鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください…… 作:ふーあいあむ
前話にてジークに萌える人が多発。
それはダールグリュン邸での秘密のお茶会(意味深)が終わり、本屋に寄ってからの帰り道のことだ。
ジークとは本屋へ行くときに別れ、今は一人で道を歩いている。
お目当ての本は売り切れていたが、ストラトスちゃんから買っておいたというメールが来ていた。
……アドレスも買いたい本のことも教えた覚えはない。
「ん? なんだコレ?」
道端でぐにゅぐにゅ蠢いている黒い物体を発見した。
最初は犬のアレかと思った。
「……動いてるなぁ」
めちゃくちゃ動いている。
それはもう気持ち悪いほどに。
「持って帰ってみる……か?」
黒い物体を指で摘まんで持ち上げる。
「おぉ……何だこの不思議な感触!」
冷たいスライムのような……けれどもどこか暖かいソレ。
よし、決めた。
「育てよう!」
「で、持って帰ったんだけど……どう思う? ウィーズリー」
「ありえないです。あとウェズリーです。その間違いはやめてください」
「ナメクジ食らえ!」
「やめてくださいってば!」
翌日、いつものようにウェズリーと登校。
昨日の黒い物体のことを話ながら歩く。
「それで、それはどうしたんですか?」
「植木鉢に植えた」
「植物ですか……」
ウェズリーが呆れている。
このままでは先輩としての威厳が……話題を変えなくては!
「ところでロン」
「ウェズリー! もしくはリオ!」
「お前の八重歯へし折りたいんだけど……」
「唐突!」
いやいつも言ってるじゃん。
「だめ?」
「ダメに決まってるじゃないですか! そ、そんなに悲しそうな顔しないでくださいよ……」
断られてしまった。
「はぁ……はぁぁぁあ」
「そんなこれ見よがしにため息されても……。こ、これじゃあまるで私が悪いみたいじゃないですか」
はぁぁぁぁぁぁあああああ……。
「う……も、もう……仕方ないですね!」
「……ん?」
ウェズリーが正面に来て口を大きく開いた。
「……折っていいの?」
「触るだけ! 触るだけなら……いいです」
チョロい。
「それでは失礼して」
「……ふぁっ」
歯の先端を指先でトントンと触る。
ちくり、と小さな痛みが走った。
結構鋭いんだな。
「ひゃぅ…………ひぇっ、ひぇんぱい……!」
次は指で摘まむ。
ウェズリーは顔を真っ赤にして目を閉じていた。
心なしか目元が潤んでいる。
「ひぇんぱい…………ひぇ、ひぇんぱい? ひょっ、いらい! いらいれす!」
このまま……!
「ガブゥッ!」
「あいたッ!?」
噛まれた。
思わず手を引っ込める。
「お、お前今本気で噛んだろ!?」
「はぁ……はぁ……せ、先輩は本気で折ろうとしましたね!?」
「いいって言ったじゃん!」
「触るのだけです!」
なんてガキだ。
親に人の指は噛んじゃいけないと教わらなかったのか?
「うわ……血ぃ出てんじゃん」
指を見るとうっすらと血が出ていた。
指を口に含む。
「ふゃっ!? せ、先ぱっ……な、何して……っ!?」
ウェズリーが顔を真っ赤にして焦り出す
どうでもいいけど。
それより指が痛い。
「あー痛い痛い。誰かさんのせいで指が痛いわぁ」
「あ、あぅぅ……っ!」
ウェズリーのやつは真っ赤になったまま俯くだけ。
おい無視か。
「ウェズリーちゃぁん? 人の話は聞きましょうねー?」
「ぅぅ…………!」
「聞いてるー? 聞いてないよねー? 無視かコラ」
顔を覗き込むがますます顔を赤くするだけ。
「あらあらウェズリーちゃん。どーちたの? お熱あるの?」
「あぅあぅ……!」
はにゅーん。
やっぱり無視ですか。
「だいじょうぶー? 歩けるー? おてて繋いであげまちょうかー?」
「……………………………………つなぐ」
「……え?」
こうして、何故か別れ道までウェズリーと手を繋ぐことになった。
「どうでもいいけどウェズリー、お前手汗かきすぎ。ヌルヌルして気持ちわ」
「先輩のばかぁぁぁあああッ!」
主人公がクズ過ぎる件。
次回、再びジーク&ヴィクター登場。
そしてついにあのお方が……!
あと、申し訳ありませんが明日と明後日は大学のゼミの都合上更新できません。
ご了承ください。