Fate/in UK   作:ニコ・トスカーニ

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エピソード完結です


決着

 「準備がある」というクロウリーの言で、囮作戦の結構は2日後の深夜からということになった。

 

 いつもは積極的に協力を申し出てくれる凛だが、起源弾の特徴を聞いた彼女は「今回は大人しくしておくわ」と引き下がった。

 起源弾は強力な魔力をもつ相手へのカウンターパンチだ。

 凛は魔術師として極めて優秀であり、そして正統派だ。相性が悪すぎる。賢明な判断だ。

 

 メイフェアーからブラックキャブを拾い、ウエストミンスターに戻る道すがら、彼女は何か考え込み黙っていた。

 沈黙が数分続くと、後部座席と運転席の間の虚空に向かい呟いた。

 

「士郎のお父さんがそんな人だったなんて」

 

 そう、一人ごちると今度は私に向き直り、少々ためらいがちに私に問いかけた。

 

「ねえ、あなた知ってたんでしょ?」

 

 私もまた、ためらいがちに答えた。

 

「エミヤキリツグは僕らの業界では有名人だった。荒くれ者揃いのハンター業界でもとびきりの荒くれ者だ。

だが、シロウの話に聞くエミヤキリツグはただの父親だった。

話すのは健全じゃないと思ったのさ。それに、僕はキリツグの事を直接知っている訳じゃない。

息子から見たキリツグがただの父親だったのならば、それもまた事実だったんだろう。

思い出は美しすぎるぐらいでちょうどいい。僕はそう思う」

「そうね」

 

 またしばらく沈黙が続いた。凛の視線は宙を暫くさまよっていたが、また何か言うべきことを思いついたらしく言った。 

 

「士郎の家に初めて行ったときなんだけど」

 

 私は彼女に顔を向け、聞く姿勢を整えた。

 

「全然、魔術師らしくないと思った。来るならどうぞって感じ。きっと衛宮切嗣って本当はそう言う人だったのね」

 

 このやり取りの後、今回の件については凛は協力しない、士郎にも今日あったことは話さないと、私の彼女の間で合意が成立した。

 賢明な判断だと思った。凛の能力と起源弾はあまりに相性が悪すぎる。また、士郎に話したら彼がどんな無茶をやらかすかわからない。

 私は有望の協力者である彼らの存在は頭から排除し、作戦を練り始めた。

 

×××××

 

 2日後。私は結局1人でことに臨むことにした。

 協力してくれるアテがあり、今回の件に最適な能力を持つ知己が全員先約ありだった。

 まったく運がない。

 

 私はこの2日間の徒労を思い溜息をつくと、クロウリーの邸宅に向かった。

 

「やあ、アンドリュー」

 

 ニヤケ面を浮かべたクロウリーに私は迎えられた。

 クロウリーは一人ではなく、傍らに私も良く知っている人物を従えていた

 前回の面談の時から碌な事を考えていないであろうことはクロウリーの表情から予想済みだったが、大当たりだった。

 

 衛宮士郎。衛宮切嗣の義理の息子。

 彼に今回の件は話していない。教えれば無茶をするであろうことは明白だったからだ。

 切嗣の義理の息子がここロンドンに居ること、そして彼と私が知り合いであることはクロウリーに話していない。

 凛も話していないはずだ。話せば碌なことになるまいと分かっているからだ。

 

 私はそれなりに才能もあり、経験も積んでいる。凛は恐らく魔術の歴史に名が残るレベルの天才だ。

 だが、クロウリーの魔術師としての能力は現代の魔術師では太刀打ち出来る者がいないレベルに到達している。

 

 彼にとって他の魔術師は全員格下の存在だ。魔術師の防壁を突破して頭の中を覗くこと

などクロウリーにとっては『ドクター・フー』を予約録画するよりも簡単だったに違いあるまい。

 

 困惑と自分の迂闊さをないまぜにした目線をクロウリーに向けると、クロウリーは変わらぬニヤケ面のまま私に言った。

 

