鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください…… 作:ふーあいあむ
ーーーー人が塵のように吹き飛んだ。
「ほらほら、みんな! 気合いが足らないよ!」
「いやぁ……気合いとか関係あんのかなコレ……」
人ってあんなに跳ねるんだな。
はじめて知った。
「え、エグいですわね……」
「うわ、魔力収束し始めたで……」
ーーーースターライト……ブレイカァァアアアアッ!
光の奔流。
もはや圧倒的暴力とも呼ぶべきそれは、訓練生たちを飲み込んだ。
「あ、悪魔たん……」
「あれが悪魔? 違います……あれは魔王ですわ」
「ひでぇ言いようだな……まぁ、わかるけどな」
「あ、ヴィータさん」
いつの間にか、手に買い物袋を下げたヴィータさんが隣にいた。
「ほら、アイスだ。全員分あるぞ」
「俺、バニラ!」
「では抹茶で」
「
「じゃあ……あたしはストロベリーだな」
綺麗に別れたな。
袋を開けて一口食べる。
「うまうま」
「チヒロ、一口交換しません? はい、あーん」
ヴィクターが抹茶アイスの乗ったスプーンを差し出してきた。
「あむ……うまうま。ほれ、あーん」
「はむ」
「……な、なぁ。お前らアレか? 恋人とか……」
「違います」
「違いますわ」
なんでそう思ったのか。
あ、ヴィータさんもアイス食べたいのかな。
「はい、ヴィータさん。あーん」
「う、うぇっ!? あ、いや、でも……」
「じー……」
ヴィータさんは俺の後ろの何かを気にしているようだ。
振り返ってみてもジークしかいない。
「溶けちゃいますよ」
「ぅ……!」
「ほら! あーん、です」
「あ、あーん……」
観念したのか、やっとヴィータさんは口を開いた。
「おいしいですか?」
「お、おいしぃ……けど……」
「じぃぃぃぃぃ…………」
「……何だよジーク」
声に出して言うなよ、じぃぃぃぃぃとか。
「……
「食えば?」
お前も貰ったじゃんか。
チョコレートアイス。
「バニラアイスが! 食べたいな!」
「……別にいいけど。ほれ」
アイスを容器ごと差し出す。
「……一口がええなー!」
「だから食えよ」
「一口! が! ええ! な!」
何なんだよ一体。
「あーん!」
あぁ、そういうことね……。
一口分のアイスをすくってジークの口に入れる。
「はむ……えへへぇ……! あ、チヒロも食べる?」
「いらん。ヴィータさん一口下さい」
「あ? あ、あぁ……か、構わねえけどさ」
「むぅぅぅぅ……!」
ヴィータさんがアイスをすくって差し出してくる。
んむ、ストロベリーアイスも実にうまい。
「ンマイなぁぁあぁぁーッ!」
「そ、そんなにか!?」
「ブッチュウウウ」
「ヴ、ヴィクター? 急にどうしたん……?」
流石だな、ヴィクター。
「あなたこそ」
二人でサムズアップを交わす。
ジークとヴィータさんは何のことか分かっていないようだ。
「ーーーーあ、みんな! 見ててくれたかな?」
「あっ」
訓練が終わったのだろう、高町一等空尉がやって来た。
やばい。
全然見てなかった。
「あ、な、なのは? 実はその……」
「みんなが見てたからね。恥ずかしいところは見せられないから……ちょっと頑張っちゃった!」
「ーーーー集合!」
ヴィータさんの掛け声に高町一等空尉を除いてその場にいた全員が集まる。
小声で作戦会議開始。
「……どうする?」
「いや……誤魔化すしかねえだろ」
「で、でも正直に話した方がええんやない?」
「……ジークはあの収束砲を喰らいたいんですの?」
……仕方あるまい。
「我に策あり」
「ま、マジかチヒロ! 頼む!」
「大丈夫なん……?」
「大体想像できますわね……ご愁傷さまですわ」
ヴィクターはそう言ってヴィータさんの肩に手をおいた。
どうやら分かったようだな。
「……ああ、そういうことなんや……」
「え? え? な、なんだよお前ら?」
気付かれる前にやるか。
「高町一等空尉!」
「ん? 何かな、チヒロくん。あ、高町一等空尉じゃなくてなのはさんでいいーーーー」
「ヴィータさんとアイス食べてたので訓練見れませんでしたごめんなさい!」
「ーーーーよ……?」
「はぁっ!? おま、何言って……!?」
甘いぜ、ヴィータさん。
「私たちは見たかったのですが……ヴィータさんに無理やり……」
「
「……ヴィータちゃん?」
「ま、待てなのは! おいお前ら!」
さらにジークとヴィクターの援護射撃。
俺たちは一を犠牲にして九を救う。
「ヴィータちゃん。ちょっと……お話、しよっか?」
「てめえら覚えてろよォォォォオオオオッ!」
チヒロはいつか刺されると思う。
ジークに。