどの才女で、貿易商の血筋ということもあって経営の才にも恵まれていた。頭脳明晰な彼女は、若干18歳でトライセル製薬部門の一員となるが、彼女の類いまれなる才能に目をつけたのがウェスカーだ。アルバート・ウェスカーはエクセラと接触し、自らがアンブレラから奪い取った機密情報を彼女に惜しみなく提供し、商品開発に生かすように促した。tウィルス、Gウィルス、そしてtーVeronica。エクセラは、アンブレラの技術を転用することでトライセルのBOW開発を活性化させ、製薬部門の生物兵器事業を大きく躍進させた。こうして会社の功労者となったエクセラは、社内での発言力を強め、20歳代でアフリカ支社長のポストにまで上り詰めることになる。ウェスカーがエクセラにアンブレラの情報を提供した背景には、ウェスカーが開発を進めていたウロボロス・ウィルスを、トライセルを利用することで完成させるという思惑があったからに他ならない。権限を持ったエクセラに対して、始祖ウィルス研究のために建設されたアンブレラ・アフリカ研究所の復活を進言。エクセラはウェスカーに対して芽生えた恋愛感情も手伝い、狙い通り地位を利用してアフリカ研究所を復元させ、アーヴィングを手駒に闇市場でBOWを売買しては、ウェスカーに研究資金を提供し続けた。始祖花から生成された初期のウロボロス・ウィルスは、毒性が強すぎるためにそのままでは使用できない。

 

この特性によって研究は予想以上に難航したが、2006年、被験体第1号にある変化が見られたことで、研究は大きな転機を迎えた。被験体の体内から、問題の毒性を弱める強力なウィルス抗体が発見されたのである。これもすべては、被験体が過去にtウィルスに感染し、ワクチンで駆逐した後も変異したtウィルスの残滓が体内に潜在していたおかげであった。この被験体第1号となっていたのがSTARS元隊員のジル・バレンタイン。2006年のスペンサー逮捕の際に死亡したと思われていたが、実験に利用しようと考えたウェスカーの手によって命を救われ、長い間冷凍睡眠状態にされていたのである。これが結果的にジルの体内に純度の高いウィルス抗体を生み出し、ウロボロス・ウィルスの毒性を弱める手段となったことは、奇跡としか言いようがない。理想を実現するための最後の切り札、ウロボロス・ウィルスが完成したことで、ウェスカーは歓喜したことだろう。もっともその理想を実現させることはできなかったがね。私とクリス君達がウェスカーの理想を阻止して、ウェスカーに死を与えた。協力者であったエクセラ・ギオネも情報を全て搾り取ってから始末させてもらったが、必要な情報はメモに書き写して残しておいたからクリス君達に不都合が生じることは無かった筈だ。

 

 月 日

人々の健康を庇護する。これは、製薬会社アンブレラが掲げる社訓であった。しかし、それは健全な企業を装うためのもので、実態はウィルス研究とBOW開発を主軸とした非合法組織であることは確かだ。1968年に創設されて以来、世界的な巨大複合企業にまで成長を遂げたアンブレラだが、同社誕生のきっかけは19世紀にまで遡る。当時、海運貿易会社トラヴィス商会を営むトラヴィス家の一員であるヘンリー・トラヴィスは、連日のように新聞紙面を賑わすアフリカ探検の記事に触発され、私財をなげうってアフリカ大陸へと旅立った。大陸全域を対象とした彼の冒険記録は、後に全72巻にも及ぶ大探検史「博物総覧」として編集されるが、その緻密過ぎる内容ゆえに世間からはヘンリーの創作と受け止められ、珍奇本の一種として少部数しか出版されなかったようだ。それから約1世紀。一部の好事家の愛読書でしかなかった「博物総覧」は、思わぬ形で再評価されることになる。名門貴族の出身であり、後年アンブレラ総帥となるオズウェル・E・スペンサーが、この本に記されていた民俗学的側面に着目したからだ。スペンサーが興味を示したのは、ンディパヤ族の儀式に関する記述。食することで絶大な能力を手に入れられるとされた「太陽の階段」という花だった。

 

