DOUBLE:violence 《二人の特典付き転生者が異世界でアテもなく暴れ続けるお話》   作:アルファるふぁ/保利滝良

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sceneSKL 王国ぶっ潰し大決戦

 

へへへ・・・調子は良いみたいだ、ようやく敵をぶちのめせる

腕が鳴るぜ

「パイルダー・・・オンッ!」

よっしゃあ、発進だ!

王国ぶっ潰し同盟、出撃!!!

 

 

 

 

 

マジンカイザーが駆ける

漆黒の体躯を振り絞り、走る

固く握りしめられた拳が、風をねじ切りながら振るわれた

「オラァッ!!」

「びゃあああああっ!」

胸部へ打ち出された拳の威力に耐えられず、敵のマシンが真っ二つになった

その敵から意識を外し、ナガイがカイザーをさらに走らせる

「トルネェエエエエド!!」

しなった左腕

腕の周りのブレードが、乱暴な音をたてて回転する

「クラッシャァアアアアアア!!!」

パンチと共に飛んでいく、左腕

それは一つの巨大な質量弾となり、目にも止まらぬ速さで突き進んだ

進路方向には、無数の戦闘マシン

ロケットパンチがそこへ突入した

「ぶわぁあっ!?」

「ぎゃあっ!」

「のぁあ!」

「おぐぇ!」

無数の断末魔が木霊する

拳の通った後には、一本の長いトンネルができていた

その穴は、無数の敵を貫いていた

「ひ、ひぇえええ!」

「た、助けてくれぇ!」

目の前で、味方がミンチの屑鉄になる

あまりの強さに、カイザーと対した者は腰を抜かした

そして、そんな者の末路は決まっていた

「ああ、今楽にしてやろう」

飛んでいった腕が戻り、カイザーに接続される

黒き鉄の魔神が、胸の赤い飾りに手を添えた

一瞬の後、胸の飾りは二丁拳銃となる

銃口の向く先は敵以外にあり得ない

「楽にな」

トリガーが引かれ、弾が放たれる

いくつもの弾丸が、いくつもの敵の急所に潜り込んだ

弾丸に貫かれ、貫かれ、貫かれ、倒されていく

ロボットの屍が二桁ほど積み重なると、ブラス王国の城壁が見えてきた

ブレストリガーを胸部に戻し、ナガイは立ち止まる

「へっ」

振り向けば、ナガイの倒した敵に、シオリ達の戦闘マシーンが群がっていた

「足手まといにゃなってねェようだな」

侵攻速度を重視したため、トドメを刺し損ねたヤツがいるかもしれない

そう考えての指令だ

カイザーが戦闘の先頭に立つことで、敵は総崩れになり、ブラスの防衛線はズッタズタに引き裂かれていた

「仲間も悪くねえ」

作戦に確実性よりスピードを優先したのは、実はレジスタンスにも戦力があったからである

彼らが後詰めとしてナガイの後ろにいることで、ナガイが開いた突破口を広げ、迫り来る敵の動きを阻害している

だが、この戦いに最も貢献していたのは、間違いなくマジンカイザーSKLであろう

カイザーがブラス国軍を一方的に蹂躙しなければ、そもそも戦いにすらならなかった

「だが、まだ暴れ足りねぇぜ!!」

そうナガイが叫ぶと、カイザーが背中に手を回した

背中から引っこ抜かれたのは、本体と同等の長さの大きな剣

牙斬刀だ

右に左に振り回し、調子を確かめる

「神が恐れ、悪魔すら慄く!」

「来るなぁ!化け物めぇ!」

「うわぁああああああ!」

「俺達が、地獄だッ!!」

たまたま近くにいた敵の機体

ナガイはそこへ、剣を振るう

一体目は兜割りで真っ二つ

二体目は逆袈裟で真っ二つ

三体目は横振りで真っ二つ

四体目は刃を押し付けて真っ二つ

五体目はついでに三度斬り付けて八つ裂き

「次はどいつだッ!!」

機体の破片とパイロットの血肉がへばり付いた牙斬刀を肩に置き、ナガイが吠えた

その周囲千メートルには、数え切れない残骸で埋め尽くされていた

トルネードクラッシャーパンチで粉々になった機体

ブレストリガーで銃創だらけになった機体

牙斬刀で真っ二つになった機体

破壊された様はそれぞれだったが、共通点はあった

そのどれもが、中身共々死んでいることだ

「あわわ・・・勝てっこねぇ!逃げろぉ!」

ある兵士がたまらず叫んだ

それに反応したかのように、戦闘マシーンの部隊が背中を見せて走り出す

カイザーの脅威的過ぎる勇姿に、戦意を完全に無くしたのだ

「先進むぞ!次だ、次ッ!」

八方へ散り散りに逃げていく敵を無視し、ナガイは先へ進んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お前の言う通りにやったぞ!お前の言う通りにだ!それが、どうしてこうなる!?」