「どうしたんだ、アンドリュー?シケた面をして。

君の方の協力者探しが思わしくないようだったから、僕が見つけてきたんだ。

少しは喜んだらどうだ?」

「君は本当に悪趣味な奴だな」

 

「悪趣味ね。悪趣味だって退屈よりはマシだと僕は思うがね。

さて――」

 

 クロウリーはそう言うと、一度、別室に引っこんだ。

 そして、年のころ12,3歳の金髪、碧眼の少女の手を引いて来た。

 

「こちらにおわすのが今回の君たちの護衛対象。

ミラ・ホロヴィッツ。ウクライナ生まれの13歳だ。

特別手当を払うと言ったら、自ら志願してくれた。

君たち、紳士として彼女の事を身を挺して守ってやってくれ」

 

 そう言うとクロウリーは私に車のキーを渡し、踵を返した。

 

「君も来るんじゃないのか?」

 

 私が彼の背中に疑問を投げかけるとクロウリーは言った。

 

「『同行する』とは言ったが常に一緒に居るつもりはない。

心配するな、エイワスを通じて君たちの同行は逐一見ている。何かあればすぐに行けるようにはしておこう

――それと、ミスター・エミヤ」

 

 クロウリーはニヤケ面を引っ込め、士郎に言った。

 

「君のお父上はとても楽しい人物だった。亡くなってしまったという事実が残念でならない」

 

 士郎はその一言をなんとも曰く難い表情で聞いていた。

 

 私と士郎は少女ミラを連れてクロウリー邸を出ると、まずはロンドン1の繁華街ライセスタースクウェアを目指した。

 クロウリーのコレクションから借り受けたジャガーを駆り、夜のロンドンを走る。

 私が運転席、士郎が助手席、ミラが後部座席だ。

 

 私は、後部座席で不安げに震えるミラに「君の身は守るから安心してくれ」とウクライナ語で優しく話しかけた。

 彼女は母国の言葉で優しい言葉を変えてもらえたことをが気に入ったらしい。少し穏やかな表情になった。

 続けて私は隣の士郎に声をかけた。

 

「まず、黙っていて済まない。が、僕も凛も君に無茶をしてほしくなかった。

どうか理解してほしい」

 

 ここに来てから一言も話さない士郎に私はまず、そう言った。

 士郎はいつもの温顔で「わかってるよ」とただ一言答えた。

 

 短い沈黙ののち、私は更に言った。とても重要なことだ。 

 

「シロウ、君の性格と異能を考慮したうえで忠告しておく。

クロウリーと敵対しようなどとは絶対に考えるな。

君の愛しのリンは歴史に名が残るような存在になれるレベルだが、

それでもクロウリーの足元にすら及ばない。

凛が重量挙げの世界記録保持者だとしたら、

クロウリーは小指1本でその記録を破るレベルのバケモノだ。

おまけに奴は何をやらかすかわからない気まぐれな人物だ。十分に気を付けてくれ」

 

 士郎はただ黙って頷いた。

 

×××××

 

 1日目の夜は何も起きなかった。

 我々3人は、夜の繁華街を歩き回りながら、わざとらしくならない範囲内でミラに魔術を使わせた。

 私と士郎は炎によるボヤ騒ぎや、オフィス街に突如氷の塊を出現させるパフォーマンスをミラに行わせ、

少し離れたところから反応をうかがった。

 

 2日目の夜もやはり何も起きなかった。

 

 そして3日目。

 

 またしてもオックスフォードストリートでボヤ騒ぎを起こした我々だったが。

 やはり何も起き無かった。

 いつものようにわずかな野次馬が集まり、そしてすぐに興味をなくして立ち去って行った。

 

 それそろ引き返そうかと思った時だった。

 

 突然、士郎が立ち止まり、言った。

 

「誰かが結界を張った」

「何?」

 

 話によると士郎は結界の探知だけは得意らしい。

 

「結界の起点は分かるか?」

 

 私がそう言った次の瞬間だ。

 

