東方紅魔記   作:ぐれにゃん

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龍の意地

ハァ、ハァ、ハァ

 

血塗れの咲夜とパチュリーとは対象的に、妃は一滴の血も出てなかった。

 

理由は1つ

 

あれから1度も被弾してないのだ

 

『こんだけ打って、当たらないの?あのスピード、捕えるのは不可能よ』

 

パチュリーが、また弱気になる。

 

彼女は賢い分、見切りや諦めも早いようだ。冷静な判断が強みの彼女の弱点といえるだろう

 

『パチュリー様!まだです!チャンスはあるはずです!』

 

咲夜には、その忠誠心からかレミリアに頼まれたことを、絶対になし遂げようという強い意志が感じられる

 

咲夜が折れそうなパチュリーを支え、冷静な判断の出来るパチュリーが的確な指示での連携。………いいコンビではある……しかし…

 

今回は相手が悪かった…

 

咲夜の意志まで、もぎ取ろうとする力の差

 

パチュリーの指示を上回る、先読み

 

智、力、共に向こうが上だった

 

そんな中、美鈴………彼女にも限界が近づいていた

 

ハァ、ハァ

 

(咲夜さんやパチュリーさんが、苦戦している………クソ!この体さえ、まともに動けば!私が足止めを!)

 

(あの二人には命を救われた借りもある………なんとかしたい…)

 

(考えて見れば、私は何回死んでるのだろうか?そのたびに救われて……フラン様を守る?…馬鹿か?守られてるのは私じゃないのか?)

 

(そんなのは、ごめんだ。それに、まだフラン様に、格好良いとこも見せてない!どうせ、死んだ命だ。)

 

バッ!

 

美鈴が妃に向かいダッシュした。

 

咲夜とパチュリーに気をとられていた妃は美鈴に羽交い締めにされた

 

!?

 

妃だけでなく、咲夜とパチュリーも驚いた

 

『くっ、死にぞこないが!』

 

妃は振り払おうとするが、美鈴は渾身の力を込め、離れない。

 

『咲夜さん!パチュリー様!今です!私もろとも!』

 

!?

 

『美鈴!あなた、何いってるの!?…そんなこと!?』

 

咲夜が慌てる

 

パチュリーは詠唱を始め、咲夜のナイフに魔法を込めた。

『パチュリー様!?』

 

咲夜が振り返った時

 

『馬鹿が!』

 

妃がコウモリになって、美鈴から離れようとする。

 

!??

 

『コウモリになれない??』

 

すかさずパチュリーが、束縛系の魔法を詠唱していた

 

『こざかしい真似を!』

 

妃が爪を使い、美鈴を刺していく。

 

『咲夜さん!早く!もう持ちません!?』

 

もう美鈴は体中が血で真っ赤だった、……この状態での咲夜の攻撃は確実な彼女の死を感じさせるには充分だった。

 

『でも…』

 

戸惑う咲夜

 

『咲夜!レミィの予知を信じるんでしょ!?それに、このままじゃ、彼女犬死によ!?』

 

!!

 

パチュリーの言葉に、ハッとする咲夜。

 

『……美鈴!ごめんなさい!』

 

(…お嬢様、能力を使用します………お許し下さい)

 

カチ

 

 

止まった時間の中、出来るだけのナイフを投げた………咄嗟に美鈴を盾にして、美鈴が犬死ににならないよう、後ろからも。………逃げ場のない全方位に………

 

時間が動くと確実にメイリンにも当たる。確実すぎるほどの致死量のナイフが……

 

止まった時間の中で、咲夜は美鈴に謝った

 

『……ごめんなさい……あなたは、私の知る中で、一番の勇者よ……』

 

 

………………

 

………そして時間が動き出した

 

!!?

 

初めて見る光景に驚く妃

 

そして美鈴が微笑みながら

 

『ありがとう、咲夜さん…………』

 

グサッ!グサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサッ!

 

 

バタ!

