DOUBLE:violence 《二人の特典付き転生者が異世界でアテもなく暴れ続けるお話》   作:アルファるふぁ/保利滝良

10 / 45
sceneSKL 神を倒して悪魔を殺す

 

「くそ、ここまでか・・・?」

青色の戦闘マシーンに乗り込んだリキは、同じく戦闘マシーンに乗ったならず者に囲まれていた

彼はこの村の用心棒で、主に巨獣などの撃退をして村を守る役割を担っている

しかし小さい村ゆえ、そこに彼以外の戦力はいない

そして現在、村は数十機単位の戦闘マシーンに囲まれている

最早ただ一機のリキではどうしようもなく、戦闘で愛機はボロボロ、憔悴してしまっていた

「ゲヘヘヘヘ、よくやったぜお前」

「だけどよぉ~、俺達に楯突いた代金は払ってもらわにゃあな?」

巨大な槍や鉈を持った人型の機械が、リキの機体にトドメを刺そうと近付いた瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拳が飛んできた

「ゲビャッ!」

あっさりと一機、木端微塵と化す

「だ、誰だ!出てこい!」

別のチンピラが機体の頭を振り回し、不意討ちの下手人を探し出そうとした

今度は銃撃が飛んできた

気付いたら飛んできた拳はどこにもなかった

「アゴァッ!」

「うげぇっ!」

何機かが穴だらけになり、倒れ込む

否、穴だらけ等と言う生温いものではない

撃たれたところが、食いちぎられたように無くなっている

それほどの威力の銃撃だったのだ

「一体ナニモンだ!で、出てこいぃ!」

「俺か・・・?そうだなぁ」

一歩一歩ゆっくりと、ソイツは姿を現した

刺々しい姿

黒い全身

赤い胸部

骨をあしらった、頭部

「俺達が、地獄だッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体ナニモンだ、出てこいぃ!」

あァ?何をエラそうにチンピラ共が

「俺か・・・?そうだなぁ」

あのキメ台詞、俺一人だから不自然だよな?

いや、こう考えれば良いのか

 

俺とマジンカイザーで、二人

 

だからこの台詞も、大丈夫なワケだ!

「俺達が、地獄だッ!」

行くぜマジンカイザーSKLッ!テメエの力を見せてみろォ!

「オラオラオラァッ!」

さあ、地獄を楽しみな・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マジンカイザーSKLが、胸に両手を添えた

