とある製薬会社に務めていた研究員のヤケクソ日記   作:色々残念

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バイオハザードアーカイブス2だとその男の名はアレックスって書かれてたのにリベレーションズ2だと女だったんですがどういうことなの

「監視員」に指定された場所に出向いた先で待っていたのは汚れ一つ無い純白の防護コートを着用した大男であり。

 

「一方的に会話を打ち切られて蔑ろにされるのも中々悪くは無かったが、そうもいかぬ理由がある。待っていたよ……ジョン」

 

大男の肉体に宿るその精神はセルゲイ・ウラジミールであった。

 

「私の様な人間など待たずに今すぐ帰ってくれないだろうか」

 

出会いたく無かった相手に本心からの言葉をぶつけたが。

 

「待つだけの価値が有る、君にはな」

 

無駄にドMからの評価が高い事が良く解って嫌になるだけだったので、話を反らそうと考えた私は。

 

「そうか、それはそうとその「暴君」の身体はスペンサーが望んだ不老不死研究の成果とやらか?」

 

 

ドMが食い付きそうな話題を出して反応を確かめる事にした。

 

「察しの通り、この肉体と我が精神は写し身に過ぎぬ。特殊な調整を施した「暴君」の脳内に生体チップを埋め込み、アンブレラが誇るスーパーコンピュータ内に精神データとして詳細に記録され保存されたセルゲイ・ウラジミールとしての記憶と人格。余すこと無くその全ての転写を行った肉体を数体程、厳重に保管しておいたのだよ。そして我が命運が尽きたその瞬間、偽りで象られたこの身は解き放たれた」

 

思っていたよりも詳細な話が聞けた事に驚きながらも私はドMが量産されている事に嫌気がさした。

 

「解き放たれず永久に繋がれていれば良いだろうに、貴様には似合いの姿だセルゲイ」

 

思わず本音が漏れる程度には嫌だった。

 

「フフ、そうかもしれんが、此の身が求める欲を満たす事よりも優先しなければならぬものが有るのだよジョン。より強靭な傘を作り上げるには優秀な人材が必要不可欠。故に君とアレクシアが欲しい、新たに生まれ変わるアンブレラの一員としてね。」

 

既に退職した職場に性格が合わない同僚と一緒に再就職しろと言われても、お断りだと誰でも答えると思うがね。

 

「丈夫な傘が作りたければ職人にでも頼みたまえ、私は専門外だよ」

 

惚けながら意識を切り替える。言葉で止まるはずもない相手だ。

 

「幾ら君が惚けて拒もうとも逃さぬよ。此れもまた、アンブレラの為」

 

此方を捕獲する為に伸ばされた腕を避け、振るわれた拳を左腕義手で反らし、空気を薙ぎ払う一蹴を潜り抜け。

懐の切り札を取り出す隙を伺いながら。

人間をベースとしたBOWの完成形から凄まじい速度で繰り出される打撃の数々を回避し続ける。

 

「良く動く、流石だ」

 

称賛と共に「暴君」の両腕が風を切り放たれた連撃を後方にバックステップする事で回避し、懐から取り出したアンプルシューターを構え、装填された特効薬「デイライト」を剥き出しの顔面に撃ち込んだ。

 

「日の光が在れば傘は要らない、アンブレラの残党には丁度良い薬だろう」

 

Tウイルスを完全に死滅させる特効薬はTウイルスで造り上げられた肉体をも崩壊させていく。

 

「素晴らしい!素晴らしいぞ!内側から肉体が死滅していく痛みは中々のものだな!「デイライト」を撃ち込まれた我が身は此処で朽ち果てるが!写し身の一つが消え去ろうとも終わりはしない!それを憶えておくがいい!毒蛇よ!」

 

ふと後ろを振り向いた私の視界に見覚えの有る赤いポッドを十本も吊り下げた大型ヘリが此方へと近付く姿が映る。

 

「終わりにしてもらいたい所なんだが。どうも、そうはいかないようだな全く」

 

連続で投下されたポッドが落下の最中に自壊し、重量級の中身達が降り立つ度に地が響く。

 

「運動不足は解消出来そうだな」

 

深緑の防護コートを着用した十体の「暴君」の群れの前で私はアンプルシューターに「デイライト」を再装填した。

 

 

 月 日

どのような人間であろうとも、人であるならば老いを避ける事は出来ない。衰え弱る身体は着実に終わりへと近付くだけだ。それを静かに受け入れる者も居るが、認められない者も多い。オズウェル・E・スペンサーは後者であったのだろう。

