※注 原作が進んでいない所で書いたものなので、
色々とオリ設定がたくさんあります。無理な方はブラウザバックしてください。
「食べたいものー食べたモン勝ちー、らーあーめんならー」
「おひさーまーみたいにーわらうー、麺ーはどこだいー」
「「wow、wow」」
マダオと二人、一行の先頭で歩きながら歌う。姿は、中忍試験の時のものだ。キューちゃんはそのまま。マダオはグラサンかけた、黒髪の少年の姿。俺は赤毛の少年。「春原ネギ」の姿。
「あの、キューちゃん?あの二人でかい声で歌ってるんだけど、止めなくていいの?」
「無駄じゃ。馬鹿は止まらんしの、馬鹿は」
「何か、キューちゃんも苦労してるんだね」
「分かってくれるか」
キリハの手をしっかと握るキューちゃん。すまんね。でも君は良い突っ込み役だよ。後で稲荷買ってあげるから。
「………ワシは目立ちたくないと言ったんじゃが」
頭を抑えるエロ仙人。知るか。俺の平穏を崩しやがって。このドが付くエロ野郎。あんた今、俺の中での最低番付の大関だよ。
まあとにかく。背後から色々と聞こえてくるけど無視して歌い続ける。周囲の気配なんか感じねーし。隠れに隠れて8年以上、通常時ならば気配を読み間違えるような愚は犯さん。
それに、旅に歌はつきものだ。
「ははは………でもまた会えて嬉しいよ、キューちゃん」
「まあ、の。しかし、お主はワシらの事を警戒せんが、何故じゃ?」
「え、だって自来也のおじちゃんが連れてきた人だし、それに前にも何回か助けてもらったし。それに、私には悪い人には見えないんだ」
「………その根拠は?」
「うーん、勘かな」
「キリハの勘はよく当たるからのう」
「それだけじゃあすまされん気がするのじゃが」
「まあまあ」
結構アバウトだよねー、木の葉隠れの里って。素性不明のカブトとか受けいれるし、スパイもたくさん居るし。
「で、やってきました短冊街」
「おお、祭りか!」
「ラーメン食いにいこうぜ、ラーメン」
「それより宿探しの方が先でしょ………先生、お金持ってますよね」
「当たり前じゃろ」
取りあえず、部屋に入る。部屋割りは男女別々だ。取りあえず部屋を確認した後、祭りを見に行こうと二人をさそう。
「あれ、残りの二人は?」
「ああ、マダオと自来也さん?何か、話しがあるとかで、部屋の中にいるよ。少し話しをした後に来るから、ちょっと待ってて、らしい」
「それで、どういう事じゃ? 昨日は聞けんがったが、何故お主が生きて此処に居る」
「いや、あの日に起きた事は先生も知っているでしょう? それで、ですね………」
カクカクシカジカと、ミナトは一連の事件について、自来也に説明した。
ひと通りを聞いた自来也が、ううむと唸った。
「話は分かったが………そんな事が本当に起こり得るのか?」
「事実は小説より奇なり、っていうじゃないですか。それに、馬鹿げた量のチャクラが暴走した結果ですからね。口寄せでさえ距離を超越して呼び寄せる事ができるんです。まあ、事実起こったんですから、起こり得るんでしょうね」
「それで、あの九尾はどうなんじゃ?」
「良い娘ですよ。屍鬼封尽で陰のチャクラを切り離しましたからね。それに、どうもあの暴走時に、妖魔としての核も飛んでいったみたいなんですよ」
「妖魔としての核、じゃと?」
「いや、古来より尾獣ってその数を保っていたでしょう?その理由がおぼろげながら分かった気がします。尾獣って、長生きした獣に妖魔としての核が入り込んだ結果、生まれる存在らしいんですよね」
「………初耳じゃの。だが、つまり、今のあの娘は九尾ではないと言うのか」
「ええ。九尾の妖魔とは、天狐以上の格をもった狐が、その妖魔としての核を飲み込んで生まれる………らしい、です」
「らしい、と言うことは推測か」
「ほぼ当たっていると思いますけどね。核みたいなものが、あの暴走時に飛んでいくのをこの眼で見えましたから。本来なら、あの膨大なチャクラで覆われていて、見えなかったんでしょうけど」
確かに見ました、とミナトは腕を組む。
「だから、今のあの娘は力を持った妖狐、というか天狐でしかないでしょうね。陰のチャクラと妖魔核が消えたあの娘は、1人の妖弧でしかないです。まあ、元が天狐ですから、かなりの力を持っているのは間違いないですが」
「………ガマ仙人に似た存在か。年経た獣は力を持つとよく言うが」
「ええ。ガマ親分などに似た存在でしょう」
そこでミナトはいったん話しを切った。そして、ため息をついた後、頭を抱えながら真剣な表情で話す。
「問題は、その次です」
