チートを持って転生したけど、同僚馬鹿ップルが面倒くさい~2X歳から始めるアイドル活動!?~ 作:被る幸
そして、悪い癖だとは思いますが冒頭部分のみです。
1話分を作ろうとしたら、1月以上は優にかかってしまいそうですので‥‥
申し訳ありませんが、ご了承ください。
新番組、仮面ライダーIdol
ライダー史上初、アイドル仮面ライダー!?
有史以来人々の自らの娯楽の為、多くの人達が絶望や涙した悲劇、惨劇を起こしてきた超常存在の化け物達『エゴロイト』
奴等が次に目をつけたのが芸能界、輝かしいステージとは裏腹に様々な思惑等が交差し、ぶつかり合う弱肉強食の世界。
化け物達の欲望の為、夢を壊され、志を嘲られ、涙を笑い、思いも殺され、全てを諦めてしまおうとするアイドルの卵達。
そんな絶望から皆を救う為に5人のアイドルが立ち上がる。
「とりあえず、へんしんするです」
「へ、変身って言っても、私そんな経験なんて無いですよ!?」
いたって普通な、心優しき事務員アイドル『千川 ちひろ』
「私にはわかるわ。アンタ達なんかの為に、あの娘達が泣く必要なんてないって」
元女子アナ、面倒見のいいお姉さんアイドル『川島 瑞樹』
「駄洒落にする気も無いくらい‥‥私、怒ってますよ」
元モデル、駄洒落とお酒の好きなミステリアスなアイドル『高垣 楓』
「メルヘンチェンジ!って、ふざけてる場合じゃないんですよね」
ウサミン星からやってきた永遠の17歳、声優アイドル『安部 菜々』
「さて、あなた達に手加減は必要ありませんよね?」
アイドル史上最強、人類の到達点、係長アイドル『渡 七実』
有史以来生き延びてきた狡猾な化け物達の陰謀を防ぎ、彼女達は後輩となるアイドルの卵達の笑顔を守ることが出来るのか。
『I Disk set』
「「「「「変身!」」」」」
『Play Prelude!!』
歌って、踊って、戦う仮面ライダー群像劇。ここに開演!!
新番組、仮面ライダーIdol 10月X日より放送開始。
ライダー史の新時代の到来に、その華麗なステージを見逃すな!
OPテーマ『Nocturne』 高垣 楓×川島 瑞樹
○
仮面ライダードライブ 最終話『(特別編)アイドルの事件』
ロイミュードを撲滅し、ベルトさんが泊 進ノ介達の前から去り数日が過ぎた。
機械生命体による世界的な脅威は完全に取り払われ、世の中を尊き平穏な日々を謳歌していた。
元々ロイミュードの脅威に対抗するためだけに設立された特殊状況下事件捜査課(通称:特状課)は、総数108体のロイミュードの完全撲滅が確認された事により、その任務を完遂したと判断され解散が通達される。
追田 現八郎や沢神 りんな、西城 究といった特状課に所属していたメンバー達は、それぞれが再び自分の道を歩き出すために特状課の片づけをしていた。
そんな中、仮面ライダードライブであった進ノ介は最後に1つだけ気になる事件の捜査を始めていた。
久留間運転免許試験場にあるこれまでの膨大な捜査資料を集めた資料室で進ノ介は、反政府組織・ネオシェードについての情報資料を片っ端から読み漁り探していた。
しかし、相手は規模も構成員についても不明な点の多い地下組織、燃える刑事魂で資料を探しても有力な情報となりえるものは見つからない。
特状課で担当する最後の事件であるというのに、難航する捜査状況に進ノ介は焦りを感じていた。
グローバル・フリーズ以降、地下世界に息を潜めていたネオシェードが、何故今になって活動を再開したのか、そして何故その狙いが政府に対してではなくアイドルなのか。何時間もここに籠もりいくら資料を探り、考えを巡らせても全く繋がってこないのである。
ベルトさんという掛け替えのない相棒との別れを経験したばかりの進ノ介は、やり残したこの仕事を完璧に解決しようと躍起になっていた。
資料のどんな些細な情報も一字一句見逃さないように読み込んでいると、資料室の扉が勢いよく開かれる。
「ネオシェードと今回犯行予告の対象となっているアイドル達の資料を持ってきました」
入ってきたのは詩島 霧子、進ノ介と共にロイミュード絡みの事件を追い続けた相棒の1人だ。
その腕には警視庁や付近の警察署から掻き集めてきたネオシェードの資料や追田達捜査一課の人間たちが聞き込みやらで収集してくれた狙われたアイドル達の情報が纏められた大量のファイルが抱えられている。
