鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください……   作:ふーあいあむ

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ヴィクターの口調がいまだに掴めない。


十話

翌日。

ヴィクターが車で迎えに来た。

運転してるのはエドガーだけど。

 

「さ、チヒロ。行きますわよ」

「うーい」

 

車に乗るとそこにはすでにジークの姿があった。

超不機嫌そう。

 

「よう、ジーク。なにむくれてんだよ」

「……別に」

 

どかっ、とジーク隣に腰かける。

 

「あー……あれか。あの日か」

「デリカシーがないですわよ、チヒロ」

 

そんな会話にもジークは無反応。

本気でどうしたんだ?

 

「ジーク?」

「……ふん」

「ジークちゃんってば」

 

顔を除き込むがすぐにそっぽを向いてしまう。

 

「……別に(ウチ)のことなんてどうでもええんやろ?」

「はぁ?」

「あぁ……ほら、昨日の通話でのことじゃないかしら?」

 

昨日の通話?

……あぁ、あれか。

 

「野良猫のこと?」

「委員長って人の胸のがええって言うた!」

 

は?

 

(ウチ)が言うても渋ったのに……ヴィクターが誘ったら一発でOKした!」

「え、なになに? どういうこと?」

「はぁ……ジークは嫉妬しているのですわ」

 

嫉妬?

……俺に?

 

「その顔は何も分かっていないようですわね……つまり、自分よりも他人を優先されてジークの乙女心はボロ雑巾のごとくズタズタにされたのですわ」

「う、ん?」

 

分かったような分からないような。

とりあえずジークのご機嫌を取ればいいのか?

 

「そういうことです」

 

なるほど。

やるべきこととヴィクターが心を読めるってのはわかった。

 

「なぁジーク」

「……なんや」

「あー……ほら、お前がそんな態度だと寂しい」

「……嘘や」

 

拗ねてるなぁ。

 

「嘘じゃないって。お前居なかったらつまんないだろうし」

「……ホンマ?」

「ホンマホンマ」

 

ジークが顔をこっちに向ける。

 

「な? 今日は一緒に回ろうぜ?」

「……一緒?」

「あぁ、一緒だ」

「というか一緒以外の選択肢はないのですが……」

 

ヴィクター少し黙ってろ。

せっかくいい感じに機嫌直ってきたのに。

 

「絶対やで? 絶対一緒やで?」

「わかってるって」

「この男……本当にクズですわね。妄想が(はかど)りますわ」

 

ジークが腕を組んでくる。

すっごい上機嫌そうだ。

 

「えへへ……!」

「……ま、可愛いからいいか」

 

じゃれてくる仔犬みたいで。

 

「か、かわ……!? えへへへぇ……!」

「この男は……。しかも狙ってないのがまた……」

 

 

 

 

 

 

 

「さ、着きましたわ」

「おぉ、でかいな!」

 

やっと今日見学する管理局の施設前に到着。

……やっとと言うほどの時間は経ってないが。

 

「えへへぇ……」

「ジーク、そろそろ戻ってきなさい?」

 

ジークは俺の腕を抱いたまま離れない。

何を言っても『えへへ』と笑うだけ。

 

「はぁ……もう案内してくれる方がいらっしゃるというのに……」

「そういや誰なんだ? 案内してくれる人って」

「ーーーーあ、君たちかな? 今日見学に来る子っていうのは」

 

ヴィクターが俺の質問に答えようとした瞬間、女性の声が聞こえた。

 

「初めまして!」

 

声の方へ振り向く。

俺の視線の先では、彼女の頭の横で一つに束ねられた栗色の髪が揺れていた。

お、俺はッ! あの人の事を知っているッ!

 

「私は高町なのは! 今日はわたしがこの施設を案内させて貰います。よろしくね?」

 

高町なのは。

エース・オブ・エース。

 

管理局屈指の英雄がそこに立っていた。

 




最初は航空武装隊の施設にする予定だった。
次に「あれ? なのはって教導隊……」となった。
混乱に混乱を重ね、最終的に「あ、明記せず管理局の施設とだけ書いとけば……」という混乱の極みに到達した。

ごめんなさい。

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