「………その妖魔核は何処に行ったのか、ということか」
二人は険しい表情を浮かべる。
「ええ。間違いなく、何処かに飛んでいったんでしょうね。あのまま消えて無くなったとは考えにくいですし」
「それが、世界の何処かにいる、他の天狐に宿った可能性が高い………そう言いたいのか?」
天狐の総数は少ないと思えるが、キューちゃんだけども思えない。
ミナトが首を縦に振りながら、悩む表情を見せた。
「何処にあるのか分かりませんが………まず、間違いないと言えます。尾獣の総数が減ることは、存在的に有り得ないでしょうから。まったく、厄介な話しです」
「そうじゃの………」
「あと、それと………もしかしたら」
「なんじゃ?」
「…………いえ、忘れてください。まだ、推論を越えていない、妄想の範疇の話ですから。いずれ時がくれば、話します」
辛そうな顔して、ミナトは首を振った。
「そうか」
腕を組み、悩む二人。また、九尾襲来が起きる可能性もある、ということだからだ。
「そういえば、あの時に九尾が里を襲った理由はなんじゃ?お主なら何かを知っていると思っておったのじゃが」
「あの場所には、うちはマダラがいました」
「………やはりか」
九尾を口寄せできる存在など、1人しかいない。自来也としても、ある程度は予想していた。
「マダラが生きていて、『九尾の尾獣』が何処かに存在している以上、最悪のケースも予想しておいた方がよさそうですね」
「あやつらは知っておるのか?」
「確信には至っていないけど、うすうす気づいてはいるようです。と、これで伝えるべきことは全てですが、安心できましたか?」
「気づいておったか」
「ええ。この状況で同行を頼む、ということがどういうことなのかね。あの後、すぐにでも逃げると思っていたんでしょう?それに、100%信用している訳でもないでしょうから」
だからの同行依頼。綱手探索という、最優先任務もあるので、といった所だろう。
「全員気づいてましたよ」
「まあ、どうしても、なんじゃ、今のナルト………いや」
自来也が沈んだ表情になる。
「人格的には、メンマじゃったか。起こした事象から、色々と考えてみたのだがの………あやつの思考回路が理解できんのじゃ。力を隠して隠れきる事ができるのに、あの木の葉崩しの守鶴を相手にしたり。色々と腑に落ちん事もあった」
「うーん、基本的にラーメン命。あと、人情も大事という性格でしょうか。いまいち、僕も分かり切っていないんですけど」
「そうなのか?」
「いや、そりゃあ本人じゃないですから。10割分かる、なんて言えませんけどね。まあでも基本的に忍びじゃないですから、合理的な考えもできますけど………理屈だけで全部を割り切れる程、器用な性格でもないですしね。横道にそれたり、まあ色々。一貫性はあるようで無いですね。一言でいうなら、人間なんでしょう」
その場の感情で行動指針がぶれる、ただの人間。割り切る事も知っているが、全てを割り切れる筈もない、人間。困っている人がいれば、手を差し伸べる。
敵がいれば、倒す。必要であれば、手を汚す。時に甘くて、時に弱くて、時に厳しい。いつも迷って、悩んでいる人間。
「人間、か」
「あとは、ラーメン、ですか」
「ラーメンか………ん、どういう意味じゃ?」
突っ込みを無視して、ミナトは話し続ける。
「まあ、隠れきれなかった理由は………寂しかった、という部分もあるんでしょうね。1人じゃないとはいっても、隠れ続けるっていうのは、やっぱりストレス溜まりますし」
無意識でも、とミナトは肩をすくめる。
「それに、これだけ長期間一つ所に留まることが無かったですから。精神的なガードも下がっている部分もあります。あと、縁に飢えてる部分もありますね」
よく店に来るキリハとか、その他の一部忍びとか、テウチ師匠とか。あと、材料を買いに行くさいに話す、八百屋のおっちゃんとか、酒屋のおっちゃんとか。
………彼女とか。
「あと、状況と勢いとノリに流されやすい性格してますし。彼、勢いとラーメンだけで生きてますから」
「そこまで好きか」
「『それが全部だ、他に何がいる?』って言ってました」
思い出し笑いをするミナト。そして、表情を真剣なものに一転させる。
「………もちろん、木の葉に留まった理由としては、それだけじゃないですよ」
「暁、か」
「ええ」
「そうじゃの。それもそうか。暁という組織を相手に、1人では勝ち目がないしのお」
「それに他国の里で暁の連中に見つかった場合の事を考えると、どうも駄目ですね。派手な戦いになるでしょうし、戦った後にその国の忍びにみつかった場合とか………ほら、分かるでしょう?」