この謎の花を調べるために、スペンサーは1966年にウィルスの権威であるジェームス・マーカスと貴族仲間のエドワード・アシュフォードを引き連れ、アフリカ調査に乗り出したのだ。そして「博物総覧」をもとにンディパヤ族の土地を調べた結果、古代遺跡の深部に「太陽の階段」が生息している唯一の場所、いわゆる「太陽の庭」があることを突き止めたのである。「太陽の階段」の研究は、マーカスと彼の弟子である主任研究員ブランドン・ベイリーを中心に進められた。度重なるンディパヤ族の襲撃に神経を磨り減らしながら、ただ可能性だけを信じて研究に明け暮れる過酷な日々。これにはマーカス博士も憔悴しきるほどだったが、研究に3ヵ月を費やしたある日のこと、遂に彼等の苦労が報われる瞬間が訪れる。マーカスの推測通り、花の中から生体遺伝子を組み換える未知のウィルス「始祖」が発見されたのであった。マーカスはさっそくこの花を「始祖花」と命名し、設備の整った自分の研究施設に持ち帰ったが、しかし、飛躍的な進展が期待された始祖ウィルスの研究は、以外にも短期間で頭打ちになってしまう。研究施設内で「始祖花」の量産を試みた結果、咲いた花の中に始祖ウィルスが存在しないことが判明したのである。土、水、気温、湿度、日照時間。あらゆる条件をアフリカの環境と同じにしても、「始祖花」は異常な速さで花を付けるだけで、始祖ウィルスの発生までにはいたらない。アフリカから持ち帰った始祖ウィルスは早々に底をつき、気付けばなんの成果もないまま1年の歳月が流れていた。そこでスペンサーは「始祖花」を安定供給するためにンディパヤ族の土地「太陽の庭」を奪うことを計画し実行に移す。

 

1968年、スペンサーは世間の目を欺き、本格的なウィルス研究を推進するためにマーカスやアシュフォードにカモフラージュ会社の起業を持ちかけた。「製薬会社アンブレラ」の誕生である。始祖ウィルス研究が暗礁に乗り上げつつあったマーカスは、スペンサーの誘いを受け入れ、アンブレラの傘の下で研究を練り直すことを決意。しかし、アンブレラ創設後、マーカスがアフリカの地で始祖ウィルス研究を再開しようとした途端、スペンサーはマーカスをラクーンシティに建設したアンブレラ幹部養成所の初代所長に任命した。研究に参加できないことを悔やむマーカスだったが、アフリカに建設予定の研究所を一番弟子のベイリーが受け持つことを知り、やむなくスペンサーの要求をのんだ。マーカスの意志を受け継いだベイリーが、再びアフリカを訪れた頃には、すでにンディパヤ族は遺跡から追い出され、武装した兵士が警戒する中で着々と工事の準備が進んでいた。研究所の建設は意欲に燃えるベイリーの監督下で進められ、その規模は当初の予定よりも3倍の大きさまで拡大。実験棟を建設する際、予定にない突貫工事によって一時は「始祖花」へ水を供給する地下水脈の流れが変わってしまうというアクシデントに見舞われたが、工事責任者が地下500mの位置に別の地下水脈があることを突き止め、ファビアノ社製の最新型ポンプシステムを設置し、結果的には安定した水源を確保。1969年6月、始祖ウィルス研究の最前線として「アンブレラ・アフリカ研究所」が完成した。

 

所長に就任したベイリーは、さっそく「始祖花」から始祖ウィルスを抽出しては、サンプルをマーカスがいるアンブレラ幹部養成所へ送り続け、恩師の成功を願っていたようだ。マーカスは始祖ウィルス研究の第一線に返り咲き、独自の研究を再開。そして10年後の1978年1月、始祖ウィルスの特性を強化するためにヒルのDNAを組み合わせた結果、遂にBOW開発の礎となる「tウィルス」を生み出すことに成功する。この研究成果は、アンブレラ創始者としての地位奪還を模索していたマーカスの悲願であり、同時にスペンサーのしたたかな狙いでもあった。全てはスペンサーの謀略。スペンサーは意図的にマーカスの研究意欲を刺激し、さらにはマーカスとベイリーの師弟関係まで悪用して新型ウィルスの完成を静かに待ち続けていたのである。そして、「tウィルス」が完成の域に達した1988年、スペンサーは懐刀である幹部候補社員のアルバート・ウェスカーとウィリアム・バーキンをマーカスのもとへ送り込み、用済みとなったマーカスを暗殺した。マーカス暗殺後、スペンサーは培養が可能となった始祖ウィルスの供給元をアフリカ研究所に限定し、徹底したウィルス管理と厳密な情報統制を行う。「宝の在り処を知る者は、少なければ少ないほどがいい」とのスペンサーの言葉通り、アフリカ研究所の所在を知っていたのは、レベル10の情報にアクセスできる一部の上級幹部のみ。研究所から異動するものは厳しく監視され、所長のベイリーにいたっては30年近くも研究所内に幽閉された。こうしたスペンサーの完璧な機密保護により、同研究所は1998年に閉鎖された後も、複合企業体トライセルがアフリカの地を訪れるまで誰にも発見されることはなかったらしい。

