鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください……   作:ふーあいあむ

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活動報告にも書きましたが更新が法事があって遅れました。
申し訳ありません!


またまた今回も『静』の回。
次回か、次々回に燃えるくぎゅうううううと車の人な彼女が来ます。




八十六話

「さ、着いたよ。ここだ」

「……ほほぅ」

 

士郎さんに連れられて銭湯から歩くこと十数分、なかなかオサレな店に到着した。

ここが士郎さんの店か……。

 

「喫茶翠屋って言うんだ」

「へぇ……いい店ですね」

「だろう?」

 

まだ開店前なのだろう、扉には“closed”と書かれた看板がかかっている。

……だいたいこういう店って10時くらいから開くんだよな? 飲食店だからなんとも言えないけど。

ってことは……あの銭湯は結構早い時間から開いてるんだなぁ。……本当に、なんでそんな時間に俺は入浴しに来ていたんだろうか。

 

「さぁ、入ろうか」

「あっ、はい」

 

扉を開くと可愛らしいベルの音が鳴り響く。

 

「桃子~、帰ったぞ~」

 

桃子というのは僕の妻のことなんだ、と士郎さんは説明してくる。

 

「士郎さん、お帰りなさい……って、あら?」

 

店の奥からこれまた若い女性が現れる。この人が“桃子”さん? うそ、子持ち? 本当に?

若々しいとかそんなレベルじゃあないぞ。

 

「あらあら! 可愛いコね~! 士郎さん、どこで拾ってきたの?」

「いや、拾ってきたって……動物じゃないんだから」

 

……冗談が好きな人、なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わかったわ。このコ、うちで飼いましょう」

 

桃子さんは、俺の事情聞いて開口一番にそう言い放った。

 

「いや“飼う”ってなんだい!?」

「私もお世話手伝うわ」

「聞いてる!?」

 

桃子さんの言葉に士郎さんは焦っていた。

……なんていうか。

 

「士郎さんの奥さんって……ていうか士郎さんって……」

「ちょっ、待ってくれ! それで僕の評価が下がるのはとても不本意なんだが!?」

「ところでワンちゃん、あなた名前は?」

「“ワンちゃん”? ……あ、篠崎チヒロっす」

「あら、お名前言えるのね~、えらいえらい♪ 私は高町桃子よ。よろしくね、ワンちゃん」

「名乗った意味なくね? ていうか“ワンちゃん”って……」

「二人して僕を無視するのはやめてっ!?」

 

喚く士郎さんを無視して桃子さんは俺の頭を撫でる。

完全に犬扱いですね分かります。

 

「そうそう! さっきシュークリーム作ったんだけど食べるかしら? 商品なんだけど二、三個くらいなら……」

 

そう言って桃子さんは店の奥に消えていった。

 

「……えっと、失礼ですが……こう、おバカっていうか、おかしいっていうか……そういう方がお好きなんですね」

「違うからっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うふふふ♪」

 

桃子さんが持ってきてくれたシュークリームを、桃子さんに頭を撫でられながら頂いている。

すっげぇ邪魔なのに……何だろうか、無下にし辛い。なんでだろうか?

 

「……えっと」

「あら、どうしたの? ……あっ! お散歩に行く? リードあったかしら……」

 

やはり無下にすべきだろうか。

 

「……で、士郎さん。この店って何時に開店するんですか?」

「えっ? あ、あぁ。時間はーーーー」

 

なるほど。

 

「とりあえずお客さんが来たら君のことを片っ端から聞いてみるよ」

「ありがとうございます。……あー、よければ手伝いましょうか? 何もしないって言うのは気が引けますし」

「……そうだね。そのほうが君も気分がいいだろうしね」

 

話のわかる人でよかった。

……趣味は悪いけど、色々と。

 

 

 

 


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