自身にとっても、愛着が湧いてしまった木の葉にとっても、良くない事態になるだろう同盟が結ばれているとはいえ、他国を無闇に刺激するのはうまくない。
「今のところは、木の葉に留まるのが最善の選択、というわけか」
「今じゃあ、家もありますしね………旅もいいですけど、帰る家があるのも良いって言ってました。だから、あの家に手を出したり、仲間に手を出すようなら、本気で抗いますよ、きっと」
「そこまで聞いておいて、そのような事はせんよ。お主を敵に回す事もせん」
「それなら良かった」
「遅いぞ、マダオ」
「いや、めんごめんご」
と手を顔の前に出して謝るマダオ。
「………古いのお」
「何か、マダオさんってオッサン臭いねー」
「ぐはあっ!?」
少女二人の辛辣発言に吐血するマダオ。もんどりうって倒れる。
「えー、君達結構言うことがシビアだね。キューちゃんはともかく、波風さんも」
「え?そうかな」
素の発言か。いや、そうなんだけど、歯に衣着せないなあ。そういえば、ネジに向かっても色々言ってたな。
(やっぱり天然分多いなあ、この娘)
外見に似合わず。
「それより、祭りを見に行かんのか?」
「ああ、そうだそうだ」
「行こう行こう!」
としゃっきり立つマダオ。復活早いなお前。やがて短冊外の中心につくと、そこはかなり賑わっていた。活気が見て取れるぐらいに。
「ん、露店が色々と並んでるねー」
「でも、ラーメン屋台がないな」
「そりゃ無いでしょ」
自来也を除く4人で、店を見て回ります。
「仕方ないな………って、あ、そうだ。キューちゃん、波風さん、わたあめ食べる?」
「あ、はい」
「わたあめ?」
「ほら、あれ」
と指をさす。
「どういった味じゃ?」
「甘くてふわふわした感じ。おっちゃん、わたあめ二つ」
「あいよ。お、綺麗な嬢ちゃん連れてんな、坊主………ほら、出来たぞ。ちょっとおまけしておいたから」
「ありがとっす。ほら、これ」
「おお、美味そうじゃの………どれ」
とわたあめを舐め始めるキューちゃん。
「やっぱり食べたこと無いんだ。ほら、こうやってかぶりつくんだよ」
とキリハがキューちゃんに食べ方を教える。いや、舐めるのも可愛かったけどね。
「こうか…………うん、甘くて美味いの」
そしてがつがつと勢いよく食べ始めるキューちゃん。
「ん、美味かった。ごちそうさまじゃ」
「早いね!ってああキューちゃん、口の周りがベタベタじゃない」
布を取り出して、口の周りを吹いてやる。
「ん、ちょっと、くすぐったいの」
「………」
そんな俺たちのやりとりを、キリハがじっと見ている。
「波風さん、どうしたの?」
「いえ………何か、兄妹みたいだなあ、って」
はあ、とため息をつく。
(あー、藪蛇だったか。何て言ったらいいのか)
「え、お兄さんとかに憧れていたりするの?」
とマダオが聞く。
「えーっと、その」
と指先をちょんちょんと胸の前で合わせる。そして、小さい声だが勢いよく、何事かを呟きだす。
「えっと助けられた事お礼を言いたいとか、やっぱり家族いないと寂しいとか、お兄ちゃんってどんなもんだろうなあとか
やっぱり格好良いんだろうなあとか」
「………え、何?聞こえないけど」
「っていえ、何でもないです!!」
「うお!?」
いきなりの大声に驚いたのか、メンマは後ろに一歩あとずさる。
そして、通行人とぶつかった。
「ってえなあ、坊主ぅ。てめえ何処に目えつけてんだ………………!?」
ぶつかったヤクザ風の男。ガラの悪い口調で文句を言ってきた直後、目を見開き硬直した。
「て、て、てめえは…………!?」
(あれ、誰だっけこの人)
とんと思い出せない。何かすごい怯えているけど。
「ひ、ひい勘弁して下さい!すいません、もうしませんから、もうしませんからアレだけは………!」
とケツを抑えて後ずさるヤクザさん。
「え、ちょ、何?」
訳がわからない俺に、マダオが小さい声で教えてくれた。
(ほら、あの時の。麻雀の時の、あのヤクザじゃない?)
ああ、いかさまヤクザの1人か(※外伝の壱参照)
人聞き悪いなあ。理由も無しにあんなことしないっての。
「え、春原さんって大蛇丸と同じで、そっち系の人だったんですか!?」
「ぐはあっ!?」
キリハの言葉に吐血する。いやアレと一緒にせんといて、後生だから!
「いや、こやつは男色ではないぞ。むしろ、ワシ一筋じゃ」
と胸を張って言うキューちゃん。
………あれ、キャラ変わってね?
