東方紅魔記   作:ぐれにゃん

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外伝です。


紅魔記外伝・(龍・狩・魔)
紅・美鈴


ここは、紅魔館という、吸血鬼の館

 

そこで私は兵として働いていた

 

ここでは、人であろうが妖怪であろうが兵に名前はない。私が唯一分かるのは自分が妖怪だということだけだった

 

外敵がくれば、排除するだけ、それだけの毎日だ

 

仕えた理由は単純だ………食うに困ったからだ、それに主も、歳をとってはいるが、吸血鬼なのにとても善人だった。たまに私達、兵の所に来ては雑談をしたりしてた。

 

月に一回ほどは必ずヴァンパイアハンターが来てたが、主の元に辿り着けるやつはいなかった

 

 

そして………今日は十六夜というヴァンパイアハンターがきた

 

いつものように、軽くあしらうつもりだった

 

周りの兵が、どんどん倒されていく。私は相手と対峙した。周りの兵は全員、死んではないようだ。加減をしたのか?

 

・・・強い。相手の全身から出ている気のようなものが、私に危険を告げる。

 

『なぜ、殺さない?』

 

私は疑問に思った一言を相手に投げ掛けた

 

相手は館を指差し

 

『俺の仕事は、ヴァンパイアハンターだ。吸血鬼以外は対象外だ・・ただ、遮る者には少し痛い目を見てもらうことになる』

 

そういいながら、館に向けていた指を私に向け、もう片方の手でナイフを構えた。

 

・・・・・ダッ!

 

 

・・・・

 

勝負は一瞬だった。私の蹴りを躱し、その伸びた足にナイフを一本、もう片方の足に一本刺された。が、それと同じに相手の顔をめがけて打った渾身の右により、ガードした左腕を砕いた。

 

相手は痛みよりも、驚いたという顔をして

 

『確実に急所をついた。拳に力なぞ入らないはず、上半身の力だけで、この威力か・・』

 

・・・・・

 

私は激痛に耐えながら、負けを確信した。足はもう動かない。それに対し相手は左腕が動かないだけ。しかも殺気がなかった相手にだ。実力差は歴然だった。

・・・・

 

ザッザッザッ。

 

急に後ろを向き、立ち去るヴァンパイアハンター

 

ッ・・・!?

 

『どうした!?私はまだやれるぞ!?』

 

本心ではなかった。本当は助かったと思い、内心ホッとしてた。だが、なぜか呼び止めてしまった。・・ただの意地だった。

 

ザッ。・・ヴァンパイアハンターは立ち止まり

 

『いっただろ?私はヴァンパイアハンターだ、吸血鬼以外に興味はない、それに、これでは吸血鬼相手をするには分が悪い。』

 

ヴァンパイアハンターはそういい、折れた左腕を右指で、ちょんちょんと、つついた。

 

『というわけで、今回は引き揚げる。・・・また来る』

 

といい、ヴァンパイアハンターは立ち去った。

 

『た、助かった・・・』

 

そういいながら、私は一人、そこに立ち尽くしていた

 

ザッ

 

ッ・・・!?

 

後ろに人の気配を感じて、振り返った

 

・・・

 

そこには、主がいた。主は、周りの倒れた兵達を見た後、立ち尽くしている私を見て

 

『おぬし、一人で撃退したのか?』

 

と聞いてきた。正直、撃退といえたものではなかった。むしろ、助けられた感じだ

 

『・・・いえ。私は負けました。ですが、相手は引きました・・』

 

私は正直にいった。それを聞いた主は

 

『謙遜するな、相手はあの十六夜であろう?伝令兵から聞いておるわ。あやつが途中で引く時はあやつにとって、計算外な不具合があった時だけだ。その、計算外はおぬしのことであろう?』

 

・・・・・

 

正直、余り嬉しくはなかった。実質負けていたことには変わりない。

 

『ふむ、納得いかんという顔じゃな。・・・よかろう!では、負けた罰をとらせよう。・・・・・・おぬしを、わしの側近に任命する』

 

・・!?

 

『い、いや・・!?』

 

罰?昇格じゃないか!?そんなの貰うような、働きなんかしてない。あのヴァンパイアハンターを倒せているのなら甘んじて受け取るが・・・

 

『そして、わしが直々に、おぬしを鍛えあげてやろう、おぬしには才能がある。どうせ十六夜はまた来る。その時に、わしの目の前で見事撃退してみよ!?負けたら・・・クビじゃ。』

 

そういいながら主は、微笑んだ。

 

チャンスをくれた・・・・もう一度、あのヴァンパイアハンターと・・・

 

『はい!必ずや、主の為、倒してみせます!』

 

私は勝利を主に使い、主の側近となった。そして、日々、訓練に明け暮れた。主は厳しく優しく、自分に体術を施してくれた。

 

私は再度、心の中で主に勝利を誓った。

 

そんなある日

 

 

主が・・・倒れた主はずっと寝たきりだった。長い寿命もいつかは尽きる。その時を迎えようとしていた。・・私は、毎日身の回りの世話をしていた。声も出すのに精一杯な主は、用があるときは、私を呼び鈴で呼ぶようになっていた。

 

そんな時、あいつが来た。外の兵が、ドンドン倒されている、間違いない、十六夜だ。私が向かおうとした時、先に相手がドアを蹴り飛ばしてきた

 

ガシャーーン!!