「そこに置いといて」
黙々と資料を漁る様子を心配そうに見つめる霧子をよそに、進ノ介は決して資料から目を放さない。
「ギアが入ったのはいいですけど、あんまり根詰めると身体に毒ですよ」
「時間が無い。奴等がまた動き出したんだ」
霧子はやる気がトップギアに入ったまま頑張り過ぎている相棒を心配し、休息を促すが進ノ介の耳には届かない。
1年半前のグローバルフリーズ当日まで当時の相棒であった早瀬と共に追っていたネオシェードは、進ノ介にとっては並々ならぬ因縁のある相手であった。
その時の一件により相棒だった早瀬は瀕死の重傷を負い、刑事としての職務を全うすることができない身体となってしまい警察官を辞職している。
早瀬自身はそのことを全く恨んでおらず、逆に進ノ介に励ましの言葉を送ったりするほどであるが、それでも進ノ介の心のおくにはあの時の事が今でも確かに根付いているのだ。
「この事件を片付けなければ前に進めない。もう一度走り出す為に必要な気がするんだ」
「泊さん‥‥」
進ノ介は資料のあるページを開き、それに添付されていた写真を霧子に渡す。
受け取った写真には不思議な模様の描かれたCDが写っていた。
「これは?」
「ネオシェードの残した証拠品だ。俺達は『I Disk』と呼んでいる」
そう言って進ノ介は、霧子に残された証拠品『I Disk』について説明していく。
この『I Disk』、確かに名前の由来通り英語の大文字の『I』と模様の描かれたCDにしか見えないが、パソコンや音響機器といった如何なる物でも読み取る事も解析することもできない不思議なもので、進ノ介はこれがシフトカーやバイラルコア等と同じような現代科学の範疇を超えた
なので、警視庁でも顔の利く特状課室長である本願寺 純に頼み、施設設備が揃っている警視庁直下の研究室で解析を続けていてもらったのだが、それが何者かによって盗み出されたのだ。
そこで本願寺の要請により進ノ介は『I Disk』を盗み出した犯人を追っている。
そしてこれが、特状課で捜査する最後の事件であるとも言われていた。
「1ヶ月程前、ロイミュードの爆破事件が相次いだ時、俺達はそのロイミュードとネオシェードの繋がりを掴んだんだ」
そしてその組織の解体へと動いたのだが、後一歩のところで主犯格であるリーダーを取り逃してしまったのだ。
ようやく追い詰めたと思った矢先の失態は、進ノ介の心にネオシェードという組織を更に強く刻み付ける。
『落ち込むことはない。リーダーは取り逃してしまったが、組織は壊滅状態だ』
「ベルトさん‥‥」
もう会うことがないであろう大切な相棒の姿と声に、進ノ介は無意識的にその名を口にする。
「ベルト‥‥さん?」
「いや、何でもない」
霧子の心配そうな声に、それが自身の生み出した都合のよい幻である事に気が付いた進ノ介は意識を切り替える。
『I Disk』に関する資料のページを霧子に見せ、この証拠品を回収した際についての状況を説明していく。
この『I Disk』はネオシェードのリーダーが持っていたとされ、そして組織解体へと本拠地に乗り込んだ際にロイミュードの起こす重加速とは違う不可解な現象が起きたのだ。
その時は進ノ介の他に、霧子の弟であり仮面ライダーマッハの装着者である詩島 剛とロイミュード
ドライブに変身した進ノ介が追いついた時に目にしたのは、目視可能な不思議なオーラに包まれもがき苦しむリーダーと思わしき人間の姿であった。
闇のように深く暗い色をしたヘドロを思わせる粘着質なオーラを頭部に纏わり付かせている為、顔は判別できない。
そして、そのオーラは酷く不快で何かを冒涜するような、聞いているだけで正気を失ってしまいそうな音を発し始めたのである。
ドライブの装甲をすり抜け、進ノ介の脳に直接到達したその音は心を不安定にさせてしまいそうなメロディを刻みながら囁き続けた。
『そいつを殺せ』『相棒の仇を討て』『相棒の受けた痛みをコイツにも』
『急がねば、その機会は永遠に失われる』『相手はテロリスト、言い訳ならいくらでもできる』『ここで未練を断ち切れ』
『さあ!さあぁ!!さあぁッ!!!』
心の奥に渦巻く仄暗い感情を刺激するような不条理で狂気的な音楽は、相棒であるベルトさんの呼びかけすら聞こえない状態にまで進ノ介の心を蝕みだしていた。