 

倒れる美鈴

 

妃は辛うじて、生きていたが、傷の修復が出来ない

 

『おのれー!虫けらがあ!』

 

倒れている美鈴の顔を踏み潰そうとした瞬間

 

カチ

 

……………妃の目の前に咲夜が現れた

 

『触るな』

 

人とは思えぬ冷たい視線のまま、妃の額の中心にナイフを突き刺した

 

『ギャアアアアァァ』

 

叫び、のた打ち廻る妃

 

『アアアアァァ!……お前達!このままフランを生かしておくと後悔するぞ!?』

 

『五月蝿い』

 

咲夜が表情を変えずに、一本、また一本と、ナイフの刺さってない所、全てに、ひたすら突き刺していた

 

……………妃はすでに絶命していた

 

ワーーー!!

 

逃げる兵士達

 

それでも咲夜は、妃の体をひっくり返しては、隙間を見つけ、ひたすら刺し続けていた

 

…………………

 

…………………

 

『さ、咲夜さん?怖いですよ?』

 

…………

 

…………!?

 

美鈴の声だった

 

(そんな馬鹿な!?あの状態で、あのナイフの量、生きてるはずが?)

 

メイリンに駆け寄り、心臓に耳をやった

 

…………ドクン、

 

………ドクン

 

(!?生きてる!)

 

『美鈴!生きてる!?』

 

『はい……なぜかは、わかりませんが……』

 

咲夜の目に生気が戻った

 

『パチュリー様!?』

 

急ぎ、パチュリーを呼ぶ

 

『フフ、知ってるわよ』

 

パチュリーが微笑みながら、美鈴に近づく

 

(………え?)

 

『実は、あのナイフには妖怪を回復?というか妖力を回復する魔法も懸けていたのよ。吸血鬼が回復しないのは昔、レミィのおかげで実証済みよ?どう?魔法て、便利でしょ?あなた達のチート能力にも負けないわ』

 

唖然とする咲夜

 

『パチュリー様、それなら早く咲夜さん止めて下さいよ、怖かったんですから』

 

美鈴が咲夜をチラチラ見ながらパチュリーにいった

 

『あら、私も怒ってたから、見てて気持ちよかったのよ?』

 

………………

 

唖然とする美鈴

 

『はあー、結局また、助けられましたね。……私はいつになれば二人に借りを返せるんですかねー?』

 

…………

 

咲夜が、そっと美鈴を抱き寄せた

 

『充分すぎるほど、もう返してもらってるわ』

 

パチュリーも、頷いていた

 

 

(あの土壇場での美鈴の勇気、そして、それに冷静に素早く対応するパチュリー様…………私も、まだまだね。)

 

『とはいっても、美鈴が大怪我には変わりないわ、こあ?治療お願い。フラン様も、美鈴に付き添ってあげてください。多分、美鈴にはそれが一番ですから。……咲夜?私達はレミィの加勢に急ぐわ』

 

!?

 

『そうだっ!お嬢様!』

 

急ぎ、屋上へ向かい走る咲夜。

 

『ちょ、置いていかないで!』

 

慌てて追い掛けるパチュリー

 

………………

 

『あんな傷だらけなのに………あの二人には適いませんね……』

 

少し残念そうにする美鈴

 

『そんなことないよ!?美鈴格好良かったよ!』

 

言葉を遮るように抱きつくフラン

 

『…本当ですか?……………ハハハ・・・・』

 

『ほんとだよ!……………美鈴?泣いてる?痛いの?こら!小悪魔!ちゃんと治癒しなさい!』

 

ポカンと小悪魔の頭をフランが叩いた

 

 

『いた!…もー!…全力ですよー?』

 

小悪魔がふてくされてる

 

『ハハハ、違いますよ、フラン様。……ただ、フラン様にそういってもらえるのが嬉しくて……』

 

『あー!また泣いてる!?小悪魔!!』

 

『えー!?』

 

ハハハッ

 

『フラン様。………………私は、幸せ者です』

 

…………レミリア様、パチュリー様、咲夜さん、……残念ですが、私はリタイアです………御武運を……

 

 

 

 


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