 オックスフォードストリートに繋がる細い小道の1本から、閃光が走った。

 私はこの光が何だか知っている。マズルフラッシュだ。

 

 この細い道の向こうにはセントクリストファーズプレースという広場になっている。

 広場を過ぎるとその先はメリルボーンストリートだ。

 人が身を潜め、さらに逃げるに絶好の場所だ。

 誰かが潜んでいても少しもおかしくない。

 

 マズルフラッシュが光ったという事はもう音速の弾丸が発砲されている。

 しまった、と思った。

 

 が、私がマズルフラッシュを認識するより早く、1人の人物が行動を起こしていた。

 その人物、衛宮士郎は数10フィート離れたミラの前に飛び出すと、身を挺して弾丸を受け止めていた。

 

 私もまた、すぐに行動を起こした。

 マズルフラッシュを確認した方向に、身体能力を全開にして飛び出す。

 

 敵の銃は連射が利くアサルトライフルではないらしい。

 となるとスプリングフィールド弾を装填できるものは中折れ式の競技銃だ。

 

 中折れ式の銃は再装填に時間がかかる。

 マズルフラッシュから推定される距離は、身体能力の強化を全開にすれば再装填前に詰められる。

 

 はたして私は、発砲された小道に一気に入り込むと、虚を突かれたらしい人物をたやすく発見した。

 手には予想通り中折れ式の競技銃を構え、新たな弾丸の装填を試みていた。

 

 だが、もう遅い、

 私は銃を持った人物の腕をひねりあげると、地面に叩き伏せた。

 

「シロウ、大丈夫か?」

 

 士郎はうめき声を発したが、出血はなかった。

 意識もはっきりしているようだ。

 

 備えあれば憂いなしだ。士郎には今回の対策としてグレードⅣの防弾ベストに強化のルーン刻んだ特注品を渡していた。

 起源弾は魔術回路に干渉し、それを破壊する礼装だ。よって、自らの魔術回路を使わず物理的に防げばいい。

 レベルⅣの防弾ベストならば.30-06スプリングフィールド弾を物理的に防げるし、起動済みのルーンであれば、

術者本人の魔術回路を使う必要はない。当初は一人でこの護衛をやるつもりだったが、予備として2着誂えておいて正解だった。

 

 私は腕をつかみ叩き伏せた人物を検めた。年のころは20代の半ばほど。

 金髪に碧眼、身長は5フィート5インチ程。若い女だった。

 話に聞いた、ジョナサン・メイザースの娘の風貌と一致する。

 

 私がこの女をどうしようか思案していると、暗闇から拍手の音が響いてきた。

 

「ブラボー。2人とも見事な動きだった」

 

 どこからともなく姿を現したサマセット・クロウリーの物だった。

 

 私は驚きと共に言った。

 

「どこから現れた」

「何をそんなに驚いている?ただの転移魔術だぞ?

このロンドンのマナは熟知しているし、この街は僕の庭だ。

転移可能な仕掛けぐらいしているさ。

さて、アンドリュー、ミスター・エミヤ。ご苦労だった

あとは任せてくれ」

「断る。君のことだどうせ碌なことを考えていないんだろう」

 

 私が皮肉を込めてそう言うと、クロウリーは毅然として言った。 

 

「いいから下がれ。2度も言わせるな」

 

 そう言われた瞬間、私の手足から力が抜けた。

 私は女の腕を離すとふらふらと立ち上がり、その場を離れた。

 まるで妖精王オベロンに命じられた下々の妖精のような気分だった。

 

 クロウリーは女に悠然と歩きよると言った。

 

「初めまして、ミス・シャーロット・メイザース。僕は……」

「サマセット・クロウリー……。我らが一族の大願を邪魔するならあなたでも許さない」

「そうか。では、どうする?僕は君が下らん選民思想で僕の思い出の品を汚したことが許せない。

君は僕の邪魔が許せない。ならば決闘でもするか?」

 