父親から受けついだ熱き刑事魂がそんな事をしてはならないというが、しかし頭に響き続ける音楽達はそれをしろと囁き続ける。
自分自身さえもわからなくなってしまいそうになる突然の二律背反に進ノ介は叫びをあげた。
意思とは無関係に自分の汚らしい部分を引きずり出されようとする言葉にしようのない恐怖感に、訳もわからず周囲のものを殴り、蹴り飛ばし暴れるが、頭の中の音楽は響き続ける。
相棒の明らかな異常にベルトさんも対策を立てようと思考を巡らすが、ロイミュードでもない未知なる存在の攻撃を解析する事は難しく、この奇妙な不協和音の旋律は情報生命体となったベルトさんの意識すら蝕みだしていたのだ。
周囲に存在する知的生命体がもがき苦しむ中、オーラは深遠なる嘲笑を病的に謳い続ける。
「やめろ‥‥やめろぉ!」
進ノ介はドア銃を呼び出し、銃口を自身を蝕み続けるオーラへと向ける。
それは確保すべきネオシェードのリーダーの頭を撃ち抜くことであるということにまで思考は回らない。
普段の熱くも冷静な進ノ介であれば、このような行動は絶対に取らないのだが、それほどまでにオーラの発する汚染は強力なものであった。
ドア銃の
そして、オーラの発する音に対抗するように穏やかで優しい旋律が流れ始め、脳の中で囁き続ける声を掻き消していく。
「ふぇいず2、けいとうは
「やっぱりですか‥‥厄介な手合いですね。援護は任せましたよ」
「はい、任せてください」
背後から幼い子供のような声と2人の女性の声がする。
進ノ介の記憶に2人の声に聞き覚えはないはずなのだが、どこかで聴いたこともあるような気がする不思議な感覚だ。
振り向いて確認したいところではあるのだが、オーラの冒涜的音楽にやられた身体はピクリとも動かず、それどころか意識も次第にブラックアウトしつつあった。
何とか意識を保とうとするが、その甲斐空しく視界が段々と狭くなる。
「さて、オーディションまで時間が無いんですから‥‥さっさと片付けますよ」
「はい!」
「つよいことばはふらぐです?」
「オヤツ抜きにされたいですか?」
「じしんがあるのは、すばらしいです」
女性と子供に反応してかはわからないが、オーラはリーダーの頭部に纏わり付いたまま浮かび上がり逃亡を始める。
すぐさま、先程ドア銃を弾いたものと同じエネルギー弾が襲い掛かるが、オーラは触手状に伸ばした部分でそれを弾いていく。
「逃がしませんよ」
「おなわにつけ~~」
殆ど意識の消えかけた進ノ介が最後に目にしたのは、肩に小人の人形を乗せたスーツ姿の女性の後姿だった。
後を追いかけてきた剛やチェイスに起こされ、目を覚ました時にはリーダーの姿もあのオーラも、2人の女性の姿もなく、残されていたのは『I Disk』と暫定名がつけられたものだけであった。
追って来た2人に聞いてみても見ていないという答えが返ってき、ベルトさんもあのオーラ等に関する部分の情報はバグに汚染され閲覧も解析もできない状態と八方塞で今の状態に至っている。
結局、あれからあのオーラに関することも何もわからず、ネオシェードのリーダーも不明のままだったのだ。
しかし、今になって再び動き出したのならば、今度こそこの手で解決しなければならない。
進ノ介にとってネオシェードに関わる事件は、もはや因縁を越え宿命となりつつあった。
「そんなことがあったんですね」
「ああ、コイツを追えばネオシェードのリーダーを逮捕できるかもしれない」
心の内に、絶対にこの手で逮捕するという決意をし、進ノ介は霧子の持ってきた資料を捲る。
「今回襲撃予告をされたアイドルは‥‥」
「渡 七実、046プロ所属のアイドルで元はそこで事務員をしていたようです」
進ノ介が資料に目を通す前に霧子は、今回ネオシェードに狙われる事となったアイドルに関わる事について説明していく。
渡は、1年前に経営状態の芳しくなかった事務所の意向で事務員とアイドルを兼務する女性で、事務員だったとは思えない身体能力の高さが話題を呼び、現在Cランクに届こうとしているそこそこの知名度のアイドルである。
彼女の所属する046プロは5年ほど前に新設された芸能プロダクションで、所属しているアイドルも10人程度と小規模で業界の中でみても下位に属する弱小プロダクションといってもいいだろう。
