鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください……   作:ふーあいあむ

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今回は短め。
視点はチヒロに戻ります。



八十五話

ーーーーカポーン……なんて。

 

 

アニメやドラマだったら、そんな音が鳴り響くかもな。

 

「ふぃ~……!」

 

熱い()の中で手足を伸ばす。

じんわりと体の芯から温められていく。

 

「やっぱいいねぇ~……デケー風呂は」

「ーーーーあぁ、そうだなぁ……」

 

俺の独り言に答える声があった。すぐ隣からーーーー若い男だ。

 

「いやぁ~……朝から風呂って最高っすよね」

「あぁ、最高だな……こんな贅沢はない」

 

そういや……何で俺、朝から風呂に入ってんだろう?

ていうか。

 

「あの……ちょっと聞いていいすかね?」

「ん? 何だい?」

 

 

 

 

「ーーーーここどこ? あんた誰? 何で俺、()()()になんかいるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやらここは銭湯だったようだ。

 

「はい、どうぞ」

「あ、ども……」

 

若い男が牛乳を差し出してきたので受け取る。

ぐいっ、と一気飲み。

 

「服、どうだい? キツかったりしないかい?」

「あ、大丈夫っす」

 

大浴場から出て更衣室に来てみたが俺の服はなかった。

朝ということもあり、人数はそんなにいない。あれば見つけることは難しくないはずだが……俺に合うサイズの服は見当たらない。

そこでこの若い男が自宅に戻り、息子さんの服を持ってきてくれたのだ。……子供いるんだ、この人。

え? じゃあ……そんなに若くないのか……?

 

「ありがとうございます」

「いや、何。困ったときはお互い様さ」

 

マジイケメソ。

 

「えっと……記憶喪失……ってやつなのかな?」

「はぁ……たぶん」

「そ、そうか……」

 

先ほどこの若い男から質問されて気づいたのだが、今まで何をしてたのか、どこに住んでいたのか……自分に関する情報をまったく思い出せないのだ。

にしても、なんか自分でもビックリするほどすごい落ち着いてるなぁ。

「自分の名前は……思い出せないかい?」

「……篠崎チヒロっす」

「あぁ、よかった。名前は覚えてるみたいだね……」

 

唯一の手掛かりだよな、俺の名前(これ)

うーん……。

 

「困ったなぁ……」

「困りましたねぇ……」

これからどうしよう……。

 

「とりあえず、僕の家に行かないかい?」

「えっ?」

「僕は家族と喫茶店を経営しているんだ。自分で言うのも何だが、結構繁盛していてね。お客さんがたくさん来るから、そのうちの誰か聞けば何かわかるかもしれない」

「あぁ、なるほど。でも迷惑じゃ……」

「さっきも言っただろう? 困ったときはお互い様さ」

 

……ここは素直に甘えておくか。

 

「じゃあ……お願いします」

「あぁ、わかった。それじゃあ行こうか」

 

そう言って若い男は歩き出す。

……って、まだ名前聞いてねえや。

 

「なぁ」

「ん? どうしたんだい?」

「アンタ名前は?」

「……そう言えばまだ名乗ってなかったか」

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーー僕は高町士郎。よろしくね、チヒロくん」

 

 

 

 




というわけで、まさかの海鳴編スタート。
士郎さんの一人称と口調がわからないよぉ……。


おまけ
《THE INFINITY WAR ※委員長視点》

「ちょっと!」
「……え?」

学校からの帰り道。
いきなり声をかけられた。声の主を見れば、見覚えのあるツインテールが。

「話があるんだけど……こっち来なさい!」
「えっ!? あの……!」




たどり着いたのはどこかの喫茶店。
とりあえずコーヒーを頼む。

「……話って何でしょうか?」
「決まってるでしょ! アンタ、チヒロの争奪戦に参加してないらしいじゃない」

そ、争奪戦て……。

「えっと……まぁ、はい」
「……なんでよ!?」
「な、なんでって……」

……委もうと(あの娘)がいるから。
どう足掻いたって……私じゃ勝てない。

「どういうことよ」
「……それ、は」
「……話してみなさい」

ツインテールさんに言われ、私はぽつぽつと語りだした。
あの娘のことを。

to be continued……



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