とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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ジルが金髪になったのは誰の趣味なんでしょうね

 月 日

私の元に襲撃をかけてくる連中もいなくなり、平穏な日々を過ごせている。規則正しい時間に起床し、朝食を用意して食べ、部下達から報告された情報をまとめて確認し、その後は少々ハードな運動を行なってシャワーで汗を流す。それからは研究の時間だ。余計な邪魔が入ることなくハーブやウィルスの研究に専念できていて充実した日々をおくれている。昼食は特殊メイクで顔を変えてから外出して気に入っている店に入り料理を注文。食事を終えたら店を出て胃の中のものが完全に消化されるまで休憩し、消化が終わったら軽く走り込む。拠点に帰り研究の続きを行い、満足のいく結果を出せるまでこもりきりで研究をする。何とか今日中に結果を出すことができたので、夕食を食べに行くことにした。

 

遅い時間でも開いている料理の美味い酒場に向かい、酒と料理を頼んだ。絡んでくる酔っ払いを受け流して 食事を楽しみ、酒をおかわりする。心地よい満腹感を抱きながら酒場を後にした私は拠点に帰ると特製のハーブ配合の歯磨き粉で歯を磨き、全ての装備の点検を行なってから就寝の準備を行う。ベッドに横になると枕元にL・ホークを忍ばせて枕に頭を乗せながら今日の出来事を日記に書き込んでいく。今日も何事もなく日々を過ごすことができた。明日もこんな日が来ればいいが、どうなるかは解らない。できれば平穏な日々が続くことを祈っている。

 

 月 日

BSAA北米支部ではエージェントとして復帰したジル・バレンタインの全快を祝ってささやかなパーティーが開かれたらしい。金髪になり外見が少し変わってしまっていても経験に裏打ちされた実力には非の打ち所もなく。訓練でも他の隊員達を圧倒的な実力で打ち倒しているようだ。ジル・バレンタインの現場復帰を喜ぶ声は多く、北米支部アルファチーム部隊長のクリス君や北米支部コンサルタントのバリー・バートンはジル・バレンタインとはSTARSというラクーン市警特殊部隊時代からの付き合いで絆も深い間柄だ。彼等2人が特に喜んだことは間違いない。ウェスカーに強化薬物P30で操られていたジル・バレンタインを解放したのはクリス君とシェバ・アローマだったな。

 

クリス君とシェバ・アローマの活躍で3対2が4対1に変わって楽に仕事を済ませることができたことは覚えている。弱っていたとはいえ厄介なウェスカーの相手を押し付けたことは申し訳ないとは思ったが、彼等ならば打ち倒してくれると確信していた。そしてそれは正しかったのだ。彼等には深く感謝をしている。ジル・バレンタイン復帰に祝いの品を送っても差出人不明であれば受け取ってはもらえないだろう。その代わりにBSAA北米支部に寄付金を送っておこうか。これならば受け取ってもらえる筈だ。

 

 月 日

出向いた先でBOWを用いたバイオテロに巻き込まれた。大量のキメラとウェブスピナーがショッピングモール内に放たれて人々を襲い始める。私はL・ホークでキメラの頭部を撃ち抜いて始末しながらショッピングモール内を探索し、逃げ遅れた人々がいないか確認していく。ショッピングモールの店内の1つで負傷した状態で倒れ込んだ男性を発見し、tウィルスの特効薬「デイライト」の投与と調合したハーブによる応急手当を行いながら意識があるか確かめる。意識が無い男性を抱えてショッピングモール外に退避して外へ逃げ延びていた人々に男性を任せてショッピングモール内に引き返す。逃げ遅れた人々に襲いかかろうとするウェブスピナー達に50口径の弾丸を景気良く撃ち込んでやり排除していく。

 

助けた人々を連れて出くわすキメラを打ち倒し、ショッピングモールの出口にまで移動する。ショッピングモールの外に人々を送り届けてから再度ショッピングモール内に戻り、BOWを処理していく。広いショッピングモール内をくまなく探索して逃げ遅れた人々がいないか確認しながらショッピングモール内に放たれたBOWを殲滅する。逃げ遅れた人々はなくBOWの死体だけが残されたショッピングモールから脱出して、その場から立ち去った。

 

