Fate/in UK   作:ニコ・トスカーニ

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意外に早く上がりました。
香港編です。
今回はプロローグ。
凛が旅のお供です。


夜叉の島
出立


 この国らしい曇天の空の下。

 冷え込む2月のある日。

 私はある重要な問題についてアドバイスを求めるべくメイフェアの豪邸に向かっていた。

 

 豪奢な門の前に立ちチャイムを鳴らす。

 時代ががかった格好をしたこの家の執事が時代がかった所作で私を応接室へと案内した。

 

 運ばれてきたダージリンのファーストフラッシュを飲みながら待つ。

 ほどなくして目的の人物があらわれた。

 

 その人物、サマセット・クロウリーはいつものように完璧に仕立てられたスリーピーススーツを

完璧に着こなし、一分の隙もない所作で颯爽とあらわれ私の向かいに座った。

 

 いかにも高級そうなアンティークチェアに腰掛けたクロウリーはその長い足を組むとダージリンを

一口すすり一息ついて言った。

 

「用件はわかっている。トウコに会いたいんだろう?」

 

 クロウリーは現代の魔術界における怪物だ。

 私の友人、遠坂凛はきわめて優秀な魔術師でありおそらく歴史に名を残す存在にいずれなるだろう。

 だがクロウリーの優秀さには彼女すらかなわない。

 遠坂凛が歴史に名を残す天才ならクロウリーは優秀すぎて歴史から抹消される天才だ。

 

 この男に隠し事はできない。私は時候の挨拶もジョークも言わずクロウリーがありがたくも

一足飛びで踏み込んでくれた本題に踏み込むこととした。

 

「居場所を知っているのか?」

「ああ。知っている。昨日もチャットした」

「変質者同士、気が合うんだな」

「高貴な者同士だから分かり合えるのさ。

――それで彼女から伝言だ」

 

 私が信用できない旧友、蒼崎橙子の行方を捜している理由は一つ。

 間桐桜のためだ。

 

 彼女の心臓には蟲が巣くっている。

 それゆえに彼女は決して自由になることができない。

 

 彼女を救う方法は2つ。

 

 心臓を可能な限り傷つけず蟲を排除すること。

 あるいは思い切って体を破棄し本物と寸分違わぬ人形に

彼女の中身を移し変えることだ。

 

 後者の芸当をできる人間は一人しかいない。それが蒼崎橙子だ。

 

「それで彼女はなんと?」

「『頑張れ。アンドリュー。友人として見守っている』」

 

 予想通りの答えだった。

 やはり蒼崎橙子は蒼崎橙子だった。

 

 そうなると取るべき手段は一つになった。

 だが、これも簡単ではない。

 

 衛宮士郎の異能を用いれば蟲を取り出すこと自体は可能だ。

 しかし、その対象の箇所は心臓だ。

 取り出す際にどのような問題が起きるかわからない。

 

 場合によっては欠損した組織をその場で即時に練成して移植する大手術の必要も考え得る。

 

 私はこの業界ではかなり広い人脈を持っているがそんな芸当が可能な術者は一人しか知らない。

 そして私はその人物が苦手だ。 

 

 先の苦労を思いやって濁った私の表情を見たクロウリーがいつものように微笑みながら言った。

 

「答えはもう出ているのだろう?」

「ああ。気の進まない回答だがね」

 

 私がそう答えるとクロウリーが一通の封筒を差し出した。

 

「僕から友人たちへのささやかな援助だ。帰ったら開けてみてくれ」

 

×××××

 

 豪奢な門を抜けて外に出る。

 渡された封筒の中身を検めると香港行きのフレキシブルチケットが入っていた。

 

 橙子といいクロウリーといい優秀な人物はなぜ皆言葉を省こうとするのだろうか。

 

×××××

 

 一週間後。

 私と遠坂凛は香港国際空港行きキャセイパシフィック航空の

アッパークラス(ビジネスクラス)シートに身を横たえていた。

 

 以前に衛宮士郎とアッパークラスに登場した際、彼は落ち着かない様子だったが

凛は違った。

 育ちの言い彼女のことだ。高級なサービスを受けるのに慣れているのだろう。

 

 士郎は頼み込んでアメリカの友人に割りのいい案件を紹介してもらった。

 これから相談に行く人物は特に好きなものが二つあるがその一つが金だからだ。

 

 少々危険な案件だったが桜のためと話すと士郎は二つ返事で引き受けた。

 いつもは士郎の無茶を嗜める凛も今回は反対しなかった。

 

 私は仕事を紹介してくれたアメリカの友人、アンナ・ロセッティに連絡を取り

くれぐれも彼のことを頼むと付け加えた上で丁重に礼を言うと彼女は言った。

 

「私もあの坊やのことはそれなりに気に入ってる。無茶はさせないよ。

あの坊やはこれから多くの人の役に立つ。

封印指定くらってホルマリン漬けにされるなんて結末。まともな神経してたら望まないさ」

「そうか。君がそう言ってくれるなら安心だ」

「ところでアイツに会いに行くんだって?」

「ああ。実に気が進まないがな」

 

 それが会話の終わりだった。私はアンナとお互いの無事と健康を祈りあうと電話を切った。

 

 

 就寝の時間になり機内は暗くなっていた。 

 凛は眠れない様子だった。

 

「眠れないのか?リン」

 

 彼女は不安そうに言った。

 

日御碕御影(ひのさきみかげ)……名前は知ってるけど、どんな人なの?」

「おおよそ魔術師らしくない人物だ。悪い意味でね」

 




まだまだ続きますよ。
fgoの茨木童子イベント。
HP100万は余裕で削れるんですが、、600万は攻略の糸口が見えませんね。
次は耐久作戦で15ターン粘る方法を考えてみようと思います。

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