DOUBLE:violence 《二人の特典付き転生者が異世界でアテもなく暴れ続けるお話》 作:アルファるふぁ/保利滝良
いやぁー、殺った殺った!
まさか2体目がいるなんて思ってもみなかったぜぇ・・・正直ヤバかったかもなぁ
が、流石はゲッター3
水中戦なら無敵だったな
・・・さて、そろそろこの村から離れるか
用事もないし、それに・・・
「おーい!帰ってきたぞ~!」
「すげえすげえ!大漁じゃあねえの!」
「このハマチ見ろ、肥えに肥えて美味そうだぁ!」
「ああ、高く売れそうだべ!」
俺はもうこの村には不要な存在だろうし、な
まあもともとあてなくぶらつくだけだったしな
好都合とも、言えるんじゃあねえか?
これでこの村とも後腐れなくオサラバできる・・・
「あ、あの、イシカワさん!」
あん?
シズメか、何だ?
「ま、また来てください・・・や、約束です」
約束ぅ?
最初からブラブラとするつもりの俺がまたここに来るか?
「それ、守れねえかもしれねえぞ」
「約束です!お、お願いします・・・」
んだよ、顔真っ赤にしやがって
しゃあねえ
「・・・まあ、他に行くアテ無かったら、来てやっても、いい、かも・・・な?」
こうでも言わねえと納得しねえだろうし
「イシカワさん・・・つ、次来るときは・・・」
あーもー鬱陶しい、最後まで聞いてやらねえ
「次来るときは・・・私と!」
ゲッター3発進!
いざ大海原へ・・・ってな!
シズメ、そんな残念そうな顔すんな
もう二度と会えないなんて誰が決めた?だから、その時まで待ってろ
アバヨ!
イシカワの駆る黄色いゲッター3は、海底をキャタピラで移動していた
その足取りは決して速いとは言えないが、しっかりと進んでいくその様子は頼もしさを感じられる
「み~っつ~のこーこーろーが一つになれぇ~ばぁ~」
暇になったイシカワがコクピットの中で歌を口ずさみ始めた
そこまで上手い歌い方な訳ではないが、静かすぎる海の底ではそうでもしないと寂しさで押し潰されてしまう
「ひ~とつ~のせいーぎはぁ~百万パァワ~」
ここに来て、このゲッターが一人乗り仕様なのがイシカワに被害を与えていたのだ
たとえどんな人間でも、生きている限りたった一人では価値を持ち得ない
たくさんの『人』の集まりにいたからこそ、生きている価値があるのだ
この海底には、その人間の価値を否定する静けさが漂っている
ゲッターロボの外にいる魚達がイシカワを慰めることはない
「ん?なんじゃありゃ」
ゲッター3がキャタピラを止めた
そのずっと向こう、なにやら妙な物があった
潜水艦に手足を生やしたものだ
それ以外に形容できる言葉がない
「あれが、戦闘マシーンってヤツか?」
イシカワが足を止めたまま様子を見ていると、潜水艦モドキの脇腹から筒が生えた
やたらとゴツゴツした鉄の筒
それの先端から、なんの前兆もなく移動物体が飛び出した
水を高速で突き進むそれは、魚雷だった
「うおおッ!?クソ!」
数発をもらいながら、イシカワが操縦悍を握り直す
その瞳は怒りに燃え、視線の先の戦闘マシーンを睨み付けていた
「先に手ぇ出してきたのはそっちなんだ・・・覚悟しやがれッ!」