鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください…… 作:ふーあいあむ
《実は……》
設定段階では篠崎姉妹は四人いた。
あの後、食堂へと戻りカレーを一皿持ってきた。
「ほれ」
「……これは?」
「うん……カレーだ」
金髪娘は恐る恐る受け取ると、一緒に手渡したスプーンで一口よそる。
それをゆっくりと口の中に含んだ。
「どうだ?」
「……おいしいです」
当然だ。誰が作ったと思ってる。
そしてどれほどの量を一緒に煮込んだと思ってる。
「あなたが作ったんですか?」
「あぁ」
「……すごいですね」
ふっふ~ん!
「……私には破壊しか産み出せません」
「何だそれ?」
意味が分からない。
「……あなたが作ったこれは、きっと大勢の人を喜ばせることができるのでしょう。ですが私が作るものは……人の心を傷付ける」
「はぁ……そうなのか」
……え? 何なの?
厨二劇場始まったの?
「あー……でも『壊す』のって全部が全部悪い訳じゃないんじゃないか?」
「ーーーーえっ」
金髪娘は弾かれたように俺を見る。
「例えばさ、馬鹿げた古い
「……え、えっと……そういう『壊す』じゃなくて……。こう、物理的と言いますか……」
えっ?
「じゃあ新しいビルを建てるなら元々あったビルを壊す必要がある、とか?」
「た、確かにそれは物理的ですが、そうじゃなくて……」
これも駄目か。
じゃあ……。
「えーっと……」
「……ふふふっ」
唸る俺を見て金髪娘が小さく吹き出した。
なんだ?
「あっ……ごめんなさい。何だか可笑しくて……」
「……変なヤツ」
コイツの笑いのツボはようわからん。
「……ありがとうございました。何だかちょっと元気が出ました」
「そもそも何か落ち込んでたのか?」
「そう……ですね。落ち込んでたのかもしれません」
自覚なし?
「完全に呑まれてしまう前に……私が私でなくなる前に、貴方に出会えて本当に良かった」
「……はぁ?」
訳のわからない言葉を言い、金髪娘は立ち上がる。
「カレー……ご馳走さまでした。残してしまってごめんなさい」
「あ、あぁ……別にいいけど」
「これ、とっておいてください。用事が済んだらまた戻って来ますので、その時に食べますから」
「わ、わかった」
ありがとうございます、と微笑んで金髪娘は歩いて行く。
途中で振り替えると笑顔を浮かべ俺に言った。
「それから、食堂にいる皆さんに『本来の役目』を果たすようお伝えください」
「お、おうよ。任せとけ」
もう一度笑顔を浮かべると、今度こそ金髪娘は歩いて行った。
「……結局、アイツ誰だったんだ?」
「おいオメーら! 何か知らんがやることあったんじゃねえのか!」
「え? 篠崎さん、やることって…………あっ!?」
俺の言葉を聞いて、食堂で寛いでいたヤツらがいっせいに慌て出す。
……ちゃんと伝えたぞ、金髪娘。
「おらっ! さっさと行けっ!」
「痛ッ!? ちょっ、何で我だけ蹴られるのだ!? あ、痛いからやめッ…………!?」
おまけ
《襲い来る、新たなる試練 ※委員長視点》
「……義姉様」
「あ……どう? 何かわかった?」
しばらく経つと、妹さんが難しい顔をしてやって来た。
「……ハッキングをしたのは間違いなくここからです。けど……ハッカーの正体はわかりませんでした」
「そっか……」
「痕跡すらありません。……ただ」
ただ……何だろう?
「“ある場所”に何度もハッキングを行っていることが分かりました」
「えっ……? その場所って……?」
妹さんは黙ったまま何かを考えるような顔をしている。
「……今からそこへ向かいましょう」
「えっ!? い、今から!?」
「少し遠出になりますが……幸い、明日から週末になりますから大丈夫ですよね?」
「えっ……う、うん……たぶん大丈夫」
お母さんたちには友達の家に泊まるって言えば……。
「なら一旦解散しましょう。次元運行艦のチケットを買ってきます。今から2時間後に乗り場にて。それまでに色々準備もしておいてください」
「うん、わかった」
なら今からすぐに……。
「……………………後、それからもうひとつ」
ーーーー妹さんから告げれたことは、衝撃的な内容だった。
to be continued……