「さあ、俺は俺なりにアドバイスをしてやっただけだが」

「た、助けてくれピグドロン、ワシは今までお前の言う通りにしてきた!助けてくれてもいいだろう!」

「なんの話かさっぱりだな」

「このままではワシは殺されてしまう!」

「そんなもの自業自得だ!今まで利用できるだけ利用してきたが、ここまで無能だとはな!」

「ば、バカな、騙していたというのか!?」

「お前にはもう用はない・・・あのお方の役にも立てんゴミクズめ、この俺が直接あの世に送ってやろう」

「うぅ・・・嫌だ!嫌だぁっ!」

「死ね」

「おるぁあああああああッ!!!!」

「なっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブラス国の王城の最上階

金色に光る人影と、ブラス王が揉めていた

「おるぁあああああああッ!!!!」

ナガイが腹の底から雄叫びをあげ、レバーのスイッチを押した

スカルパイルダーから発射されたミサイルが、その部屋に突入する

「なっ!?」

ミサイルは金色の人影に当たると、そのまま金色に押し付きながら飛んでいった

邪魔がいなくなったことを確認すると、ナガイはパイルダーを王城に突入させた

「よっこいせっと」

「お、お前は?助けてくれたのか!?」

不思議そうに聞くブラス国王

だが、ナガイは目を見開いて否定する

「助けただぁ?お前にはやってもらわねえといけねえ仕事が山積みなんだ!!お前にはまだ地獄が待ってるんだぜ・・・?来いッ!」

ブラス王の首根っこを引っ掴み、ナガイはスカルパイルダーに乗り込んだ

無論、パイルダーの別スペースにブラス王を押し込みながら

「飛ばすぜ、舌噛むなよ!」

「ああ、宝が、ワシの宝が!」

「宝ァ?」

「城の地下に宝を隠しておるんだ、それを取りに戻らせてくれぇ!」

「テメエも国の連中から巻き上げていやがったか!」

「ワシの宝ぁ・・・」

「ふざけてんじゃねえぞテメエ!!ぶち殺されたくなけりゃ大人しく俺らの言うこと聞いてやがれ!!」

「ヒィイ!」

ナガイが怒鳴り付けると、国王は顔を青くして体を丸めた

スカルパイルダーが加速し、タクマの元へ飛んでいった

 

 

 

 

 

 

 

ま、ざっとこんなもんか

「ナガイさん、本当にありがとうございます」

「へっ、こんな仕事、欠伸が出らぁ」

楽勝過ぎるぜ、国家なんぞ大したことねえな

「は、離せ!ワシをどうするつもりだ!」

「この独裁者・・・あんたのせいで何人死んだと思ってるの!?」

「ここにいる皆、全員が、アンタに恨みを持っているんだ!」

おーおー、お熱いこった

あのまま見捨ててもいいんだが、王さまをぶっ殺すのが目的じゃなかったよなぁ

「やめろシオリ、オサムもだ」

「タクマ・・・」

「あ、タクマ、ごめん」

冷静だな

流石リーダーってところか

「ブラス王、貴方に俺たちが要求することは二つある」

「な、何!?何だ!?」

「一つ、この国の国王制をいますぐ停止しろ・・・もう一つ、王を辞めろ」

「そ、そんな条件呑めるわけ・・・」

「答えろ、ここで死ぬか余生を静かな別荘で過ごすか」

「わ、わかった・・・!」

うお、なかなかイイ目付きするじゃねえか

最初会った頃とは大違いだぜ

なんだか、俺の表情と似てるような気がするが、まあいいか

「ナガイさん・・・全部終わりました」

「へっ、本当はこれからじゃないのか?」

「はは・・・そうですね、ブラスの未来は、今から俺たちが積み重ねないといけません」

御大層だな、並の道のりじゃねぇだろ

だがな

「そこまでは面倒見切れねえぜ」

「不得意なんでしょ?」

「まあな」

「ははは・・・」

さて、もうここいらでやれることはやったか

次はどこにいこうかね・・・ん?

地響き・・・?

「これ、地震!?」

「わわ、わっ!」

くそ、なんだこりゃ!?

一体どうなってやがる!!

パイルダーは・・・あそこか

「ナガイさん!」

「そこで待ってろ!!」

チッ、誰だか知らねえが手こずらせやがる!

ぶっ飛ばしてやるぜ

 

 

 

 

 

 

 

「パイルダー、オォンッ!!」

スカルパイルダーがマジンカイザーSKLの頭部に突き刺さる

直後、カイザーのその瞳が、青く光った

唸りを上げながら走る

しばらくすると、上空に光る物体があるのを見付けた

「なんだぁ、ありゃあ!」

ナガイが目を凝らしてそれを睨むと、その発光体は地上に降りてきた

それは巨大だった

だが、その顔には禍々しい目と口が存在した

頭の下には胴体が、胴体の周囲には手足がそれぞれ二つずつ

その発光体は、顔の端まで引き裂けた口を動かした

「ナガイ・ゴウト!貴様、よくも神の計画を邪魔してくれたな・・・」

発光体の忌々しげな声に、ナガイは過敏に反応した

この世界で、この異世界で、自分の名前を知っている者がいた

「俺の名前を・・・知ってやがるだと?」

目を見開いたナガイは、その光る敵の声に耳を向けた

「俺様の名前はピグドロン、偉大なる神のしもべの一人だ!」

ピグドロンと名乗った怪物は、カイザーに片手を突き出した

「貴様も用済みだ、死ぬが良い」

 


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