しかし、046プロの社長はアイドル達のことを本当に大切にしているようで、過去を洗ってみてもネオシェードとの関係性は一切出てこず白と判断された。
今回の標的にされたアイドルや他のアイドルについても同様で、何故ネオシェードが知名度の低い弱小プロダクションのアイドルを標的に定めたのか、理由が全く見えてこないのだ。
進ノ介は資料に添付された渡という写真を見る。
確かにアイドルということだけあって整った顔立ちをしており、ネオシェードのような反政府組織とつながりがあるようには見えない。しかし、進ノ介にはこのアイドルの姿にどこか引っかかりを覚えるのだ。
「どうしました?」
「いや、何処かで見たことあるなって思ってさ」
「アイドルですからね。テレビか何かで見たんじゃないですか?」
「‥‥」
そう言われれば、そうかもしれないと思ってしまう。
警察官という職業柄、芸能人達と関わる事も少なくはない。ロイミュード絡みの事件でも、当時人気女優であったリラの周辺調査をしたこともあった。
自身がはっきりと覚えていないだけで、霧子の言うように何かのテレビで見たことがあるのかもしれない。
プロフィールの下方には過去に出演した作品が列挙されており、その中には進ノ介も見た覚えのあるものがいくつかあった。だが、ロイミュード絡みで更に研ぎ澄まされた刑事の勘が、そうではないと訴え続ける。
何処で見たのか記憶を辿ってみても、思い出すことを拒否するかのように霞がかる。
まるで
必死に思い出そうとすると逆に泥沼に沈み込んでしまいそうになる不快な感覚に、進ノ介の焦りは加速するばかりである。
「おい、進ノ介!ホシが動き出した、標的の出演する番組の最中に襲撃をするという犯行声明が届いた!」
資料室に焦りを顕にした追田が息を切らしながら駆け込んできた。
話によると生中継中の標的とその仲間の出演する特別番組の最中に襲撃をするという犯行声明が、警視庁や報道各社等に届いたそうである。
具体的な襲撃時間は記されていないが、それでも放送時間から考えると時間は殆どないといえるだろう。
進ノ介たちは直ちに準備を整え捜査車両を回し、現場に急行する。
『まずいわ。ロケ地の周辺から発信機の反応が出てる。今、データを送ったから確認して』
霧子の持つタブレット端末に『I Disk』の収められたケースに取り付けられた発信機の位置情報と、西城が監視カメラの映像から解析し特定した犯人の資料が送信される。
岡村 敬介、ネオシェードに出入りしていた構成員の1人らしく武装している可能性が極めて高いらしい。
今回のロケ地は街中のため銃撃戦となってしまった場合、罪のない一般市民に被害が及ぶ可能性があり十分な注意が必要である。
そして無暗に犯人を刺激してしまわないため、捜査本部は番組を中断せずに私服警官達を大量投入し犯行前に岡村を確保する方向で進める方針を採るらしい。
標的となっているアイドルにはこのことを伝えきちんと了承は得られたようである。
『こんな時、ベルトさんがいてくれれば、何の心配も要らないんだけどね』
『テクノロジーを過信し過ぎるのは危険だ。私は進ノ介がいて初めて戦力といえる』
西城の言葉を引き金に、またベルトさんの幻が現れ進ノ介は視線を腰へと向ける。
勿論、そこに相棒の姿はなくごく一般的な皮製のベルトがあるだけだ。
進ノ介はその動揺を押し殺すように集中するが、その焦りは運転に顕著に現れ、普段では考えられない荒々しいものとなってしまう。
霧子も追田も心配そうに進ノ介を見つめるが、2人共警察官である為優先順位をきちんと理解し、今はネオシェードの犯行を防ぐ事に集中する。
到着したのは、都内にある比較的大きめの公園であった。
今回襲撃予告がされたのは標的とされた渡がメインを務める食べ歩き番組の特別編であり、仲のよいアイドル達とともに都内の隠れた名店を巡っていくというものである。
現在は犯行予告がされたとして、番組の流れを変更して周囲への被害が最小限になるようこの公園へと移動していた。
この公園は犯行予告が出た後、警察がうまく市民を誘導しており、現在この公園内にいる人間は全てが私服警官である。
アイドル達は周囲360度が見渡せる中央にある噴水前のベンチに腰掛け、私服警官が店員に変装した屋台で購入したクレープを美味しそうに食べていた。
