鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください……   作:ふーあいあむ

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キレるチヒロとキレるジーク。

Q:ぶつかり合った先に手にいれたものは?




六十六話

「おい、準備できたか?」

「はわっ!? ち、ちょっと待って!」

 

ジークの悩みを聞いた翌朝。

ぐーすか寝続けるジークを叩き起こし、今はインターミドル会場へ向かう準備をしている。

 

「っと、そうだ。ジーク、風邪とか引いてないよな?」

「えっ、うん。体調は万全やけど……」

 

そうか、よかった。

 

「いやぁ、昨日お前が寝た後なんだけどさ。付き合ってもいない男と(いちおう)女が一緒に寝るのはちょっとマズいと思ってな」

「……だから(ウチ)外で寝てたんや」

 

そうそう。

 

「お前だけテントの外に出しといたんだ。俺なりの気遣いってヤツさ!」

「あぁそれはドーモおーきになー…………ッ!」

 

なんか投げやりじゃね?

もっと感謝してくれていいんだよ?

 

「何考えとんの!? (ウチ)だって女の子やで!?」

「うっせー! テメーらみてーにインターミドルだとかストライクなんちゃらだとか汗臭い青春送ってるバイオレンスの塊なんか“女の子”じゃあ断じてねーッ!」

「な、何やてッ!?」

 

お前こそ何なんだよ!

もっと甘酸っぱい青春はねーのかよ! サブタイは“次世代型脳筋少女育成中”かよ!?

 

「ならインターミドル終わったら二人でどこかに出かけようや! (ウチ)やってしっかり“女の子”だってこと教えたるわッ!」

「上等だゴキブリッ! テメーその約束忘れんなよッ!?」

「ゴキッ……!? チヒロこそ忘れないでやッ!」

 

忘れてたまるか!

お前らバイオレンスどもを“女の子”とは認めない絶対に! ただしヴィヴィオちゃんは除くッ!

 

「……ん? あれ?」

「何だよ、怖じ気づいたか?」

(こ、これって……まさか、)(デート!? デートなんか!?)

 

何か真っ赤になった。

しかも小声で何か喚いてる。

 

(ひっ……ひゃぁぁぁあああッ!?) (勢いでデートの約束してもうたぁ……!)

「……何? あんだって?」

「にゃっ……なんでもにゃい……!」

 

猫になってるぞ、ゴキちゃんや。

 

「……まぁ、いい。この件は出かけるときに白黒させようぜ。それより行くぞ、遅刻する」

「う、うん……あ……ち、チヒロ!」

 

あんだよ?

 

「そのぅ…………か、会場まで……手、繋いでええ……?」

 

……昨日の不安がまだ残ってんのか?

仕方なねえな。ま、でも……友ゴキだしな。

 

「……ん、ほれ」

「あ……! えへへ…………お、おーきにっ!」

 

 

 

「さて、イチャイチャするはその辺りでやめて貰っていいかしら?」

 

 

 

「ひっ!?」

「ん? おぉ、ヴィクター!」

 

いつの間に。

 

「ジークを迎えに来たのですが…………なるほど、察しましたわ」

 

何をだよ。

 

「いつまでも振り向いてくれないチヒロにジークの欲望が爆発、つい拉致ってしまった……と。ファイナルアンサーですわ」

「正解デスワ」

「正解やないよ!?」

 

ジーク……ノリが悪いデスワ。

 

「で、迎えに来たんだよな? ならお言葉に甘えて……」

「あら? あなたは走ってきなさい」

「……俺、泣いちゃうよ?」

「エドガー。写真と動画の準備を。あらゆる角度からの撮影を頼みますわ。あぁ、あと白米をどんぶりで。おかわりの準備もしておきなさい」

「貴様は殺すッ! 絶対にッ!」

 

何て言うか……この感じ久しぶりだな。

 

「ぷっ……あははっ! なんや、久しぶりな感じや。(ウチ)とチヒロとヴィクター、三人でこんなバカするの」

 

お前もそう思うか、ジークよ。

だがな?