 

『静かにしてもらえませんか?病人がいます。天寿を全うしようとしてるんです、お引き取り願いたい』

 

私は十六夜を睨み付けた。十六夜は寝ている主を見て

 

『忘れたのか?これは仕事だ。相手が生きてる限り、俺は標的を殺す』

 

ッ・・・・!怒りを堪えるのに必死だった。ここで戦えば主に危害が・・・!??主に腕を掴まれた。そして

 

『か・・て・・・』

 

あの、とても底の深い、まるで暗闇の中での月の様な威厳のある、そして誰もが恐れた主が、・・・とても弱々しい、か細い声で、私にいった。・・・・大事なことを忘れていた・・私は勝利を誓ったんだった・・・最後の最後まで主に世話になった。ここで返させてもらう

 

『かしこまりました。必ずや』

 

そういい、私は、十六夜と対峙した。十六夜が

 

『今回は力、温存する必要もなさそうだから、全力でいくぞ?死なないようにな?』

 

といい、両手にナイフを構えた

 

『遠慮なく、どうぞ』

 

ダッ・・・・・

 

私は常に先手しか、考えてなかった。単純に倒せば倒されない。だが、その先手を読まれて、以前はやられた。主とは受け流し、つまり防御術の訓練をしてきた。主がいうには

 

『おぬしは、攻撃力、反射神経、動体視力、全てに置いて抜きん出ておる、じゃが守りが弱すぎる。確かにタフじゃが、一撃で致命傷を受けるようなのが相手だと終わりじゃ、川の流れのように流すのじゃ』

 

・・・ふふふ、おかげさまで、今、こいつの攻撃が当たる気しませんよ。

 

・・・・・

・・・・・

 

ことごとく、相手のナイフを躱す、躱すついでに一撃ずつ入れていく、確かに、全力の一撃よりは与えるダメージは落ちるけど、確実に与える。・・・・・そして、当たらない、手を出せば、くらうという相手の精神も減らしていく。攻守一体とはこのことなのか?

 

はあ、はあ、はあ。

 

十六夜が、疲れ果ててる。腕も上がらないようだ。

 

『そろそろやめますか?』

『まだだ!』

 

十六夜が、こちらに向かってくる

 

では、ここで、得意の先手必勝ですね、死なないでくださいよ!

 

パキャン!!!・・ドン!

 

七割くらいの右で、十六夜を吹き飛ばした。十六夜は気を失った。私は十六夜に一礼をし、主の元へ向かった

 

『申し訳ございません、壁に穴が・・』

 

主は微笑み

 

『よく、やった、ほうびを、あた、える』

 

無理に話す、主を見るのが、辛かった

 

『主!いいですからしゃべらないで下さい!』

 

そんな私を遮り

 

『おぬしに、名を与える』

 

心配している私に気を遣ったのか、さっきより力強くいった。その心遣いに私は涙した

 

『そうか、そんなに名が、嬉しいか』

 

主は勘違いしているようだが、主の嬉しそうな顔を見て、私は黙った。すると主は手元の呼び鈴を鳴らし

 

『この紅魔館では、呼び鈴をならすと、美しい者が現れる・・・それは・・』

 

『・・・おぬしのことだ・・・紅魔館の紅。呼び鈴の鈴。美しいの美』

 

『性は紅。名は美鈴。というのじゃ、どうじゃ?』

 

ホン・メイリン・・・・私は何度も頭で復唱した・・・

 

『・・ありがとうございます!紅・美鈴!!1生涯、この名を使い続けると誓います!』

 

そういい、中国式の挨拶で礼をした。・・・・しかし、主からは、何の返事もなかった。・・すでに息を引き取っていた

 

 

 

そして、主が死に。次のスカーレット伯爵が誕生した。私は、こいつが嫌いだった。理由は単純、十六夜が来た時に一目散で、主を捨て逃げていたのだ。

 

 

そんな新しい主に、私は一般兵への降格を命ぜられた。それはいい、こちとら、あいつの側近なんて願い下げだ。問題はここからだった。・・一般兵になるということは、名前の剥奪、忘却が行われる、前主の死に際にもらった大事な名前、失うわけにはいかない。・・・・私は逃げ出した

 

 

それから、暫らく気儘に生きていた。腕自慢達と戦ったり、賞金首を狩ったりしてたら、帽子に書いてる、龍の文字のせいか、龍と呼ぶ奴まで、出てきた。はた迷惑な話だ

 

何百年か経った頃に、風の噂で、紅魔館の主が吸血鬼を統一したと聞いた。主様以外そんなことできるやついないと思ってた私は、そいつを見る為、紅魔館にいくことにした

 

 

 

 

 


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