 月 日

始祖ウィルスを宿した始祖花の栽培に成功した。アンブレラの研究所で主任研究員だった頃のブランドン・ベイリーの日記では、土、水、気温、湿度、日照時間などあらゆる条件を同じにしても太陽の庭以外では始祖ウィルスを宿すことはなかった始祖花だが。始祖ウィルスによって進化した私の血液を与えた土壌ならば始祖ウィルスを宿した始祖花が生育できるようだ。このことから察するに太陽の庭という土地にはかつて始祖ウィルスによって進化を遂げたものの遺体かその一部が埋められているのではないだろうか。そうだとすれば納得がいく。かつて存在したという始祖ウィルスの適合者は何処に消えたのか。卵が先か鶏が先かという話にはなるが始祖ウィルスを宿した始祖花が生まれた理由もそれなら想像がつく。全ての物事には理由があるとするなら。自然に発生した偶然の産物とみるよりかは人為的に発生した必然によるものと考えるのが合理的だ。

 

栽培が成功した始祖花の一部は実験に使用するとして残りのものは観賞用に育ててみるとするか。私にとっては毒々しく赤いこの花がとても美しく見える。引き寄せられるような魅力を感じる始祖花が咲き誇る庭園か。私にとっては夢の様な光景だろう。始祖ウィルスを宿していない始祖花には魅力を感じなかったことから、始祖花に宿る始祖ウィルスにこそ惹かれるものを感じていたことが理解できた。しかし庭園は流石に問題があるか。室内で栽培している始祖花を外に出して他の組織やBSAAに見つけられてしまったら大問題だ。あくまでも室内で個人的に楽しむ程度の栽培に抑えておくとしよう。

 

 月 日

元トライセル研究員のミゲルとやらが自分を売り込みにきた。2時間ほど対話してみた結果は不採用ということになる。発想や着眼点も悪くないし持ち込んだ研究資料が本人のものだとすれば腕も悪くない、しかしながら私の組織に加えるには力不足だ。最低限の自衛が出来ないものは所属させる訳にはいかないし、ミゲルは自分を天才だと思っているようだが。アレクシアやウィリアムにカーラという本物の天才を見てきた私からすれば天才とはほど遠い。私の部下が全員優れているとは言いづらいが、それでも努力を惜しまず私の用意した基準を乗り越えたものがいる。彼等に明確に劣っている自称天才を私の部下に加えるのは彼等にとっての侮辱に他ならない。それにミゲルとは話も性格も私とは合わないようだ。何故か自信満々なミゲルには丁重にお帰り頂くことにする。私の組織に彼は必要のない存在だ。

 

追い返されたことに気付いたミゲルは私の拠点の前で「この天才を手に入れる最高の好機を失ったことに後悔したとしても、もう遅いぞ」と言い放ってから立ち去った。ミゲルは何故あそこまで自分を高く評価できるのだろうか。口を開けば自身の自慢話だけで2時間を使い果たした彼はある意味凄いが、絶対に部下にはしたくない男だ。しかしミゲル程度に私の居場所を発見できるとは思えない。誰か情報を流した奴がいることは間違いないな。ミゲルの相手をしたくなくて私に押し付けた可能性もなくはないが、流石にそんな理由ではない筈だ。警戒をしておく必要があるな。

 

 月 日

オズウェル・E・スペンサーに仕えていた執事のパトリックを見かけた。かなりの高齢ではあるが背筋は確りと伸びており年齢を感じさせない姿をしていたが、何処か脱け殻の様に感じる。「忠義と礼節」を家訓とする代々スペンサー家に仕えた一族の1人であるパトリックが生き残っていたことは知っていたが、仕えるべき主を失ったことに深い絶望を覚えている様子だ。時が経とうとその傷は癒えていないようだった。今のパトリックは生き甲斐を失い心が死んだ老人でしかない。機械的にただ生きるだけのご老人だ。新たな肉体で蘇ったスペンサーを全員殺した私はパトリックにとっては主人を殺した仇ということになるのかもしれないな。しかしそれを伝えるつもりはない。枯れ果てた老人だとしてもむやみに敵を増やす必要はないからだ。

 

