鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください…… 作:ふーあいあむ
翌日。
ヴィクターが車で迎えに来た。
運転してるのはエドガーだけど。
「さ、チヒロ。行きますわよ」
「うーい」
車に乗るとそこにはすでにジークの姿があった。
超不機嫌そう。
「よう、ジーク。なにむくれてんだよ」
「……別に」
どかっ、とジーク隣に腰かける。
「あー……あれか。あの日か」
「デリカシーがないですわよ、チヒロ」
そんな会話にもジークは無反応。
本気でどうしたんだ?
「ジーク?」
「……ふん」
「ジークちゃんってば」
顔を除き込むがすぐにそっぽを向いてしまう。
「……別に
「はぁ?」
「あぁ……ほら、昨日の通話でのことじゃないかしら?」
昨日の通話?
……あぁ、あれか。
「野良猫のこと?」
「委員長って人の胸のがええって言うた!」
は?
「
「え、なになに? どういうこと?」
「はぁ……ジークは嫉妬しているのですわ」
嫉妬?
……俺に?
「その顔は何も分かっていないようですわね……つまり、自分よりも他人を優先されてジークの乙女心はボロ雑巾のごとくズタズタにされたのですわ」
「う、ん?」
分かったような分からないような。
とりあえずジークのご機嫌を取ればいいのか?
「そういうことです」
なるほど。
やるべきこととヴィクターが心を読めるってのはわかった。
「なぁジーク」
「……なんや」
「あー……ほら、お前がそんな態度だと寂しい」
「……嘘や」
拗ねてるなぁ。
「嘘じゃないって。お前居なかったらつまんないだろうし」
「……ホンマ?」
「ホンマホンマ」
ジークが顔をこっちに向ける。
「な? 今日は一緒に回ろうぜ?」
「……一緒?」
「あぁ、一緒だ」
「というか一緒以外の選択肢はないのですが……」
ヴィクター少し黙ってろ。
せっかくいい感じに機嫌直ってきたのに。
「絶対やで? 絶対一緒やで?」
「わかってるって」
「この男……本当にクズですわね。妄想が
ジークが腕を組んでくる。
すっごい上機嫌そうだ。
「えへへ……!」
「……ま、可愛いからいいか」
じゃれてくる仔犬みたいで。
「か、かわ……!? えへへへぇ……!」
「この男は……。しかも狙ってないのがまた……」
「さ、着きましたわ」
「おぉ、でかいな!」
やっと今日見学する管理局の施設前に到着。
……やっとと言うほどの時間は経ってないが。
「えへへぇ……」
「ジーク、そろそろ戻ってきなさい?」
ジークは俺の腕を抱いたまま離れない。
何を言っても『えへへ』と笑うだけ。
「はぁ……もう案内してくれる方がいらっしゃるというのに……」
「そういや誰なんだ? 案内してくれる人って」
「ーーーーあ、君たちかな? 今日見学に来る子っていうのは」
ヴィクターが俺の質問に答えようとした瞬間、女性の声が聞こえた。
「初めまして!」
声の方へ振り向く。
俺の視線の先では、彼女の頭の横で一つに束ねられた栗色の髪が揺れていた。
お、俺はッ! あの人の事を知っているッ!
「私は高町なのは! 今日はわたしがこの施設を案内させて貰います。よろしくね?」
高町なのは。
エース・オブ・エース。
管理局屈指の英雄がそこに立っていた。
最初は航空武装隊の施設にする予定だった。
次に「あれ? なのはって教導隊……」となった。
混乱に混乱を重ね、最終的に「あ、明記せず管理局の施設とだけ書いとけば……」という混乱の極みに到達した。
ごめんなさい。