 

 月 日

アメリカ合衆国中西部に位置する工業都市ラクーンシティ。すべての悲劇はここから始まった。1998年9月。tウィルスは動物や虫を媒介としてラクーンシティの市街地全域に蔓延。市内はゾンビ化した市民で溢れ返り、僅かに生き残った非感染者は完全に逃げ場を失っていた。頼れるはずのラクーン市警は壊滅し、アンブレラが民間人救出のために投入した虎の子のUBCSもほぼ全滅。最終的には米軍が介入して戒厳令が発令されたが、事態は悪化の一途を辿った。1998年10月。事態を重く見た合衆国政府は、緊急に開かれた連邦会議の議決を受けて遂に「滅菌作戦」を決行。「滅菌作戦」とは、ラクーンシティ中心部に戦略ミサイルを撃ち込み、感染者もろともウィルスを封じ込めようというものである。非人道的な本作戦によって、市外へのウィルス拡散という最悪の事態は防ぐことができたが、市民10万人を犠牲にした代償はあまりにも大きかった。「滅菌作戦」以降、合衆国政府は事件の元凶であるアンブレラに対して業務停止命令を発動。一方、アンブレラ総帥のスペンサーはこの命令を不服として財力にものをいわせて最強の弁護団を結成し、政府を相手取り訴訟を起こした。

 

「ラクーン裁判」と呼ばれるこの裁判は、アンブレラ側が偽証のための証言者を用意したこと、「滅菌作戦」で証拠が消滅していたこと、政府関係者が自身の罪を恐れて証言を拒んだことなどから、生存者の証言を中心に争われたために難航。スペンサーの思惑通り、世間には政府の陰謀説まで浮上して長期化していく。しかし5年近く続いた法廷闘争は、2003年にロシアのコーカサス地方で発生したバイオハザード事件が決定打となり、遂に終わりを迎えることになる。政府側が、事件にアンブレラが深く関与した物的証拠として、コンピューターに保存されていた極秘データを入手したのであった。これにより裁判は一気に加速し、アンブレラは決死の隠蔽工作もむなしく自ら起こした裁判で全面敗訴となる。同年、ラクーンシティ崩壊の全責任を負うことになったアンブレラは、株価暴落と慢性的な赤字経営、そして風評被害なども手伝って経営に行き詰まり、事実上、倒産した。都合良く政府が情報を手に入れた背景にはアルバート・ウェスカーからの情報提供があったことは確認されている。アンブレラにトドメを刺したウェスカーはその後トライセルで暗躍を続けてウロボロス・ウィルスを作り上げた。

 

 月 日

心身ともに優れた者が、他の者を統率するべき。これは、アンブレラ総帥スペンサーの基本理念である。始祖ウィルス発見以来、無慈悲に仲間を謀殺しては持てる権力を増大させてきたスペンサーの根底には、こうした選民思想が強く根付いているのだ。スペンサーの目的、それはウィルスによる人類の強制進化。人類創世以来20万年続いた現生人類の終焉と、新生人類の誕生を自分の手で実現するというものである。理想郷を創造するためであれば、スペンサーはどんな犠牲もいとわない。それが1人の命であろうと10万人の命であろうと、必要であれば殺すまで。アンブレラを創設したことも、BOW開発を行ったことも、全ては誰にも悟られることなく始祖ウィルスの研究を続けるための隠れ蓑でしかなく、アンブレラが生み出した富や名声など、スペンサーにとっては副次的なものに過ぎなかった。自分は人類を高みへと誘う指導者であり、その名は神に等しいとスペンサーは言う。しかし、その絶大なる野心や理想とは裏腹に、スペンサーの肉体は確実に老いという病魔に蝕まれていた。スペンサーは、再び健全な体を手に入れることを渇望し、1人の女に望みを託す。その女の名はアレックス。ウェスカー計画の内の1人である。スペンサーは説く。理想郷に住まう者もまた、理想的な人類であるべきと。始祖ウィルスによって進化を遂げた人類が、その超人的な肉体と知性をもって、スペンサーに背くようなことがあってはならない。

