鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください……   作:ふーあいあむ

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現代に戻りまーす。
久しぶり(かな?)にあのお方が。





六十一話

さて。

俺は今、ダールグリュン邸……ヴィクターの部屋に来ている。

なぜかと言うと……。

 

「ふえええぇぇぇぇん…………チヒロぉぉ…………っ!」

「あーはいはいキャラ崩れるから泣き止めよ」

 

これである。

 

「だって……だってジークがっ…………私のこと『もう知らん』ってぇ……!」

「いや自業自得だろ」

 

まぁ、つまりはインターミドル開会式でのこと。

俺の葬式(ドッキリ)がバレてジークに絶交されたのだ。

 

「ふぇぇぇぇん…………!」

「やれやれ……」

 

ベッドに座る俺の腰に抱き付きワンワン泣くヴィクター。

 

「でも……確かにかなり怒ってたからなぁ。お前、何て言い訳したんだ?」

「ぐすっ…………言い訳なんてしませんわ………………私は腐っても誇り高き雷帝の血を引く者、全てを正直に話しましたわ。…………まぁ、私は腐ってなどいませんけど」

 

お前最後のそれ本気で言ってる?

……まぁいいや。

 

「じゃあ言い方が悪かったんじゃねぇの? 何て言って説明したんだ?」

「確か……」

 

ヴィクターは目元の涙を指で拭って、

 

 

 

 

 

 

「『ジャンジャジャ~~ン!! 今明かされる衝撃の真実ゥ。

いやぁ本当に苦労しましたわ、チヒロの死を悲しむ友人演じて湧き上がる笑いを堪えることまでしてさあ。しかし貴女は単純ですわねェ、私の口から出たでまかせを、全部信じてしまうんですからねェ! 楽しかったですわァ、貴女へのドッキリはァ~~!!』って言おうとしたら『ジャン』の部分でぶん殴られましたわ……」

 

 

 

 

 

 

「いやむしろその段階で殴られて良かったと思うぞ」

 

それ言い切ってたら絶対にガイストされてたはずだ。

俺なら間違いなくコイツん家に火炎瓶とか投げ込むと思う。

 

「……つかさ、俺を共犯者として売って怒りを分散させりゃ良かったじゃん。なんでやらなかったんだよ?」

「……だって…………チヒロは大切なお友達ですもの…………」

 

…………えっ。

 

「大好きな貴方を…………売ってまで助かりたいとは思いませんわ…………ぐすっ……」

 

……べっ、別に罪悪感とか湧いてねェし。

湧いてないけど……。

 

「ま、まぁ? 仲直りを取り持つぐらいならしてやってもかまわないし?」

「えっ…………ほ、ほんとうですの……っ!?」

 

ヴィクターはパッと顔をあげて、涙で濡れたその瞳を俺に向ける。

それを指で優しく拭ってやる。

 

「おうよ! このチヒロさんに任せておきなさい」

「あっ……あぁぁ……! チヒロっ、大好き! 愛してますわっ!」

 

ふっ、そうと決まれば善は急げ。

 

「じゃあ俺今からジークんとこ行ってくるわ!」

「くれぐれもっ……くれぐれもよろしくお願いしますわ……!」

「任せとけっ!」

 

こうして俺はダールグリュン邸から出ていった。

 

 

後日、俺の仲介でジークとヴィクターはなんとか仲直りできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くくく…………ふはははははははっ!! チョロい! チョロすぎですわっ! あんな嘘泣きに騙されて……笑いが止まりませんわぁ……! まぁこれでジークとの仲直りは確定したようなもの…………次はどうやって遊びましょうか。あぁ、そうですわ。チヒロでも遊びましょう! きっと楽しいですわ! ……ふふふ、絶対に手放したりしませんわよ、私の大切な大切なお友達(オモチャ)たち……♡」

 

 




今日も今日とて邪神様だった。
まぁ……ある意味……ヤンデレ?



おまけ
《ヨメンジャーズ・アッセンブルド! ※委員長視点》

「早読みちゃん……?」

誰なの……?

「……私の家に行く前にした話の内容を覚えていますか?」
「えっ? えっと……篠崎くんと妹さんがPCに強いってやつ?」
「それです」

……それと何の関係が……!?

「あの時言いかけたこと……兄様の小学五年生の夏休みの自由研究、その作品こそが『早読みちゃん』です」

……作、品?

「某音声ソフトを使って遊んでいる時のことでした……兄様がいきなり『早口の女の子ってさぁ……なんかイくね?』と言い出して作った女性型……より正確に言えば少女型の人工知能(AI)です」

……小学五年生で人工知能?

「当初は『早口ちゃん』という名称だったのですが、彼女の対話用ソフトの根幹に使われたものの名前から『早読みちゃん』に変更されました」

……それって『棒よーーーー

「結果は成功。完璧な人工知能を作り上げたものの、あまりにも早口すぎて『キュルキュル』という音にしか聞こえないポンコツが出来上がりました」

ポンコツ……。

「私たちの成長と共にその存在は忘れられていきました。……恐らくウチの物置に今もある昔使っていたPCからどうやってか出てきたのでしょう……そして様々なものにハッキングを仕掛けた」

……そっか。
それでこの違法研究所にたどり着いてあの(ボディ)を手に入れたってことなんだ。

「恐らくここはクローン関係の研究が行われていたんでしょうね。それを使った」

……でも、なんで私たちに襲い掛かってきたんだろう?
それが分からない。

「……義姉様(ねえさま)、お喋りはここまでのようですよ。来ますっ!」

早読みちゃんが手を上げて、勢いよく降り下ろす。
周りにいたガジェット軍団が一斉に襲い掛かってくる。

「仕方ないわねぇ……一時休戦よ!」
「うん! お願いします!」
「我々は四人、あちらは数千の軍団。団結しなくちゃ勝ち目はありませんよ!」
「ひぃぃ……! 誰か、説明してくださいぃぃっ……!」

こんなに心強い仲間がいるんだもん。
負けないよ、早読みちゃん!


to be continued……


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