刹那、既に引き金は引かれていた

向けた銃口はもうならず者の戦闘マシーンを捉えており、その弾が当たらぬ道理はない

ただ一つ問題だったのは、両手を左右に振っていたことか

そのまま引き金を引いたので、連続してそのハンドガンから飛び出た超威力の弾丸が村に展開していた戦闘マシーンを次々と撃ち抜いた

片足を軸に、地を蹴る

すると、カイザーは横に一回転した

ブレストリガーをリロードして撃つ、撃つ、撃つ

全方位360度へと、弾が飛んでいく

ある弾は建物を貫通し、ある弾は木を砕いて、ある弾は倒れ込んでいたリキのマシーンの頭スレスレに飛んでいった

その銃弾の一つの共通点、それは盗賊の機体を一撃のもと破壊したことか

「ぐえええっ!」「ぎゃあ!」「おぶぁ!」

「ひぎゃぇ」「うがぁ!」「おあああっ!」

十人十色の断末魔が、村全体に汚らわしいコーラスを響かせた

一気に数が減った

「くそがあああ!」

ある一人が、槍をマジンカイザーに突き刺そうとした

カイザーはそれをブレストリガーの銃床で上に弾き上げると、

「ふん」

もう片方のブレストリガーで戦闘マシーンの頭を砕いた

トマトのように潰れたその機体の頭部から、操縦者のものと思わしき鮮血が流れ出した

「そうか、頭か」

どこからか取り出したマガジンを装填し、ブレストリガーを肩越しに真後ろへと向ける

「うげぇ・・・は、早く逃げねぇと・・・」

その向こうには、胸を撃ち抜かれた戦闘マシーンから這い出ようとする盗賊の姿があった

直後に、ブレストリガーの弾は見事その盗賊に突っ込んでいった

「さて、次だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミユキはもがいていた

「この、放せっ!」

「ウェヘヘヘ、ちと幼いが、まあ入れれりゃなんでもいいや」

他の機体とは一線を角す巨体の戦闘マシーンから伸びた機械の触手に、腹をぐるぐる巻きにして捕まっていたのだ

「私はハタチだ!」

「何!それはそれで!」

コクピットを開いたその戦闘マシーンの中から、下卑た笑顔を浮かべたガタイのいい男が出てきた

「お前!よくも私の村をメチャクチャに!」

「力ある者がなき者に何しようがどーでもいいだろ?この世は弱肉強食なんだからよぉ!」

高笑いをしながら、男はレバーを引いた

すると、触手はミユキの四肢に巻き付いた

身動きがとれないミユキをいたぶるように、触手はその細い腕や足を引っ張る

「気が変わった!お前は分解して遊ぶことにするわー」

ミユキの顔が青ざめた

「そーら1、2の・・・」

カウントが増えるごとに引っ張る力が増えていく

そして、三に達しようとしたそのとき

「お頭ぁ!たすけグギャアッ!」

男の部下を貫いて、巨大な腕が猛スピードで突撃してきた

ついでに、触手を何本が引きちぎった

触手の拘束から解放されたミユキは、そのまま地面へとまっ逆さまに墜落していく

が、すぐ下の藁葺き屋根に乗っかり、無事だった

怪我一つない

「確かに、戻ってくるまでがまどろっこしいなァ」

「テメエ、すげー強えな・・・どうだ?お前俺と一緒に弱肉強食極めてみない?」

ニヤニヤと笑みを浮かべながら、ならず者のボスは聞いた

「で?お前そんなくだらねぇことを考えてやがんのか」

ナガイは耳を小指でほじりながら聞いた

コクピットの中で足を組み、軽くリラックスしている

「あ?くだらねぇ?舐めてんのかお前」

「強いってのも弱いってのも、神か悪魔が決めたモンだろ、そんなのに構ってて・・・オコチャマか」

目を細め、男はレバーを引く

それは触手の操作悍

一瞬でカイザーの足に、複数の金属の綱が絡み付く

「断るってことでいいよなぁ!?」

戦闘マシーンが触手を思いっきり引っ張る

そのままカイザーは、転

「あんだこりゃ?」

ばない

例えば赤ん坊が成人男性の足を思いっきり押してもその男が転ばないのと同様に、カイザーがバランスを崩すことはなかった

ほんのちょこっと踏ん張った、ただそれだけ

「なァ、これって」

ドクロの魔神が、かがんだ

触手を片手で握り、引きちぎる

鋼鉄などが切れるような、日常的に鳴り響くようなものではない音が鳴った

そして、千切れた触手の、本体と繋がっている部分を掴む

そして引き寄せた

「始めて良いってコト、だァよォなァ?」

「うわーっ!」

引っ張られた方は、あっさりと宙を舞った

頭から落ち、倒れる

ちなみに触手の方は勝手に引っこ抜けた

「お、俺のステングフィルクが・・・」

戦闘マシーンの名を呟きながら男は機体を起こそうとした