「………え、春原さんってそっち系の人だったんですか?」
と今度は頬を染めて、静かに驚くキリハ。キューちゃんと俺を交互に見て、小さい声できゃーと言いながら、一歩退く。
「いや、違う、違うから! ペドじゃないから! 逃げないで、頼むから!」
「え、ワシとの事は遊びじゃったのか?」
と、悲しそうに顔を伏せるキューちゃん。
「キューちゃんも!分かって言ってるでしょ!」
俯きながらも、肩震えてるし!
「え、僕との事は遊びだったの?」
「きめえ!」
「げふぁ!?」
頬を染めるマダオに飛び後ろ回し蹴りを喰らわす。天誅じゃ!これ以上、場を混乱させんな! ああ、周囲の視線が痛い。
「えー、あんなに可愛い娘いるのに男同士で………でもそれもありかも」
「ほら、やっぱりねえ、そうじゃないかと………」
「きっと毎晩がフィーバーなんでしょうね………」
「ハアハア、着物童女、ハアハア………」
どうしてこうなった………。とがっくり肩を落とす。
あと最後の1人ですが、教育的指導を叩き込んでおきました。
「まったく、酷い目にあった。親父さん、とんこつラーメン一つ」
近くにあったラーメン屋に入り、取りあえず注文します。
「じゃあ、私も同じので」
「ワシは塩ラーメンじゃ」
「じゃあ、僕はしょうゆラーメンで」
「で、これから先どうすんの?」
「取りあえず、そこらへんの賭場回って、聞き込みするしかないだろう」
「伝説のカモだもんね」
ラーメン食べながら、会議します。
「うーん、やっぱり九頭竜のラーメンの方が美味しいなあ」
その一言に、メンマの耳がダンボのようになる。
「絶妙だったもんなあ。特に、あの角煮の味付けとスープのバランスとか」
「そ、そう?」
と頬を赤らめるメンマ。
「え、どうしたの?」
「いや、なんでも。いやー、しっかし熱いねえ」
とぱたぱたと団扇で自分を仰ぐメンマ。照れているようだ。
「ふむ、この塩ラーメン変わっておるのう。スープ自体を冷やしておる。熱いこの季節には最適じゃ」
「あ、そうなんだ。冷麺みたいなもんかな」
「食べるか?」
と箸を差し出すキューちゃん。恥ずかしいって。
「いや、俺も頼むよ。すいませーん」
「え、もう一つ頼むんですか?春原さん」
「ラーメンは別腹だから。むしろ、ラーメンが本腹で、他のものが別腹かも」
本腹ってなに、というマダオを無視し、注文をする。
「ふーん、冷やしたらこんな味になるんだ」
魚、というよりは貝か。独特な貝風の旨味系スープをベースとした、塩ラーメン。夏の野菜に彩られて、ただ冷たいだけでもない。バランスも良く、結構な味に仕上がっている多々あるメニューの中で、季節の一品にするのもいいねえ。あ、そういえば砂隠れの里に塩取りに行くの忘れてた。ということで、木の葉に残っている影分身を一体、砂隠れに向かわせます。
「と、いうことでみそラーメン追加」
「どういうこと!?まだ食べるの!?」
いや、最近各地のラーメン屋食べ歩きツアーしてなかったもんで。
「す、すごいですね………」
「育ち盛りだからねー」
店員さんも驚いていました。
「ふー食った食った、そろそろ戻るか」
「そうですね………ってあれ、自来也のおじちゃんじゃないですか?」
「あ、ほんとだ」
こっちに気づいたのか、エロ仙人は手を振ってます。
「帰ったか。綱手の居場所が分かったぞ」
「ほんとですか?」
「うむ。ということで、急いで向かうことにする。カカシの治療の事もあるしの」
ああ、そういえば月読のせいで寝込んでいたっけ。
「嫌な予感がする。明朝、一刻も早く、出発するぞ」
「了解」
大蛇丸とカブト、やっぱり動いてるんかね。
(取りあえず、辺りに音忍を含む忍びのの気配は無いけど)
ここからは、ちょっと気を引き締めていくか。マダオと自来也と二人、目配せをして、確認を取る。
「ところで、手に持っているものはなんじゃ?」
やまもり、といった感じの紙袋を見て、エロ仙人が訪ねてくる。
「え、稲荷寿司ですけど何か?」
「いや、いい」
横でお日様みたいに笑うキューちゃんを見たあと、自来也がため息をつく。
「まだ食べるの………?」
「いや、これはキューちゃんの分」
食べておかないと、外部での行動に支障を来すかもしれないし。まあ、それは建前で、この笑顔のために買った。ちくしょう、やっぱりかわええ。
「………じゃあ、今日はひとまず宿で休むか」
「「「異議なし」」」
マダオと二人で、大蛇丸対策用の作戦でも立てておきましょうかね。