 ふらふらと立ち上がった女の足がすくんだ。

 メイザースは優秀な魔術師の家系だ。今、目の前に立っている、サマセット・クロウリーという人物がどれほど化け物じみた存在か

嫌と言うほど分かっているはずだ。

 それでも、シャーロット・メイザースは毅然とした態度を崩さず、右手にもった中折れ式の競技銃を引き上げた。

 

「そうきたか。よろしい。では、高貴なるものの立場として、決闘に際して君にハンデをやろう。

君のトンプソン・コンテンダー・アンコールは中折れ式で1発ずつ装填するタイプだ。

さっき1発撃ったから再装填が必要だろう?まってやるから再装填しろ」

 

 女はクロウリーのあまりに鷹揚過ぎる態度に面喰ったが、ポケットから弾丸を取り出すと、銃に装填し、

クロウリーに鼻先に銃口を突きつけた。

 

「どうした?装填するまで待ってやったんだ。チャンスだぞ?引き金を引けば僕を殺せるかもしれない。

そうすれば君の邪魔をする者は当分いなくなる。さあ?やってみろ」

 

 クロウリーが顔色1つ変えずにそう言うと、女は引き金に指をかけた。

 その刹那、クロウリーが一節の詠唱を口にした。

 

「Vi Veri Vniversum Vivus Vici(我、真実の力によりて生きながらに万象に打ち克てり)」

 

 詠唱が終わった瞬間、クロウリーの体を青白い光が包み、マズルフラッシュとともに発射された弾丸は

光の前に霧散した。

 

 信じられない光景だった。どのような熟練の戦闘に長けた魔術師でも至近距離から放たれた弾丸をかわすことなど不可能だ。

 しかし、クロウリーはいともたやすくそれをやってのけた。

 その場に居る全員の驚愕を背に、クロウリーはこともなげに言った。

 

「固有結界だ。本来、術者の心象風景を具現化する魔術だが、僕の場合、自分のもつ絶対性という概念を具現化できる。

『われ思う故にわれあり』だな。

僕の固有結界の前ではありとあらゆる攻撃という概念が無効化される。自分の攻撃も無効化してしまうので、

真に優れた相手には防御にしか使えないが、君のような格下ならば結界を展開したままでも害する方法がある。

――こんな風にね」

 

 そう言って、クロウリーが女を一睨みすると、次の瞬間、女が全身を緊張させて苦しみ始めた。

 私には何をしたのかさっぱりわからなかった。今夜は驚愕の連続だ。

 私の驚きの対し、クロウリーはまたしてもこともなげに言った。

 

「何をそんなに驚いている?ただの暗示だぞ?

暗示を強めにかけて心肺機能をマヒさせたんだ」

 

 サマセット・クロウリーのバケモノぶりは私の予想以上だった。

  

「君の命はもってあと30分と言うところだ。苦しんで、僕の思い出を穢したことを後悔するんだな。

では、行こう。諸君」

 

「待ってくれ!」

 

 そう言って踵を返したクロウリーの背に1人の人物が声をかけた。

 

「やめてくれ、クロウリーさん!

もういいだろ!殺す必要なんかないはずだ!」

 

 クロウリーは声の方向に振り返ると、士郎をにらんだ。

 恐らく頭の中を読もうとしているのだろう。

 私は何もできずにただただずんでいた。 

 

「それで、どうする?どうやって僕を止める?」

 

 クロウリーがいつものニヤケ面に戻って静に言うと、

 士郎はしばしのためらいの後、一節の詠唱を口にした。

 士郎の手には以前にみた陰陽の中華剣が握られていた。

 

「面白い。本当に宝具の投影が出来るのか。実に興味深い。

だが、僕の固有結界の前では、宝具級の武器も無意味だ。

この結界の展開時間は限られているが、君の武器を無力化し、八つ裂きにするには十分な時間だ。

そもそも、このレディは殺人犯で君とは何の所縁もないはず。

なぜ、助けようとする?