 

そこでスペンサーは理想郷に相応しい有能な人材を育成することを主眼に置き、ある計画を実行した。それは「ウェスカー計画」というものだ。主任研究員ウェスカーの名を冠して進められたこの計画は、世界中から才能溢れる両親の間に生まれた子供達を何百人と集め、完璧な肉体と頭脳を持つまでに成長させた後、徹底的な英才教育を施してから世界中に解き放つというものだった。被験者には全員ウェスカーの名が与えられ、真に優秀な者を見極めるために試作段階のウィルスが投与されたようだ。ふるいにかけられた被験者の多くは、ウィルスに適合できずに死亡したが、この時、僅かに生き残った者もいた。それが被験者12号のアレックスと、被験者13号のアルバートである。アレックスは実験後にアンブレラの一員となり、スペンサーの信頼を得て暗躍。さらには、スペンサーはアレックスの卓越した頭脳と指導力を高く評価し、自らを老いから解放する不老不死研究の責任者に任命、必要な資金、機材、研究資料、そして被験体を与え続けたが、待てども朗報が届くことはなかった。それどころかアレックスはスペンサーから提供された全てを持ち去り姿を消す。もう1人のウェスカーであるアルバートもまた、アンブレラの研究員という道を歩むが、アルバートの場合はアレックス以上にスペンサーが望む新生人類に相応しい資質を持った被験者だったと言える。

 

その資質とは絶対的な野心。アルバートは洋館事件をきっかけに超人的な力を手に入れ、自分を神に選ばれた資格ある者と信じ、次世代な神になることを夢見た。そして、それまでベールに包まれていたスペンサーの真意を知ることで、アルバートはウェスカー計画という呪縛から解き放たれることになる。アルバート・ウェスカーは、自分がスペンサーの野望に取って代わることを決意し、スペンサーの命を奪う。スペンサーの死後、アルバートは自ら進める「ウロボロス計画」の最終段階に入った。それは爆撃機に搭載したウロボロス・ミサイルを対流圏界面に到達したと同時に発射し、飛散したウィルスを偏西風に乗せて世界中に拡散させるというものである。実現すれば、あらゆる人間がウロボロス・ウィルスによって選別され、真に優秀な遺伝子を持つ者だけが生き残る地獄。選別から外れた者達はウロボロス・ウィルスの暴走体と化して新たな宿主を求めて暴走を続けることになるだろう。それを阻止することができて良かった。私もそれなりに働いたが最後はクリス君達に任せることになったからな。BSAAの尽力あってこその結果だったと言えよう。スペンサーにしろウェスカーにしろ厄介な思想の持ち主であったことは確かだ。生きていても世界の害にしかならない奴はいるものだな。

 

 月 日

情報収集のために向かった戦場でバイクを乗り回したマジニと巨漢マジニが集団で襲いかかってきたが「P.R.L.412」で問題なく始末できた。やはり戦場で生物兵器が用いられることが多くなっているようだ。バイオテロの数は減ってきているが、その分戦場に生物兵器が投入されている。安価な生物兵器を大量に投入することで戦場に混乱を巻き起こすことが狙いだとすれば、それは成功を収めていると言わざるを得ない。戦場をかき乱している生物兵器は十分な成果を上げていると言えるだろう。BSAAの介入が始まる前に反政府軍が生物兵器を用いて行った総攻撃により、政府軍は壊滅的な打撃を受けた。これを盛り返すにはBSAAの介入が必要不可欠だ。政府軍と反政府軍の争いはともかくとして、戦場に潜り込んで行った情報収集の成果は、反政府軍が生物兵器を購入した商人の情報を掴んだ。この商人が闇市場で最近派手に生物兵器をかき集めていた理由は反政府軍に売り込むためであったようだった。問題の商人の情報はBSAAに提供しておくとして、戦場となった街中に逃げ遅れた人々がいないか確めたが、特に逃げ遅れた人々はいなかったので良しとしよう。安全な場所まで避難していた市民達からも話は聞いたが、突然戦場に変わった訳ではなく民間人は避難しろとの勧告が先にあってから生物兵器が投入されたらしい。反政府軍も無差別な虐殺は望んではいないみたいだな。バイオテロを巻き起こす輩と比べればだいぶまともだが生物兵器という手段に頼っていることが問題だ。