 

ウイルスによる人類の強制進化で新生人類を誕生させ、自らがその指導者となり現生人類に終焉をもたらした後に、新たな世界を創造する。そんな行き過ぎた選民思想が大いに反映された理想の実現前に死期を悟った老人は、若く健全な新たなる肉体を望み。精神と記憶の転移による不老不死を追い求めていた。

 

アレックス・ウェスカーに一任されていたその研究は彼女の裏切りにより頓挫し、残り少ない余命を使い切る前にアルバート・ウェスカーの手でスペンサーは殺害された。自らが選定した資格ある者達から与えられたものは絶望と死、それがアンブレラ総帥の末路。

 

しかしアレックスを完全に信頼せず、不老不死研究をセルゲイにも任せていたとすれば。その研究の成果の一部が、セルゲイのあの姿であるとするなら、スペンサーの復活も考えなくてはならない。

 

死人は大人しく死んでいてくれないだろうか。

 

 月 日

 

此方を罠に嵌めた「監視員」の捕獲に成功。問答無用で薬物を投与し、素直になってもらってから情報を吐かせた。

 

どうやらアンブレラの再興を掲げて、アンブレラの残党達や崩壊した他の組織の連中も集まっているらしく。

 

優秀な人材の勧誘や敵対組織の一員の始末等が彼の主な仕事であり、彼を含む「監視員」達の統率は複数のセルゲイ・ウラジミールの内一体が行なっているようで、私が倒したセルゲイとはまた別の個体だそうだ。

 

何体居るんだあのM型タイラントは。

 

タイラントは自身のクローンを素体として作成された、言わば兄弟であり分身なのだとセルゲイは過去に語っていたが。

 

本当に分身になっているのだから始末に追えんよ。

 

 月 日

 

「監視員」から搾り上げた情報を元に割り出したセルゲイの居る拠点の一つである孤島に衛星軌道上の太陽光集積システム「レギア・ソリス」を用いて膨大な太陽光エネルギーを収束させた超高熱照射を行い、組織の関係者以外は存在しない孤島を丸ごと壊滅させた。

 

日の光が在れば傘は要らない。

 

私からの宣戦布告だ。

 

 月 日

 

用途の限られた買物の最中。世間話程度の気安さで「いつも気前の良い御得意様へ日頃の感謝の気持ちだ」と情報屋も兼ねている商人に提供された情報では、どうやら数週間程前から。過去にアンブレラへ務めていた者達、その中でも優れていたとされる研究員達だけが次々に行方不明となっているらしい。彼等が行方知らずとなる直前には必ずと言える程、深緑色のコートを揃いで着用した血色の悪い大男の集団が目撃されており。

 

この集団が何らかの目的で研究員達を連れ去っている事は間違いないが。アンブレラの残党を世界中から掻き集めて何を企んでいるのかまでは商人も流石に掴めていないようだ。問題の大男達の正体は「暴君」の可能性が非常に高いが断定は出来ない。しかし「暴君」であったとして商人の情報通り裏市場で出回っている商品等では無いとすれば、セルゲイの手の物で間違いないだろうな。

 

 月 日

 

セルゲイの目的はアンブレラの再興とスペンサーの復活、そしてアンブレラを裏切った者達への粛正。現在はアレックス・ウェスカーを最優先粛正対象として所在地を探っているそうだ。

 

アレックスにアルバート・ウェスカーがウロボロス・ウイルスを送り届けた事は部下からの報告で知ってはいるが、届けた先までは流石に解らない。

 

恐らくは情報の封鎖がされている絶海の孤島にでも潜んでいるのだろうが、今現在私が見付け出して接触したところでアレックスが味方になる訳も無く、厄介な敵が増えるだけだが。敵同士を潰し合わせるなら、話は別だ。

 

私なりにアレックスの所在地を探ってみる事にしよう。

 

 




ネタバレ注意

アレックス・ウェスカー
バイオハザードリベレーションズ2の登場人物にしてラスボス
見えても嬉しくない全裸
エンディング次第で二回戦うかどうかが決まる

幼女と化したもう一人の自分に弱点をぶち抜かれて殺されるか
クレアにロケラン撃ち込まれるか
結局どっちでも本体は死ぬ

幼女のお友達のぬいぐるみをバラバラにする大人げない人

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