鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください…… 作:ふーあいあむ
活動報告にも書きましたが更新が法事があって遅れました。
申し訳ありません!
またまた今回も『静』の回。
次回か、次々回に燃えるくぎゅうううううと車の人な彼女が来ます。
「さ、着いたよ。ここだ」
「……ほほぅ」
士郎さんに連れられて銭湯から歩くこと十数分、なかなかオサレな店に到着した。
ここが士郎さんの店か……。
「喫茶翠屋って言うんだ」
「へぇ……いい店ですね」
「だろう?」
まだ開店前なのだろう、扉には“closed”と書かれた看板がかかっている。
……だいたいこういう店って10時くらいから開くんだよな? 飲食店だからなんとも言えないけど。
ってことは……あの銭湯は結構早い時間から開いてるんだなぁ。……本当に、なんでそんな時間に俺は入浴しに来ていたんだろうか。
「さぁ、入ろうか」
「あっ、はい」
扉を開くと可愛らしいベルの音が鳴り響く。
「桃子~、帰ったぞ~」
桃子というのは僕の妻のことなんだ、と士郎さんは説明してくる。
「士郎さん、お帰りなさい……って、あら?」
店の奥からこれまた若い女性が現れる。この人が“桃子”さん? うそ、子持ち? 本当に?
若々しいとかそんなレベルじゃあないぞ。
「あらあら! 可愛いコね~! 士郎さん、どこで拾ってきたの?」
「いや、拾ってきたって……動物じゃないんだから」
……冗談が好きな人、なのか?
「わかったわ。このコ、うちで飼いましょう」
桃子さんは、俺の事情聞いて開口一番にそう言い放った。
「いや“飼う”ってなんだい!?」
「私もお世話手伝うわ」
「聞いてる!?」
桃子さんの言葉に士郎さんは焦っていた。
……なんていうか。
「士郎さんの奥さんって……ていうか士郎さんって……」
「ちょっ、待ってくれ! それで僕の評価が下がるのはとても不本意なんだが!?」
「ところでワンちゃん、あなた名前は?」
「“ワンちゃん”? ……あ、篠崎チヒロっす」
「あら、お名前言えるのね~、えらいえらい♪ 私は高町桃子よ。よろしくね、ワンちゃん」
「名乗った意味なくね? ていうか“ワンちゃん”って……」
「二人して僕を無視するのはやめてっ!?」
喚く士郎さんを無視して桃子さんは俺の頭を撫でる。
完全に犬扱いですね分かります。
「そうそう! さっきシュークリーム作ったんだけど食べるかしら? 商品なんだけど二、三個くらいなら……」
そう言って桃子さんは店の奥に消えていった。
「……えっと、失礼ですが……こう、おバカっていうか、おかしいっていうか……そういう方がお好きなんですね」
「違うからっ!?」
「うふふふ♪」
桃子さんが持ってきてくれたシュークリームを、桃子さんに頭を撫でられながら頂いている。
すっげぇ邪魔なのに……何だろうか、無下にし辛い。なんでだろうか?
「……えっと」
「あら、どうしたの? ……あっ! お散歩に行く? リードあったかしら……」
やはり無下にすべきだろうか。
「……で、士郎さん。この店って何時に開店するんですか?」
「えっ? あ、あぁ。時間はーーーー」
なるほど。
「とりあえずお客さんが来たら君のことを片っ端から聞いてみるよ」
「ありがとうございます。……あー、よければ手伝いましょうか? 何もしないって言うのは気が引けますし」
「……そうだね。そのほうが君も気分がいいだろうしね」
話のわかる人でよかった。
……趣味は悪いけど、色々と。