「あんだそりゃ?中二だな・・・ナンでもカンでもよくわからねぇ名前付けりゃカッコいいと思ってやがるのか?」

カイザーが一歩、二歩と歩み寄る

「クッソ!」

振り向いて逃げようとしたステングフィルク

その膝裏に、ブレストリガーの弾丸が撃ち込まれる

振り向いたステングフィルク

「これで死ね!」

その目から、二条の光線が放たれた

が、発射する前にナガイが引き金を引いていた

頭部を少し抉る、銃弾

衝撃で照準がズレ、塔に当たる

魔神の杖が支柱とされる、村のランドマークと言える塔だ

その塔が、壁を破壊される

「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだぁ?ありゃ牙斬刀じゃねえか

あーそう言うことか

『薙刀の柄』を『杖』と認識したワケかぁ・・・伝言ゲームじゃねえんだから、子孫にはちゃんとした情報渡しとけってんだ

持てるか?よっと

おーおー、壁で覆われてたからか?野晒しでも問題ねぇみたいだ

「このやろおおおおお!」

あんだ?野郎剣抜いて・・・ああ、まだ決着着いてなかったよなァ

さて楽しませてくれるか、第2ラウンドの始まりだァッ!

おるあッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステングフィルクの腕は、ダイヤモンドの数倍は堅いと言われる剣と共に、濡れ紙が如く切断された

「喧嘩の値踏みもデキねェガキが、大将面たぁな・・・舐めてんのかッ!」

そのまま、両肩と両足を一瞬で切り刻む

やはり、濡れ紙が如く、その機体の四肢は切断されてしまった

身の丈ほどもある刀を振り回す、マジンカイザー

「あ、あああ・・・あああああ」

「なぁ、なんでこんなことを始めた?聞いてやるよ」

「き、聞いたら助けてくれるよな?」

「ああ、生かしてやるよ」

 

 

「俺には力がある、そしてこの世は基本弱肉強食だ・・・強い奴が支配者になってる、そうだろ?」

「だから何やっても良いってのか?」

「そうだ!そうだろ!だって、王様だとか神様だとかは他の奴より強い力を・・・」

「あーもういい、もういいやメンドクセェ」

「い、生かしてくれるんだよな?な?」

「まあすぐブッ殺すが」

「は?」

「理由いるか?」

「な、なんでだよ、オイゴルァ!ふざけん・・・」

「テメエがムカつくからだ」

「はァっ!?」

「神に会うては神を斬りィ・・・」

その一言が終わったかか終わらないかの瞬間、カイザーは牙斬刀を振った

遠くからボスを殺しかけている謎のロボットを見ていたならず者の戦闘マシーンが、その衝撃波で真っ二つになる

機体の内部が晒されて、パイロットごと吹っ飛んだ

「悪魔に会うてはその悪魔をも、撃つッ!」

振り回した勢いで牙斬刀を地に刺し、ブレストリガーを握る

全く、寸分の違いもなく、その弾は、先程コクピットを知らずに撃破した戦闘マシーンから脱出したならず者に命中した

撃ち殺されると言うよりも轢き潰されたかのごとく、一撃必殺にミンチと化す

「俺()に大義名分など無いのさァ・・・!」

そしてブレストリガーを胸に装着し、片手で牙斬刀を握り締める

「く、狂ってる・・・ヒッ!?」

ステングフィルクの胸に、牙斬刀が突き立てられる

それは、コクピットの真下

「強いて言うなら、お前のやってることが外道の糞野郎だからだな」

牙斬刀を握る腕に、力を込めていく

「1、2のォ」

「ちょっ、待っ」

「3!」

野菜を包丁で切ったような独特な音と共に、ならず者のボスは死んだ

臓物は飛び散り、斬られた頭蓋骨からは脳味噌が垂れ出ているのだろう

かなりどうでもいいが

「残りは・・・どいつだァッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミユキは、薄れいく意識の中で見た

自分の村を滅茶苦茶に荒らして回った戦闘マシーンの集団を、あるときは撃ち殺し、あるときは斬り殺していく黒いナニカを

それは、彼女がよく知っている物の気がした

だが、その暴れる様は彼女が思い描いていたのとは正反対のものだった

「魔神・・・皇帝・・・」

果たして、体の痛みからか、村の惨状を見たくないと言う真相心理の命令のせいか、ミユキは意識を閉じてしまった

が、最も有力なのは

「俺達が、地獄だッ!」

魔神の事実を目の当たりにしたショックからか





書いてみて思いました
「やっぱ単座式にしなけりゃ良かった」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。