鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください……   作:ふーあいあむ

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今回の話は『Quiet’s Theme』を聞きながら優しい気持ちで書きました。
この曲は心を柔らかく暖かにしてくれる……。




七十八話

クロがブツを探しているであろうエリアに向かう途中、これまたジークに似たヤツに出会った。

ヤツっていうか…………ロリっ娘。

 

「あっ、チヒロやぁ!」

「おやおや? 何で俺の名前を知っているんだい、お嬢ちゃん?」

 

……俺、もしかしてかなり有名人?

 

「えぇっ!? ……って、あぁ、この姿だからかぁ……。(ウチ)やよ、(ウチ)!」

 

う~ん……一人称が“ウチ”のロリっ娘の知り合いはいないなぁ……。

 

「よく分かんないけど……迷子なのかな?」

 

……こんな場所で?

 

「ちゃうってば! (ウチ)(ウチ)! ジークやって!」

「そうか、ジークちゃんって言うのか」

 

似てるだけじゃなくて名前までジークと一緒とか……可哀想だ……。

思わず抱き締める。

 

「ふぁっ!?」

「よしよし……ジークちゃん、辛かったねぇ……!」

「な、なに!? なにが!?」

 

うわぁ……同情しすぎて涙が溢れてきた……!

 

()()ジークと似てるうえに名前まで同じなんて……いじめられたり、生きることに疑問を抱いたりしたでしょ……?」

「どっ、どういう意味やッ! あ、あぁ、でもこの状況(チヒロの腕の中)は夢にまで見てきたものやし……!」

 

あぁ、この娘はこんなに小さいのに……神様は意地悪だ……!

 

《あぁっ……! 何の罪もない幼子に神はなんという試練を……あのレズミアに似せて創造なさるなんて…………ッ!》

 

謎の声も嘆いている。

 

「あっ……ぅぅぅ……むかつく……! むかつくんやけど喜んでる自分もいる……(ウチ)は……(ウチ)はどうすればいいんや……っ!?」

 

ジークちゃんはぶつぶつと何かを言っている。

そうか、彼女は今まで色々とジークに似ていることから俺のように接してくれる人がいなかったんだ。

初めての対応に戸惑っているんだな……!

 

「いいんだよ、ジークちゃん。素直になっていいんだよ……?」

「あぅぅ……ぅぅ……! (ウチ)は……(ウチ)はぁ…………っ!」

 

何だい……?

 

 

「ーーーーおにいちゃん、ぎゅってして…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジークちゃんを抱き抱えながらクロのもとへ移動していると何だか爆発音のようなものが聞こえてきた。

 

「何だ?」

「……(ウチ)、こわいよぅ……おにいちゃぁん……!」

「よーしよし、大丈夫だよジークちゃん。俺が側にいるからね」

「…………うんっ! えへへっ」

 

ジークちゃんを安心させ、爆音の発生源へと向かう。

そこには……。

 

 

「ーーーーあれ……もしかしてクロか?」

 

 

ヴィヴィオちゃんやストラトスちゃんの大人モードのようにないすばでーになったクロがいた。

しかもヴィヴィオちゃんやストラトスちゃんと対峙中のようだ。

 

「……おにいちゃんのおともだち? 」

「ん? あぁ、そう。友達…………かなぁー?」

 

友達?

 

《ペットですよ》

 

何の躊躇いもなくそう答える謎の声。

そうかペットなのか。

 

「むー……」

 

俺が黙り込んだままだったのがジークちゃんの何かに触れたのか、彼女は頬を膨らませていた。

 

「おにいちゃんは(ウチ)のっ! (ウチ)のなんやっ!」

 

子供ならではの独占欲だろうか?

かーわいー。

 

「……って、ありゃ?」

 

ジークちゃんと話しているうちに、ヴィヴィオちゃんの拘束魔法よってクロが捕らえられていた。

これは……。

 

 

もしかして、俺とクロ(こっち側)圧倒的に不利な状況?

 

 




おまけ
《THE INFINITY WAR ※???視点》

「……見つかった?」
「いえ、全く……。そちらは、って聞くまでもありませんか」
「……面目ない」
「いえ、クーちゃんさんのせいではありません」

まさか私たちの探索能力を持ってしても見つからないとは。

「もうっ……いったいどこに行ってしまったんでしょうか?」
「……分からない」

探しても探しても手がかりすら掴むことができません。

「まさかあの(・・)“彼女”がここまでお転婆だとは……」
「……本当に驚かされた」

私やクーちゃんさんのデータベースや記録映像からでは想像もつきませんでした。
やはり()に接触するほかありませんね……。

「“篠崎チヒロ”さん……でしたか」

“彼女”の目的も彼のはずです。
彼を探し接触するのが一番手っ取り早く“彼女”を見つける方法でしょう。

「そうと決まれば善は急げです。クーちゃんさん、行きましょう」
「……アーちゃんは時々聞いたこともない言葉を使う」
「……あぁ、“善は急げ”ですか? そう言えばあなたは地球に行ったことがありませんでしたね」

地球のことについては追々教えてあげましょう。
今は“彼女”を探すことが最優先です。

「行きましょう、クーちゃんさん」
「……わかった、アーちゃん」

to be continued……



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