霧子には捜査車両での待機を頼み、進ノ介と追田は先に到着していた捜査一課の人間たちと合流する。
「状況は?」
「つい先程、『I Disk』が抜き取られたケースが発見されましたが、岡村の姿は見えません」
「アイドル達は」
「『警察の皆さんを信じています』だそうです」
武装した可能性の高いテロリストに狙われて、普通なら怖がって当然なのに、そのような言葉が出るとはアイドルの胆の太さに進ノ介たちは驚嘆した。
「進ノ介。こりゃ、しくじれねぇぜ。ベルトさんがいなくなって不安かも知れねぇが、気合入れるぞ」
「俺がですか?そんなこと‥‥」
自分でも目を背けていた事実を尊敬する先輩である追田に見事言い当てられ、進ノ介は更に動揺する。
追田はそんな進ノ介の肩を掴み、優しく言う。
「いいから聞けって。今まで通りやれると思ったら大間違いだぞ。
不安で当たり前なんだよ。だけどな、俺達特状課の皆が居る‥‥だから、お前はお前らしく自信を持て」
その言葉に不安から目を背けていた進ノ介の心は、先程までよりもずっと軽くなる。
ベルトさんがいなくなってしまったからといって不安に思わず、もっとしっかりしなければならないと何処かで思っていたのかもしれない。
だが、こうして不安に思って良いと肯定され、そして仲間がいることを改めて実感し、進ノ介の気負いは晴れた。
「ありがとうございます」
心からの礼をいい、進ノ介達も他の私服警官と同様に公園内に紛れ岡村を探す。
見通しにいい公園である為、岡村の姿が見えればすぐに気がつくのだが、現状そのような人影は見当たらない。
風に揺れる葉擦れの音が響く穏やかなはずの公園には、異様な緊張感が走っていた。
意識を集中させる進ノ介の耳に、微かであるがあの聞き覚えのある冒涜的な旋律が聞こえてくる。
その発生源に目を向けると公園の入口に岡村が立っていた。その手には盗み出された『I Disk』が握られており、そして全身からあの時見たヘドロのようなオーラを漂わせている。
「確保!」
捜査指揮をしていた警官がそう言うと進ノ介達や私服警官たちは一斉に銃を構え、その銃口を岡村に向ける。
投降を促すが、岡村は不敵な笑みを浮かべたままゆっくりとアイドルの方へと歩みだす。
威嚇射撃を行おうと引き金に手をかけた瞬間、岡村が手を挙げる。そして橙色の光が周囲に広がり、その範囲内に居た人間の身体が重くなった。
「こ、これは!」
「重加速!?」
ロイミュードの発する重加速現象よりはその効力は低いものの、この感覚はまさしく重加速のものであった。
重加速によって緩慢になった世界で岡村の身体はヘドロのようなオーラに呑み込まれ、何処となく蜘蛛の要素を残した異形の生物へと変貌する。
見るものを不安定にする狂気じみた深い緑色をした体表に、身体のいたるところに散らばった大小さまざまな複眼、鼻が腐り落ちてしまいそうな腐臭を放つ体液を撒き散らすその様は、進ノ介が戦い続けてきたロイミュード達の進化態とは似ても似つかない。
重加速により遅れて放たれた銃弾が、異形化した岡村に命中する。しかし、それによってできた銃創からは更に体液が溢れ出し、周囲に腐臭を更に拡散していく。
そして、地面に垂れた体液からは本体よりも小さな蜘蛛の異形が這い出してき、1体だった数が最終的に10体近くまでに増えた。
進ノ介は、重加速によって重くなった身体を必死に動かして標的になったアイドルの元へと急ぐ。
どうやら標的となった渡とその相棒である千川 ちひろ以外のアイドルやスタッフ達は逃げ出すことができたようだが、当の本人は呆れた表情で異形化した岡村を見ている。
「ふぇいず3、かくじつにあのときのやつです」
「従属まで生み出せるようになって、面倒この上ないですね」
「どうしましょうか、七実さん」
渡の右肩には、これまたどこかで見たことのある小人の人形が乗っていた。
「とりあえず、へんしんしますか?」
「数が多いですし、何だかエゴロイト以外の力も持っているみたいですから、ここは先輩の力も借りましょうか」
人形と思っていた小人はどうやら生きていたようで、見ていると力の抜けそうな表情のまま渡と何やら話し込んでいる。
エゴロイトに、自分に向かって先輩というアイドル、いったいどうなっているのかわからない進ノ介は、早く逃げろと叫ぶが渡はそれを無視して岡村へと歩き出す。
