DOUBLE:violence 《二人の特典付き転生者が異世界でアテもなく暴れ続けるお話》   作:アルファるふぁ/保利滝良

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sceneGET 目醒めるサーガ

 

天に昇る光の激流

ゲッターロボはその直中にいた

優しく包み込まれるなどという生ぬるいものではなく、もはや握り潰されているような、そんな風情だ

光の勢いと出てくる量が増えていく

緑色の光はやがて、外部から中にいるゲッターを確認できないほどになった

ミツル姫が、カズトが、騎士団の騎士達が、マイナーの男が、マイナーの女が、蟻巨獣でさえも、疑似ゲッター線の柱を呆然と見上げていた

見上げることしかできなかった

 

 

 

 

 

ぬぉおおお!!

これは・・・疑似ゲッター線だと!?

ジジィは城の地下にあるあの量の疑似ゲッター線を解放したってのか!

ぐあぁっ!飲み込まれる・・・!

ゲッターロボが、俺を取り込もうとしてやがる・・・クソッ、体が動かねぇ・・・!

ぐぐ・・・意識が、食われる・・・

ここで、終わりかよ・・・!?

いや、まだだ、まだ終われるか

まだ負けてねえぞォ!

うぉおおおおおおおおおお!!!

俺を、ナメんじゃねぇええええええええええええええええええッ!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

