鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください…… 作:ふーあいあむ
とりあえず、俺はジークちゃんをつれて本棚の影に隠れることにした。
「ぎゅ~……♡」
弱冠うっとおしくなってきたぞ、この娘。
これがジークだったら一本背負いなのに。本棚目掛けて叩き付けるのに。
「……ま、今はそれどころじゃないしな」
「ん? おにいちゃん、どーしたん?」
「何でもないよ」
さて、少し整理しようか。
現在、クロはヴィヴィオちゃんの拘束魔法を破りガチ戦闘中だ。
しかし、やはりというか天使はつおい。かなり圧されてる。
「……あれ? でも、確かヴィヴィオちゃんは封じたはずじゃ?」
ストラトスちゃんもいるし。
瓶詰め魔法を何とか解除したってことか?
「……となると、かなり不利だな」
クロは一人、あちらにはヴィヴィオちゃんにストラトスちゃん、そして見知らぬガキ(たぶんヴィヴィオちゃん側だろう)がいる。
はっきり言って勝ち目はない。無力化されるのも時間の問題だろう。
「……と、なればやることは一つ」
あとはタイミングを……お?
ヴィヴィオちゃんがクロの手を取って何かを話している。
まさかもう終了……と思いきや。
「ーーーーブチ抜けェーッ!」
突然ハリーの声が聞こえ、ヴィヴィオちゃんとクロの方に光が放たれた。
「ーーーーって、ヴィヴィオちゃん!?」
無事か!?
……どうやら寸前で避けていたようだ。良かった。
そして光の放たれたもとを見るとハリーやその取り巻き、デコ助にシャベル……あと何か知らない娘がバリアジャケットを装着し、クロと対峙していた。
「あ、やばいこれクライマックスだ」
俺も動かなくては!
この期を逃したら後はないッ!
「あっ、おにいちゃん!? どこいくん!? まってや~!」
「ーーーー待ってくださいってば! 今、私がファビアさんと話してるんですから!」
「い……いや、そりゃそうなのかもしれねーが……」
かかったなアホが!
「
「なっ……ち、チヒロっ!?」
「チヒロ先輩っ!?」
後ろからクロを羽交い締めにする。
「俺はッ! 最初からこの機会を伺っていたッ! 油断したところを拘束できるようになッ!」
大声で強調する。
「ーーーーハッ!? ルーテシアさん、今です!」
「えっ? あ、あぁ、そっか!」
突然の俺の出現に一同ぽかんとするなか、いち早く
それに反応して、先ほどの見知らぬガキが近寄ってきてクロに手錠をかけた。
「魔力錠オン!」
「あ……!」
クロの変身魔法が解けた。
よし。計画通り……!
「
「
聞こえてんぞ。
君らあとで殺す。
「ジーク! ヴィヴィ! 無事ですか!?」
何てやっている間にヴィクターとそのペアであるコロナちゃんまで到着。これはもうチェックメイトだな。
ていうか。
「おい、ヴィクター。ヴィヴィオちゃんについてはいいとして、お前はジークの心配しかしねえのかよ」
「あら、他はともかくあなたはそう簡単にやられたりしないでしょう? 守るべき存在である初等科組は
「中等科組とか他の連中は?」
「自己責任ですわ」
なるほど。一理あるな。
……っていうかジークいなくね? ジークちゃんならいるけど。
ま、どうでもいいか。
「さぁて、と」
クロについては見知らぬガキ……確か、ルーテシアとか呼ばれてたか? そいつに任せておいて……。
「ヴィヴィオちゃん、大丈夫? 酷いことされなかった?」
「……先輩のばかっ!」
な、なぜにっ!?
「ヴィ、ヴィヴィオちゃん……? いったい何で怒ってーーーー」
「かくほぉーーっ!!!」
「ーーーーって、うおっ!? ジークちゃん!?」
いきなりジークちゃんが俺へ飛び付いてきた。
「しかし甘ァいッ! 勢い生かして一本背負いっ!」
「なんでやぁぁぁぁぁあああああっ!?」
ヴィクター目掛けて投げ飛ばす。
正式な背負い投げは地面に叩きつけるんだけど……こっちに投げるべきだろう。
「……ま、まさかジークですの!? まぁまぁまぁまぁ、何て弄り……もとい可愛らしい姿に……! 安心してくださいな、ちゃんと受け止めてさしあげーーーーあら? 靴ひもがほどけてますわ。結ばないと」
ーーーージークちゃんは靴ひもを結ぶために屈んだヴィクターの後ろの本棚……ではなく、そこにいたチャイナ服の少女に激突した。あのチャイナ服誰?
「あ、バリアジャケットだから靴ひも関係ありませんでしたわ。てへっ☆ ……って、ウ〇コ踏んじゃいましたわ」
「ぷぎゃッ!?」
ジーク……憐れな子。
おまけ
《【予告】“V” has come to》
この作品が始まってから約6ヵ月。
僕たちは教えてもらった。
友を弄ぶ快感を。
見つかった時のスリルを。
反省しない心がゲスの必需品であることを。
僕たちは教えてもらった。
数多くの生き様を。
だが僕たちはまだ教えてもらっていない。
誇り高き雷帝が、なぜゲスに堕ちたのかを。
この作品最大の謎に、決着がつく。
「6ヵ月間、待たせましたわね」
ヴィクトーリア・サーガ、近日公開。