DOUBLE:violence 《二人の特典付き転生者が異世界でアテもなく暴れ続けるお話》 作:アルファるふぁ/保利滝良
多分
小さな家
三人の人物がそこにいた
一人は、ナナミ
たまたま怪獣が訪れたところをイシカワに助けられた、この家の住人である
もう一人は、ゲンゾウ
ナナミの祖父で、齢八十に達する
最後の一人は、イシカワだ
出された紅茶を飲み干し、欠伸をしながら二人の顔を交互に見ている
「旅のお方、助かりました」
棚から小箱を取り出し、イシカワの目の前の一本足テーブルに置くゲンゾウ
「貴方が来てくれなければワシらはあの世行きでしたわい、まだ婆さんとこへ行くわけにゃいかんのでしてな」
しわくちゃだがにこやかな顔を浮かべ、ゲンゾウは小箱を開けた
中にはビスケットと、ペンダントが三つずつ入っている
「ありがとねイシカワさん!あの戦闘マシーンカッコ良かったよ!」
笑顔で紅茶のお代わりを注ぐナナミ
ビスケットにも紅茶にも手を付けず、イシカワは単刀直入に聞いた
「ここはどこだ?」
二人は顔を見合わせ、首を傾げ、またイシカワの方を向いた
「どこ・・・と言われましてもなぁ」
「ゲウル山脈の・・・うーん、東側かなぁ?」
ゲウル山脈だぁ?
なんじゃぁそりゃあ!俺はあんまり地理にゃ詳しくない方だったが、それでもゲウル山脈なんてモンが実在しねぇなんてことぐらいは察せる
じゃあゲウル山脈がなんなのかって訳だが・・・
「・・・地図あるか?」
「生憎と、シャーマル地図しかありませんでしての」
「構わない、見せてくれ」
ギルギル・カンなんて地名も聞いたことはない
「はい、地図だよ」
「ああ、サンキュ」
これは・・・!こんな地は世界地図のどこにもねぇ!
まるでシイタケだ、そんな島が海に囲まれてやがる
つまりだ、これがギルギル・カン・・・多分山脈があるとこからして、大きさはかなりのモンだろう
完璧に確定したぜ、ここは異世界
正真正銘の別世界だぜ
野郎、『新しい箱庭』ってそういう意味かよ
俺たちの方の世界は飽き始めた古物ってことか、ふざけやがって
俺は別にキリストやらイスラムやらじゃねえけど、神様がこんな、世界をオモチャとしか思ってねぇような自己チューとは・・・
「どうしたのイシカワさん、顔色悪いよ?」
「あ、ああ、ちょっとイヤなこと思い出してな」
この世界の連中に変なコト吹き込んだらロクなことにはなりゃしねぇだろ
カミサマ野郎のことは伏せておくか・・・
「なあゲンゾウ爺さん、アンタ、ギルギル・カンの歴史は詳しいか?」
と、とりあえず情報が欲しい
この世界の情報が・・・
「イシカワさんあんた、よくシャーマル語使えるのにギルギル・カンの歴史を知らないねぇ」
日本語じゃなくて、ここじゃシャーマル語って言うのか
まるでダンバインじゃねーか、1からこの別世界に慣れねえといけねえのか、めんどくせぇ!
「イシカワさん、おじいちゃんはちょっとボケ始めだから代わりにボクが説明してあげる!」
ナナミ?
お前がか
「ちょっと待ってて!」
どこ行く?歴史を教えてくれんじゃねえのか?
「・・・慌ただしい奴だなぁ」
ギルギル・カン
ブラス王国とマイナー共和国の二大国家が同居する地
キノコに酷似している
ブラスとマイナーは、戦争こそしないもののかなり険悪な雰囲気を醸し出している
一触即発ともいえる
魔物
二つの国の丁度境にあたる場所に存在する、巨大な生物の死骸
魔物の死骸に様々な研究が行われた結果、戦闘マシーンが製作された
戦闘マシーン
戦闘マシーンとは、人型の巨大なロボットで、名前の通り戦闘に使われることが多い
巨獣
魔物の周辺からは謎の緑の光が発生し、それが特定の生物を巨大化させていることが判明
巨大化した生物は出現以降、巨獣と呼称され、戦闘マシーンにより駆逐されている
巨獣となった生物は狂暴性と戦闘能力が飛躍的に向上し、場合によっては戦闘マシーン数機を返り討ちにするときもある
謎の緑の光
魔物の周辺から溢れる正体不明の光
一部の動植物を巨獣に変えてしまう性質がある
今のところ人体には影響はない
また、爬虫類が浴びると、体が溶ける現象も確認されている