 

「バカはお前だ。お前だけだ」

「馬鹿はジークですわ。ジークだけ」

「な…………ッ!?」

 

このあと再びキレたジークに襲われ、ヴィクターと二人で迎撃に入った。

 

 

 

ーーーージークは終始笑顔を浮かべ、昨日の暗い表情はまるで嘘のようだった。……よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの……皆さま、遅れますよ?」

「黙りなさい、駄犬(エドガー)

「黙れ、駄犬(エドガー)

「ちょぉ静かにしとって、駄犬(エドガー)

 

 

「……くすん」

 

 




A:おデートの約束。


おまけ
ASS(アフター・サイド・ストーリー)・その頃、諸悪の根元は…… ※チヒロ視点》


「完成したぞッ!」

興奮を抑えきれず、そう叫ぶ。

『……いきなりなんだ?』
「おぉ、ぐにゅ子! コイツを見てくれ!」

指をパチンと鳴らす。
それに反応して俺の後ろからゆっくりと『あるモノ』が歩み出る。

『だれだ、そのようじょは?』
「フフン、俺が作りました!」
『…………は?』

驚いているな。よしよし。

『……だ、だれとだ? とらいべっかか?』
「いや俺一人で」
たんいせいしょく(単為生殖)だと……!?』

……何だか話が食い違ってるようだ。

「こいつは俺が作った高性能アンドロイドなんだよ」
『…………あぁ……………………なんていうか、おまえにはいつもおどろかされる』

だろう!

『……で? どのへんが“こうせいのう”なんだ?』
「よくぞ聞いてくれた! お前、“生命(セフィロト)の樹”って知ってるか?」
『まぁ、しってはいるが……』
「こいつにはそれぞれ異なった思考パターンを持つ十個の人工知能(AI)を入れてあるんだ。それらを二十二個の小径《パス》で直接繋いである。視覚モニターから入った情報を瞬時に判断、十個の人工知能(AI)がそれに対する“最善”を導き出す。言うなればこいつは会議室みたいなもので、何かががあるとそれに対してコンマ数秒の会議が行われるんだ」

人工知能(AI)小径(パス)、配列が“生命の樹”に似ていることから俺はこれをセフィロト・システムと名付けた!

『すごいな。そのしすてむじたいがほんとうにひつようでかついみがあるのかはさておき、すなおにかんしんした』
「だろうだろう! 誉め称えなさい!」
『だが……ふたつだけぎもんがある』

なんだい?
なんでもきいて?

『かのじょはなんでつくられたんだ?』
「え? ウチの家政婦に」

むしろそれ以外に何が?

『そうか……ならもうひとつ。……そのからだ(ボディ)はどうした?』
「………………………………あー、ほら。お前が研究してた黒い植物の細胞で、ちょろっと」(※五十七話参照)
『ぬすんだのか?』
「えっ」
『わたしのけんきゅうをぬすんだうえにあくようしたのか?』

別に盗んでないし!

「そもそもまだ未完成だったじゃん、お前の研究!」
『おまえ……らすぼすまえでせーぶしていたげーむをだれかにかってにくりあされたらおこるだろう!?』
「手の届くとこに置いとくのが悪い!」
『もういい! じっかにかえらせてもらう!』

あーもう!

「こいつはあの黒い植物から生まれたんだ! 言うなればお前の妹だぞ!」
『……いも、うと………………だと……!? それをはやくいえ! って、おい! かのじょ、はだかじゃないか!』
「えっ!? いやまだ出来たばっかで……」
『ばかもの! かんせいするまえにかっておけ! いますぐかいにいくぞ、わがいもうと・せふぃのふくを!』
「“セフィ”? 生命の樹(セフィロト)だから? 安直じゃね?」

俺とぐにゅ子は仮称セフィの名前を議論試合ながら、セフィの服を買いにいくことになった。








『……セフィロト・システム起動。マスター認証……完了(コンプリート)任務(ミッション)内容確認……マスター・チヒロ(ご主人様)の日常生活の補佐。検索…………任務遂行上の障害を発見。任務略奪の危険ありーーーー“委員長(障害)”を排除します』



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