鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください…… 作:ふーあいあむ
「あ、先輩!」
朝、学校へと向かう道のりを歩いていると背後から声をかけられる。
「おれのうしろに誰かがいる! 最近とりつかれたみたいなんだ」
「……朝から何言ってるんですか」
「……最近取り憑かれたのは嘘じゃないぞ。少し誇張表現になるかもしれないが」
振り向いた先には呆れ顔の黒い短髪の少女の姿があった。
彼女の名はリオ・グリズリー。
「よう、グリズリー」
「ウェズリーです!」
間違っていた。
「これが俺たちのいつもの挨拶だろ、ウェズリー」
「名前間違えるなんて失礼な挨拶聞いたことありませんよ!」
「じゃあ今聞けたな。感謝しろ」
朝から元気なガキンチョだ。
このウェズリーとは学校に行く道が途中まで同じなのだ。
「じゃ、また明日」
「あ、はい……じゃなくて! 途中まで一緒でしょ!」
「でも一緒に行くとは言ってないよね?」
「ぇ………………い、一緒に行きましょうよぅ…………」
仕方ない。
泣き出しそうだから一緒に行くことにした。
「もぅ……先輩のばか」
「あんだと」
「なんでもないですぅ! それより聞いてくださいよ!」
ウェズリーは最近あったことを話し始める。
やれ、担任の先生がどうだとか、新しく知り合った子がどうだとか。
俺はというと彼女が口を開くたびに覗かせる可愛らしい八重歯を見ていた。
「でですね、その時コロナって子が……ん? どうしたんですか? そんなに私の顔見て」
気付かれてしまったようだ。
さすがにこれだけ凝視してれば気付くか。
「あ、いや……」
「ん~? ……あ、さては……」
ウェズリーはニヤニヤしながなら俺を見る。
そして変な
「私が可愛くてちゅーしたくなったんですかぁ~?」
「お前の八重歯へし折りたい」
なに言ってんだコイツ。
「先輩こそなに言ってるんですか!?」
「お前の八重歯へし折りたい」
「いやさっき聞きましたから! 言葉じゃなくて理由!」
何でそんな怖いこというんですか~、と憤慨するウェズリー。
「そんな怖いこと言う先輩なんてもう知りません!」
「ん? あ、そういやここまでか」
ちょうど別れる道に来たようだ。
「じゃあな。事故には気を付けろよ」
「べ~だ!」
ウェズリーが駆け足で俺から離れていく。
その先では同い年くらいの二つお下げの子が手を振っていた。
ウェズリーも手を振り返して彼女へと向かっていくーーーーその背中に俺は声をかけた。
「また明日な」
「……………………はい!」
いい笑顔だ。
だから俺はーーーー
「お前の八重歯へし折」
「先輩のばかぁぁぁあああッ!」
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大学もあるので。