鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください……   作:ふーあいあむ

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時は飛んで邪神VSトンファーちゃんの試合。


……の直後。




六十二話

ジークとヴィクターの仲直りから数日後。

今日はヴィクターの試合を観戦しに来ていたのだが……そこで面白いヤツを見付けた。

 

「いいねぇ……」

 

それはヴィクターの対戦相手で名前は……名前は……えっと。

 

《シャンテ・アピニオン選手ですよ》

 

そうそう。さんくす、謎の声。

つい先ほどヴィクターの勝利という形で決着がついた。

中々にいい試合だったぜ……!

 

「ヴィクター遊んでたけどな」

《えっ? 苦戦してませんでしたか、あの方》

「いや、完全に小バカにして遊んでた」

 

苦戦しているように見せかけて、後々一撃で叩き潰して愉悦に浸る。

その為だけにあんなくっさい演技してたんだよ。

俺は見逃さなかったぞ、アピニオンちゃんを叩きつけたときのあの笑みを。

 

《そうなんですか…………あの、ところで》

「ん? なんだ?」

《私たちはどこに向かっているんですか?》

 

それは…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、やって来ましたアピニオンちゃんのいるお部屋! ……の前」

《……まさかとは思いましたが》

 

いやいやいや、あんな面白いヤツはお近づきにならなくっちゃ。

 

「友達増えるのはいいことだろ?」

《……まぁ、そうですけど……本当に“トモダチ”ですかね、ソレ》

 

ちゃんと友達(おもちゃ)に決まってんだろ。

よぉし……突ーーーー

 

 

 

「こんにちは」

 

 

 

ーーーー撃しようとしたら、後ろから声をかけられた。

なんだよ……いいところで。

 

「あーはいはい、こんに、ち……?」

 

振り向いた先にいたのはシスターの格好をした金髪の女性。

思わずドキッとしてしまうほど美人だ。胸も大きいし。

だが、俺が目を引かれたのは容姿でもなければ胸でもない。

それは……

 

 

 

「…………あの………………デコに米つぶ着いてますよ……?」

 

 

 

それもカペカペの。

えっ、何? どうやったらそんなとこに着くの?

 

「ふふっ、知ってますよ?」

「……はい?」

「知ってて着けてるんです」

 

………………どうしよう。

なんかおかしい人に捕まったみたい。

 

「はじめまして、ですよね? 私はカリム・グラシアと申します」

 

これは……自己紹介しなくちゃいけないカンジ?

こういう人とはあんまり関わりたくないんだけど……。

 

「あー……っと、俺は……」

「篠崎チヒロさんですよね?」

 

変人がすでに俺を知っている件。

 

「……な、何で」

「妹さんにお世話になっているんです。よくあなたのお話を聞いていますよ。お姿は写真などで何度か」

「うちの妹の知り合いですか?」

「ええ、まぁ。そんなところです」

 

うちの妹が変人の友人だった件。

お兄ちゃん悲しい。

 

「あー、グラシアさんは」

「どうぞ“カリム”とお呼びください」

「……カリムさんは」

「“カリム”と。呼び捨てで」

 

できるか!

 

「カリム……(さん)……はなぜここに?」

「この中にいる選手は私の職場の者なんですよ」

 

……それって。

 

「シャンテ・アピニオンちゃん……?」

「はい、そうです。チヒロ様はなぜここに?」

 

……………………チヒロ、“様”……?

 

「えっと、アピニオンちゃ……選手に会いに。あの、チヒロ“様”って……」

「あら、シャンテのお知り合いなのですか?」

「えっ、あ、いや違います! さっきの試合を見て、“面白いヤツだなぁ、話してみたいなぁ”って思って。……それより、あの」

「まぁ、それは素敵です! ぜひ!」

 

コイツまったく聞いてねぇ……!

 

「シャンテにお友達ができるのね!しかもそれがチヒロ様だなんて……素敵! そうと決まれば早速参りましょう!」

「えっ、ちょっ、待っ……!?」

 

カリムさんは俺の手を強引に引いて、部屋の扉を開けた。

 

 




おまけ
《ファースト・コンタクト ※カリム視点》

それはある会議から帰ってきたときのこと。
私の部屋に誰かがいた。

「やぁ……こんばんは」
「……こんばんは。どちら様でしょうか?」

それは中学生くらいの少女だった。
だが油断はできない。あくまでも最大限に警戒して、けれども穏やかに。

「……そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。」
「自分の部屋に知らない人がいたら普通は警戒します」

私の言葉を聞いても少女は静かに立っているだけだった。
いったい彼女の目的は……。

予言者の著書(プロフェーティン・シュリフテン)……」

なッ……!?

「君は……普通の人間にはない特別な能力(レアスキル)を持っているそうだね?」

何……これは……!?
この子の言葉を聞くたびに……心がやすらいでいる……!?

「ひとつ……それをわたしに見せてくれるとうれしいのだが」

そう言って彼女は近付いてくる。
う、動けない……!

「……(あー、肉の芽切らしてるんだった。)(うーんと…………あ、これでいいや)

彼女はぼそぼそと呟いて服についた何かを取り、それを私の額に着けた。
その瞬間だった。


(あっ…………!)


頭が。
脳が。
何かに支配されていくのを感じた。

「カリム・グラシア。聞こえる?」
「……………………はぃ」

脳が蕩けてしまいそうだ。なのに妙に清々しい。
あぁ……私は……。

「これからは……その能力と地位を私の兄様を守るために使いなさい」
「…………は、はひぃ……!」
「よく働けば……ご褒美をあげましょう」

ご、ご褒美……!?

「今以上の安らぎと快楽をあなたに」
「い、今以上…………!?」

あぁ……!
あああぁぁぁ…………!

「貴女様とそのお兄様に私の一生を…………一生を捧げますぅぅぅ……!」


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