全ての人間に幸せであってほしいなどという君の願いは絵空事だ。

自分より人の方が大事など、そんなものは偽善にすぎん。

それに、君の願いはすべてエミヤキリツグからの受け売りだ。君自身の願いですらあるまい?

なぜそんなものにこだわる?」

「そんなものが偽善だなんて俺も分かっている。

でも、その願いが美しいと思ったから憧れた!

それだけは間違いじゃない。間違いなんかじゃないんだ!」

 

 士郎の叫びが夜の街道に響く。

 叫びは虚空に吸い込まれ、長い沈黙があった。

 沈黙ののち、クロウリーはわざとらしいほど愉快に笑い声を高らかに響かせると言った。

 

「面白い。君は最高だ!」

 

 そう言うと、クロウリーは女の方を向いた。

 次の瞬間、全身がこわばっていた彼女の体は緊張から解き放たれ、崩れ落ちた。

 

「この少年に免じて見逃してやる。ここで君を殺してしまうと、彼の美しい理想を汚してしまいそうなのでね。

君はさっさと僕の視界から消え失せろ」

 

 女はうめき声をあげながらゆっくりと立ち上がり、クロウリーをにらんだ。

 

「さっさと失せろ。

君の退屈なツラを見るぐらいなら、デイリー・テレグラムの3面記事でも読んでいた方がまだマシだ。

だが、念のために言っておく。また同じことをやってみろ。

今度は足先から1インチ単位で刻んでやる」

 

 女はクロウリーをにらむと、踵を返し、夜の闇に消えて行った。

 

×××××

 

 数日後。

 私はセント・ジョンズ・ウッドにある士郎と凛の愛の巣を訪れていた。

 今回の件に報告のためだ。

 士郎は軽傷とは言え、防弾ベスト上からライフル弾をくらって負傷していた。

 結果的にとはいえ、巻き込んでしまった私が事情を話すべきだろう。

 

 私が事情を話すと、

 士郎がまたしても無茶な行為に及んだ咎で凛にお説教を受けた。

 今回は私にも矛先が向いた。

 

「アンドリューも!どうして止めてくれなかったの!」

「面目ない。僕の力不足だ。今回ばかりは何もできなかった」

 

 私は首を垂れ、力なく言った。

 凛のありがたい、そしてごもっともなお説教が続く中、突如、部屋に居ないはずの4人目の人物の声が聞こえた。

 

「シェイクスピアを信じるならば、この世はまさに舞台だな。

実に面白い。

退屈の権化のようなトオサカトキオミの種から君のような魅力的なレディが生まれ、

最高に愉快な存在だったエミヤキリツグの血の繋がらない忘れ形見がやはり最高に愉快な存在とは。

だから、生きるのは止められない」

 

 いつの間にかサマセット・クロウリーが窓際に立って我々を見ていた。

 

「一体、どこから入った?」

 

 私が言うとクロウリーがこともなげに言った。

 

「正面からだ。おっと失礼、ノックを忘れていた」

「一体、何の用だ?」

「これを渡しに来た」

 

 クロウリーは懐から1発の弾丸を取り出し、士郎の前においた。

 

「エミヤキリツグとの思い出の品だが、君が持っている方が良いだろう。

何かの役にも立つかもしれないしね」

 

 そう言うと、クロウリーは優雅なステップを踏んで踵を返した。

 

「では、失礼する。友人たちよ」

「人格破綻者の君にそんなセンチメンタルな1面があったとはな」

 

 私がそう言うと、彼は言った。

 

「アンドリュー、君は無礼な奴だな。

僕をそんなつまらんものに定義づけるとは」

「では、何なんだ?」

「僕は人格破綻者ではない。

高機能社会不適合者だ」

「社会不適合という自覚はあるのか」

「当然だ。

こんなつまらん社会に適合などしてたまるか」

 

 クロウリーはドアを開け、ごく来た時とは対照的にごく当たり前のやり方で部屋から出て行った。

 後にはただ、クロウリーの纏っていたコロンの香りと、一発の弾丸だけが残っていた。




次回、セイバー巡礼の旅に出ます。

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