翠の光が流れ出る勢いが、ようやく弱まった

天を焼く光の柱は、みるみるうちに細く、薄くなっていった

やがて、それが完全に無くなると、三つの影が高速で飛んでいた

ゲットマシンだ

三機のゲットマシンが、天空へ向かって飛翔している

その中の一機、赤いイーグル号にイシカワ・ケンジはいた

「体が熱い・・・体の奥底でマグマが煮えたぎってやがる!」

掻き立てられる闘争心

身体中から溢れるパワー

そして、出力の上昇したゲッター

理由は簡単だ

疑似ゲッター線の過剰吸収

「チェエエエエエエエンジッ!ゲッタアアアアアアアアアアア!ワンッ!」

イーグル、ジャガー、ベアーの順に接続

ジャガー号から腕が、ベアー号から足が、イーグル号から頭が飛び出した

ゲッター1だ

それはゲッター1だ、それ以上でもそれ以下でもない

しかし、その機体に纏う雰囲気は、何もかもが違う

まるで星すらも砕く大爆発のような、全てを薙ぎ払う力を秘めた雰囲気

それも不思議ではない

なにせ、マイナー王城から溢れ出た途方も無い量の疑似ゲッター線を、このゲッターロボは喰らいきったのだから

「ゲッタァアアアアアアアトマホォオオオオオオオオオオゥクッ!!」

赤いゲッター、空戦のゲッター1の両肩から、一個ずつの鉄のボールが弾け出る

柄と刃、それぞれが一瞬にボールから現れ、それはゲッターロボに相応しい巨大な戦斧となった

「ダブルトマホォオオオオオゥクッ!」

二個の鉄球からできた二振りの大斧を片手で一本ずつ取り、イシカワは叫んだ

おもむろに柄の下端部を合わせる

出来たのは、上下に刃の付いた斧だ

それを握り締めたまま、ゲッターは腕を後ろに伸ばした

「ブゥウウウメランッ!!」

トマホークは勢いよく投げられた

回転の早さが大きく、刃の回転はゆっくり見えた

だがトマホークブーメラン自体は瞬く間にマイナー国の要塞壁の外へ到達した

そこで戦う騎士団に襲いかかろうとした蟻共が、回転に巻き込まれてバラバラになった

ブーメランの軌道にいた他の蟻達も、同じ運命を辿った

壁の上へ飛ぶ巨獣の脚

一撃で壊滅した、西側の巨獣の群れ

「オープン、ゲェット!チェエエンジ!ゲッタァーッツゥーッ!!」

一瞬で分離し、そのまま空中で再合体する

今度はジャガー、ベアー、イーグルの順だ

合体は瞬きより早く終わった

白い上半身のゲッター2だ

自由落下より速く、ゲッターが大地へ落ちていく

真下を向きながらブースターで加速することで、下へ超高速で落ちることができる

「ゲッタァーッドリルッ!」

そして空中から地へ落ちる理由

ゲッターは左腕のドリルを大地に突き込んだ

そのまま地中へ消えていくゲッター2

「るぉああああッ!」

未だに町を壊し続ける巨獣の足下から、一本のドリルが生えてきた

ドリルの次は腕、その次は肩、頭、胸部、下半身が次々と現れる

その掲げた左腕には、蟻巨獣の死骸が突き刺さっていた

ゲッタードリルが回転を始めた

竜巻すら生温く見える回転数だ

そしてその回転に巻き込まれ、突きささった蟻の骸はズタズタになって飛び散った

「オラ次ィ!」

そう言いながらイシカワは飛び込んだ

地面へ

土を掻き分け、岩を崩し、闇の中を日田突き進む

三秒もしない内に、国内の巨獣のすぐ近くに出現した

無論、地面を穿ち抜いて現れた

ゲッタードリルの一突きが、刹那に敵にトドメを刺した

体液やら表皮やらが細切れとなって辺りを濡らす

ゲッターの移動速度が上がっていく

ジグザグの軌道で走り回ると、真空波で蟻巨獣が吹っ飛んだ

「ゲッタードリルッ!!」

一本の白銀の矢となったゲッター2が、次々と蟻を串刺しにする

やがて、マイナー国の中には生きている巨獣がいなくなった

ゲッターが全滅させたのだ

国内と国外を遮る壁

そこにあった亀裂を見つけたイシカワは、ゲッタードリルを向けさせる

ゲッター2の左腕が、かつてないほどに回転する

やがて周囲の風がドリルに集まりだした

ゲッタードリルの周りに、とてつもない風量が集まっていた

「ドリルハリケェエエエエエエエンッ!!」

壁の割れ目の向こう側で蠢いていた巨獣の群れが、瞬く間に巨大な竜巻に飲み込まれた

ある巨獣は砕け、ある巨獣は切り裂かれ、ある巨獣はバラバラになった

つまり、一匹残らずぶち殺されたのである

ドリルハリケーンが暴れ狂った跡には、土一欠片も残らなかった

蟻巨獣も、いない

「オープン、ゲェット!チェンジィ!ゲッタースリィッ!」

ゲッター2が分離し、三機のゲットマシンとなった

そのまま地面スレスレで合体、ゲッター3に変形合体する

壁の外へ躍り出ると、外部の巨獣も大幅に減っていた

マイナー国外部へ打ったダブルトマホークブーメランとドリルハリケーンの威力が凄まじかったのだろう

だが、敵はいなくなったわけではない

まだまだ、無数の蟻巨獣が沸いて出てくる

「へっ、纏めて片付けてやるぜッ!」

イシカワが獰猛な笑みを浮かべてレバーを引き倒す

ゲッター3が腕を大きく振り回した

その指先から、布状の物体がまっすぐ伸びていった

「ゲッターネット!!」

イシカワの視界を埋め尽くすほどの面積の投網に、蟻巨獣は思わず真上を向いて硬直した

太陽の光も流れる水も通せそうな穴だらけの布だが、蟻巨獣もともなると話は別だ

蟻の群れにゲッターネットが落ちてきた

巨大なゲッターネットに絡み取られ、身動きができなくなる

ゲッターロボが手を手繰り寄せ、手際よく投網を袋状にして巨獣の逃げ場を封じた

「捕まえた!オラァ、行くぜぇ・・・大!雪!山!おろしぃッ!!」

ゲッター3がネットを引っ張り回し、持ち上げた

中の無数の蟻巨獣が蠢くが、今のゲッターロボにはわずかな抵抗にもならない

そのままゲッター3は、巨獣を纏めて振り回し始めた

「オラオラオラオラオラァァァアアアアアアアアアア!!!」

振り回すスピードが上がる

ペースも上がる

回転数が上がる

やがて、再び大竜巻が巻き起こった

ゲッター3の回転により、猛烈な風が巻き起こされたのだ

その勢いのままぶん投げる

「二段ッ!返しッ!!」

力任せに大空へと舞い上がった蟻巨獣達は、ゲッター3から放たれた無数のミサイルを受けて、一匹残らず青空の塵となって消えた

 

ゲッターが吸い付くした疑似ゲッター線の量は、並大抵のものではない

マイナー国の地下を埋め尽くす大量の疑似ゲッター線を、全て平らげたのだから

動力をこれとするゲッターロボには、大量に吸い込んだことによるオーバーロードが起きていた

だが、それでもゲッターは、軋み声一つあげない

その力を、ひたすらに爆発させた

 

大山から、一際大きな個体が現れた

羽も生えて、ずいぶんと派手だ

だがイシカワは、なんの躊躇いも見せずに向かった

「チィェエエエエエエンジゲッタァアアアアアアアアアワンッ!!」

新ゲッター1が山の近くまで突き進んだ

女王蟻巨獣は口から強酸性の液体を噴出して防戦しようとしたが、それらは全て難なく回避された

赤い戦鬼が山の真上に来た

イシカワの、腹からの必殺技の掛け声

「ファイナルッ!ゲッタアアアアアアアアアアア・・・ッ!」

蟻巨獣がぞろぞろと集まってくる

女王蟻が身の危険を感じたからだろうか

一斉にゲッターを見据えて威嚇とばかりに顎を開いた

だがそんなものに惑わされるパイロットに、ゲッターは動かせない

ゲッターロボの左肩から、一本の光の棒が出てきた

それはずんずん延びていき、目の前の山の頂上を越えた

「トォオオゥマァアアアアホォオオオオオオオクッ!」

肩から延びた棒の先端に、巨大な半円が形作られる

否、半円ではない

斧の刃だ

超巨大なゲッタートマホークを振り上げて、ゲッターは飛び上がる

山の中腹を越え、頂上にあたる位置で、静止

振り降ろす

迫り来る刃を、敵は抑えきれない

女王蟻が最初に縦に真っ二つになった

その下の雑魚蟻も寸断された

戦闘の舞台となった山も、一瞬にしてばっくりと切り裂かれた

そのまま大爆発、山ごと派手に消し飛んだ

 

 

 

 

 

 

 

ゲッターロボが顔を上げる

その手には何もない、あの巨大なトマホークも

ゲッターロボが視界を巡らす

そこには何もない、あの大量にいた敵も

蟻巨獣は、一匹残らずゲッターに倒されたのである

「へっ・・・」

イシカワは不敵に笑った

「・・・やったぞ、ジジィ!」

ゲッターロボが大地に直立した

身体中を照らす太陽の光に混じって、緑の光がゲッターから見える

痛々しい傷跡がマイナー国に散乱していた

その中で、ゲッターロボが佇んでいた

 


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