 月 日

「コード・ベロニカ」計画。アシュフォード家を創り上げた初代当主の名を冠するこの計画は、ミイラ化されたベロニカ・アシュフォードの遺体から彼女の遺伝子を採取してクローン技術により人工的に天才児を生み出すものだった。アレクシアは計画通り天才的頭脳を持って生まれたが、アルフレッドは常人よりも多少知能が高いだけの失敗作とみなされており期待されてはいなかったようだ。アルフレッドとアレクシアは自分達が人工的に生み出されたことを知り、アレクシアは平然としていたようだがアルフレッドは狼狽えて私の元にすがりついてきた。その時に聞かされたのがこの「コード・ベロニカ」計画だ。初めて聞かされた時は人工的に天才を造り出したことに驚いたが、今思えばアレクサンダーはなんということをしてくれたんだと思う。アレクサンダーのせいでアレクシアという存在が生まれたのだからな。「コード・ベロニカ」計画を実行したアレクサンダー・アシュフォードもアレクシアの実験材料にされて生涯を終えることになったので文句を言える相手はいないが。

 

わずか10歳で大学を首席で卒業した経歴を持つアレクシアは、その優れた頭脳と美貌は初代ベロニカの再来とまで噂されていた。アンブレラ南極研究所で主任研究員として働いていた彼女を知るものとしては大人顔負けの仕事ぶりを見せていたが、彼女のいれてくれるコーヒーはとても甘かったことを覚えている。その時は味覚だけはまだ子供だったのかもしれないな。会話の内容は私以外の研究員がついていけないほどだったが、そんなこともあって彼女とは良く会話をしたものだ。確かにあの会話を楽しんでいた自分がいたことは認めよう。今となっては遠い昔の思い出だ。アレクシアに私が執着されている原因はこの時の会話にあるのかもしれない。本人に聞くのが一番早いのだろうが、聞きたくはないな。

 




ネタバレ注意
バイオハザード1に登場するBOW
キメラ
人間の遺伝子にハエの遺伝子を組み込むことで作り出されたBOW
2つの遺伝子は、tウィルスの特性によって見事に融合しており、その姿はまさにギリシャ神話に登場する合成獣キメラを彷彿とさせる
ハエの特徴が色濃く出ているあたりがなんともグロテスクで、見るものに与える心理的ダメージは大きい
胎内から無数のウジが湧き出ていて、奇怪な音を立てながら執拗に獲物を追い回すため、遭遇した人間の戦意を喪失させるほどの不気味さがある
凶暴性は極めて高いが、知能はハエそのものなので動きはややパターン化されている
ふだんは通風口のような狭い場所を寝床としており、人間が接近すると同時に素早い動きで接近し、鋭いかぎ状の爪で攻撃を加える

ウェブスピナー
初期のtウィルス実験で生まれたBOW
網の紡ぎ手という名を冠してはいるが、実際は巨大化の影響で網は張らず、強酸性の毒液を使って獲物を襲う
攻撃力が低いので、用途としては壁面や天井を自在に伝う機動力を生かし、ウィルスを拡散させる兵器に向いている

バイオハザード5に名前だけ登場する人物
ブランドン・ベイリー
アンブレラの研究所の主任研究員からアンブレラアフリカ研究所所長になった人物
ジェームス・マーカス博士を尊敬していて博士の為に始祖花から始祖ウィルスを抽出と研究に明け暮れる日々をおくっていたが、マーカス博士の死後は死んだように機械的に生きることになる

ミゲル
トライセル研究員
同僚に自称天才と呼ばれていた
口を開けば自慢話しかしないような奴とずっと一緒にいないといけないのは苦痛だとも言われていたあたり、あまり好かれてはいないようだ
本編では情報漏洩対策が実施されて彼も同僚も処理されて焼却されている

バイオハザード5オルタナティブエディションに名前だけ登場する人物
パトリック
オズウェル・E・スペンサーの執事
代々スペンサー家に仕えていた一族の出
ジェームス・マーカス博士やエドワード・アシュフォードとも面識がある
スペンサーの指示でウィルスを投与する人体実験を行なう
スペンサーの指示でスペンサー自身の居場所がアルバート・ウェスカーに 伝わるように情報を流せと言われてリカルド・アーヴィングに情報を流させた
最後はスペンサーに暇を出されてスペンサーの元を去ることになる

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