DOUBLE:violence 《二人の特典付き転生者が異世界でアテもなく暴れ続けるお話》   作:アルファるふぁ/保利滝良

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sceneGET 王と光

 

イシカワと複数の鎧が、巨大な階段を上っていた

一段を上る度、鎧が擦れ合ってやかましい音をたてている

「へッ、客人扱いにしちゃ仰々しいな」

「うるさい、貴様が何者かわからぬ以上下手に警戒を解くわけにはいかんのだ」

イシカワの皮肉に、カズトと名乗った男が答えた

イシカワを取り囲む鎧の中で、カズトだけは兜を着けていない

そして、鎧に着いている飾りから、この鎧連中の中ではカズトが一番偉いとわかった

「そうかい・・・で、俺は今からどこに連れていかれんだ?牢屋にぶち込む気ならここで一暴れしちまうが」

イシカワはマイナー国への入国許可を得、この城へと訪れた

訪れたというより連行されたという風情だが、カズトがイシカワを危険視し、見張りを買って出たのだ

おかげでせっかく自由にブラブラしようとしたイシカワの思惑が台無しだった

取り囲まれて動きがとれないので、周りの騎士様どもに八つ当たり気味の皮肉しかすることがない

「国王の玉座だ・・・お前、と言うよりお前の乗っていた戦闘マシーンにマイナー国王が興味を持たれてな」

「あることないこと根掘り葉掘り聞かれるってことか、面倒くせぇ」

イシカワが今日何度目かわからない毒を吐いた

カズトは引き続き、イシカワを睨んでいる

「・・・綺麗な城だな」

イシカワが突然ポツリと呟いた

「当たり前だ、マイナーはブラスと違って清廉潔白なのだ!街へ降りてみろ、ゴミ一つ落ちとらんぞ」

「いい国じゃねえか」

「その通りだ、マイナーは誇り高き国だ!こんな素晴らしい国を守れるように私はここにいるのだ」

「そうかよ」

二人の険悪なムードが本の少しだけ和らいだ瞬間、一行の前に巨大な扉が現れる

金細工や大理石の彫刻に囲まれたそのドアは、大人複数人が両手を広げたより大きい

ここがどうやら、玉座の間らしい

騎士二人が取っ手を掴んでドアを開ける

すると、彼らの目の前に豪勢な部屋が広がった

否、部屋と言うより広場と言った方が正しい

人が何人いようとも埋まることない広さ

大理石の壁、床、天井

黄金色の巨大シャンデリア

敷き詰められた絨毯は赤くふかふかで、窓のカーテンも赤くふかふかだった

そしてその先へ視線を伸ばすと、玉座に座った厳つい顔の老人がイシカワを睨んでいた

頭に輝くきらびやかな王冠が、彼の地位を言外に教えていた

「下がれ、騎士団」

威厳が込められたしわがれ声が玉座の間に響いた

しかし、その声にカズトが反対する

「で、ですが陛下・・・この男、いやご客人が何か為された場合に・・・」

「下がれと言ったぞ、騎士長」

「か、畏まりました」

更に威圧感を伴った声に、カズトは冷や汗を垂らしながら従った

「妙なことをするなよ・・・」

すれ違い様にそう呟きながら、カズトは他の騎士と共に玉座から去っていった

「さて、出刃亀もいないようだ、本題に入ろう」

「そうだな、長ったらしい話は無しだ」

「ワシがこの国の長、マイナー十七世だ」

「俺はイシカワ・ケンジだ」

半ば狂気すら孕んだ視線で、マイナー国王がイシカワを見る

それに怯みすらしないで、イシカワが答える

「お前があの変形合体する戦闘マシーンのパイロットだな?」

「ああ、あれはゲッターロボ」

「貴様、巨獣が誕生する経緯は知っておるな?」

「緑色の光で照らし出されると生物が巨大化するんだろ?」

「そうだ、ワシはあの光を研究している」

「巨獣が巨大化する光をだと?」

「イシカワ、お前はここではないどこかから来たのだろう?」

「おいジジィ待て、話が飛びまくってるぞ!一つにまとめろ!」

話を変え続けるマイナー十七世に対し、イシカワが怒る

だが全く聞かず、国王は質問した

「この大陸ではないどこかから来たお前なら、何か知っているんじゃないのか」

 

 

 

 

 

 

 

ああ、まあ知ってらぁ

緑色の光なんてものは数ある物だろうが・・・あの神とやらがゲッターロボを俺に用意した以上は、恐らく・・・

「一つだけ、心当たりがある」

「聞かせろ」

チッ!

このジジィ、さっきから偉そうにしてやがる

向かっ腹立ってきたぜ

「っていうか、何なんだテメエはさっきからよぉ!偉そうにしやがって、ふざけんじゃねえ!」

「ふざけてなどいるものか」

「んだとォ!?」

このやろ・・・

「お前とワシの会談次第でこの国が滅ぶかどうか決まるのだ、ふざけてなどいるはずがないだろう」

・・・そうかい

人の命かかってやがるのか

「チッ!まあいい」

「とっとと教えろ」

クッソ、こんのジジィ!

「あれは多分、ゲッター線だ・・・ゲッターロボの動力、ゲッター線だ」

「ほう、ソレはどんな性質を持っている」

ああそうか、教えなきゃならねえのか

面倒くせえなあ

 


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