 

 月 日

アレクシアの47歳の誕生日を祝うことにしたので、今日の家事は全て私とエヴリンが行った。主役であるアレクシアの好きな料理を作りテーブル席に並べておく。食事が終わり腹もこなれた頃、家族全員がそれぞれ用意しておいたプレゼントを渡しておいた。笑顔でプレゼントを受け取ったアレクシアはとても喜んでいるようで、プレゼントを用意しておいて良かったと心から思える。その後は家族全員で会話をして楽しい一時を過ごした。日も沈み眠くなった息子とエヴリンを連れて歯を磨かせてからベッドに寝かせておくと直ぐに寝始めたのでアレクシアが待つ部屋に足を踏み入れる。私の誕生日にアレクシアからプレゼントされたワインを持っていき、グラスに中身を注いでアレクシアへ手渡した。静かに乾杯をしてグラスを鳴らす。2人だけの時間を過ごすのは久しぶりな気がするが、悪くない。ワインを味わいながら、穏やかな会話を続けていくと距離を詰めてくるアレクシア。椅子に座っている此方の膝の上に座ってきた。そのまま身を任せてくるアレクシアを片腕で抱きしめながら会話を続けていく。ワインが空になっても会話は続いて、出会った頃はこんな関係になるとは思っていなかったという話になる。両腕でアレクシアを抱きしめながら、そう長く続く関係になるとは思わなかったと本音を語ると、此方はそうじゃなかったと笑うアレクシア。君の読みの方が正しかったようだなとアレクシアに言うとそうねと頷く。不意に奪われる唇。悪戯が成功したような顔で笑うアレクシア。不意打ちが得意なアレクシアに私から唇を合わせておく。今日はわたしが独り占めねと嬉しそうなアレクシア。今日は徹夜になるのは間違いないな。後に何が起こったのかは日記に書くのは控えておこう。

 




ネタバレ注意
バイオハザード5に登場するクリーチャー
巨人マジニ
大湿原を居住地とする先住民ンディパヤ族がプラーガの胚を投与され、マジニ化したものの一種
奥地の村で実験されていたものは、キジュジュ住民に用いられたプラーガ・タイプ2に、支配種プラーガの因子を移植して改良を加えたタイプ3と呼ばれるもので、宿主の身体能力をより向上させるほか、急激な巨人化を促す効果も確認されている
ただし女性と子供には定着せず、寄生の過程で死に至らしめてしまうという重大な欠陥を持つ

ライダーマジニ
バイクの運転技能を備えたマジニ達
中排気量二輪車を自在に操り、その性能を極限まで引き出すライディングで悪路をも疾走する
もはや恐怖心を持たない存在であるためか、思い切ったアクセル操作でモトクロスレーサー顔負けの跳躍を軽々とこなし、獲物を執拗に追いつめていく
プラーガに冒された人間が、寄生体が神経に同化したことによって電気信号の伝達速度を高め、常人を大きく上回る反射神経を獲得したケースだと思われる

巨漢マジニ
処刑マジニほどではないものの、平均的な現地の人間と比較すれば大柄で、それゆえに簡単には撃ち倒されないタフさを有した個体
ただし、プラーガがこうした肉体的に優位な宿主に対してある種の不適合性を示すのか、脳の機能を使いこなせていないようで、一般のマジニにくらべてあやつる語彙が極端に少ない
したがって仲間との意志の疎通に難があり、高い耐久性を考慮しても、組織行動を要求される生物兵器としての利用価値は低いと見られる

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