鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください……   作:ふーあいあむ

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21時ちょっと過ぎちゃった。ごめんなさい。




③現実は非情である。




六十七話

ーーーーどうも様子がおかしい。

 

ジークの試合を見ていて、俺はそう思った。

様子がおかしいのはジークじゃなく、その対戦相手だ。

 

「まさかストラトスちゃんだったとはな……」

 

俺の視線の先ではストラトスちゃんが怒りに任せるようにジークに攻撃している。いいぞ、もっとやれ。

……じゃなくて、ジークが腕に防護武装を装着したあたりからストラトスちゃんの様子はおかしくなっていった。

 

「何やらかしたんだよ、ジーク」

 

《いえ、()()()何もしていませんよ》

 

謎の声が話しかけてくる。

何か知ってんのか?

 

《えぇ。……まさか二人の子孫が戦うことになるとは。運命とは皮肉ですね》

 

……こいつ、前々から思ってたけど何者なんだよ?

 

「チヒロ? どうかしましたの?」

「あ? あ、ヴィクターか……何でもねえ」

 

危ない危ない。

少し小声で話そうか。

 

「……で、何知ってんだ?」

 

《彼女たちのご先祖さま……ですかね》

 

「ご先祖さま?」

 

あぁ、そういやジークは……ストラトスちゃんもなのか。

どんな奴なんだ……?

 

《簡単に言うと……ド変態ストーカー野郎とガチレズ男女ですね》

 

「まさかお前からそんな罵倒浴びさせられる奴がいるとは思わなかった」

 

ビックリだわ。

 

《まさか子孫にまでその業を背負わせるなんて……》

 

それは違うと思うけど……。

 

「けど、背負わせるってことはストラトスちゃんの先祖が“ストーカー野郎”か。でもジークは? あいつ別に百合じゃ……」

 

《ヴィヴィオちゃん……でしたっけ? 彼女に会わせればわかりますよ》

 

……なんか会わせたくないんだけど、そう言われると。

ヴィヴィオちゃんには普通の環境で育ってほしい。

 

《誰目線なんですか、それ》

 

…………パパ?

 

《……あながち間違いではない……んですかね?》

 

どゆこと?

まぁ、いいや。

 

「それより……そのストーカー野郎と百合女からどんな被害を受けたんだよ」

 

《百合ではなくガチレズです。間違えないでください》

 

あぁ、そうかい。

早く話せよ。

 

《そうですね……ではまずはストーカー被害の方から。日常を常に監視(ストーキング)されているのは当たり前、食事・入浴・トイレにいたるまで完璧に把握され……一度ぶちギレてボコボコにしなら今度はそっち(・・・)に目覚めてしまい催促してくるようになって……》

 

うわぁ……。

 

《ガチレズの方は毎晩全裸でベッドに潜り込んできたり、水浴びを共にすることを強要してきたり、下着も何枚盗まれたことか…………》

 

「苦労したんだなぁ……お前も」

 

俺より辛い目に合ってる奴二人目だよ……。

お前も仲間だ。

 

「よし! 二人……いや、なのはさんも含めて三人でキチ〇イどもに復讐しよう! ヒガイシャーズ、アッセンブーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

『チャンピオン、勝ーーーッ利!』

 

 

 

 

 

 

 

……は?

 

『終わってみれば磐石の勝利! しかしアインハルト選手もルーキーとは思えない…………』

 

…………え? え!?

 

「はぁ!? えっ、試合終わっ……!?」

「チヒロ?」

「ゲフンゲフン…………いやぁ、いい戦いだったな。さすがゴキブリンデ・エレミア、さすがチャンピオン!」

「は、はぁ……?」

 

見てたし。ちゃんと試合見てたし。

見てたから満面の笑み浮かべてこっち見んなよジークっ!

 

《いつからあの二人はおかしくなってしまったのか……。出会った頃はまだまともだったのに》

 

お前もいつまで続けてんだ!

……うん、とりあえず……………………。

 

 

「ごめん、ジーク。まじごめん」

 

 





今回のおまけで後輩ちゃん、更なる高み(恐怖)へ。

おまけ
ASS(アフター☆サイド☆ストーリー)・もう1つの戦い ※後輩ちゃん視点》


奪われてしまった……何もかも。
公園でおしるこ缶を片手に落ち込んでいる私……すごくみじめだ。

それはついさっきのことだ。

先輩の後輩を名乗る女(※四天王の一人)が現れ、先輩の後輩ポジションを返してもらうとワケわからないことをのたまって襲いかかってきた。
返り討ちにしてやろうとしたら……惨敗した。ボロボロボロリンだった。

「あらぁ? 何してるのぉ?」

そんな時、先輩によく似たふいんき(なぜか変換できない)のマダムに声をかけられた。

「……ちょっと、負けられない戦いに負けてしまって」
「あらあらぁ、そうなのぉ」

自分でもなぜこんな話をしたのか解らない。
……やっぱり先輩に似てる。なんでもかんでも話してしまいそうだ。

「それでぇ、貴女はどうしたいのぉ?」
「えっ……ど、どうしたいって……」
「このまま、負けたままでいいのかしらぁ……?」

……嫌だ。そんなの嫌だ!

「強く……もっと強くなりたいです!」
「あらぁ、そうなのぉ~……ならぁ、これをあげるわぁ」

そういってマダムは一冊のノートを渡してくる。
これは?

「うちの娘が小学生の時に書いたものよぉ。……それがあればもっと強くなれるわぁ」
「し、小学生が書いたもので……ですか?」
「ふふ、うちの娘が幼稚園児の時でもあなたじゃ勝てないわよぉ?」

それ本当に人間ですか?
ま、まぁいいや……。

「とにかく……ありがとうございます」

例え嘘だったとしても……ダメ元だ、やってみよう。
マダムの気遣いを無駄にはできない。手元のノートを見る。
ノートの表紙には子供の書くミミズのような、それでいて女の子特有の丸っこい文字でこう書かれていた。












『てんごく へ いく ほうほう』と。




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