身体が重く感じる程度の重加速の中で、従属と呼ばれた子蜘蛛達の攻撃を神業的な立ち回りで全て捌いていく。
「おやくだち!」
「なんだ!?」
生身で化け物と戦うという自殺行為をしようとする渡を止めようとした進ノ介だったが、いつの間にか自分の肩に移っていた小人に驚愕する。
表情の全く変わらない小人は、その小さなポケットから小さなリングを取り出して進ノ介に差し出す。
「これは?」
「とんねるです?それをべるとにあててみるです」
言っている事はいまいち理解できないが、この小人は岡村が変貌した異形の事についても知っているようなので、とりあえず指示に従い受け取った小さなリングをベルトに当てる。
すると、リングが光だしその直径を広げだし始めた。
『ウワアァァァァ‥‥』
広がり続けるリングの中から、聞き覚えのある叫び声が聞こえる。
ポンッという何だか気の抜ける子気味のいい音と共にリングから出てきたのは、見間違える事など絶対ないロイミュードとの苛烈な戦いを切り抜けたもう逢うことのないと思っていた相棒の姿だった。
「ベルトさん!?」
『進ノ介、これはいったいどうなっているんだ!』
「おはなしはあとです。とりあえず、へんしんしてたたかうです」
色々と話したいことは互いにあったが、今はそんな悠長な事をしている暇はない。
「では、よろしくお願いしますね。先輩♪」
再会を喜ぶ進ノ介の隣には、いつの間にか千川が立っていた。
その腰にはベルトさんとは全く違うデザインのベルトが巻かれており、手には盗まれたものと違う別の『I Disk』を持っていた。
全く訳がわかっていなかった進ノ介であったが、ようやく全てが繋がった。
それによって脳内のギアが今度こそトップギアに入りきった感覚する。アイドル達には色々と聞かなければならないことができたが、今はとりあえず岡村の確保が先だ。
「でも、ねんれいはこちらがうえです?」
「妖精さん?」
「ぴぃぃっ!」
妖精さんと呼ばれた小人は千川の睨みにガタガタと震え始めるが、表情は一切変わらない。
妖精というには何とも間抜けな様子に本当に大丈夫なのかと心配になるが、封印されたベルトさんをここまで呼び出したリングから考えるに技術力は問題ないだろう。
「まあ、ベルトさん‥‥色々と話したいことはあるけどさ。とりあえず、俺達にはまだ遣り残した仕事があるみたいだからよ‥‥もう一っ走り付き合えよ!」
『確かにそのようだ。OK、進ノ介 Start your Engine!!』
「変身!」
『DRIVE type Speed!!』
進ノ介の手にはベルトさんと一緒に飛び出してきたシフトカー シフトスピードとシフトブレスが握られていた。
左腕にシフトブレスを装着し、シフトスピードをレバー状に変形させ装填させる。そして素早くシフトカーを操作する。
そのプロセスを経る事によってシグナルがトライドロンに転送され、進ノ介の身体にドライブの外装が転送され変身が完了した。
世界を第二のグローバルフリーズを防ぎ、ロイミュードという機械生命体を撲滅した戦士、仮面ライダードライブ
その勇姿は、依然色褪せることなくそこにあった。
「じゃあ、七実さんを待たせるわけにもいきませんし。私も変身しましょうか」
千川がIdドライバーを操作するとベルト中央部の右側が開く、そこに『I Disk』をセットして勢い良く閉じる。
『I Disk set』
女性のような電子音声がI Diskの装填を確認したとアナウンスする。
「変身!」「そんぐ ふぉお ゆう~~♪」
『Play Prelude!!』
ベルト右側に備えられている装飾が施されたマイクを手に持ち、宣言しながらポーズを決めるとIdドライバーから音楽が流れ出し、そのメロディに合わせる様に身体に次々と外装が装着されていく。
ドライブとは違い、何処となくドレスを思わせる女性的なフォルムをしているものの、それでも進ノ介にはあれも仮面ライダーであると直感的にわかった。
警察官とアイドル
職業は違えど、思いは同じである2人のライダーがここに揃った。
「さて、ステージの開幕です♪」
シンデレラガールズ、最終回お疲れ様でした。
シンデレラの舞踏会の名に恥じぬ、言葉にする事すら無粋な感慨無量の最終回でした。
アニメは終わってしまいましたが、本作は細々と続いていきますので、どうかこれからもお付き合いください。