鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください……   作:ふーあいあむ

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今回もヴィクター視点。
そして過去編はこれでおしまい。まさかの結末(?)です。

Age Of Ultronの円盤買っちゃったゼ┐('~`;)┌




八十四話

「ごめんなさいでした」

「反省してます」

 

土下座。二人は今、その体勢だ。

私はその前で訓練用の槍を手に仁王立ち。

 

「本当に分かってるんですの?」

「人ん家で喧嘩しちゃいけないでした」

「いきなり人の頭踏みつけちゃいけないでした」

「ちゃんとした言葉を使いなさい」

 

はぁ……本当に分かっているのだろうか。

 

(テメーのせいだかんな)

(なんでや!?) (アンタのせいやろっ!)

 

聞こえてますわよ。

 

「ぷぎゃっ!?」

「あいたぁっ!?」

 

ジークの頭を踏み抜き、“彼”の背に槍の柄を刺す。

 

「ーーーーんっ…………!」

 

……やっぱり。

何だろうか、この、人に……特にジークに酷いことをしたときに流れる甘美な電流のようなものは。

魔力異常……? 一度、検査をする必要がありますわね。

 

「……って、それは後でですわ。二人とも聞いていますの!?」

 

今はこの二人を叱ることに集中しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからというもの、“彼”が来るたびに二人は喧嘩をしていた。

 

ある時はジークのおやつを“彼”が食べたと言って。

また、ある時は“彼”の肩にジークの肩がぶつかったと言って。

 

やれ“彼”がどうの、ジークがどうの。

 

朝昼夜と時間を問わず、二人は会えば喧嘩ばかりしていた。

そのたびに私が制裁をする。……日増しにあの甘美な電流も強くなる。なんなのこれ。

 

 

ーーーーそしてある時を境に、“彼”は私たちのもとに現れなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、名前も聞かないまま彼はいなくなってしまったのですわ」

「本当にひどい奴やったよね……あの馬鹿」

 

……そんなこと言って、一番寂しがっていたのはあなたでしょうに。

 

「ま、まぁ……あの頃はあの馬鹿をどうぶちのめしたろうか考えてた()()()……じゃなくて! その()()で、ご先祖様とかのことを一時的に忘れることができたのは事実やな。……(た、楽しかったし)

 

そして心の余裕ができて、ジークは壁をひとつ乗り越えることができた。

 

「へぇ……ん? なぁ、もしかしてジーク、ソイツのこと……」

「えぇ、紛れもなくあれはジークの初恋ですわね」

「な、ななな何言っとんの!? あ、あんなヤツ好きやない!っ」

「へぇ~……ほんとかなー? にやにや」

「にやにやすんな口で言うなぁぁぁあああ!」

 

そして二人は追いかけっこを始める。

 

 

ーーーー実を言うと、私は“彼”のその後を知っている。

ダールグリュン家の総力を持って調べたのだ。

 

私たちの前に“彼”が現れなくなった時期、“彼”は交通事故に巻き込まれて入院していただそうだ。

その際に彼は、記憶の一部分をきれいさっぱり無くしてしまったらしい。

だから私たちのところには現れなかったのだ。記憶の一部分……つまり、私たちを忘れてしまったから。

 

それから数年後、“彼”に再会した。

何の因果か、今度はジークから紹介されて。

 

ジークには“彼”だということは分かっていなかったようだ。男子三日会わざればなんとやら、確かにだいぶ印象が変わっていた。 もちろん“彼”のほうも私たちを分からなかった。

でも私にはすぐに分かった。

いまだに追いかけっこを続ける二人を眺める。

 

「……あなたの初恋はまだ続いているんですのよ、ジーク」

 

でも、それを言うつもりはない。

きっとそれでいいのだと思う。大切なのは“今”だから。

 

 

 

 

 

 

 

「ところでチヒロ……あなたの初恋っていつですの?」

 

「ん? あぁ……俺さ、小さい頃に交通事故に巻き込まれたことがあるんだよ。で、入院してる時にさ、ずっと側にいてくれた娘がいたんだ。年下か、同い年か……金髪の女の子でさ。でも今思えばおかしな話だよな? だってずっと……2()4()()()()()()一緒にいてくれたんだぜ? まぁ寝てる間はわかんないけど、たぶんずっとだ。同い年くらいの女の子が、一人でだぜ? ありえないだろ。……あ、そういやなんかヴィヴィオちゃんに似てたかも」

 

 

《……ふふっ♪》

 

 




記憶喪失のことについてはご都合主義ってことで突っ込み等はお許しください。

次回、まさかの〇〇編。


おまけ
《DEVELOPMENT ※ヴィクター視点》

「そういや親父に頼まれてこんなものを作ったんだ」

そう言って、チヒロはある物を出した。

「何ですの、これ?」
「フ〇トン回収装置」

……何をするのかしら。

「いいか、よく見てろよ」

チヒロはジークにそのフ〇トン回収装置をつける。

「な、何で(ウチ)なん!?」
「ジーク、可愛いよ」
「えっ!? えへへぇ……!」

相変わらずチョロい女。
しばらくすると、フ〇トン回収装置から小型の気球が出てきた。

「えっ!? えっ!? な、何なん!?」
「あらあら」

そして……。



「ああああああぁぁぁぁぁぁ(ああああああ)(ぁぁぁぁぁぁ)……………………(………………………………)



空高く飛んでいった。

「これを……なんだっけ? 諜報班? が回収する。敵地で気に入ったヤツを味方に率いれるってわけだ」
「なるほど……で、ジークはどこに飛ばされたんですの?」
「え? 知らん」
「え?」
「今頃大気圏超えてんじゃねーの?」

……………………あら。

「……今から遊園地行きませんか? 二人で」
「おっ、いーねー」


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